VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

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◇370 倒せないモンスターとかアリ?

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 アキラたちは男の声にもならない、音にもならない断末魔を耳にした。
 全身から汗が流れる。
これは一体何が起きているのか。アキラたちはモチツキンと言うモンスターの悍ましさを目の当たりにした。

「なに、あのモンスター」

 アキラはポツリと唱えた。
 一体何が起きたのか。目を背けたせいもあるが、上手くは見えなかった。
 とにかく動きが速い。
 杵を振り下ろしたのは見えたものの、あまりの速さに動体視力を奪われる。

「良く見えなかったねー。でもさ、一撃でぺちゃんこ何てさー」
「そんな呑気なことを行って居られる場合じゃないだろ」
「そうだよ! あのモンスター強いよ。今なら引き返せるけど……」
「うーん。でも倒せるかもしれないよ? とりあえず、行ってみよう!」

 フェルノは素早く跳び出した。
 竜の力をその身に宿し、炎を燃やして敵を撃つ。
 まるでそう言ったヒーローのように、フェルノは両腕を赤々と染め上げた。

「【吸炎竜化】!」

 背中からも翼が生えた。
 今回のフェルノは凄まじくたぎっていて、モチツキンを叩きに向かう。

「おい、馬鹿!」

 Nightが叫んだ。流石に今回は如何意見だ。
 アキラも叫ぼうとした。しかしフェルノがそれを封じる。

「このまま黙ってたって勝てないでしょ! 突破口を見出せるのは、いつだって最前線に立てる人なんだからさ!」
「なんかそれっぽい」
「映画の見過ぎだ」

 アキラは間接的に納得してしまった。
 しかしNightは本気で止めに入る。
 けれどもう間に合わない。モチツキンが指定の位置に戻った瞬間、臼に強烈な拳が叩き込まれた。

 ズドン! ジュゥゥゥゥゥ——

「入った……えっ?」

 フェルノは声を漏らした。
 確かに拳は入ったのだ。竜の爪が炎を灯し、木製の臼に叩き込まれた。
 しかし少し傷をつける程度。まるで鋼鉄の鉄板でも殴っているみたいだった。

 もっと言えば炎を灯しているので、熱を放っていた。
 しかし臼に爪を突き立て、拳を浴びせたにもかかわらず、ジュゥゥゥゥゥと遠ざかる焼けた音を聴きつけるだけで、焦げ目何て臼には一つも入らなかった。

「な、何が起きているの!?」

 フェルノは怖くなった。
 渾身の一撃をまるでなかったみたいに知らず知らずにあしらわれ、屈辱よりも先に恐怖の方が先行する。
 一体全体、このモンスターは何なのか。
 様々な思考が巡る中、モチツキンはゆっくりと動き出す。

 ドスンドスン!

 反時計回りに回転を始めた。
 近くに居るフェルノの姿を目視で捉えると、目つきを一切変えることもなく、杵を振り上げた。

「あっ、これヤバい……」

 フェルノも死の臭いを感じ取る。
 やられたなと思った瞬間、本当に杵が振り下ろされた。
 しかも正確に、問答無用で、フェルノに頭上に落ちてきた。

「フェルノ!」

 アキラは叫んだ。親友のピンチに跳び出そうとするが、Nightがそれを阻む。
 服の裾を掴み、行かせないように力づくで止めた。

「離してよ、Night!」
「ダメだ。お前までやられる気か?」
「そんなことしないよ。フェルノを助けるの!」
「馬鹿か。お前じゃあのスピードには応えられない」

 Nightはズバリと言い切った。
 確かにアキラの【キメラハント】ではあの杵のスピードに追い付く術は無い。
 しかし、それでもだ。アキラはフェルノの身を案じて飛び出そうとした。
 けれどそれでも裾を離してくれない。

「Night!」
「落ち着け。お前の親友は、あれくらいでやられるような軟な奴に見えるのか?」
「えっ……」

 言葉の意味を理解しようとした。
 Nightの目が何も焦っていない。つまりこれはフェルノの無事を意味していた。

 目の前は土煙が上がっている。
 杵のスタンプを喰らったせいで、地面が抉れて風に巻き上げられたらしい。

 だから姿は上手く見えない。
 しかしそこから「危ないなー」とフェルノの声が聴こえてきた。

「フェルノ?」

 アキラが声を掛けてみた。
 すると背中の翼をはためかせ、土煙を吹き飛ばし、強烈な蹴りを決め込むフェルノの姿が見えた。

「そりゃぁ!」

 臼に蹴りを入れる。
 しかし罅が入る様子もなく、フェルノは「チッ!」と舌打ちを入れた。

「よっと」

 フェルノはもう一度、今度はより細かい蹴りを素早く入れ、反動を使って戻って来た。
 アキラは瞬きをする暇もなかったが、フェルノは地面に手を付いて、苦言を呈した。

「危ないなー。って言うか、まさかこんな攻撃して来るなんて、本当に速すぎて見えなかったんだけどー」

 確かにフェルノ言う通り、一瞬すぎて全く見えなかった。
 もしもこんなスピードで杵を叩きつけられたら間違いなく死。
 それ以外には結論は見当たらず、アキラはゴクリと唾を飲む。

「言っただろ。フェルノなら無事だ」
「そうみたいだけど、あんなスピードで攻撃されたらひとたまりもないよ!」
「だから防御力強化の腕輪を渡したんだ。私は前に出ないから、二人とも頼んだぞ」
「頼んだぞってなに?」

 あまりにも否定的。
 しかしNightは何やら作業を始める。
 倒せないモンスター相手に倒すための情報を探るなんてできるのか、アキラは不安になった。
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