VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

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◇427 恐るべき落ち武者

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「お邪魔しまーす」

 アキラたちは五人揃って武家屋敷の中に踏み入れた。
 半壊していた門を潜り、何故か固く閉ざされていた引き戸タイプの扉を開けると、中は完全に広い土間の玄関だった。

 当然のことながら土間は荒れていた。
 踏み固められた土が盛り返していて、茅葺屋根には隙間ができ、雨風に打たれたせいか薄っすらと腐っている。
 そのせいで日中なら太陽の陽射しを取り込んでしまうことだろう。

 更に見て回れば不思議にも柱は無事だった。
 これだけの年月が経った木造の家屋だ。少しくらいはシロアリ被害で虫食いになっているはず。
 そう思ってNightは床板や丈夫な柱に手をやると、しっかりと固定されていた。
 まるでいつでも立ち入れるように保存されていたみたいだ。

「変わったエリアだな。ここは初めから侵入者を歓迎していたようだ」
「それってさ、よっぽど自信があるってことじゃないのー?」
「恐らくはな。だが裏を返せば……」
「用意周到と言うことですね」
「おまけに今も使われているってことよ。もしかすると亡者の怨霊かしらね」

 雷斬とベルが怖いことを言った。
 けれどそう考えれば用心しないといけない。
 何処に敵が潜んでいる分からない中、ゆっくりと床板に足を乗せた。
 するとたくさんある部屋の向こう。襖が遮る先で、異様なもの音が聴こえた。

 ガシャン! ガシャン!

「どうしたアキラ?」
「うーん、今変な音が聴こえたよね?」
「変な音? 私には聴こえなかったが……」

 如何やら耳を澄ましていたアキラにだけ聴こえたらしい。
 それにしても不思議で不気味な音だった。まるで金属が擦れるような金切り音で、余計に不穏な空気が漂う。

「金属の擦れ合う音が聴こえたんだけど、なんだったのかな?」
「もしかすると、モンスターかもしれないな」
「モンスター! それじゃあ」
「バカか。止まれ、フェルノ」

 フェルノは襖を開けようとした。
 指を掛けた瞬間、Nightは軽率な行動を取るフェルノを叱った。

「な、なんで止めるのー?」
「そもそも行く方がおかしいだろ」
「そうだよ。なにがいるか分からないんだよ?」
「そうでなくても無駄に戦意を擦り減らすのは良くないことだ。一体何匹敵がいるか分からないからな。ここは十分注意を……ん?」

 Nightの言う通りだった。
 ここは雪将軍を始めとしたモンスターの巣窟。
 さっきの精神攻撃もある。どんな恐ろしいプレイヤーを貶める罠が仕掛けられているか分からないのだ。
 ここは気を引き締めつつも、ゆっくり最善の行動を取るべきだと言ったのだが、唐突に異様さが増し始めた。

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!

「な、なに!?」
「急に襖の向こうから叩くような音が聴こえるわよ」
「怪異と言うものでしょうか? 皆さん、気を付けてください。来ますよ!」

 襖の向こうから手のひらで思いっきり叩く音が聴こえた。
 ホラー映画ではよくある演出だろうが、VRで体験すると恐怖が倍増する。
 これもプレイヤーを精神的に貶める罠の一つ。そう警戒しておかなければ坩堝に嵌っていたかもしれない。

 けれどそれにしては音が幾重にも重なって聞こえた。
 しかも気が付いたのに鳴り止んでくれない。
 これは攻撃の相図かも。雷斬がそう感じて叫ぶと、襖の向こうから刀の切っ先が飛び出してきた。

「うわぁ!」

 アキラは一瞬だけ反応が遅れた。
 腕を貫かれそうになった瞬間、ベルの振り下ろした薙刀モードの弓が刀の切っ先を弾いた。縦からの攻撃に耐性が無かったのか、刀は脆く折れてしまう。けれどそれを皮切りに次々と襖の向こうから攻撃の刃が執拗に迫った。

 ブスッ! ブスッ! ブスッ! ブスッ! ブスッ! ブスッ!

 襖が突き破られると、刀の刃がお出迎えする。
 今にも貫かれる。そんな緊迫感がアキラたちの意識をホラーから一気にアクションへと引き戻した。

「【甲蟲】! そらぁ!」
「暴れてもいいんだよねー! おらぁおらぁおらぁおらぁ! そりゃぁ!」

 アキラとフェルノは拳で迎え撃った。
 次から次へと出て来る刀の刃を折りまくって行くと、一発強烈な蹴りを襖に叩き込む。
 すると襖が人間の力ではあり得ない方向に折れ曲がり、奥の部屋に隠れて攻撃して来ていた敵を露わにする。

「ほらほら! 一体誰が私たちを狙ってたんだぁー、覚悟しろ!」

 フェルノがちょっとだけカッコつけて名乗りを上げた。
 すると部屋に集まっていたのは幾人もの人型モンスター。
 けれどただの人型ではない。禍々しい瘴気を放ちながら、重たい体を揺ら揺らさせている。
 その姿はまるで落ち武者。全身を古ぼけた鎧で覆い尽くし、ボロボロに折れてしまった刀を今も握りこんでいる。

「なるほど相手は落ち武者か」
「そうですね、って返したくはないけど、まさかこのために用意されてたってこと?」
「どうだろうな。少なくともこの武家屋敷を根城にし、侵入者を迎撃する。それくらいのパターンはAIに組み込まれていてもおかしくはないだろう」
「それにしても落ち武者とは悪趣味ね」
「でも似合っているよ。雷斬もそう思うでしょ? ……雷斬?」

 アキラは雷斬に話し掛けた。相手が落ち武者と来れば盛り上がると思っていた。
 けれど実際は違い、刀を握ったまま黙り込んでいる。
 何故だろう。そう思って待っていると、唇を強く噛み締めていた。まるで悔やんでいる様子だ。

「雷斬?」

 再度声を掛けてみた。すると今度ははっきりと口を開く。
 けれど唇から奥歯を噛むに直しただけで、悔しさが滲み出ていた。

「武士の怨霊。この場に集っているのはきっと縛られているからですよね。それなら分かります。ですが、ですが、恐怖を糧にして他を圧倒し、不意打ちをして命を奪うなどと言うやり方、何処まで地に落ちたというのですか!」

 雷斬は卑怯な真似をする落ち武者たちに説教をした。
 けれどその声は決して届かない。
 ならばとばかりに刀を握り直すと、その眼光に雷の火花を灯した。

「ら、雷斬!?」
「どうした急に……」
「ああ、これは相当来てるわね」

 急なキャラ変にベルっぽさを感じた。
 けれど流石にこのピリピリ感は今まで感じたことがない。
 アキラたちが動揺する中、ベルだけは平然と見守っていた。

「それでしたら私も相手をさせていただきます。曲がった剣が私たちには通じぬことをその身に刻んであげますよ」

 なかなかカッコいい文言を吐き捨てた。
 アキラたちは構える雷斬に格好を合わせると、集まっていた武士たちの怨霊を相手取ることになるのだった。
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