220 / 478
◇219 野菜を収穫しようの回1
しおりを挟む
アキラとフェルノはNightを連れて依頼を引き受けていました。
今回の依頼は公式から提示されていたポイントが貰えるもので、誰もやるプレイヤーがいないので代わりに引き受けることにしたのです。
「それで何の依頼を引き受けたんだ」
なにも知らされていないので、Nightはアキラに聞いた。
するとアキラとフェルノは言葉を合わせると、「せーのっ」の合図で教えた。
「「野菜を収穫するんだよ」」
そう答えると、Nightは足を止めた。
急に止まったのでアキラたちも急ブレーキをかけると、Nightは踵を返して歩き出した。
アキラは慌てて肩を抑え込んで止める。
「ちょっと、何処に行くの!」
「何処にって帰るんだ」
「帰る!? ダメだよ、帰ったら」
「何故だ。私は今朝急に起こされたんだぞ」
Nightは超不機嫌だった。
朝から目の下には隈ができていて、瞼が重たそうにしている。
昨日夜更かしをしたせいで、Nightはとんでもなく辛そうだ。
だけどそれは自業自得。アキラたちには何も関係ない話だった。
なのでアキラとフェルノは別に悪びれることもなくNightを引っ張る。
黒いマントが地面を擦れ、フェルノの圧倒的パワーで連れて行かれる。
今日のNightは力が入っていない。
よっぽど夜更かしが響いているのか、いつものNightらしくない。
「ふはぁー。眠い」
「夜更かしのし過ぎは良くないよ?」
「まさかとは思うけど、Nightが勉強とか……?」
「そんなわけないだろ」
「「だよね」」
アキラとフェルノは安心した。
Nightは不貞腐れてしまったが、一回見ただけで覚えてしまうNightの記憶力とマルチタスクに掛かればこれぐらいは余裕だと知っていたからだ。
「それで何の野菜を収穫するんだ?」
「えーっと、何だっけアキラ?」
「確かマンドラゴラだった気がするよ」
「マンドラゴラだと? お前たち、耳栓は持ってきているのか?」
Nightはアキラたちを睨みつける。
耳栓を持ってきたのかどうか尋ねると、「ないよ」と答えた。
Nightはインベントリから耳栓を取り出すと、アキラたちに差し出す。
「お前たち、コイツを詰めろ。下には布を巻いておけ」
「如何して? マンドラゴラって野菜じゃないの?」
「野菜かもしれないが植物の一種だ。マンドラゴラは耳栓無しでは収穫できないんだぞ」
初耳だった。Nightを連れてきて正解とホッと一安心する。
「それでお前たちはマンドラゴラが何か知っているのか?」
「知らないよ!」
「あっ、前にお母さんが持って帰ってきた!」
「それはリアルのマンドレイクだな。マンドラゴラとも呼ばれているが……まあ見た方が早いだろ」
今から楽しみでわくわくした。
そんなアキラたちが向かったのは、農家の畑とは一線を画す、整備もほとんどされていないような荒れ地だった。
こんなところに本当にマンドラゴラがあるのか。
そう思ったのも束の間。地面に看板が突き刺さっていた。
「『この先マンドラゴラの畑。入る時は耳栓を置くまで付けること』だって」
「ここが畑何だな。早く行くぞ」
Nightは早く終わらせたいのか、スタスタと畑に入っていく。
お互い耳栓を置くまで差し直すと、畑に向かった。
畑は整備されていた。
先程までの荒れ地とはまた違って、ふかふかの耕された土ができている。
畝もかなり高く積まれていて、そこには大根の葉っぱのようなものが覗いていた。
もしかしてこれがマンドラゴラ? アキラは近づいて引き抜こうとしたが、Nightに注意を受ける。
「お前、いい加減にするなよ」
「えっ、何て?……もう一回言って」
「いい加減に抜くなよ。最悪死ぬぞ」
「ちょっと怖いこと言わないでよ!」
「いいかマンドラゴラには強い幻覚性を引き起こす効果がある。土から引き抜かれると急激な寒さでマンドラゴラが叫び出して、その声を一度聞けば精神が狂い死ぬぞ」
とんでもないことを言われて、アキラの足が竦む。
つまりスピード勝負ってことだが、アキラは再度耳栓を付け直すと、ごくりと喉を鳴らした。
「スピード勝負。抜いたら真っ先に植木鉢に……よしっ!」
アキラは土の中からマンドラゴラを引き抜いた。
すると茶色くて高麗人参のような姿をした何かが出て来る。
顔のようなものも付いていて、まるで埴輪だ。
「は、埴輪?」
顔を見た瞬間、一瞬ぽけーっとしてしまったが、急にマンドラゴラは口元をパクパクすると大泣きを始めた。
耳栓を貫通する泣き加減にアキラは目を瞑って、急いで持ってきた植木鉢の中に突っ込む。
「おりゃぁ!」
先端が鋭くマンドラゴラはモグラのような土に潜るスピードで植木鉢の中にすっぽり収まる。
埴輪のような黒い口と二つの丸い目が特徴的で、こう見ると観賞用のおもちゃのようだった。
土の中に戻ると体の半分が埋まり、ぼーっとしている顔が可愛い。
何か口にするわけでもなく、手のような根と一緒に植木鉢の中でこじんまりとしていた。
「何だか可愛いね」
「そうだねー。癒されるねー」
それにしても耳栓を貫通するとは恐れ入った。
これを後何回繰り返せばいいのか。
アキラとフェルノはポイント稼ぎよりも精神の崩壊を危惧するのだった。
今回の依頼は公式から提示されていたポイントが貰えるもので、誰もやるプレイヤーがいないので代わりに引き受けることにしたのです。
「それで何の依頼を引き受けたんだ」
なにも知らされていないので、Nightはアキラに聞いた。
するとアキラとフェルノは言葉を合わせると、「せーのっ」の合図で教えた。
「「野菜を収穫するんだよ」」
そう答えると、Nightは足を止めた。
急に止まったのでアキラたちも急ブレーキをかけると、Nightは踵を返して歩き出した。
アキラは慌てて肩を抑え込んで止める。
「ちょっと、何処に行くの!」
「何処にって帰るんだ」
「帰る!? ダメだよ、帰ったら」
「何故だ。私は今朝急に起こされたんだぞ」
Nightは超不機嫌だった。
朝から目の下には隈ができていて、瞼が重たそうにしている。
昨日夜更かしをしたせいで、Nightはとんでもなく辛そうだ。
だけどそれは自業自得。アキラたちには何も関係ない話だった。
なのでアキラとフェルノは別に悪びれることもなくNightを引っ張る。
黒いマントが地面を擦れ、フェルノの圧倒的パワーで連れて行かれる。
今日のNightは力が入っていない。
よっぽど夜更かしが響いているのか、いつものNightらしくない。
「ふはぁー。眠い」
「夜更かしのし過ぎは良くないよ?」
「まさかとは思うけど、Nightが勉強とか……?」
「そんなわけないだろ」
「「だよね」」
アキラとフェルノは安心した。
Nightは不貞腐れてしまったが、一回見ただけで覚えてしまうNightの記憶力とマルチタスクに掛かればこれぐらいは余裕だと知っていたからだ。
「それで何の野菜を収穫するんだ?」
「えーっと、何だっけアキラ?」
「確かマンドラゴラだった気がするよ」
「マンドラゴラだと? お前たち、耳栓は持ってきているのか?」
Nightはアキラたちを睨みつける。
耳栓を持ってきたのかどうか尋ねると、「ないよ」と答えた。
Nightはインベントリから耳栓を取り出すと、アキラたちに差し出す。
「お前たち、コイツを詰めろ。下には布を巻いておけ」
「如何して? マンドラゴラって野菜じゃないの?」
「野菜かもしれないが植物の一種だ。マンドラゴラは耳栓無しでは収穫できないんだぞ」
初耳だった。Nightを連れてきて正解とホッと一安心する。
「それでお前たちはマンドラゴラが何か知っているのか?」
「知らないよ!」
「あっ、前にお母さんが持って帰ってきた!」
「それはリアルのマンドレイクだな。マンドラゴラとも呼ばれているが……まあ見た方が早いだろ」
今から楽しみでわくわくした。
そんなアキラたちが向かったのは、農家の畑とは一線を画す、整備もほとんどされていないような荒れ地だった。
こんなところに本当にマンドラゴラがあるのか。
そう思ったのも束の間。地面に看板が突き刺さっていた。
「『この先マンドラゴラの畑。入る時は耳栓を置くまで付けること』だって」
「ここが畑何だな。早く行くぞ」
Nightは早く終わらせたいのか、スタスタと畑に入っていく。
お互い耳栓を置くまで差し直すと、畑に向かった。
畑は整備されていた。
先程までの荒れ地とはまた違って、ふかふかの耕された土ができている。
畝もかなり高く積まれていて、そこには大根の葉っぱのようなものが覗いていた。
もしかしてこれがマンドラゴラ? アキラは近づいて引き抜こうとしたが、Nightに注意を受ける。
「お前、いい加減にするなよ」
「えっ、何て?……もう一回言って」
「いい加減に抜くなよ。最悪死ぬぞ」
「ちょっと怖いこと言わないでよ!」
「いいかマンドラゴラには強い幻覚性を引き起こす効果がある。土から引き抜かれると急激な寒さでマンドラゴラが叫び出して、その声を一度聞けば精神が狂い死ぬぞ」
とんでもないことを言われて、アキラの足が竦む。
つまりスピード勝負ってことだが、アキラは再度耳栓を付け直すと、ごくりと喉を鳴らした。
「スピード勝負。抜いたら真っ先に植木鉢に……よしっ!」
アキラは土の中からマンドラゴラを引き抜いた。
すると茶色くて高麗人参のような姿をした何かが出て来る。
顔のようなものも付いていて、まるで埴輪だ。
「は、埴輪?」
顔を見た瞬間、一瞬ぽけーっとしてしまったが、急にマンドラゴラは口元をパクパクすると大泣きを始めた。
耳栓を貫通する泣き加減にアキラは目を瞑って、急いで持ってきた植木鉢の中に突っ込む。
「おりゃぁ!」
先端が鋭くマンドラゴラはモグラのような土に潜るスピードで植木鉢の中にすっぽり収まる。
埴輪のような黒い口と二つの丸い目が特徴的で、こう見ると観賞用のおもちゃのようだった。
土の中に戻ると体の半分が埋まり、ぼーっとしている顔が可愛い。
何か口にするわけでもなく、手のような根と一緒に植木鉢の中でこじんまりとしていた。
「何だか可愛いね」
「そうだねー。癒されるねー」
それにしても耳栓を貫通するとは恐れ入った。
これを後何回繰り返せばいいのか。
アキラとフェルノはポイント稼ぎよりも精神の崩壊を危惧するのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
175
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる