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◇100 再会と伝えたいこと
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ジュージュー!
熱々の鉄板に上に分厚い牛肉が焼かれていた。
白い湯気を出しながら、喉の奥を唾液が流れる。
付け合わせのブロッコリーにコーン。甘じょっぱいバーベキューソースがかかっていた。
「美味しそう。いただきます」
明輝はステーキ店にいた。
御鷹でも有名なステーキ店で、いつも繁盛している印象がある。
しかも今日は多くて、座れる場所を探すのが一苦労だ。
「今日来てよかったのかな?」
普段は家で食べている。
けれど今日は何の気まぐれか、割引券を貰っていたので、期限が切れるぎりぎりまで放置していた。
しかしどうしてこんなに待ってしまったんだろう。あれだ、使う必要がなかったからだ。
「普段からステーキなんて食べないから。今日は食べるぞ」
手を合わせて「いただきます」と宣言し、ナイフとフォークに手を付ける。
柔らかい赤味肉をナイフで切ると、モクモクと湯気が出る。
それからソースを絡めると、口の中に運んだ。
「うん、ソースの味がお肉の味を引き立ててる。流石赤ワインで煮込んでいるだけあるね」
今度家でもやってみよう。
明輝はそう思ったところ、ふと目の前に誰か現れた。
「すみません、この席いいですか?」
「はい、どうぞ」
明輝が腰かけているのは4人席。
今日の混雑具合では席を得るだけで大変なので、ここは共存し合う。
明輝は目の前の空いている席を渡した。
「ありがとうございます。おや?」
「ん?」
「おや?」と言われてしまったので、明輝は顔を上げた。
そこにいたのは見覚えがある顔だ。
自分よりも年上で、背も高い。艶やかな白い髪に、端正な顔立ち。
白い肌は美しさを強調し、黒いスーツが良く似合う。
「あれ? 確か前に何処かで……」
「お久しぶりです明輝さん。お元気でしたか?」
「えっ? えーっと、エルさん?」
「はい、立花明輝さん」
そこにいたのはエルだった。
一度しか会ったことがないはずなのに、強く印象に残っている。
明輝は何故か母親に似ているものを感じたのか、凝視してしまった。
「如何しましたか?」
「あっ、その……ちょっと似てて、お母さんに」
「ふふっ。私は未婚ですよ。それに、その言い方は相応しくないですね」
流石にほぼ初対面の人に失礼だった。
明輝は深々と頭を下げ謝るが、エルはニコリと微笑む。
「本当にお元気そうで。それに、良い変化です」
「変化ですか?」
「はい、衣替えですね」
確かにあの時はまだ肌寒くて長袖だった。
でも今は暑いので半袖になっている。
注目する視点が個性的だと思ったが、明輝は気にしなかった。
「そう言えばエルさんって……」
「安城エルエスタです」
「えっ!? なんで私が聞こうとしていたことがわかったんですか」
「なんとなくです。でも、私は他人の考えを読むには得意なんです」
「凄い、メンタリストですね!」
「……そうですね。会社を設立するためには経済戦略などの点で必要ですからね。負けないために先を読む。そのための努力と経験を怠らない。場数の差は勝機を分けるです」
「ちょっと、よくわからないんですけど」
急に話が方向転換した。
舵の切り替えが明輝の意識の切り替えとは違う何かで働いている。
プログラムのような感じではなく、先を常に読んでる気がした。
きっと将棋とか強い。
「何だか深みがあります」
「時が違いますから」
「あっ、経験ですね!」
コミカルに話が展開した。
明輝は何だか同級生と話しているぐらい気の持ち方が軽くていい。
普通に話して楽しかった。
「お皿? もうありませんね」
「えっ! そうですね。じゃあ私」
「まだ食べられますか?」
「食べられますけど、お金が……」
「私が持ちますから大丈夫ですよ。貴女と話しているのは気持ちが落ち着きますから」
エルは不思議なことを言った。
明輝は立ち上がろうとしたがもう少しいることにする。
するとたちまちステーキがやって来て、第2ラウンドのゴングが鳴る。
熱々の鉄板に上に分厚い牛肉が焼かれていた。
白い湯気を出しながら、喉の奥を唾液が流れる。
付け合わせのブロッコリーにコーン。甘じょっぱいバーベキューソースがかかっていた。
「美味しそう。いただきます」
明輝はステーキ店にいた。
御鷹でも有名なステーキ店で、いつも繁盛している印象がある。
しかも今日は多くて、座れる場所を探すのが一苦労だ。
「今日来てよかったのかな?」
普段は家で食べている。
けれど今日は何の気まぐれか、割引券を貰っていたので、期限が切れるぎりぎりまで放置していた。
しかしどうしてこんなに待ってしまったんだろう。あれだ、使う必要がなかったからだ。
「普段からステーキなんて食べないから。今日は食べるぞ」
手を合わせて「いただきます」と宣言し、ナイフとフォークに手を付ける。
柔らかい赤味肉をナイフで切ると、モクモクと湯気が出る。
それからソースを絡めると、口の中に運んだ。
「うん、ソースの味がお肉の味を引き立ててる。流石赤ワインで煮込んでいるだけあるね」
今度家でもやってみよう。
明輝はそう思ったところ、ふと目の前に誰か現れた。
「すみません、この席いいですか?」
「はい、どうぞ」
明輝が腰かけているのは4人席。
今日の混雑具合では席を得るだけで大変なので、ここは共存し合う。
明輝は目の前の空いている席を渡した。
「ありがとうございます。おや?」
「ん?」
「おや?」と言われてしまったので、明輝は顔を上げた。
そこにいたのは見覚えがある顔だ。
自分よりも年上で、背も高い。艶やかな白い髪に、端正な顔立ち。
白い肌は美しさを強調し、黒いスーツが良く似合う。
「あれ? 確か前に何処かで……」
「お久しぶりです明輝さん。お元気でしたか?」
「えっ? えーっと、エルさん?」
「はい、立花明輝さん」
そこにいたのはエルだった。
一度しか会ったことがないはずなのに、強く印象に残っている。
明輝は何故か母親に似ているものを感じたのか、凝視してしまった。
「如何しましたか?」
「あっ、その……ちょっと似てて、お母さんに」
「ふふっ。私は未婚ですよ。それに、その言い方は相応しくないですね」
流石にほぼ初対面の人に失礼だった。
明輝は深々と頭を下げ謝るが、エルはニコリと微笑む。
「本当にお元気そうで。それに、良い変化です」
「変化ですか?」
「はい、衣替えですね」
確かにあの時はまだ肌寒くて長袖だった。
でも今は暑いので半袖になっている。
注目する視点が個性的だと思ったが、明輝は気にしなかった。
「そう言えばエルさんって……」
「安城エルエスタです」
「えっ!? なんで私が聞こうとしていたことがわかったんですか」
「なんとなくです。でも、私は他人の考えを読むには得意なんです」
「凄い、メンタリストですね!」
「……そうですね。会社を設立するためには経済戦略などの点で必要ですからね。負けないために先を読む。そのための努力と経験を怠らない。場数の差は勝機を分けるです」
「ちょっと、よくわからないんですけど」
急に話が方向転換した。
舵の切り替えが明輝の意識の切り替えとは違う何かで働いている。
プログラムのような感じではなく、先を常に読んでる気がした。
きっと将棋とか強い。
「何だか深みがあります」
「時が違いますから」
「あっ、経験ですね!」
コミカルに話が展開した。
明輝は何だか同級生と話しているぐらい気の持ち方が軽くていい。
普通に話して楽しかった。
「お皿? もうありませんね」
「えっ! そうですね。じゃあ私」
「まだ食べられますか?」
「食べられますけど、お金が……」
「私が持ちますから大丈夫ですよ。貴女と話しているのは気持ちが落ち着きますから」
エルは不思議なことを言った。
明輝は立ち上がろうとしたがもう少しいることにする。
するとたちまちステーキがやって来て、第2ラウンドのゴングが鳴る。
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