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◇288 気が付けば時間が無い
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何が起きたのか、アキラ本人には分からなかった。
突然【半液状化】が解除され、人間状態で地面に投げ出されたのだ。
「うわぁ! い、痛くない?」
地面に激突したはずなのに全く痛くなかった。
これもスライムになっていたおかげだと分かるのだが、何故に突然解除されたのかは、アキラにはピンと来ていなかった。
「ど、如何して……えっ?」
アキラは首を捻っていた。
するとNightが声を掛けた。
「如何したも無いだろ。【半液状化】で地面に叩きつけられてバウンドしたんだ」
「バウンド? そんなのしてないよ」
アキラの記憶には全くなかった。
しかしNightは真顔で答えた。
「いいやしていたぞ」
「そんな、それじゃあ私が覚えていないのって……」
「多分仕様だな。もともとスライム状態だとあまり目が良くない。しかも弾力のあるスライムボディだと衝撃も吸収してしまうからな。昭が覚えていないのは、飛び跳ねた面が地面に向かってだったから視界に入らなかったんだろ」
「そ、それは……うーん、難しい」
それで納得しろと言われても難しかった。
しかしNightだけではなく、フェルノまで同じことを口走った。
「でも凄く跳ねたね、スーパーボールみたいだったよ」
「何だろう、全然嬉しくない」
とは言いつつも、そのおかげで助かったのだ。
初めて手に入れたスキルが度々助けてくれるので嬉しかった。
「それはそうと、ようやく倒せたな」
「そうね。結構大変だったわね」
クリスマスボアは手強かった。
流石は季節イベント限定モンスターと思えるほどで、アキラたちも相当苦戦を強いられた。
やっぱり大きいモンスターは強い。
HPが高いので何度ダメージを与えてもキリが無かった。
「とは言えようやく手に入れられたな」
「そうだね。この赤い宝石、早速嵌め込めるかやってよっか!」
インベントリから先程手に入れた赤い宝石と、星型のアイテムを取り出した。
中途半端な形で窪みが出来ていて、アキラは雷斬が必死の思いで手に入れてくれた宝石を当てはめた。
カチャッ!
ピッタリ嵌ってくれた。
これでようやく完成したと思い、一安心するアキラとフェルノだったが、Nightは訝しい表情を浮かべていた。
「いいやまだだな」
「まだ? 何言ってるのさー、もう完成でしょー」
「これ以上何もできないわよ?」
「色味が足りない。それにお前は見せてくれたな」
「見せたって何を?」
変な意味じゃない気がした。
それだけしか分からず、アキラたちは首を捻る。
しかしNightはアキラに言った。
「釉薬の入った小瓶。アレを塗ってようやく完成だろ」
「釉薬? やっぱり関係あるのかな?」
「如何だろう? 疑ったりはしないけど、関係ないんじゃないかなー?」
アキラとフェルノが互いに目配せし合った。
流石に釉薬は違うのではないかと、今になって思い始めたのだ。
しかしNightは確信していた。
その証拠に小瓶を取り出すと、早速蓋を外した。
「ほら、見て見ろ」
「見て見ろって言われても……あれ?」
「星のマークがあるね」
フェルノが呟いた。
釉薬の入った小瓶の蓋の裏には、星のマークが描かれていた。
これを偶然と捉えるのは簡単な話だ。
しかしNightはここまでのイベントやクエストの繋がりを鑑みて、意味があると睨んでいた。
「と言うことは、この釉薬は……」
「おそらく運営が用意していたものだろうな。幾つ同系統の報酬が設定されたクエストがあったかは知らない。だが、偶然にも……いや意図的にランダムなプレイヤーに達成するように仕組まれていたとしか……そうなると如何して私たちが選ばれたんだ? これも偶然なのか、いいやもしも意図的だとすると大勢のプレイヤーに疎まれてしまうからな……難しい話だ」
「何言ってるの?」
Nightが完全に一人の世界に飛び込んでしまった。
こうなったら引っ張り出すしかないので、アキラはNightの肩を揺すった。
「おーい、Nightさーん! 早く戻ってきてー!」
顎に手を当てて考え込んでいた。
しかしアキラに思いっきり揺すられ、脳がぐわんぐわんになった。
「聞こえてる。聞こえているから止めろ」
「何だ、それなら早く言ってよ」
アキラはNightに言われて揺するのを止めた。
それから話を頭の中で勝手にまとめた。
「ふぅ。まあいい。とりあえずこれで手に入ったな」
「それじゃあ釉薬塗ってみよっか」
「もう塗ってる」
Nightがいつの間にか釉薬を塗り終わっていた。
すると木目に沿って釉薬が溶け込み、少し眩くなった。
「ちょっと輝いてる?」
「地味だな」
「地味だねー」
こんなに頑張ったのに変化の起伏が薄かった。
蟀谷をポリポリと掻きながら、如何したものかと色々考えた。
特にNightは時間を気にしていた。
「問題はここからだな」
「ここから? これ以上面倒なことが待っているの?」
ベルがげんなりしていた。
するとNightが核心を突いた。
「いいや、面倒と言うよりも……時間が足りないんだ」
「「「はいっ!?」」」
本当に時間が押していた。
このままじゃ間に合わないと悟った。
突然【半液状化】が解除され、人間状態で地面に投げ出されたのだ。
「うわぁ! い、痛くない?」
地面に激突したはずなのに全く痛くなかった。
これもスライムになっていたおかげだと分かるのだが、何故に突然解除されたのかは、アキラにはピンと来ていなかった。
「ど、如何して……えっ?」
アキラは首を捻っていた。
するとNightが声を掛けた。
「如何したも無いだろ。【半液状化】で地面に叩きつけられてバウンドしたんだ」
「バウンド? そんなのしてないよ」
アキラの記憶には全くなかった。
しかしNightは真顔で答えた。
「いいやしていたぞ」
「そんな、それじゃあ私が覚えていないのって……」
「多分仕様だな。もともとスライム状態だとあまり目が良くない。しかも弾力のあるスライムボディだと衝撃も吸収してしまうからな。昭が覚えていないのは、飛び跳ねた面が地面に向かってだったから視界に入らなかったんだろ」
「そ、それは……うーん、難しい」
それで納得しろと言われても難しかった。
しかしNightだけではなく、フェルノまで同じことを口走った。
「でも凄く跳ねたね、スーパーボールみたいだったよ」
「何だろう、全然嬉しくない」
とは言いつつも、そのおかげで助かったのだ。
初めて手に入れたスキルが度々助けてくれるので嬉しかった。
「それはそうと、ようやく倒せたな」
「そうね。結構大変だったわね」
クリスマスボアは手強かった。
流石は季節イベント限定モンスターと思えるほどで、アキラたちも相当苦戦を強いられた。
やっぱり大きいモンスターは強い。
HPが高いので何度ダメージを与えてもキリが無かった。
「とは言えようやく手に入れられたな」
「そうだね。この赤い宝石、早速嵌め込めるかやってよっか!」
インベントリから先程手に入れた赤い宝石と、星型のアイテムを取り出した。
中途半端な形で窪みが出来ていて、アキラは雷斬が必死の思いで手に入れてくれた宝石を当てはめた。
カチャッ!
ピッタリ嵌ってくれた。
これでようやく完成したと思い、一安心するアキラとフェルノだったが、Nightは訝しい表情を浮かべていた。
「いいやまだだな」
「まだ? 何言ってるのさー、もう完成でしょー」
「これ以上何もできないわよ?」
「色味が足りない。それにお前は見せてくれたな」
「見せたって何を?」
変な意味じゃない気がした。
それだけしか分からず、アキラたちは首を捻る。
しかしNightはアキラに言った。
「釉薬の入った小瓶。アレを塗ってようやく完成だろ」
「釉薬? やっぱり関係あるのかな?」
「如何だろう? 疑ったりはしないけど、関係ないんじゃないかなー?」
アキラとフェルノが互いに目配せし合った。
流石に釉薬は違うのではないかと、今になって思い始めたのだ。
しかしNightは確信していた。
その証拠に小瓶を取り出すと、早速蓋を外した。
「ほら、見て見ろ」
「見て見ろって言われても……あれ?」
「星のマークがあるね」
フェルノが呟いた。
釉薬の入った小瓶の蓋の裏には、星のマークが描かれていた。
これを偶然と捉えるのは簡単な話だ。
しかしNightはここまでのイベントやクエストの繋がりを鑑みて、意味があると睨んでいた。
「と言うことは、この釉薬は……」
「おそらく運営が用意していたものだろうな。幾つ同系統の報酬が設定されたクエストがあったかは知らない。だが、偶然にも……いや意図的にランダムなプレイヤーに達成するように仕組まれていたとしか……そうなると如何して私たちが選ばれたんだ? これも偶然なのか、いいやもしも意図的だとすると大勢のプレイヤーに疎まれてしまうからな……難しい話だ」
「何言ってるの?」
Nightが完全に一人の世界に飛び込んでしまった。
こうなったら引っ張り出すしかないので、アキラはNightの肩を揺すった。
「おーい、Nightさーん! 早く戻ってきてー!」
顎に手を当てて考え込んでいた。
しかしアキラに思いっきり揺すられ、脳がぐわんぐわんになった。
「聞こえてる。聞こえているから止めろ」
「何だ、それなら早く言ってよ」
アキラはNightに言われて揺するのを止めた。
それから話を頭の中で勝手にまとめた。
「ふぅ。まあいい。とりあえずこれで手に入ったな」
「それじゃあ釉薬塗ってみよっか」
「もう塗ってる」
Nightがいつの間にか釉薬を塗り終わっていた。
すると木目に沿って釉薬が溶け込み、少し眩くなった。
「ちょっと輝いてる?」
「地味だな」
「地味だねー」
こんなに頑張ったのに変化の起伏が薄かった。
蟀谷をポリポリと掻きながら、如何したものかと色々考えた。
特にNightは時間を気にしていた。
「問題はここからだな」
「ここから? これ以上面倒なことが待っているの?」
ベルがげんなりしていた。
するとNightが核心を突いた。
「いいや、面倒と言うよりも……時間が足りないんだ」
「「「はいっ!?」」」
本当に時間が押していた。
このままじゃ間に合わないと悟った。
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