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◇247 ハウリングボアー
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突如として現れた体長五メートルは誇るであろう大型の猪に、集まっていたプレイヤーの大多数が武器を手放してしまった。
もちろん放したくて武器を手放したわけじゃない。
大型の猪は突然叫び出すと、爆音を響かせたのだ。
その音量は凄まじく、大量の木の葉が舞い落ちた。
見ればもみの木の枝が振動でゆらゆらしている。
とてもじゃないがまともなモンスターじゃないと誰もが思った。
「な、何なんだよ。この猪は!」
「ハウリングボアー? それじゃあ今のが威嚇ってこと?」
あまりの威嚇の強さに慄く男は耳を塞いでいた。
冷静に分析する女はワンドを構えたまま猪の名前を読み上げる。
確かにと納得した女だったが、次の瞬間猪に体当たりされた。
強靭な足腰で助走をつけ猪突猛進に突っ込まれた。
女の体がぐしゃりとくの字に折れ曲がると、急所に入ったのか一瞬で消滅した。HPが無くなった証拠で、その姿を見た他のプレイヤーたちは怯えた。
「お、おいおい嘘だろ。嘘だよな!?」
「今の一瞬であっさりやられちゃうなんて。しかもハウリングボアーのレベルを見て!」
「レベル42!? 嘘だろ、そんな高いレベル聞いた事ねえよ!」
威嚇の影響で未だに硬直が続くプレイヤーたち。
その間もハウリングボアーはまるで作業のように、動けないまま硬直し逃げられないプレイヤーたちを跳ね飛ばしていく。
その圧倒的なレベル差とパワーの前に、次は自分なのではと恐怖した。
しかしハウリングボアーだけが自由に動き回っているわけではない。
そこに現れたのはアキラとフェルノだった。
「【キメラハント】:【甲蟲】!」
「【吸炎竜化】!」
アキラは【甲蟲】で武装した籠手を使ってパンチを繰り出す。
強烈な拳の一撃がハウリングボアーにダメージを与えた。
一方のフェルノも負けじと、【吸炎竜化】で炎を噴き上げ、ハウリングボアーの牙を抑え込む。
圧倒的なレベル差? そんなもの二人にとっては余裕以外の何物でもなかった。
「あれ? いつも戦っているモンスターよりも弱い?」
「ほんとだー。私達よりも全然レベル低いよー」
「しかも名前ハウリングボアじゃなくてボアーなんだ。何で伸ばしているのかな?」
「さあねー。でもさ、如何して私たちは威嚇を食らったのにこんなに動けるのかな?」
「うーん。もしかしてレベル差とか?」
「それだけだと思う? 私さ、慣れだと思うんだよね」
「慣れ?」
アキラは首を捻り、フェルノに尋ねる。
「うん。ほら、テニスとか野球とかのボールって滅茶苦茶速いでしょ? でもあれって練習を積んだりしっかりと目で追ってたら自然と慣れて来て打ち返せるようになる。そういう仕組みなわけ」
「つまり目が速い球に慣れて来るってことだよね。それとこれって……もしかして、私たちは強めのモンスターばかり相手にしてたからこのくらいのモンスターはもう怖くないってこと?」
「多分ね。脅威レベルが格段に下がっていると思うんだぁー」
それはそれで悪いことをした気持ちになる。
アキラはせっかく出てきてくれたモンスターを殴り飛ばし、どんどんHPを削っていく。
レベルの差もかなり開いていて、少しだけ余裕が出てきた。
「でも気を抜いたらいつ反撃されるかわからないからね。私たちが強いモンスターたちを倒してきたみたいに、コイツらも反撃して来る……うわぁ!」
フェルノの体が持ち上げられた。
急に宙に浮き、ハウリングボアーによって投げ飛ばされる。
空中で不安定な体勢になったフェルノ。
落下地点にはハウリングボアーが駆け込んでくる。
このままじゃマズい。そう思った瞬間、体を半捻りした。落下地点を自分の手で変える作戦だ。
「よっと!」
見事に着地したフェルノ。
新体操選手が拍手を送るような綺麗で高得点の着地を決め、ハウリングボアーの牙を再度抑え込む。
「いや、今のは油断したよ。でももう油断してあげないからね」
そう言いながらフェルノは炎をたぎらせた。
牙に直接触れながらじっくり炙って逃げられないようにする。
熱さのあまりに逃げたいハウリングボアーだが、フェルノの腰を落とした踏ん張りには敵わなかった。
牙を熱しているせいか、直接的なダメージはほとんど入らない。
だけどハウリングボアーはいくら足搔いても逃げ出せないし抜け出せないので、体をプルプル震わせていた。
「今だよアキラ! 渾身の一撃を叩き込んじゃえ!」
フェルノはあくまでも囮でタンクだ。
トドメを決めるのは今回はアキラのようで、勢いよく助走をつけたフェルノはハウリングボアーの頭上に躍り出ると、脳天を貫く渾身のパンチを食らわせた。
「これで終わりだぁ!」
何かそれっぽい言葉をお腹から吐き出し、見事にハウリングボアーを倒して見せた。
経験値はしょっぱくて、報酬もあまり美味しくない。
だけど二人は達成感に包まれていた。
その場にいた他のプレイヤーたちはアキラとフェルノの圧倒的な連携に言葉を失い、称賛の拍手を送り続けるのだった。
「凄えよ、何だよ今の連携」
「これが継ぎ接ぎの実力か」
「助かったぁー。本当にありがとう……ううっ、怖かったよぉー」
「うぉぉぉぉぉ俺もやってやんぜぇぇぇぇぇ!」
アキラとフェルノは気恥ずかしかった。
頬が若干赤くなり、照れているのが雷斬とベルには伝わった。
もちろん放したくて武器を手放したわけじゃない。
大型の猪は突然叫び出すと、爆音を響かせたのだ。
その音量は凄まじく、大量の木の葉が舞い落ちた。
見ればもみの木の枝が振動でゆらゆらしている。
とてもじゃないがまともなモンスターじゃないと誰もが思った。
「な、何なんだよ。この猪は!」
「ハウリングボアー? それじゃあ今のが威嚇ってこと?」
あまりの威嚇の強さに慄く男は耳を塞いでいた。
冷静に分析する女はワンドを構えたまま猪の名前を読み上げる。
確かにと納得した女だったが、次の瞬間猪に体当たりされた。
強靭な足腰で助走をつけ猪突猛進に突っ込まれた。
女の体がぐしゃりとくの字に折れ曲がると、急所に入ったのか一瞬で消滅した。HPが無くなった証拠で、その姿を見た他のプレイヤーたちは怯えた。
「お、おいおい嘘だろ。嘘だよな!?」
「今の一瞬であっさりやられちゃうなんて。しかもハウリングボアーのレベルを見て!」
「レベル42!? 嘘だろ、そんな高いレベル聞いた事ねえよ!」
威嚇の影響で未だに硬直が続くプレイヤーたち。
その間もハウリングボアーはまるで作業のように、動けないまま硬直し逃げられないプレイヤーたちを跳ね飛ばしていく。
その圧倒的なレベル差とパワーの前に、次は自分なのではと恐怖した。
しかしハウリングボアーだけが自由に動き回っているわけではない。
そこに現れたのはアキラとフェルノだった。
「【キメラハント】:【甲蟲】!」
「【吸炎竜化】!」
アキラは【甲蟲】で武装した籠手を使ってパンチを繰り出す。
強烈な拳の一撃がハウリングボアーにダメージを与えた。
一方のフェルノも負けじと、【吸炎竜化】で炎を噴き上げ、ハウリングボアーの牙を抑え込む。
圧倒的なレベル差? そんなもの二人にとっては余裕以外の何物でもなかった。
「あれ? いつも戦っているモンスターよりも弱い?」
「ほんとだー。私達よりも全然レベル低いよー」
「しかも名前ハウリングボアじゃなくてボアーなんだ。何で伸ばしているのかな?」
「さあねー。でもさ、如何して私たちは威嚇を食らったのにこんなに動けるのかな?」
「うーん。もしかしてレベル差とか?」
「それだけだと思う? 私さ、慣れだと思うんだよね」
「慣れ?」
アキラは首を捻り、フェルノに尋ねる。
「うん。ほら、テニスとか野球とかのボールって滅茶苦茶速いでしょ? でもあれって練習を積んだりしっかりと目で追ってたら自然と慣れて来て打ち返せるようになる。そういう仕組みなわけ」
「つまり目が速い球に慣れて来るってことだよね。それとこれって……もしかして、私たちは強めのモンスターばかり相手にしてたからこのくらいのモンスターはもう怖くないってこと?」
「多分ね。脅威レベルが格段に下がっていると思うんだぁー」
それはそれで悪いことをした気持ちになる。
アキラはせっかく出てきてくれたモンスターを殴り飛ばし、どんどんHPを削っていく。
レベルの差もかなり開いていて、少しだけ余裕が出てきた。
「でも気を抜いたらいつ反撃されるかわからないからね。私たちが強いモンスターたちを倒してきたみたいに、コイツらも反撃して来る……うわぁ!」
フェルノの体が持ち上げられた。
急に宙に浮き、ハウリングボアーによって投げ飛ばされる。
空中で不安定な体勢になったフェルノ。
落下地点にはハウリングボアーが駆け込んでくる。
このままじゃマズい。そう思った瞬間、体を半捻りした。落下地点を自分の手で変える作戦だ。
「よっと!」
見事に着地したフェルノ。
新体操選手が拍手を送るような綺麗で高得点の着地を決め、ハウリングボアーの牙を再度抑え込む。
「いや、今のは油断したよ。でももう油断してあげないからね」
そう言いながらフェルノは炎をたぎらせた。
牙に直接触れながらじっくり炙って逃げられないようにする。
熱さのあまりに逃げたいハウリングボアーだが、フェルノの腰を落とした踏ん張りには敵わなかった。
牙を熱しているせいか、直接的なダメージはほとんど入らない。
だけどハウリングボアーはいくら足搔いても逃げ出せないし抜け出せないので、体をプルプル震わせていた。
「今だよアキラ! 渾身の一撃を叩き込んじゃえ!」
フェルノはあくまでも囮でタンクだ。
トドメを決めるのは今回はアキラのようで、勢いよく助走をつけたフェルノはハウリングボアーの頭上に躍り出ると、脳天を貫く渾身のパンチを食らわせた。
「これで終わりだぁ!」
何かそれっぽい言葉をお腹から吐き出し、見事にハウリングボアーを倒して見せた。
経験値はしょっぱくて、報酬もあまり美味しくない。
だけど二人は達成感に包まれていた。
その場にいた他のプレイヤーたちはアキラとフェルノの圧倒的な連携に言葉を失い、称賛の拍手を送り続けるのだった。
「凄えよ、何だよ今の連携」
「これが継ぎ接ぎの実力か」
「助かったぁー。本当にありがとう……ううっ、怖かったよぉー」
「うぉぉぉぉぉ俺もやってやんぜぇぇぇぇぇ!」
アキラとフェルノは気恥ずかしかった。
頬が若干赤くなり、照れているのが雷斬とベルには伝わった。
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