VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

文字の大きさ
183 / 617

◇183 赤い光が迸る

しおりを挟む
 アキラたちが拳を飛ばさないように封じた手段は、実に簡単なものだった。

 “鎖を使って鎖を使えなくする”

 言ってしまえば、この一言に尽きる。
 しかしそれに至るまでの布石は着実に踏んでいて、最後にNightの考えがまとまった末に生まれたものだった。

「あの強烈な拳を封じるなら、そもそも拳を使わせなければいい。拳を破壊するにはあの鎖は邪魔だ。壊すことは非常に困難になる」
「それじゃあどうするの?」
「簡単だ。拳と腕とを連結している内部の鎖を使えなくすればいい。それが一番手っ取り早い」

 Nightの言い分はもっともだった。
 しかしそれをやった身になって欲しいと、アキラはしみじみ思う。
 雷斬が鎖に傷をつけ、雷の燃焼作用で細い糸口ができたに過ぎない。
 Nightだってそのことは理解しているのか、あまり芳しくない結果になったことを見て正直に悔しい想いをしていた。

「でも、これで攻撃手段は全部奪ったね」
「ああ。ここからは決めに行くぞ」

 Nightの掛け声で全員スキルを再使用する。
 ここから攻撃の手段を失った黒鉄の巨人を叩きに行くのだ。
 けれどアキラだけは何故か意識の中で、“危険”の文字が絶えず表れていた。
 この感覚は何なのか。本当に突撃しても良いのか。真偽が試される。

「みんなちょっと待って!」
「ごめんアキラ。今しかないっぽいよ」
「今しかない?」
「うん。何か嫌な音しない?」

 フェルノが不穏なことを言い始めた。
 しかし雷斬もベルも、ましてやNightでさえ今のところ異変を察知していない。
 Nightに関しては考えているのだろうが、アキラにはこの余裕が凄く歪でチクチクと突き刺さるみたいに感じた。

「今このタイミングを逃したら、多分勝ち目がなくなると思うんだ。だから一撃だけひびを入れて来るね」
「ちょっと待ってよフェルノ。もう、【灰爪】!」

 アキラは先になって飛び出したフェルノを追って飛び出す。
 その姿に雷斬たちは驚いていた。

「フェルノさん、アキラさん!」
「ちょっと、どうしてあの2人が飛び出すのよ」
「私たちも行きましょう。きっと何かお考えがあるんです」
「そうね。その可能性は高いと思うわ」

 雷斬りとベルも飛び出そうとする。
 しかしそれを止めたのはNightだった。
 何か嫌な予感がする。アキラのらしくない突発的な衝動にNightも伝染していた。

「待て、アキラのあの動き。一撃離脱の構えだ」
「一撃離脱?」
「フェルノの性格でそれはないんじゃないのかな?」
「弓術フォームになって考えてみろ。もう少し視野を広げてみるんだ」

 ベルはNightに煽られる。
 少しムカッとしたがい、言われた通り冷静になって見てみると、確かに2人の足運びがいつもに比べてぎこちない。
 まるで最初から逃げることを前提にしているようだった。

「本当だ。アキラとフェルノから全力で逃げるぞって意思が背中越しから伝わってくる」
「そうだろ。だからきっと大丈夫だ」

 口ではそう言うが、Nightはこの状況を改めて理解する。
 目で見るだけでも頭の中で考えるだけでもない。
 何か腑に落ちない気がしてならない。そうだ。どうしてこの巨人は下半身がピクリとも動かないのか。
 上半身が重いのだとすれば下半身が動かない理由にも繋がるが、下半身が潰れているわけでもない。
 だとすれば何かある。思考回路が意識を巡らせる。

 その間も、アキラたちは戦っていた。

「フェルノ、一撃離脱だよ」
「もちろんわかっているよ!」

 アキラとフェルノはタイミングを計ると、動かない脚を利用してジャンプ台に使う。
 膝の部分を使ってGAMEならではの脚力を活かして高く跳んだ。
 すると、アキラの【灰爪】と竜化したフェルノの拳が黒鉄の巨人の胸部分を強く叩いた。

「そりゃぁ!」
「せーのっ」

 お互の拳が黒鉄の巨人の胸板を貫く。
 薄っすらとだがひびが入り、どうやらダメージはあったのだろう。
 しかし最初からHPバーが表示されていないことに今更だが気が付き、これでもダメなのではと唇を噛み締める。

「はぁはぁ……ははは。これでもダメなんだ」
「フェルノ離脱するよ」

 アキラとフェルノは急いでその場から離れることにした。
 黒鉄の巨人の日々の入った胸板が赤く発光している
 白い湯気のようなものを噴き出しながら、徐々に装甲が高温になっていた。

「熱い。これって、ヤバいよね!」
「だから早く逃げるよ。なんだか危惧していたことが起こっている気がする……」

 アキラはフェルノの服の襟を掴んだ。
 そのまま【月跳】を使って飛び出そうとしたが、黒鉄の巨人が高温のため足を付けることができない。
 そこで毒ナマズから手に入れた【泥腕】で無理やり足場を作ると、【月跳】で一気に逃げ去る。

 キュィィィィィィィィィィィィィィィン!
 
 すると突然黒鉄の巨人が金切り音と熱を発し始めた。
 目の部分や腕周りの線が急に赤く発光する。
 明らかに危険だ。アキラとフェルノは全身を悪寒が駆け抜ける。
 このままじゃマズい。そう思った時、急に黒鉄の巨人の胸部部から赤い熱線が放たれた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり
ファンタジー
【書籍化!】第17回ファンタジー小説大賞『癒し系ほっこり賞』受賞作です。 (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です) ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様でも公開しております。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

処理中です...