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◇354 アクア・トライブ・ゲート
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アキラは龍の髭を落とさないようにインベントリの中に仕舞おうとする。
しかしここではインベントリが開けないという致命的なバグを抱えており、仕方なくポーチの中に入れた。
「でも本当にありがとう、アクアドラゴン」
アキラはアクアドラゴンに再度感謝する。
するとアクアドラゴンは「しつこい」と言いたそうだった。
しかしながらこんな貴重なものを貰ってしまったので、そうなるのも無理はない。
ピチャッ!
水面を鯉が跳ねた。
アキラはここまで連れて来てくれた鯉と同じ目線になる。
膝を曲げて池に近づいた。
「貴方もありがとう。ここに案内してくれて」
鯉はまたしてもピチャッ! と跳ねる。
もしかすると「如何いたしまして」って言ってくれているのかも。
アキラはきっとそうだと思うことにして、アクアドラゴンに聞こえるくらいの声でふと呟く。
「またここに来ても良いのかな?」
「えっ?」
アクアドラゴンは怪訝そうな声を出した。
流石にダメだと直感が唸る。
ここは水神池の中でも最深部に位置する神聖な場所。いわばトップシークレット。
立ち入ってはいけないラインを超え、境界線の向こう側に来てしまっているアキラはまさに異常。異質で異端でしかなかった。
「あはは、流石にダメだよね?」
アキラは自分でも冗談交じりだった。
不意に笑ってしまったが、アクアドラゴンは思いもよらないことを言う。
「ふん。この場所が分かるんですか?」
「えっ?」
「一度しか連れて来てもらえていないのに、覚えているんですか? 覚えているわけないですよ」
アキラは不意に無言になってしまう。
まさかの返しにアキラの思考がピタリと止まったが、アクアドラゴンの鼻先が近いので息遣いから呼び起された。ここまでの道順なら、精神に刻み込まれていて、忘れるはずもない。
「うん。もちろん覚えているよ」
「そうですか。残念です」
「残念って……それにもしも道が分からなくても、貴方が連れて来てくれるよね?」
アキラは鯉に尋ねる。
するとピチャッ! ピチャッ! と何回か跳ねてくれた。
「勿論もちろん」と連呼してくれているように感じ、アキラは嬉しくなる。
「ありがとう。それじゃあ私……如何やって帰ったら良いのかな?」
さっきアクアドラゴンに帰り方は聞いていた。
だけど何だか味気ない気もする。だって後ろの森を走り抜ける以外にもあるって、アクアドラゴンは教えてくれたからだ。
「後ろの森を走り抜ければいいのでは?」
「それ以外にもあるって教えてくれたでしょ? せっかくここまで来たのに、何か無いの?」
「何かとはなんです? 私を万能な道具にでも見えますか?」
「そうは言ってないけど……なんとなく、アクアドラゴンらしい方法がある気がするんだよね」
気のせいなら良いんだけど、アキラは確信していた。
アクアドラゴンは何か隠している。
そんな気がしてならないせいか、アクアドラゴンのことをジッと観察してしまうものの、アクアドラゴンも気が気ではない。
まるで自分の心の内を見透かされてしまっているように感じて、アキラに顔を近付ける。
「何ですか?」
「いや、その……あはは、何でもないよ?」
アキラは全力で隠してみせる。
しかしアクアドラゴンは観念したのか、「はぁ」と溜息を吐く。
大きな溜息に聞こえたけれど、すぐさまアクアドラゴンは「まあ仕方ないですね」と答えた。
「アクアドラゴン……さん?」
「良いですよ。私のことを見透かそうとしただけのことはあるので、仕方なく見せてあげますよ。もっとも、貴女が龍の息吹に耐えられるかは分かりかねますがね」
何だか嫌な予感がした。
だけどアキラはここまで来て引き返すわけにもいかなくなる。
「大丈夫だよ。それにアクアドラゴンも大丈夫にしてくれるんでしょ?」
「はぁー。どれだけ信頼しているんです?」
「うーん。とってもかな? アクアドラゴンから、もう敵意とか感じないもん」
「ぬなぁっ!?」
アクアドラゴンの威厳からは絶対に出ないような声が出た。
アキラは驚いてしまうが、それもそれでなんだかほんわりした。
「それではやってみますよ。アクア・トライブ・ゲート!」
「アクア・……なに?」
アキラが首を捻ると、アクアドラゴンの後ろに渦ができていた。
まるで生き物のようにうねり、さらにはそこがまるで見えない。
何処かブラックホールのようなそれに匹敵するような恐怖を感じるが、渦の中に潜む暗闇がアキラの姿を目視すると、急速に迫り、重力云々の話ではなく、体を飲み込みに掛かる。
「ちょ、ちょっと待ってよ。うわぁ、い、息が……できてるけど、目の前が揺らぐ……揺らいで、あれ? 意識が、無くなって……ぷはっ」
アキラの意識が途絶えた。
完全にプッツリと糸が切れ、魂が微睡の中に落ちていく。
これは夢なのか。夢じゃないのか。そんなことは如何でもいい。
ただ一つ、不思議な感覚がした。
無限の宇宙に漂うアキラ。
無数の光りが回り出しているが、その中に一匹の龍が居る。
白く気高きその衣。アキラは手を伸ばそうとした瞬間、全身に流れ込んでくるエネルギーの波動を受け取った。
しかしここではインベントリが開けないという致命的なバグを抱えており、仕方なくポーチの中に入れた。
「でも本当にありがとう、アクアドラゴン」
アキラはアクアドラゴンに再度感謝する。
するとアクアドラゴンは「しつこい」と言いたそうだった。
しかしながらこんな貴重なものを貰ってしまったので、そうなるのも無理はない。
ピチャッ!
水面を鯉が跳ねた。
アキラはここまで連れて来てくれた鯉と同じ目線になる。
膝を曲げて池に近づいた。
「貴方もありがとう。ここに案内してくれて」
鯉はまたしてもピチャッ! と跳ねる。
もしかすると「如何いたしまして」って言ってくれているのかも。
アキラはきっとそうだと思うことにして、アクアドラゴンに聞こえるくらいの声でふと呟く。
「またここに来ても良いのかな?」
「えっ?」
アクアドラゴンは怪訝そうな声を出した。
流石にダメだと直感が唸る。
ここは水神池の中でも最深部に位置する神聖な場所。いわばトップシークレット。
立ち入ってはいけないラインを超え、境界線の向こう側に来てしまっているアキラはまさに異常。異質で異端でしかなかった。
「あはは、流石にダメだよね?」
アキラは自分でも冗談交じりだった。
不意に笑ってしまったが、アクアドラゴンは思いもよらないことを言う。
「ふん。この場所が分かるんですか?」
「えっ?」
「一度しか連れて来てもらえていないのに、覚えているんですか? 覚えているわけないですよ」
アキラは不意に無言になってしまう。
まさかの返しにアキラの思考がピタリと止まったが、アクアドラゴンの鼻先が近いので息遣いから呼び起された。ここまでの道順なら、精神に刻み込まれていて、忘れるはずもない。
「うん。もちろん覚えているよ」
「そうですか。残念です」
「残念って……それにもしも道が分からなくても、貴方が連れて来てくれるよね?」
アキラは鯉に尋ねる。
するとピチャッ! ピチャッ! と何回か跳ねてくれた。
「勿論もちろん」と連呼してくれているように感じ、アキラは嬉しくなる。
「ありがとう。それじゃあ私……如何やって帰ったら良いのかな?」
さっきアクアドラゴンに帰り方は聞いていた。
だけど何だか味気ない気もする。だって後ろの森を走り抜ける以外にもあるって、アクアドラゴンは教えてくれたからだ。
「後ろの森を走り抜ければいいのでは?」
「それ以外にもあるって教えてくれたでしょ? せっかくここまで来たのに、何か無いの?」
「何かとはなんです? 私を万能な道具にでも見えますか?」
「そうは言ってないけど……なんとなく、アクアドラゴンらしい方法がある気がするんだよね」
気のせいなら良いんだけど、アキラは確信していた。
アクアドラゴンは何か隠している。
そんな気がしてならないせいか、アクアドラゴンのことをジッと観察してしまうものの、アクアドラゴンも気が気ではない。
まるで自分の心の内を見透かされてしまっているように感じて、アキラに顔を近付ける。
「何ですか?」
「いや、その……あはは、何でもないよ?」
アキラは全力で隠してみせる。
しかしアクアドラゴンは観念したのか、「はぁ」と溜息を吐く。
大きな溜息に聞こえたけれど、すぐさまアクアドラゴンは「まあ仕方ないですね」と答えた。
「アクアドラゴン……さん?」
「良いですよ。私のことを見透かそうとしただけのことはあるので、仕方なく見せてあげますよ。もっとも、貴女が龍の息吹に耐えられるかは分かりかねますがね」
何だか嫌な予感がした。
だけどアキラはここまで来て引き返すわけにもいかなくなる。
「大丈夫だよ。それにアクアドラゴンも大丈夫にしてくれるんでしょ?」
「はぁー。どれだけ信頼しているんです?」
「うーん。とってもかな? アクアドラゴンから、もう敵意とか感じないもん」
「ぬなぁっ!?」
アクアドラゴンの威厳からは絶対に出ないような声が出た。
アキラは驚いてしまうが、それもそれでなんだかほんわりした。
「それではやってみますよ。アクア・トライブ・ゲート!」
「アクア・……なに?」
アキラが首を捻ると、アクアドラゴンの後ろに渦ができていた。
まるで生き物のようにうねり、さらにはそこがまるで見えない。
何処かブラックホールのようなそれに匹敵するような恐怖を感じるが、渦の中に潜む暗闇がアキラの姿を目視すると、急速に迫り、重力云々の話ではなく、体を飲み込みに掛かる。
「ちょ、ちょっと待ってよ。うわぁ、い、息が……できてるけど、目の前が揺らぐ……揺らいで、あれ? 意識が、無くなって……ぷはっ」
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完全にプッツリと糸が切れ、魂が微睡の中に落ちていく。
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