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マヤカシを封印しました
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グレイスはマヤカシを倒した。
手には紙切れが握られている。
その中にマヤカシ:ハイツクバルものが閉じ込められていた。
「とりあえず、終わったか」
(凄い。今、なにが起きたの?)
真心は怖がっていたけれど、無事に終わってホッとする。
それから心を落ち着かせると、グレイスに訊ねる。
「ん? マヤカシをこの札に封じたんだ」
(お札に封じた?)
「そう言うことだ。マヤカシは、陰の世界の存在。この札は、陰の世界のものを封印するために昔から使われる呪符を改良し、マヤカシ専用に特化したものだ」
(えーっと、つまり? えっと)
「マヤカシを封じてしまうための札という訳だ。まあ、この札を破けば、マヤカシがまた現生に出てきてしまうからな。管理を怠る訳には行かない」
グレイスはそう言うと、札をポケットにしまった。
クシャクシャになっていたけれど大丈夫だろうか?
真心は心配してしまうも、グレイスはそんなことよりも背筋を伸ばす。
「うーん、さてと、私と交代するか?」
(えっ、今交代するの?)
「なにかマズいのか?」
グレイスは気が付いていなかった。
けれど真心はここで交代するのは避けたい。
勝手に体育館に入ったことがバレたら、きっと大騒ぎになると思ったのだ。
「真心?」
(グレイスちゃん、私と交代したら、怒られるのは私だよ?)
「そうだな」
(そうだなって! ううっ、分かってるならそう言ってよ)
グレイスはそれくらい理解していた。
その事実を知って、真心は肩を落とす。
トホホな気分になると、グレイスは魔法をかけてくれる。
「心配するな。透明な灰」
グレイスが魔法を唱えると、パラパラと灰が降りかかった。
真心は、グレイスの心の中で首を捻る。
?を浮かべると、グレイスは真心と入れ替わった。
「灰の鏡。それじゃあ戻るぞ」
(えっ、結局怒られるのは私なの!)
真心はグレイスの体を借りた。
グレイスの姿から真心の姿に変わると、グレイスは心の中で会話をする。
(心配するな。私の透明な灰を信じろ)
「信じろって言われても、どんな魔法か知らない……」
(いいから、体育館の外に出てみろ。おっと、灰の鍵を作るのを忘れるなよ)
「分かった。灰の鍵」
真心はグレイスに促されるまま、灰の鍵を作る。
靴箱から靴を取り、体育館の外に出る。
鍵を閉め、痕跡を残さないように配慮すると、渡り廊下を女性教師が歩いてきた。
「ヤバい、明堂先生だ!」
真心は口に手を当てた。
こんな時間に明堂先生が渡り廊下を歩くなんて珍しい。
いつもは何処かの教室を占拠して、そこで淡々とオンライン授業をしているのに。
万事休す。真心は目を瞑る。
(心配するな、真心。お前の姿は映らない)
「それはトウメイリザードのせいでしょ?」
(いいから、私を信じろ)
そう言うと、明堂先生は真心に近付く。
しかし見えていないのか?
真心の隣をスルリと通り過ぎ、そのまま過ぎ去ってしまう。
「どうなってるの?」
(言っただろ。お前の姿が見えていない。私のかけた魔法で、お前の姿を見えなくしたんだ)
とんでもない魔法をグレイスは唱えていた。
とは言え、成功したのはかなりのもの。
成功と失敗が運任せだったが、無事に成功してなによりだった。
「それじゃあ、私は今、別の意味で透明人間ってこと?」
(そう言うことになる。とは言え、この魔法は動けば見つかる可能性もある。慎重に動けよ)
「ありがとう、グレイスちゃん。でも、透明になってたら、いくら動いてもバレないんじゃないの?」
(いや、そんなことは無いぞ。例えば、明堂とかいう教師のようにな)
「えっ?」
真心はソッと振り返る。
すると明堂先生は、ジッと立ち止まって、なにかを見ようとしていた。
もちろんその目にはなにも映っていない。と信じるしかなく、完全に真心を見つけていた。
「明堂先生、ずっとこっち見てる!?
(アレは気が付いているな)
「気が付いてる? 気が付かれてるってこと?」
(そう言うことになる。なるほど、どうやら魔法使いにかかわりがあるらしいな)
「そんな今はいいよ! ど、どうしよう。私、怒られちゃうかな?」
なにやら凄く大事そうなことだが、今は置いておく。
このままだと、明堂先生に怒られる。
私は目を瞑ると、明堂先生は、案の定近付いて来た。
「こ、こっち来た!」
(マズいな。完全に気が付かれているぞ)
「そんなこと今更言われても……」
(静かにしろ。来るぞ)
明堂先生は真心に近付く。
すると気が付いているのかと思いきや、そんなことは無かった。
隣をすり抜け、真心のことなんて、まるで居ない様子だった。
「あれ?」
(私の勘違いだったのか?)
真心とグレイスの読みは外れた。
かと思えば、明堂先生は口を開いた。
「勝手に入るのは構わないけど、出る時はちゃんと鍵を閉めてね」
「(!?)」
真心とグレイスは心底冷えた。
鳥肌が立つと、明堂先生は渡り廊下をUターンする。
「グレイス、今の……」
(おそらくそうだな)
「それじゃあ明堂先生には最初から……」
(つくづく不気味だ。初対面で見透かされるとは思わなかった)
明堂先生は白衣の外ポケットに手を突っ込んで歩いて行く。
渡り廊下を曲がると、校舎の中に姿を消す。
その姿を追い掛けることはできず、真心とグレイスは、下手なことは決してせずに下校した。
手には紙切れが握られている。
その中にマヤカシ:ハイツクバルものが閉じ込められていた。
「とりあえず、終わったか」
(凄い。今、なにが起きたの?)
真心は怖がっていたけれど、無事に終わってホッとする。
それから心を落ち着かせると、グレイスに訊ねる。
「ん? マヤカシをこの札に封じたんだ」
(お札に封じた?)
「そう言うことだ。マヤカシは、陰の世界の存在。この札は、陰の世界のものを封印するために昔から使われる呪符を改良し、マヤカシ専用に特化したものだ」
(えーっと、つまり? えっと)
「マヤカシを封じてしまうための札という訳だ。まあ、この札を破けば、マヤカシがまた現生に出てきてしまうからな。管理を怠る訳には行かない」
グレイスはそう言うと、札をポケットにしまった。
クシャクシャになっていたけれど大丈夫だろうか?
真心は心配してしまうも、グレイスはそんなことよりも背筋を伸ばす。
「うーん、さてと、私と交代するか?」
(えっ、今交代するの?)
「なにかマズいのか?」
グレイスは気が付いていなかった。
けれど真心はここで交代するのは避けたい。
勝手に体育館に入ったことがバレたら、きっと大騒ぎになると思ったのだ。
「真心?」
(グレイスちゃん、私と交代したら、怒られるのは私だよ?)
「そうだな」
(そうだなって! ううっ、分かってるならそう言ってよ)
グレイスはそれくらい理解していた。
その事実を知って、真心は肩を落とす。
トホホな気分になると、グレイスは魔法をかけてくれる。
「心配するな。透明な灰」
グレイスが魔法を唱えると、パラパラと灰が降りかかった。
真心は、グレイスの心の中で首を捻る。
?を浮かべると、グレイスは真心と入れ替わった。
「灰の鏡。それじゃあ戻るぞ」
(えっ、結局怒られるのは私なの!)
真心はグレイスの体を借りた。
グレイスの姿から真心の姿に変わると、グレイスは心の中で会話をする。
(心配するな。私の透明な灰を信じろ)
「信じろって言われても、どんな魔法か知らない……」
(いいから、体育館の外に出てみろ。おっと、灰の鍵を作るのを忘れるなよ)
「分かった。灰の鍵」
真心はグレイスに促されるまま、灰の鍵を作る。
靴箱から靴を取り、体育館の外に出る。
鍵を閉め、痕跡を残さないように配慮すると、渡り廊下を女性教師が歩いてきた。
「ヤバい、明堂先生だ!」
真心は口に手を当てた。
こんな時間に明堂先生が渡り廊下を歩くなんて珍しい。
いつもは何処かの教室を占拠して、そこで淡々とオンライン授業をしているのに。
万事休す。真心は目を瞑る。
(心配するな、真心。お前の姿は映らない)
「それはトウメイリザードのせいでしょ?」
(いいから、私を信じろ)
そう言うと、明堂先生は真心に近付く。
しかし見えていないのか?
真心の隣をスルリと通り過ぎ、そのまま過ぎ去ってしまう。
「どうなってるの?」
(言っただろ。お前の姿が見えていない。私のかけた魔法で、お前の姿を見えなくしたんだ)
とんでもない魔法をグレイスは唱えていた。
とは言え、成功したのはかなりのもの。
成功と失敗が運任せだったが、無事に成功してなによりだった。
「それじゃあ、私は今、別の意味で透明人間ってこと?」
(そう言うことになる。とは言え、この魔法は動けば見つかる可能性もある。慎重に動けよ)
「ありがとう、グレイスちゃん。でも、透明になってたら、いくら動いてもバレないんじゃないの?」
(いや、そんなことは無いぞ。例えば、明堂とかいう教師のようにな)
「えっ?」
真心はソッと振り返る。
すると明堂先生は、ジッと立ち止まって、なにかを見ようとしていた。
もちろんその目にはなにも映っていない。と信じるしかなく、完全に真心を見つけていた。
「明堂先生、ずっとこっち見てる!?
(アレは気が付いているな)
「気が付いてる? 気が付かれてるってこと?」
(そう言うことになる。なるほど、どうやら魔法使いにかかわりがあるらしいな)
「そんな今はいいよ! ど、どうしよう。私、怒られちゃうかな?」
なにやら凄く大事そうなことだが、今は置いておく。
このままだと、明堂先生に怒られる。
私は目を瞑ると、明堂先生は、案の定近付いて来た。
「こ、こっち来た!」
(マズいな。完全に気が付かれているぞ)
「そんなこと今更言われても……」
(静かにしろ。来るぞ)
明堂先生は真心に近付く。
すると気が付いているのかと思いきや、そんなことは無かった。
隣をすり抜け、真心のことなんて、まるで居ない様子だった。
「あれ?」
(私の勘違いだったのか?)
真心とグレイスの読みは外れた。
かと思えば、明堂先生は口を開いた。
「勝手に入るのは構わないけど、出る時はちゃんと鍵を閉めてね」
「(!?)」
真心とグレイスは心底冷えた。
鳥肌が立つと、明堂先生は渡り廊下をUターンする。
「グレイス、今の……」
(おそらくそうだな)
「それじゃあ明堂先生には最初から……」
(つくづく不気味だ。初対面で見透かされるとは思わなかった)
明堂先生は白衣の外ポケットに手を突っ込んで歩いて行く。
渡り廊下を曲がると、校舎の中に姿を消す。
その姿を追い掛けることはできず、真心とグレイスは、下手なことは決してせずに下校した。
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