VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

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◇273 霧の探偵(GAMEタイトルです)

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 ディスプレイに映るのは、霧のエフェクトが揺ら揺らしているGAMEだった。
 背景は全体的に暗めだが、何処となく都会の街並みがぼんやりと映っていた。
 けれど霧のせいで良く見えなかったが、これは仕様だろうと納得した。

「嘘でしょ! コレって、mist of detectiveだよね! やっぱりそうだよ、間違いない」
「急に如何したの?」
「しかも私が知らないタイトルだよ。ナンバリングの3もそうだけど、サブタイの北海道に消えた涙って何?」
「落ち着け。あくまでもコレはβ版だ」

 蒼伊はそう答えた。
 しかし明輝はピンと来ておらず、如何して烈火がはしゃいでいるのかも、蒼伊がβ版を持っているのかも分からなかった。

「烈火、落ち着いて」
「ご、ごめん。はしゃぎすぎちゃったよ!」
「如何してそんなに楽しそうなの?」
「それはね。この作品がとっても好きだからだよ。きっと明輝もハマると思うよ?」
「そ、そうなの? ねえ蒼伊……蒼伊?」

 蒼伊は珍しく固まっていた。
 耳や頬を少し赤らめていた。
 何か恥ずかしいことでもあるのかと想像するが、嬉しさの方が大きく出ていた。
 明輝にはそれが分かった。

「蒼伊如何したの? 嬉しいことでもあった?」
「なっ!? 何で分かった」
「分かるよ。だって私だよ?」
「……それは理由になってない」

 カウンターを返されてしまった。
 しかし明輝は首を捻り、冷静にGAMEの質問をした。

「ちなみにコレはどんなGAMEなの?」
「コレか? これはな、いわゆる探偵もののアクションアドベンチャーだな。主人公は二十七歳のしがない私立探偵で頭脳明晰だがやる気が無いんだ。しかしいつも面倒な事件に巻き込まれ結果として事件を解決している。これは三作目で、簡単に言えば舞台が北海道になりそこでも事件が起きるって話だ」
「へぇー」

 ちょっと面白そうだった。
 明輝は早く遊びたいと思ったが、烈火が得意げに話し出した。

「このGAMEってマイナー寄りなんだけど、累計で二十万本も売れているんだよ!」
「二十万本は凄いね」
「だよねだよね。最初は六年前でインディーズGAMEだったけど、四年前に出た二作目からは一般発売されたんだけど、GAME好きからは広く親しまれているんだ。完成度がかなり高くて、噂だとプログラミングは中学生がたった一人でしているんだって」
「凄い! 蒼伊みたいだね」
「だよねー。ってまさか!?」

 蒼伊が完全に黙っていた。
 マウスカーソルをクルクル回している辺りから気が付いていたが、よっぽど嬉しいようだ。

 態度から判ったが、蒼伊はコレを自慢したかった。
 しかし思った以上の好印象についついいつもは抑え込んでいた、普段の自分とは違う自分が湧き立ってしまったようだ。

「蒼伊?」
「まさかここまで知られているとはな。意外だった」
「私もだよー。だってこんなマイナー寄りなのに完成度の高いGAMEをほとんど一人で作ってる何てさ」
「暇だからな。それに最初は気まぐれで作ったものが、いつしかここまで成長するとは思わなかった」
「ってことは販売元の会社も?」
「まあな」

 如何やら烈火はピンと来たようだ。
 明輝は尋ねてみると、蒼伊が持っている株の子会社が売っているそうだ。
 しかもその会社は夜野家も一部噛んでいるようだ。世の中って狭いと感じた。

「まあ、夜野家が噛んでいるというよりは私が……まあいいか」

 蒼伊は何か言おうとした。
 しかしすぐに言葉を詰まらせて、自分の中だけで完結させた。
 これ以上その話を蒸し返すことはせず、GAME画面へと視線を戻した。

「とりあえずオープニングは長いから飛ばすぞ」
「えっ? 飛ばしちゃうんだ」
「当たり前だ。五分もある映像、誰が見たいんだ。そんなのPVだけで十分だろ」

 蒼伊はオープニングが始まると早速飛ばしてしまった。
 明輝は気になっていたので観たかったが、製品版が出てからにした。

「とりあえずWASDでキャラクターを動かして、マウスで回転。後はSpaceとShiftに適宜説明に出るキーを押すんだ」
「う、うん……コレって下手したら指攣るよね?」
「可能性はあるな。とりあえずコイツはβ版だ。所々に不具合が……」
「うーん、プログラム自体には不具合は無いと思うよ? 快適快適……あ、あれ?」
「如何した!?」

 明輝は何かに気が付いた。
 蒼伊は不安になったが、ディスプレイを指さすと、そこに映し出されているビルの一部が溶けていた。

「コレって不具合?」
「そうだな。3Dに不備か。報告が必要だな」

 蒼伊はスマホでメモを取っていた。
 如何やら明輝は気が付いてしまった。遊ぶためではなく、チェックのために呼ばれたようだ。

「まあいっか。楽しいもん……あれ? この建物入れないよ」
「いや、それは仕様だ」
「仕様なんだ! って、コレ何したらいいの?」

 明輝は今更気になった。
 すると蒼伊が何か操作をし始め、すると別のマップに飛べるようになった。

「とりあえず全マップのチェックだ」
「や、やっぱりそうなんだ……」

 明輝は気が付いてしまった。
 如何やら不具合のチェックが目的だった。

「ま、まあ遊べるだけ良いよね。って、烈火さん?」

 烈火は黙っていた。
 ベッドに横になり置いてあった歴史の教科書を眺めていた。漫画家と思ったけれど、進学校の教科書が気になったようだ。とは言え、全然ページが開かれていないので、「か、固い」と唸っていた。
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