VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

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◇289 鈴の音が聴こえて

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 マズいことになった。
 時間が足りないという、一番の敵が襲って来た。

「ど、如何するの?」
「如何するもこうも無いだろ」

 アキラの質問を、Nightが軽く一蹴した。
 正直な話、Nightもここまで時間が掛かるとは思ってもみなかった。

 クリスマスボアがこれほど強敵とは考えていなかったのだ。
 それにしても時間が溶けるのが早いと思ってしまった。
 
「体感で感じた時間がズレていたのか? 何が原因だ。最初は何時間かあったはずだが……不思議だ」
「これもクリスマスの奇跡でしょうか?」
「メルヘンだな」

 雷斬が悩みを解決できるように言葉を紡いだ。
 しかしNightの前では軽く気圧されてしまい、もっと根本を考え出してしまった。

 このままだと時間がもっと溶けてしまう。
 アキラがそう思うと、ピキーン! と納得のいく答えが出た。

「あれじゃない? ほら、アドレナリンがどぱどぱーってなって、脳が感じる時間の流れがズレてたんじゃない?」
「走馬灯と言うやつか……まあ、理解できるな」

 Nightが納得してくれた。
 しかし納得したからと言っても何が変わるわけではなかった。

 ここからスタットの街まで戻るにしても時間が掛かる。
 いくらここがGAMEの世界だとしてもだ。リアリティが追及されているので、全身に疲労感が残った。

「はぁはぁ……」

 雷斬とベルの息遣いが聞こえた。
 二人は相当なカロリーを消費しているようで、いくら体を絞って鍛えていると言っても限度があった。

 特に雷斬は【雷鳴】の反動が色濃く残っていた。
 炎で覆われたトンネルの中をあれだけの速度で走り抜けたんだ。
 酸素もほとんど残っておらず、一酸化炭素中毒になってもおかしくなかった。
 しかしながらGAMEに追求したリアリティを考えればやりすぎだ。

「大丈夫雷斬? ベル?」

 アキラは心配してしまう。
 すると雷斬はにこやかに微笑んで見せた。

「すみません、い、行けますよ」
「そうね。……まあ、私は大丈夫よ」

 ベルもすぐさま返答した。
 しかしアキラもフェルノもみんな無理をしていると気が付いた。

 やはり炎の壁のトンネルをくぐる荒業は危険だった。
 額や蟀谷から薄っすらと汗が滴っていた。

「仕方ないな。もう少し休むか」
「そうだね。でも時間が……ううん。私は友達の方が大事だよ」

 みんなの役に立てるとは思っていないし、助けられるほど誰も強くはなかった。
 だからアキラは体力を使い切った雷斬とベルの身を案じた。

「すみません。無理をし過ぎました」
「私も薙刀フォーム? は体力を限界まで振り絞って使い切るからダメなのよね。超短期決戦よ」

 二人とも座り込んだ。
 よっぽど疲れているようで、何時間も運動をし続けた挙句の練習の様だった。

「でもさ、このままだと色々マズいんじゃない?」
「そうだな。このまま行けば人間の深層心理に影響を及ぼして、現実に影響が出るかもしれない。だがここからスタットに戻っても、クリスマスツリーのてっぺんに如何やって飾るのか……」
「「あー」」

 問題はそこだった。
 ここから街に戻ってもクリスマスツリーに飾る方法が無かった。

「そうだよね。あんなに大きなもみの木だもんね。しかも……」
「武器は使えない。そいうことはスキルのみか……」
「それじゃあもみの木のてっぺんまで飛ぶスキルが必要だね。それじゃあ私かフェルノかな?」

 アキラとフェルノは互いに目配せした。
 「仕方ないかな」と笑っていたフェルノだが、Nightが吹き飛ばした。

「無理だ。アレだけ人が居るんだぞ。スキルを使ったとして、それで怪我人が出たら如何する? 殺人鬼レッドプレイヤーのみならまだしも、無関係のプレイヤーにまでスキルの反動が無差別に食らったら……」
「ちょっとマズいね。直接的じゃないから捕まらないと思うけど……」
「脳や精神への影響は出るだろうな」

 アキラの考えをすぐさま一蹴されてしまった。
 頭を抱えてしまい、このGAMEの難しさが出た瞬間を肌で感じた。

「えっ、それじゃあ手詰まり?」
「そんなことはないぞ。少なくともこの事実を知っている私たちは今この場でログインすれば影響は回避できるぞ」
「嘘っ!? えっ、そんなことしても良いの?」
「良くは無いだろうが、どうせ認知の外側だ。知ったことじゃない」

 Nightは悪魔の笑みを浮かべた。
 腕を組んだままどんよりとした空気で包み込み、クリスマスの雰囲気がドンドン薄暗い闇の中に落ちて行こうとしていた。

 だけどアキラは良くないと思った。
 そもそもの話、このGAMEがこんな真似をするということは、何か打開策が用意されているというわけだ。

「ちょっと待って。このイベントは運営が用意しているんだよね?」
「基本はそうだな。まあそういことだ」
「やっぱり……どんな結果でも受け入れるのなら、私は上手く行く方に賭けるよ」

 アキラは主人公的な笑みを浮かべた。
 諦めていない目でNightを見つめると、「そうだとは思った」と口走った。

「しかしこの状況で如何やって?」
「それは……これから考える」
「馬鹿か」

 普通に怒られてしまった。
 アキラは頭の中の足りない知恵たちを総結集させるが、何も思いつかない。

 そんな中、何処かからか何か聞こえてきた。
 先程耳にした鈴の音が心の穢れを払い落とし、だんだんと近づいている気にさせてくれた。
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