1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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炎の悪魔編

568.現代の魔法使い

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 ルカは圧倒的な実力でオービエンを追い詰める。
 もはやオービエンに勝ち目は無い。
 そう思ったのはディンネルだけで、予断を許さない展開ではあった。

 ボワッ……パサッ!!

 エルフの森を侵略する炎が、一瞬乾いた。
 炎が塵になり、消えたかと思えば最後、一気に燃え広がる。
 そう、オービエンの体が燃え上がった。

「この俺を本気にさせたな……来い、俺のショーを盛り上げるために!」

 オービエンの体が炎に包まれる。
 もちろんただの炎ではない。
 地獄から直輸入して来た真っ黒な炎で、獄炎そのものを超えている。

「それ、結構危ない炎じゃない?」
「これこそが俺の本気。《超獄炎ハイ・インフェル》」
「《超獄炎》? あれ、冥府の炎ゲヘナ・フェルニティじゃなくて?」
「そのような炎、この俺には扱えない。だが、お前にはこれで充分だ!」

 如何やら使えないらしい。
 ルカは常に余裕だが、とりあえずホッと一安心。
 胸を撫で下ろすと、オービエンは真っ黒な炎を身に纏い、影が巨大な化物と化す。

「まずは小手調べだ。死んでくれるなよ」
「死ぬ気は無いよ」
「ふん、ならば死ね。《超獄炎ハイ・インフの掌炎ェル・パーム》」

 オービエンは手のひらを突き出す。
 真っ黒な邪悪な炎が噴き出ると、ルカのことを包もうとする。

「その程度か」

 ルカは自分を狙ってなかなかいい魔法を使ってくれた。
 少しだけ骨がある。
 ニヤッと笑みを浮かべるも、すぐに顰める。余裕はあるが、決して見せない。

「でも、負けないよ」

 ルカは余裕を言葉に出す。
 口角をほんの少しだけ上げると、指でパチンと鳴らす……ことはしない。
 指先で黒い炎を・・・・摘まむ・・・と、ペキンと折ってしまった。

「な、なにっ!?」
「炎を掴んだ?」

 オービエンとディンネルは、バカげた一部始終を見届けていた。
 ルカはなんの仕草も見せず、黒い炎を摘まんだ。
 そのまま紙でも折るように、ペキンと折り曲げると、黒い炎は塵になる。

「貴様、その技はなんだ?」
「なにって……指先に魔力を集めて、得意の十八番おはこを使っただけだよ?」
「十八番だと?」
「そうだよ。ごめんね、私は魔術師や魔法使いにとって、天敵なんだ。もちろん、魔獣にとってもね」

 ルカの右手の甲が光っている。
 魔力が迸ると、エルフの森から止られていた固有魔法を発動。
 【永久】の力をほんの少し、一端だけを披露すると、それで充分過ぎた。

「貴様、一体なんの魔法使いだ」
「なに言ってるの? 私は魔術師だよ」
「「そんな訳があるか!!」」

 オービエンとディンネルが同時に突っ込む。
 前から後ろから、敵味方問わずに怒られた。
 ルカは眉根を寄せ、瞼を閉じると、オービエンとディンネルは気があった。

「どうやら気があったな」
「不愉快だが、そうらしい」
「けれど意見は一致」
「当り前だ。ルカは化物、異常者だ」
「ちょっと、そんな言い方は無くないかな?」

 ルカは如何転んでもヤバい奴だった。
 蟀谷をトントンすると、頭を捻る。
 もはや魔術師で通すのは不可能。垣間見えた情報だけで、世界はひっくり返る。

「そうだね。それじゃあ正体を明かそうか」

 ルカは正体をバラすことにした。
 もちろん、ただバラすんじゃない。
 どうせなら、ディンネルもオービエンも、決して逃げられないようにする。

「確かに私は魔法使いだ。でも、それ以上でもそれ以下でもない。私は、ただ魔法に恵まれただけの人間だよ」
「「嘘付け!」」
「か、間髪入れずだね」

 ルカは正体を明かした……つもりだった。
 しかし、ディンネルもオービエンも反発する。
 ルカが魔法使いなのは分かり切ったことであり、ましてや“ただ恵まれた”では説明できなかった。

「お前の強さの正体はなんだ」
「強さの正体? さぁね」
「口を割らないつもりか……ならばその力を引き出してやる。《。《超獄炎ハイ・インフェの双嵐ル・スト―ブル》!》

 オービエンは両腕に炎を灯す。
 もちろんただの炎じゃない。
 グルグルと炎が巡り、風を巻き上げると、両腕に嵐を起こした。

「シルヴィみたいな魔法だね」
「この炎の前では、余波でさえ」
「まあ、余波は強力だけど……だから?」

 ルカは真顔で言い返すと、オービエンに近付く。
 拳を振り上げ、真っ向から叩きのめしに向かう。

「見誤ったか、ルカ!」
「いいや、全然?」

 心配するディンネルを尻目に、ルカはオービエンに拳を叩き込む。
 頬を切り裂くような熱。それから暴風。嵐と言い張るには充分だったが、ルカは一切気にしない。

「なっ!」

 ではなく、オービエンの魔法攻撃はルカに一切通用していない。
 掠める熱も風も、全部過去の情景。
 ルカに触れるや強制的に解除されると、先に拳が叩き込まれる。

「ぐはっ!」
「まあ、私に魔法は通用しないからね」

 オービエンの頑張りを無視した。
 ドスンと強烈な一発が叩き込まれると、オービエンの体は吹き飛んだ。

 地面に転がり、叩き付けられる。
 炎の悪魔にしては情けなく見えるが、ルカが強いだけなのだ。

「なんだこれは……圧倒的過ぎる」
「そうかな?」
「そうだろ。クソッ、これだと私が惨めじゃないか」
「またそれ言い始めた」

 ディンネルは変っていなかった。
 やはりルカへの見る目は変らない。
 頬を指で撫でると、倒れたオービエンを見る。膝を立て、体を揺すって立ち上がる姿に警戒すると、オービエンは嬉々とした。
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