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◇179 拳を飛ばすとかとかアリ?
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あまりに重たい空気に、アキラたちは苦汁を舐めていた。
しかしNightは思考を叩くように回転させ、高速でローディングを行う。
現状ありとあらゆる可能性を考量するときりがない。
そこで限りなくSFロボットものに出てくる要素をふんだんに盛り込んで計算を開始した。
「Night?」
「少し静かにしろ。可能性を考慮して計算しているんだ」
「そんなこと言ってる場合じゃないよね。早くなんとかしないと……」
「計算をする気はない。可能性を考慮して、最善を尽くすだけだ」
「その最善が無駄時間なんだよ!」
アキラは怒鳴りつけてしまった。
けれどNightはまるで動じず、目を閉じて考え事をしていた。
そんなNightを放っておくことはできず、アキラはたじろいでしまう。
「ど、どうしたら……」
「考える必要はないでしょ? アキラはNightをお願いね」
「そうです。アキラさんはNightさんをお願いします。ベル、今日のところはいつも通りで」
「いつも通りね。わかったわ、やってあげる!」
ベルの雰囲気が変わった。
そよいでいた大人びた風が急に荒々しくなったみたいに解き放たれる。
アキラは敏感に反応したところ、ベルが弓を薙刀のように構えていた。
「ベ、ベル?」
「あはは、何だか雰囲気が違うね」
「まあね。今の私は、いつものソロの私だから、早く倒しちゃうわよ」
人は誰しも二面性を持っている。
ベル本人曰く、こっちが本来にベルだ。
大人びていると感じていたのは集団に溶け込むための装いの一つで、解き放ったソロ状態のベルは何だかかっこよかった。
「正直こっちの方が都合いいんだけど、流石に怒れて止められる役がいないとダメでしょ? それがこのギルドの不安要素の一つだって思ってたのよね。そうしたら全然慣れないけど、今まで二面性を演じてた。だから仕方なく私がそのポジションにいたけど、今だけは暴れさせてもらうわね」
「暴れていいよいいよ。それじゃあ雷斬、ベル。この鉄くず、スクラップにしちゃうよー!」
「「ええ」」
珍しいフェルノの合図で3人は飛び出した。
いつも通り単純明快に暴れ散らかすフェルノに加えて冷静さを乱さない雷斬。
そこにいつもとは雰囲気が異なるベルが弓を薙刀のように叩きつける様子は爽快だった。
「凄い。みんな本当に凄い……」
アキラはNightの肩を抱きながら、少し距離を取った。
その目に映るのは黒鉄の巨人を淡々と破壊している。
まずはフェルノはインフェルノにちなんだ通り、炎に燃える拳で黒鉄の巨人の装甲をボコボコの叩き壊している。
装甲の鉄板がどんどん凹み、攻撃が加えられる前に炎を燃やして溶かしている。
雷斬は駆動系狙いだった。
腕の関節部や脚の関節部を刀の先を使って的確に切り裂いている。
全身を青白い光で覆いながら、超高速で移動して剣を突き立てていた。
何本もの配線が腕の関節部から飛び出しているのが、アキラの目には飛び込んで来る。
だが何よりも目を引くのはベルの動きだ。
いつもの冷静で判断を的確にしている状態。いわゆる弓術フォームの時は集団に溶け込むために常に心を留めている。
だが今のベルの動きはまるで異なっていた。
【風読み】を使って風を巻き起こしているが、荒々しくて痛々しい。
しかしその動きはいつもの冷静さを合わせながらも何処から乱雑で乱暴に近い印象もある。だが的確に黒鉄の巨人を破壊しようと、荒々しく薙ぎ打つ。これがソロの時の、本来のベルの感情を解き放った薙刀フォームだった。
それは初見であった日のベルの雰囲気に似ている。会ったこともない私たちに初めて出会ったあの日の初々しさに近い。
「そーのっ、そらっ!」
「ベル、いつもの動きですね」
「そうでしょ。ここから一気に畳みかけるわよ」
「そうですね。フェルノさんも合わせていただけますか?」
「もちろんいいよ!」
雷斬の掛け声で同時に攻めるらしい。
足腰のバネを使って飛びかかると、黒鉄の巨人の動きが若干変わった。
アキラは離れていたのでその動きがよくわかり、3人に伝える。
「みんな避けて、何か来るよ!」
それとほぼ同時に黒鉄の巨人の右腕が外れた。
手首の関節から拳だけが吹き飛んできた。
「あ、危ないねー」
「そうですね。危く直撃を食らうところでした」
「ナイス判断ね。貴女を後ろにおいてよかったわ」
3人は無事窮地を脱していた。否、脱してはいない。
地面に転がる拳は鎖で繋がれていて、モーニングスターのようにグルグルと振り回されている。
今にも空洞内が粉々になりそうな勢いで叩きつけられていて、流石のベルも一瞬大人びた冷静さを醸し出す。
「みんな、一旦下がるわ。Nightが作戦を思いつくまで退避よ」
「えっ!? ここまで来て退避なの」
「またなにも始まっていないでしょ? 雷斬も気づいているわよね」
「そうですね。ベルがこの数ヶ月無理をしてでも大人びた性格を演出していた甲斐がありましたね」
「はい、そこは言わないでね。でも後ろで冷静に見てたらわかったわ。このパーティーは無茶しすぎるのよね」
ベルに叱られてしまい、仕方なく一旦後方に下がることにした。
しかしNightは思考を叩くように回転させ、高速でローディングを行う。
現状ありとあらゆる可能性を考量するときりがない。
そこで限りなくSFロボットものに出てくる要素をふんだんに盛り込んで計算を開始した。
「Night?」
「少し静かにしろ。可能性を考慮して計算しているんだ」
「そんなこと言ってる場合じゃないよね。早くなんとかしないと……」
「計算をする気はない。可能性を考慮して、最善を尽くすだけだ」
「その最善が無駄時間なんだよ!」
アキラは怒鳴りつけてしまった。
けれどNightはまるで動じず、目を閉じて考え事をしていた。
そんなNightを放っておくことはできず、アキラはたじろいでしまう。
「ど、どうしたら……」
「考える必要はないでしょ? アキラはNightをお願いね」
「そうです。アキラさんはNightさんをお願いします。ベル、今日のところはいつも通りで」
「いつも通りね。わかったわ、やってあげる!」
ベルの雰囲気が変わった。
そよいでいた大人びた風が急に荒々しくなったみたいに解き放たれる。
アキラは敏感に反応したところ、ベルが弓を薙刀のように構えていた。
「ベ、ベル?」
「あはは、何だか雰囲気が違うね」
「まあね。今の私は、いつものソロの私だから、早く倒しちゃうわよ」
人は誰しも二面性を持っている。
ベル本人曰く、こっちが本来にベルだ。
大人びていると感じていたのは集団に溶け込むための装いの一つで、解き放ったソロ状態のベルは何だかかっこよかった。
「正直こっちの方が都合いいんだけど、流石に怒れて止められる役がいないとダメでしょ? それがこのギルドの不安要素の一つだって思ってたのよね。そうしたら全然慣れないけど、今まで二面性を演じてた。だから仕方なく私がそのポジションにいたけど、今だけは暴れさせてもらうわね」
「暴れていいよいいよ。それじゃあ雷斬、ベル。この鉄くず、スクラップにしちゃうよー!」
「「ええ」」
珍しいフェルノの合図で3人は飛び出した。
いつも通り単純明快に暴れ散らかすフェルノに加えて冷静さを乱さない雷斬。
そこにいつもとは雰囲気が異なるベルが弓を薙刀のように叩きつける様子は爽快だった。
「凄い。みんな本当に凄い……」
アキラはNightの肩を抱きながら、少し距離を取った。
その目に映るのは黒鉄の巨人を淡々と破壊している。
まずはフェルノはインフェルノにちなんだ通り、炎に燃える拳で黒鉄の巨人の装甲をボコボコの叩き壊している。
装甲の鉄板がどんどん凹み、攻撃が加えられる前に炎を燃やして溶かしている。
雷斬は駆動系狙いだった。
腕の関節部や脚の関節部を刀の先を使って的確に切り裂いている。
全身を青白い光で覆いながら、超高速で移動して剣を突き立てていた。
何本もの配線が腕の関節部から飛び出しているのが、アキラの目には飛び込んで来る。
だが何よりも目を引くのはベルの動きだ。
いつもの冷静で判断を的確にしている状態。いわゆる弓術フォームの時は集団に溶け込むために常に心を留めている。
だが今のベルの動きはまるで異なっていた。
【風読み】を使って風を巻き起こしているが、荒々しくて痛々しい。
しかしその動きはいつもの冷静さを合わせながらも何処から乱雑で乱暴に近い印象もある。だが的確に黒鉄の巨人を破壊しようと、荒々しく薙ぎ打つ。これがソロの時の、本来のベルの感情を解き放った薙刀フォームだった。
それは初見であった日のベルの雰囲気に似ている。会ったこともない私たちに初めて出会ったあの日の初々しさに近い。
「そーのっ、そらっ!」
「ベル、いつもの動きですね」
「そうでしょ。ここから一気に畳みかけるわよ」
「そうですね。フェルノさんも合わせていただけますか?」
「もちろんいいよ!」
雷斬の掛け声で同時に攻めるらしい。
足腰のバネを使って飛びかかると、黒鉄の巨人の動きが若干変わった。
アキラは離れていたのでその動きがよくわかり、3人に伝える。
「みんな避けて、何か来るよ!」
それとほぼ同時に黒鉄の巨人の右腕が外れた。
手首の関節から拳だけが吹き飛んできた。
「あ、危ないねー」
「そうですね。危く直撃を食らうところでした」
「ナイス判断ね。貴女を後ろにおいてよかったわ」
3人は無事窮地を脱していた。否、脱してはいない。
地面に転がる拳は鎖で繋がれていて、モーニングスターのようにグルグルと振り回されている。
今にも空洞内が粉々になりそうな勢いで叩きつけられていて、流石のベルも一瞬大人びた冷静さを醸し出す。
「みんな、一旦下がるわ。Nightが作戦を思いつくまで退避よ」
「えっ!? ここまで来て退避なの」
「またなにも始まっていないでしょ? 雷斬も気づいているわよね」
「そうですね。ベルがこの数ヶ月無理をしてでも大人びた性格を演出していた甲斐がありましたね」
「はい、そこは言わないでね。でも後ろで冷静に見てたらわかったわ。このパーティーは無茶しすぎるのよね」
ベルに叱られてしまい、仕方なく一旦後方に下がることにした。
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