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◇248 いよいよクリスマスイベントへ

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 アキラとフェルノはいつも通りモンスターを倒した。
 しかし他のプレイヤーたちは二人に勝算を贈る。

「マジで助かったよ。流石はキメラさんだ」
「キメラさん……ああ、はい」

 無精髭を生やした見た目だけだとアキラよりもずっと強そうな人がアキラに頭を下げた。
 よっぽどハウリングボアーが怖かったのか、見た目だけではどんな人か判断できないもので、アキラは褒められて謙遜した。

「私たちは大したことしてないですよ。ねっ、フェルノ」
「そうそう。いつも通り倒しただけだよねー」

 頭の上で腕を組み、拍子抜けした面構えを浮かべる。
 もっと強いモンスターを期待していたのか、腹三分目くらいの感覚でいた。

「凄いですね……あのモンスターを大したことないなんて」
「何だか私たちが弱いみたいよね」
「そういうことを言っているわけではないと思いますよ。適材適所と言うものがあるんです」

 眼鏡を掛けた青年が言った通り、適材適所がある。
 モンスターと戦わなくても今の状況で間違っているものは一つもない。
 
 いつも通りモンスターを倒した。マルチに活動している継ぎ接パッチワークぎの絆・フレンズならでは何は変わらない。
だからアキラたちが“倒した”ことが凄いのではなく、強敵にも戦える“精神力”と“勇気”に称賛を贈っていた。

「そうですよ皆さん。自分たちのできることをやったらいいんです。苦手なことに挑戦するのも自由。得意なことを伸ばすのも自由。ここに居てみんなで一丸となっているんです。こんなUnionは絶対間違ってないはずです」

 アキラは思ったことを熱く語った。
 精神力が強いプレイヤーの言葉は一丸となっていた空気をさらに押し上げた。
 それは良い方向に傾く合図で、常に追い風になってくれる。

 アキラはこのGAMEで一番精神力のパラメータが高い。
 精神が高いプレイヤーの言葉は良い方向に傾く時だけ、気持ちを大きく昂らせるのだった。

「よっしゃ、とりあえずモンスターを片っ端から倒して道を開けるぞ!」
「そうね。私たちも行くわよ」
「う、うん……頑張ってみるね」

 周りに居たプレイヤーたちの折れていた心に灯が灯った。
 活気が戻って来ると、みんな持ち場に戻ってモンスターたちと戦っている。
 アキラたちも負けてら慣れないなと奮い立たせ、雷斬とベルに合流した。

「お二人ともお疲れ様です」
「お疲れ様。雷斬とベルもありがとね。みんなを知らぬ間に守っていてくれて」

 雷斬とベルはアキラとフェルノが表で暴れている間、他のプレイヤーを裏から守っていた。
 ベルの弓術と雷斬のスピードを活かした早業で、誰の目にも追えない。
 そのため目立ってはいなかったが、アキラとフェルノは気が付いていた。

「大丈夫ですよ。それにお二人の活躍は感服しました」
「そうね。上から見ていたけど、良い時間稼ぎになってたわ」

 ベルが口にしたのはもみの木の件だった。
 アキラたちが戦っていたおかげでもみの木班も無事にもみの木を根っこから掘り起こすことができたらしく、ドスン! と大きな物音を立てた。

 森の中からも見の木が一本消えた。
 大量の切り出した丸太の上に大きなもみの木が横たわっていた。

「後はコレを運ぶだけだ」
「お疲れNight。勝ったんだね」
「そっちもな。まあこっちは数の有利があったから押し切るのは楽だったが、私が向こう側ならひっくり返していたな」
「それはちょっと怖いから折れて欲しいな」
「……冗談だろ」

 Nightはクスッと微笑んだ。
 何処となく黒い一面を見た気がするが、アキラたちはNightのことをある程度知っているので特に気にしない。

「よっしゃ、後はコイツをスタットまで運び込むぞ。全員で押せぇ!」

 声を張り上げたのは切り倒す派の人だった。
 けれど今ではNightによって懐柔されてもみの木を運搬するため力を注いでいる。

 集まって来た力の強そうなプレイヤーがもみの木を押し、下に引いた丸太を足の速い人たちが運んで道を繋げる。
 途中で邪魔立てして来るモンスターは戦闘班が倒して道を切り開く。
 その繰り返しを見ていると、一致団結していて素敵だとアキラは微笑ましく思った。

「何か良いね」
「これがこのGAMEの醍醐味、Unionだからな」

 Nightも合いの手を入れ、それぞれができることに戻った。
 雷斬とフェルノはもみの木の運搬に。残りの三人はモンスター討伐と採取を頑張ってスタットを目指した。


 スタットに戻って来ると早速もみの木を立て、クリスマスツリーの原型だけでも留めることになった。
 大柄な男たちがもみの木を縄で引っ張り無理やり起こすと、土の中に根を埋める。

「オーライオーライ。少し止まれ、もう少し奥までだ。奥までもみの木を下ろせ!」

 なかなか大変そうで、アキラとフェルノも釣られて手伝おうとした。
 しかし「邪魔になるだろ」とNightに言われてしまい、黙ってクリスマスツリーができるのを待った。

「そう言えば装飾品とかしないのかな?」
「後から付けるんじゃないの? ほら、イベント限定クエストの中にあったでしょ?」

 もみの木を用意したからと言ってクリスマスツリーにはならない。
 まだ先端の星もないし、装飾品だって足りていない。
 寂しいクリスマスツリーができ上がるのを待っていると、ついに立てることができたのか、男たちがもみの木から離れた。

「よしこれでどうだ……おっし、無事に立ったな!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」

 男たちの大合唱が響き渡る。
 なんやかんや言いながら強烈な達成感と快感を味わい、いつにもなく賑やかなイベントの開始となった。

「これで始まるのかな?」
「そうだな。おっ、何か出たぞ」

 Nightは目の前にポップアウトした運営からのメッセージを読んだ。

『クエストクリア! クリスマス限定イベント:クリスマスツリーと開催の導。
 プレイヤーの皆様、クエスト達成おめでとうございます。
 今年は初めてのクリスマスイベントということで、プレイヤーやNPCの皆様の協力を測らせていただきました。その結果、無事にイベントを開催することができます。
 期間は12月25日、23:59までです。精一杯楽しみ、素敵な聖夜を贈りましょう。
 宛:運営側より P.S今からイベントスタートです!』

最後の一文を読んだ瞬間、大きな花火が上がった。
それを皮切りに和やかなムードは一変して、みんな一斉に走り始める。

「うわぁ、みんな走り出したよ。如何する、ねえねえ如何する!?」

 フェルノがうずうずしている。
 本当はこのままイベントに直行したいけれど明日のこともある。
 だからアキラは提案した。

「今日はログアウトしよっか」
「そうですね。明日も平日です」
「えー」

 フェルノがつまらなそうにしていた。
 だけど最後にはログアウトしてくれたので、イベントは明日からにお預けとなった。
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