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◇290 トレントディアと再会
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鈴の音が聞こえていた。
だんだんと近づいている気にさせてくれたが、如何やら本当に近づいているようだ。
風を振動させ、ベルの耳にはいち早く届いていた。」
目を見開くと、何処からともなく聞こえて来た鈴の音に目を見開いた。
「ちょっと静かにして。何か聞こえない?」
「何かってー?」
「鈴の音。聞こえるわよね?」
ベルが耳鳴りを疑った。
しかしアキラにも聞こえていたので、「聞こえるよ」と答えた。
「そうよね、聞こえるわよね。でもこの音何処から……」
「うーんと、多分この先かな?」
アキラは何となく指を指してみた。
だだっ広いフィールドの奥、月明かりすら届かない場所だ。
「何か居るのか?」
「ちょっと見て見るね」
アキラ片眼鏡を使って遠くのものを観察する。
すると黒い影が揺らめいて見えた。
「何か動いてる? しかも走って来てない!?」
「走ってくる? モンスターか。くっ、私も前衛をやるしかないか」
Nightが渋々剣を構えた。
けれどアキラはその必要が無いと察した。もちろん勘なので根拠はなく、アキラは武器を下ろしていた。
「待ってよNight。多分敵じゃないよ」
「敵じゃないだと。根拠はあるのか?」
「無いよ」
「無いのか。……まあいいか」
「まあいいんだ。Nightはアキラに甘いなー。まあ私も構えてないけどねー」
全員構えを解いた。すると影がスピードアップしてこちらに向かってくる。
同時に鈴の音が聞こえてきた。
シャンシャンシャーン!
シャンシャンシャーン!
はっきりと鈴の音が聞こえてきた。
心の穢れが完全に払われると、純粋な気持ちへと近づいていく。
見れば四肢で地面を蹴飛ばしていた。
後ろには大きな人工物を引いているせいか、ギーギーと地面を削る音もした。
「あれ? あの形見覚えない?」
「うん。私もそんな気がしてたんだー。しかもあの角、片方にしか生えてないけど、まさかだよねー?
「いいやそのまさからしいぞ」
アキラたちはその姿に見覚えがあった。
最初に芝刈りを頼まれた際、出会ったモンスターだ。
まさかここまで繋がっているとなると、もはや偶然を必然に変えたのではなく、予め用意された必然を疑わざるを得なくなる。
「皆さんはご存じなのですか?」
「うん。ちょっと話をすると長くなるけど……うわぁ!」
一瞬目を逸らした瞬間、ゴツンと何かがぶつかった。
見れば角の無いモンスターが頭をゴシゴシとアキラの胸へと押し当てた。
「やっぱりトレントディア。よーしよし。しかも同じ個体なのかな?」
「そうらしいな。……はぁ」
Nightがマントを舐められていた。
涎でベトベトになっていて、覇気を失っていた。
「はぁー。せっかく洗ったのに最悪だな」
「最悪って言い方は酷いでしょ? でもこの反応、間違いなくあの時のトレントディアだね」
「残念ながらな」
Nightがげんなりとした表情を浮かべた。
アキラとフェルノはこの間とほとんど同じ反応だったので、面白くて笑ってしまった。
「これは一体何が起きているのでしょうか?」
「分からないわ。でも敵意は無さそうね」
雷斬とベルは置いてけぼりを食らった。
一応話してはいたものの、ここまで懐かれているとは思わなかったらしい。
「おい、雷斬。それからベル。早く助けろ」
「「えっ? ふふっ」」
「笑い事じゃない」
Nightは座っていた。それから目も据わっていた。
ダラーンと足を伸ばしてはしたない格好をする一方で、黒いマントがトレントディアに噛み付かれてボロボロのベタベタになっていた。
その様子を見た雷斬とベルはついつい笑ってしまった。
完全におもちゃの人形にされてしまっていただけではなく、それがNightだからだ。
こんな珍しい姿のNightを見られるとは誰も思っていなかった。
「でもさー、如何してトレントディアが居るのかな?」
「そうだよね。しかも首には鈴も付いているし、赤い服も着せられているもんね」
明らかに人為的に施された跡があった。
初めて会った時はこんな格好はしておらず、クリスマス仕様へと早変わりしていた。
赤い服がまさしくサンタクロースだった。
鼻は赤くないので童謡の様にではなかったが、代わりに目印の金色の鈴を付けていた。
綺麗な鈴だった。軽く触らせてもらうと、シャンシャンシャーン! と風を切る音色が聞こえた。
癒し効果でもあるのか、心がスーッとしてくれた。
「もしかしたら今回のイベントのキーだったかもしれないな」
「如何いうこと?」
あまりに唐突だったので話に乗り遅れた。
しかしNightの視線は鈴とトレントディアの後ろに向いていた。
「この鈴の音の効果は今一番欲しいものだ。それを持っている時点で、今回のイベントがもたらす行為を導いていたらしいな」
「す、凄いね」
「凄いではない。しっかりとイベントに被せて来ているからな」
「えっ? 何があるのかなーって、あっ!」
トレントディアの後ろを見た。
すると大きなそりを引いていた。完全にサンタクロースの乗るそりだった。
だんだんと近づいている気にさせてくれたが、如何やら本当に近づいているようだ。
風を振動させ、ベルの耳にはいち早く届いていた。」
目を見開くと、何処からともなく聞こえて来た鈴の音に目を見開いた。
「ちょっと静かにして。何か聞こえない?」
「何かってー?」
「鈴の音。聞こえるわよね?」
ベルが耳鳴りを疑った。
しかしアキラにも聞こえていたので、「聞こえるよ」と答えた。
「そうよね、聞こえるわよね。でもこの音何処から……」
「うーんと、多分この先かな?」
アキラは何となく指を指してみた。
だだっ広いフィールドの奥、月明かりすら届かない場所だ。
「何か居るのか?」
「ちょっと見て見るね」
アキラ片眼鏡を使って遠くのものを観察する。
すると黒い影が揺らめいて見えた。
「何か動いてる? しかも走って来てない!?」
「走ってくる? モンスターか。くっ、私も前衛をやるしかないか」
Nightが渋々剣を構えた。
けれどアキラはその必要が無いと察した。もちろん勘なので根拠はなく、アキラは武器を下ろしていた。
「待ってよNight。多分敵じゃないよ」
「敵じゃないだと。根拠はあるのか?」
「無いよ」
「無いのか。……まあいいか」
「まあいいんだ。Nightはアキラに甘いなー。まあ私も構えてないけどねー」
全員構えを解いた。すると影がスピードアップしてこちらに向かってくる。
同時に鈴の音が聞こえてきた。
シャンシャンシャーン!
シャンシャンシャーン!
はっきりと鈴の音が聞こえてきた。
心の穢れが完全に払われると、純粋な気持ちへと近づいていく。
見れば四肢で地面を蹴飛ばしていた。
後ろには大きな人工物を引いているせいか、ギーギーと地面を削る音もした。
「あれ? あの形見覚えない?」
「うん。私もそんな気がしてたんだー。しかもあの角、片方にしか生えてないけど、まさかだよねー?
「いいやそのまさからしいぞ」
アキラたちはその姿に見覚えがあった。
最初に芝刈りを頼まれた際、出会ったモンスターだ。
まさかここまで繋がっているとなると、もはや偶然を必然に変えたのではなく、予め用意された必然を疑わざるを得なくなる。
「皆さんはご存じなのですか?」
「うん。ちょっと話をすると長くなるけど……うわぁ!」
一瞬目を逸らした瞬間、ゴツンと何かがぶつかった。
見れば角の無いモンスターが頭をゴシゴシとアキラの胸へと押し当てた。
「やっぱりトレントディア。よーしよし。しかも同じ個体なのかな?」
「そうらしいな。……はぁ」
Nightがマントを舐められていた。
涎でベトベトになっていて、覇気を失っていた。
「はぁー。せっかく洗ったのに最悪だな」
「最悪って言い方は酷いでしょ? でもこの反応、間違いなくあの時のトレントディアだね」
「残念ながらな」
Nightがげんなりとした表情を浮かべた。
アキラとフェルノはこの間とほとんど同じ反応だったので、面白くて笑ってしまった。
「これは一体何が起きているのでしょうか?」
「分からないわ。でも敵意は無さそうね」
雷斬とベルは置いてけぼりを食らった。
一応話してはいたものの、ここまで懐かれているとは思わなかったらしい。
「おい、雷斬。それからベル。早く助けろ」
「「えっ? ふふっ」」
「笑い事じゃない」
Nightは座っていた。それから目も据わっていた。
ダラーンと足を伸ばしてはしたない格好をする一方で、黒いマントがトレントディアに噛み付かれてボロボロのベタベタになっていた。
その様子を見た雷斬とベルはついつい笑ってしまった。
完全におもちゃの人形にされてしまっていただけではなく、それがNightだからだ。
こんな珍しい姿のNightを見られるとは誰も思っていなかった。
「でもさー、如何してトレントディアが居るのかな?」
「そうだよね。しかも首には鈴も付いているし、赤い服も着せられているもんね」
明らかに人為的に施された跡があった。
初めて会った時はこんな格好はしておらず、クリスマス仕様へと早変わりしていた。
赤い服がまさしくサンタクロースだった。
鼻は赤くないので童謡の様にではなかったが、代わりに目印の金色の鈴を付けていた。
綺麗な鈴だった。軽く触らせてもらうと、シャンシャンシャーン! と風を切る音色が聞こえた。
癒し効果でもあるのか、心がスーッとしてくれた。
「もしかしたら今回のイベントのキーだったかもしれないな」
「如何いうこと?」
あまりに唐突だったので話に乗り遅れた。
しかしNightの視線は鈴とトレントディアの後ろに向いていた。
「この鈴の音の効果は今一番欲しいものだ。それを持っている時点で、今回のイベントがもたらす行為を導いていたらしいな」
「す、凄いね」
「凄いではない。しっかりとイベントに被せて来ているからな」
「えっ? 何があるのかなーって、あっ!」
トレントディアの後ろを見た。
すると大きなそりを引いていた。完全にサンタクロースの乗るそりだった。
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