VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

文字の大きさ
356 / 617

◇354 アクア・トライブ・ゲート

しおりを挟む
 アキラは龍の髭を落とさないようにインベントリの中に仕舞おうとする。
 しかしここではインベントリが開けないという致命的なバグを抱えており、仕方なくポーチの中に入れた。

「でも本当にありがとう、アクアドラゴン」

 アキラはアクアドラゴンに再度感謝する。
 するとアクアドラゴンは「しつこい」と言いたそうだった。
 しかしながらこんな貴重なものを貰ってしまったので、そうなるのも無理はない。

 ピチャッ!

 水面を鯉が跳ねた。
 アキラはここまで連れて来てくれた鯉と同じ目線になる。
 膝を曲げて池に近づいた。

「貴方もありがとう。ここに案内してくれて」

 鯉はまたしてもピチャッ! と跳ねる。
 もしかすると「如何いたしまして」って言ってくれているのかも。
 アキラはきっとそうだと思うことにして、アクアドラゴンに聞こえるくらいの声でふと呟く。

「またここに来ても良いのかな?」
「えっ?」

 アクアドラゴンは怪訝そうな声を出した。
 流石にダメだと直感が唸る。
 ここは水神池の中でも最深部に位置する神聖な場所。いわばトップシークレット。
 立ち入ってはいけないラインを超え、境界線の向こう側に来てしまっているアキラはまさに異常。異質で異端でしかなかった。

「あはは、流石にダメだよね?」

 アキラは自分でも冗談交じりだった。
 不意に笑ってしまったが、アクアドラゴンは思いもよらないことを言う。

「ふん。この場所が分かるんですか?」
「えっ?」
「一度しか連れて来てもらえていないのに、覚えているんですか? 覚えているわけないですよ」

 アキラは不意に無言になってしまう。
 まさかの返しにアキラの思考がピタリと止まったが、アクアドラゴンの鼻先が近いので息遣いから呼び起された。ここまでの道順なら、精神に刻み込まれていて、忘れるはずもない。

「うん。もちろん覚えているよ」
「そうですか。残念です」
「残念って……それにもしも道が分からなくても、貴方が連れて来てくれるよね?」

 アキラは鯉に尋ねる。
 するとピチャッ! ピチャッ! と何回か跳ねてくれた。
 「勿論もちろん」と連呼してくれているように感じ、アキラは嬉しくなる。

「ありがとう。それじゃあ私……如何やって帰ったら良いのかな?」

 さっきアクアドラゴンに帰り方は聞いていた。
 だけど何だか味気ない気もする。だって後ろの森を走り抜ける以外にもあるって、アクアドラゴンは教えてくれたからだ。

「後ろの森を走り抜ければいいのでは?」
「それ以外にもあるって教えてくれたでしょ? せっかくここまで来たのに、何か無いの?」
「何かとはなんです? 私を万能な道具にでも見えますか?」
「そうは言ってないけど……なんとなく、アクアドラゴンらしい方法がある気がするんだよね」

 気のせいなら良いんだけど、アキラは確信していた。
 アクアドラゴンは何か隠している。
 そんな気がしてならないせいか、アクアドラゴンのことをジッと観察してしまうものの、アクアドラゴンも気が気ではない。
 まるで自分の心の内を見透かされてしまっているように感じて、アキラに顔を近付ける。

「何ですか?」
「いや、その……あはは、何でもないよ?」

 アキラは全力で隠してみせる。
 しかしアクアドラゴンは観念したのか、「はぁ」と溜息を吐く。
 大きな溜息に聞こえたけれど、すぐさまアクアドラゴンは「まあ仕方ないですね」と答えた。

「アクアドラゴン……さん?」
「良いですよ。私のことを見透かそうとしただけのことはあるので、仕方なく見せてあげますよ。もっとも、貴女が龍の息吹に耐えられるかは分かりかねますがね」

 何だか嫌な予感がした。
 だけどアキラはここまで来て引き返すわけにもいかなくなる。

「大丈夫だよ。それにアクアドラゴンも大丈夫にしてくれるんでしょ?」
「はぁー。どれだけ信頼しているんです?」
「うーん。とってもかな? アクアドラゴンから、もう敵意とか感じないもん」
「ぬなぁっ!?」

 アクアドラゴンの威厳からは絶対に出ないような声が出た。
 アキラは驚いてしまうが、それもそれでなんだかほんわりした。

「それではやってみますよ。アクア・トライブ・ゲート!」
「アクア・……なに?」

 アキラが首を捻ると、アクアドラゴンの後ろに渦ができていた。
 まるで生き物のようにうねり、さらにはそこがまるで見えない。
 何処かブラックホールのようなそれに匹敵するような恐怖を感じるが、渦の中に潜む暗闇がアキラの姿を目視すると、急速に迫り、重力云々うんぬんの話ではなく、体を飲み込みに掛かる。

「ちょ、ちょっと待ってよ。うわぁ、い、息が……できてるけど、目の前が揺らぐ……揺らいで、あれ? 意識が、無くなって……ぷはっ」

 アキラの意識が途絶えた。
 完全にプッツリと糸が切れ、魂が微睡まどろみの中に落ちていく。
 これは夢なのか。夢じゃないのか。そんなことは如何でもいい。
 ただ一つ、不思議な感覚がした。

 無限の宇宙に漂うアキラ。
 無数の光りが回り出しているが、その中に一匹の龍が居る。
 白く気高きその衣。アキラは手を伸ばそうとした瞬間、全身に流れ込んでくるエネルギーの波動を受け取った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

リストラされた42歳、確率の向こう側へ。~なぜか俺の選択肢がすべて正解になる件~

RIU
ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。 試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。 「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」 枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

処理中です...