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祝詞を奏上しよう!
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「お待ちくださあい!」
止められなかったにやけ面が、後方から聞こえた声によって一瞬にして真顔に変わる。
何だろう、誰かが走ってくる。
「やっと追い付いた!」
背の小さな、しかし私より横幅の大きい中年の男が、息も絶え絶えに声を張る。その立派な召し物と、贅肉をたくさん纏いながらよくこぞこまで走ってこられたものだ。
「何か御用で?」
ユキメが問う。
「滅相もございません! 恐れ多くも我が君、天陽大神のその御神使を、ここまでお見送りしなかった我らを、どうかお赦しくださいませ!」
男は見苦しいほどに謝罪に精を出す。しかし、この神様は誰だ?
「申し遅れました。私はこの“天の山腹"の統括神。ユイゴと申します。先ほどは我が息子、トウゴがとんだご迷惑をお掛けしました事を、ふかーっくお詫び申し上げます!」
おっさんが腰を直角に曲げている。
そうか、一応龍人族も半神。神であることに違いはないからな。それに加え大神の使いだもんね。
――――しかしあの糸目の父親か。全然似てないな。あの男前は母親譲りか?
「どうされますか、ソウ様?」
その言い方、悪役の手下が使う言葉だよユキメちゃん。
「いや、別に大丈夫ですよ。頭を上げてください」
というより、早く帰って着替えたいんだよな。まだ袴がじめじめして気持ち悪いし、お風呂にも入りたい。
「なんと寛大な。流石は大御神が選ばれた事だけはある!」
ユイゴはあごの肉をふるふると揺らしながら私の手を握る。油の中に手を入れているみたいで気持ち悪いが、それを強く振り払えるほど私の心は強くない。
「あまり、気安く触らないでいただきたい」
ナイスだよユキメ!
「こっ、これは失礼をば」
男はユキメの目力に負け、まるで熱い物を触ったかのように手を引いた。出来れば手を握られる前に止めて欲しかったものだが……。
「お見送りもここまでで結構ですので、お気遣いなさらず」
私はそう言って、そそくさと後ずさりをするが。しかし男は追い詰めてくる。
「なりません。これでは統括神としての面子が立ちませぬ」
だったら出迎えもするだろ。結局この男神は私に用があるのではなく、私の神である大神に顔を売りたい訳だ。
「結構です。行こ、ユキメ」
ぷいと振り返り、一歩足を前に出す。しかし……。
「いえいえいえ!! ここはどーか私めにお任せください」
しつこい。――――と、我慢の限界も近くなり、さすがのあたしも怒ろうかと思った矢先、すっとユキメが壁のように立ちはだかる。
「そこから一歩でも、おみ足を前に出さぬよう、かしこみ申す」
火に入る夏虫を見るかのような眼差し。最高に冷たくてイカしてる。しかしこれじゃあまるで、ヤクザの親分とその子分だ。
「で、では、失礼ながら、お見送りはここまでとさせていただきます」
それよいよい。ご苦労、ご苦労。
そうして、卑しい目線を背中に浴びながらも、私達は天の山腹を後にした。
最初は壮大に感じた境内も、まるで田舎の神社に立ち寄った様な感覚だ。
「――――さて、無事に禊祓と誓約も終え、ソウ様は今日から神通力を使えるようになりました!」
ようやく家に帰って新しい袴に着替えた私は今、家の広間で武鞭を行っている。正直今日は休みたいが、時間はまだ正午すぎ。長い一日だ。
「しかし神通力を使うには祝詞を奏上し、神との間に繋がりを作らなければなりませぬ!」
知っている。祝詞にも様々な種類と用途があることも知っている。しかし、私はそれら全てを一言一句覚えているのだ。この事実を知ったユキメの顔が見たい。
「そして祝詞とは、自らの呼吸を神の呼吸に合わせる行為。奏上することで自然と、神の呼吸になると言われています」
うんうん。全部知っている事実だ。
そしてユキメは初めて教鞭を取る新米教師のように目を輝かせている。よほど楽しいのだろう。もちろん、あたしも楽しい。
「もちろん感謝の念と、敬う心を持ち続けねば、祝詞は何の効果も発揮しません」
それも多分問題なし。
私の心は、大好物を目の前に置かれ、しかし手足を封じられた犬のようにもどかしい気持ちで溢れていた。早く神通力を使いたい。
「ではさっそく、教本を開いてくださいましっ」
余裕の表情を浮かべ、日焼けの目立つ古びた本をぺらぺらとめくる。
――――三十年間、一人で外に出してもらえなかった私は、家で本をひたすら読み漁ってた。だからこの本も既に読破済みだぜ!
「そこにたくさんの祝詞が載っていますが、覚えるのは一つだけでいいです」
「……………………ぇ?」
え、え、なんて?
「この本を開いて、ソウ様はこう思われたはずです。大祓詞長すぎるだろ。と」
思ったよ。今から数十年前に既に思っていたよ。でも頑張って覚えたよ!?
「ですがそれは、神使ではない者が神へ奏上する祝詞。それに、それを全部聞くほど神様も暇ではありません」
私は、できるだけ汚い言葉を見つけては、頭の中で思いっきり叫ぶ。
「故に我々に必要な祝詞は、“ひふみ祝詞”一つで十分です!」
ひふみ祝詞って、一番最初に覚えたやつだ。全部ひらがなで読みやすかったし、短かったから最初に覚えたやつ。――――えっ?
「このひふみ祝詞は、神を呼び出すために作られた祝詞です。そして一度読めば様々な恩恵が得られる、まさに便利な祝詞なのです」
この背骨を抜かれたような感覚はなんだろう。あれだけ必死に覚えたのに、本当に必要なのは一つだけって。…………そういうことは本に書いとけよ。
「それじゃあ、さっそく奏上するのですが。まずは私が実践して差し上げますので、一度お庭に出ましょうか」
手足が動かない犬は既に諦めている。なんだか少し肩の力が抜けてしまった。
――――そんな気持ちをぶら下げたまま、私はユキメの後を付いてゆく。多分、今なら何が起きても驚かないだろう。
ユキメと私は、ヨウ家の中でも特別に広い中庭に出る。真ん中には一本の木が立っており、その枝はふくふくと紅葉を纏って美しい。
「それでは始めますね」
まず喘ぐような咳払い。そしてユキメは胸の前で二回手を叩く。それは風船を割った様な破裂音だが、風鈴の如し静けさも持ち合わせている。
続けて大きく息を吸う。つむじから爪先までを酸素で満たすかの様な驚異的な長さ。
――――そうして呼吸を止めると、彼女は祝詞を奏上し始める。それはまるでパイプオルガンの様な甲高さで、声には一切の揺れがない。
「ひふみぃ…………」
すると周りの落ち葉や空気が、その詞に呼応するかの様に渦を巻く。そこに可憐さなどはなく、ただただ美しさだけが残っていた。
「……ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ」
あれだけ激しく舞っていた幾枚もの紅葉が、時間が止まったかの様にぴたりと静止する。空気は震え、砂や小石は重力に逆らい浮遊する。
――――そしてその瞬間から、ユキメが纏う雰囲気は神のそれと同じものになった。
「水、青。水宝玉」
近くの池から突如水が大量に浮き上がり、それは惑星の様に丸みを帯びはじめると、ついには寸分の狂いも無い完璧な球体へと成り代わった。
「これが私の神。水を司る天美水神の御力です」
――――神通力すげえ!
やっとで魔法的ポジションの術が登場し、私はひどく興奮している。それにしても、ここまで来るのは長かった。
「それでは、ソウ様も実際にやってみましょう。先ずは祝詞の最初の一節から読んでみて下さい」
全部覚えてるもんね。
「お任せ!」
先ずは二回拍手。そして奏上の間、出来るだけ息継ぎをしないために、大きく息を吸って止める。
よし、行くぞ。
「ひふみい…………」
文字だけで見れば簡単そうに見えるのだが、いざ声に出してみるとその難しさがよく分かる。
ユキメのように綺麗な声は出せないけれど、しかし祝詞を奏上している間は、不思議とこの世界と同化しているような気持になる。
「ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ」
――――瞬間、私の精神は弾き飛ばされたかのように体を離れ、どこに位置するのかも分からない異空間に飛ばされた。
「早速呼んでくれたのだな」
今日会ったばかりなのに、もう懐かしさを感じる声。ちょっと軽いけど、どこか重みのある声。日差しのように暖かく、太陽のように力強い声だ。
「忙しい所すいません。天陽大神様」
腰を曲げてお辞儀をする。しかし何を話せばいいのか分からない。
――そもそも何処だここ。五億年ボタンでも押したのか?
「それより、ここは一体どこなのでしょうか」
「ここは一二三と余だけの世界じゃ。血を分け合った神と神使だけの空間。あと余の事は“アマハル”でよいぞ」
なるほど。SNSのトークルームみたいなものか。ていうか“アマハル”って、そんな友達感覚でいいのか最高神様。
「ところで、私は何でここにいるんでしょうか?」
「何でって、祝詞を唱えて繋がりを作ったでしょ?」
なるほど。この場所が神と使いを繋ぐ空間というわけか。しかし、上下左右がないから酔ってしまいそうだ。
「なるほど。ここで力を借りるというわけですね!」
「そ! でも余は忙しいから、力は貸せても、お話はあまりできぬかも」
流石は太陽の神。世界を照らし続けているのだから仕方ない。――などと、ふわふわと浮遊するだけの空間で、私たちは会話を進める。
「ところで余の力じゃが。私、万能だから。ひふみが願えば何でもできるぞぉ」
ピースサインを作って、斜め上から私を見下ろす大神。
「なんでもって、何でも?」
「なーんでも。でもその代わり、一回の奏上で一回のお願いだから、時と場合を見極めて使う事。オーケー?」
「はい」――――英語?
両手の人差し指を立てて、それを可愛くふりふりと振ったり曲げたりして説明する。まるで人形遊びをしている様だ。ちょっとかわいいかもしれない。
「でも、黄泉の国へ行ってしまった人は呼び戻せないから、そこは注意するのじゃ」
「ふむふむ。分かりました」
「あとはぁ…………」
アマハル様は考える。何か言い忘れている事があるようだ。しかし、願い事がなんでも叶うっていうのはチートすぎるのではないだろうか。
「あ、そうそう!」
握りこぶしを手のひらに打ち付ける。
「余は人々の幸せを願う神じゃから、誰かを傷付けるような願い事は聞きませんからね」
なるほど、確かにそうだ。彼女は最高神で、常に誰かの模範であり続ける存在。そういうのは願い下げということか。
「――――分かったら返事」
「かしこまりました」
深々とお辞儀をする。そろそろ様になってきたかも。
「じゃあそういうわけで、余は天都に戻るから」
そう言って彼女が火の粉のように姿を消した時、私の精神も何かに引っ張られる。
どうやら私も帰らなければならないようだ。
「いかがですか? 初めての纏いは」
――――気が付くと、私は見慣れた我が家の中庭に立っていた。
驚くことに、あの空間でどれだけの時間を過ごそうと、現実では一秒の時間も経ってはいなかったのだ。
「まとい?」
この言葉は書物にも書かれていないな。――待てよ。もしかして家の書物って、あまり当てにならない感じか?
「纏いとは、神のお力を得ている状態の事です」
私が質問するとユキメはいつも嬉しそうに答えてくれる。だから彼女には気兼ねなく聞けるのだ。
しかし“纏い”と言うのか。何ともおしゃれな名前だ。しかし…………。
「うーん。何かイマイチぱっと来ないなあ」
想像してたのと違う。というより、ユキメがやって見せた時より迫力がない気がする。どうした最高神。
「ふむ。天陽大神は願いを聞き入れてくれる神様です。もしかしたら、願い事がないと祝詞は無効になるのかもしれませんね」
なるほど。ユキメは水の神を信仰しているから、祝詞を奏上した時点で水を操れるようになる。でもアマハル様は特殊だから、それには当てはまらないって事か。
「しかし、いくら短いとは言え、ひふみ祝詞を一発で覚えるとは。さすがソウ様です」
「まあね」
ユキメはそう言って、小さくかがんで私の頭を撫でる。人に頭を撫でられるのはいつでも心地いいものだ。これも子供の特権。今のうちに堪能しておこう。
――――そうしてその日の武鞭は終わり、私は倒れるように布団へと潜った。時間はまだ夕刻だが猛烈に眠い。禊に契約、そして纏い。今日のイベントは濃かった。
そういえば、明日からは何を勉強するんだろ? ユキメから聞いておけばよかった。
枕に顔をうずめ、羽毛のように柔らかい布団を頭にまで被る。この瞬間が何とも言えないくらい心地いい。ご飯を食べることの次に好きだ。
「…………きて」
なんだ? 誰かが私を読んでいる。
「起きてソウ」
襖の奥から優しい声が聞こえる。
お母さんか? 夕飯ならいらないから、このまま朝まで寝かせて欲しい。せっかく布団も暖まっていることだし。
「朝よ、ソウ。武鞭に遅れるわよ」
朝だって? そんな馬鹿な。さっき布団に入ったばかりなのに。
「朝ごはん、もう出来てるからね」
その言葉を耳に入れて、私は亀のように布団から頭を出す。すると、爽やかな陽の光が障子を貫いて、私の眼球に突き刺さる。
「――――え! もう朝!?」
布団を押し退ける。今何時だ?
私は急ぎ、枕元に用意していた袴を身に着ける。
ひもが多くて最初は何が何だか分からなかったが、何十年も着続けていれば、もうお手の物だ。
「おはようございます!」
朝日が直接当たらず、日陰と日向が丁度よく織り交ざる居間。小さい中庭がよく見渡せ、たまに響く|鹿威(ししおど)しの音色が、眠たい脳を起こしてくれる。
「お早うソウ。禊に血交わしの儀式。昨日は大変だったな」
そういう父上の食器にはまだまだ食べ物が残っている。ゆっくり食べるのはいい事だ。私は早食いだが、そこは母親似なのだろう。
「うん。昨夜はあっという間に寝ちゃった」
「子供はそれくらいが丁度いい!」
父との会話を進めながら、私は食卓に並べられた朝ごはんをパクパクと口に運んでいく。朝はパン派だが、存外、米と味噌汁も悪くない。
「――――それで、ソウはどの神と血を交わしたんだ?」
「アマハル様だよ」
まだ少し眠く、そのせいか白米が上手く喉を通らない。朝の閉じた喉には、米はいささか窮屈すぎる。
「い、いま何と申した、ソウよ?」
「ごめんなさい。天陽大神様だよ」
迂闊だった。アマハル様と呼ぶのは本人の前だけにしておこう。他の人の前でこんな呼び方したら、罰当たりな奴だと思われる。
箸で紅鮭の身をほぐし、その淡く色付いた身を白米の上に乗せる。そうしてそのまま白米と一緒に食べようとしたとき、瞬く間に食卓が私から離れていく。
「なんという事だ。大御神が、大御神様が我が子とご契約なされたというのかッ?」
私を抱きかかえたまま、父上は雄叫びを上げる。
全く、朝はゆっくりと食べたいんだけどなあ。ってあれ。私がアマハル様と契約したって今初めて知ったのか?
「かの大神様が。龍人族は愚か、他の獣神とも血を交わさなかった太陽神様が。まさかうちの子と血を交わすなんて! 皆の物、今夜は祝いじゃぁ!」
私の何倍もの大きさの顔から、何倍もの大きさの涙が溢れ出てくる。もちろんその量も倍量だ。
しかしまいった。この事はもっと後で言うつもりだったのに、ついうっかり口を滑らしてしまった。
「父上っ。そろそろ降ろしてください。武鞭に遅れてしまいます!」
もう少しこのままでいたいが、ユキメを待たせる事だけはしたくない。それにまだ紅鮭も食べていないのだ。
「おお、すまない。ではまた今夜にでも、ゆっくりと話を聞かせてもらうからな」
「はい、もちろんです!」
そうして私は母の作った朝ご飯を口へかき込み、今日の武鞭に期待を膨らませながら、ユキメとの待ち合わせ場所へと足を急がせるのであった。
止められなかったにやけ面が、後方から聞こえた声によって一瞬にして真顔に変わる。
何だろう、誰かが走ってくる。
「やっと追い付いた!」
背の小さな、しかし私より横幅の大きい中年の男が、息も絶え絶えに声を張る。その立派な召し物と、贅肉をたくさん纏いながらよくこぞこまで走ってこられたものだ。
「何か御用で?」
ユキメが問う。
「滅相もございません! 恐れ多くも我が君、天陽大神のその御神使を、ここまでお見送りしなかった我らを、どうかお赦しくださいませ!」
男は見苦しいほどに謝罪に精を出す。しかし、この神様は誰だ?
「申し遅れました。私はこの“天の山腹"の統括神。ユイゴと申します。先ほどは我が息子、トウゴがとんだご迷惑をお掛けしました事を、ふかーっくお詫び申し上げます!」
おっさんが腰を直角に曲げている。
そうか、一応龍人族も半神。神であることに違いはないからな。それに加え大神の使いだもんね。
――――しかしあの糸目の父親か。全然似てないな。あの男前は母親譲りか?
「どうされますか、ソウ様?」
その言い方、悪役の手下が使う言葉だよユキメちゃん。
「いや、別に大丈夫ですよ。頭を上げてください」
というより、早く帰って着替えたいんだよな。まだ袴がじめじめして気持ち悪いし、お風呂にも入りたい。
「なんと寛大な。流石は大御神が選ばれた事だけはある!」
ユイゴはあごの肉をふるふると揺らしながら私の手を握る。油の中に手を入れているみたいで気持ち悪いが、それを強く振り払えるほど私の心は強くない。
「あまり、気安く触らないでいただきたい」
ナイスだよユキメ!
「こっ、これは失礼をば」
男はユキメの目力に負け、まるで熱い物を触ったかのように手を引いた。出来れば手を握られる前に止めて欲しかったものだが……。
「お見送りもここまでで結構ですので、お気遣いなさらず」
私はそう言って、そそくさと後ずさりをするが。しかし男は追い詰めてくる。
「なりません。これでは統括神としての面子が立ちませぬ」
だったら出迎えもするだろ。結局この男神は私に用があるのではなく、私の神である大神に顔を売りたい訳だ。
「結構です。行こ、ユキメ」
ぷいと振り返り、一歩足を前に出す。しかし……。
「いえいえいえ!! ここはどーか私めにお任せください」
しつこい。――――と、我慢の限界も近くなり、さすがのあたしも怒ろうかと思った矢先、すっとユキメが壁のように立ちはだかる。
「そこから一歩でも、おみ足を前に出さぬよう、かしこみ申す」
火に入る夏虫を見るかのような眼差し。最高に冷たくてイカしてる。しかしこれじゃあまるで、ヤクザの親分とその子分だ。
「で、では、失礼ながら、お見送りはここまでとさせていただきます」
それよいよい。ご苦労、ご苦労。
そうして、卑しい目線を背中に浴びながらも、私達は天の山腹を後にした。
最初は壮大に感じた境内も、まるで田舎の神社に立ち寄った様な感覚だ。
「――――さて、無事に禊祓と誓約も終え、ソウ様は今日から神通力を使えるようになりました!」
ようやく家に帰って新しい袴に着替えた私は今、家の広間で武鞭を行っている。正直今日は休みたいが、時間はまだ正午すぎ。長い一日だ。
「しかし神通力を使うには祝詞を奏上し、神との間に繋がりを作らなければなりませぬ!」
知っている。祝詞にも様々な種類と用途があることも知っている。しかし、私はそれら全てを一言一句覚えているのだ。この事実を知ったユキメの顔が見たい。
「そして祝詞とは、自らの呼吸を神の呼吸に合わせる行為。奏上することで自然と、神の呼吸になると言われています」
うんうん。全部知っている事実だ。
そしてユキメは初めて教鞭を取る新米教師のように目を輝かせている。よほど楽しいのだろう。もちろん、あたしも楽しい。
「もちろん感謝の念と、敬う心を持ち続けねば、祝詞は何の効果も発揮しません」
それも多分問題なし。
私の心は、大好物を目の前に置かれ、しかし手足を封じられた犬のようにもどかしい気持ちで溢れていた。早く神通力を使いたい。
「ではさっそく、教本を開いてくださいましっ」
余裕の表情を浮かべ、日焼けの目立つ古びた本をぺらぺらとめくる。
――――三十年間、一人で外に出してもらえなかった私は、家で本をひたすら読み漁ってた。だからこの本も既に読破済みだぜ!
「そこにたくさんの祝詞が載っていますが、覚えるのは一つだけでいいです」
「……………………ぇ?」
え、え、なんて?
「この本を開いて、ソウ様はこう思われたはずです。大祓詞長すぎるだろ。と」
思ったよ。今から数十年前に既に思っていたよ。でも頑張って覚えたよ!?
「ですがそれは、神使ではない者が神へ奏上する祝詞。それに、それを全部聞くほど神様も暇ではありません」
私は、できるだけ汚い言葉を見つけては、頭の中で思いっきり叫ぶ。
「故に我々に必要な祝詞は、“ひふみ祝詞”一つで十分です!」
ひふみ祝詞って、一番最初に覚えたやつだ。全部ひらがなで読みやすかったし、短かったから最初に覚えたやつ。――――えっ?
「このひふみ祝詞は、神を呼び出すために作られた祝詞です。そして一度読めば様々な恩恵が得られる、まさに便利な祝詞なのです」
この背骨を抜かれたような感覚はなんだろう。あれだけ必死に覚えたのに、本当に必要なのは一つだけって。…………そういうことは本に書いとけよ。
「それじゃあ、さっそく奏上するのですが。まずは私が実践して差し上げますので、一度お庭に出ましょうか」
手足が動かない犬は既に諦めている。なんだか少し肩の力が抜けてしまった。
――――そんな気持ちをぶら下げたまま、私はユキメの後を付いてゆく。多分、今なら何が起きても驚かないだろう。
ユキメと私は、ヨウ家の中でも特別に広い中庭に出る。真ん中には一本の木が立っており、その枝はふくふくと紅葉を纏って美しい。
「それでは始めますね」
まず喘ぐような咳払い。そしてユキメは胸の前で二回手を叩く。それは風船を割った様な破裂音だが、風鈴の如し静けさも持ち合わせている。
続けて大きく息を吸う。つむじから爪先までを酸素で満たすかの様な驚異的な長さ。
――――そうして呼吸を止めると、彼女は祝詞を奏上し始める。それはまるでパイプオルガンの様な甲高さで、声には一切の揺れがない。
「ひふみぃ…………」
すると周りの落ち葉や空気が、その詞に呼応するかの様に渦を巻く。そこに可憐さなどはなく、ただただ美しさだけが残っていた。
「……ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ」
あれだけ激しく舞っていた幾枚もの紅葉が、時間が止まったかの様にぴたりと静止する。空気は震え、砂や小石は重力に逆らい浮遊する。
――――そしてその瞬間から、ユキメが纏う雰囲気は神のそれと同じものになった。
「水、青。水宝玉」
近くの池から突如水が大量に浮き上がり、それは惑星の様に丸みを帯びはじめると、ついには寸分の狂いも無い完璧な球体へと成り代わった。
「これが私の神。水を司る天美水神の御力です」
――――神通力すげえ!
やっとで魔法的ポジションの術が登場し、私はひどく興奮している。それにしても、ここまで来るのは長かった。
「それでは、ソウ様も実際にやってみましょう。先ずは祝詞の最初の一節から読んでみて下さい」
全部覚えてるもんね。
「お任せ!」
先ずは二回拍手。そして奏上の間、出来るだけ息継ぎをしないために、大きく息を吸って止める。
よし、行くぞ。
「ひふみい…………」
文字だけで見れば簡単そうに見えるのだが、いざ声に出してみるとその難しさがよく分かる。
ユキメのように綺麗な声は出せないけれど、しかし祝詞を奏上している間は、不思議とこの世界と同化しているような気持になる。
「ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ」
――――瞬間、私の精神は弾き飛ばされたかのように体を離れ、どこに位置するのかも分からない異空間に飛ばされた。
「早速呼んでくれたのだな」
今日会ったばかりなのに、もう懐かしさを感じる声。ちょっと軽いけど、どこか重みのある声。日差しのように暖かく、太陽のように力強い声だ。
「忙しい所すいません。天陽大神様」
腰を曲げてお辞儀をする。しかし何を話せばいいのか分からない。
――そもそも何処だここ。五億年ボタンでも押したのか?
「それより、ここは一体どこなのでしょうか」
「ここは一二三と余だけの世界じゃ。血を分け合った神と神使だけの空間。あと余の事は“アマハル”でよいぞ」
なるほど。SNSのトークルームみたいなものか。ていうか“アマハル”って、そんな友達感覚でいいのか最高神様。
「ところで、私は何でここにいるんでしょうか?」
「何でって、祝詞を唱えて繋がりを作ったでしょ?」
なるほど。この場所が神と使いを繋ぐ空間というわけか。しかし、上下左右がないから酔ってしまいそうだ。
「なるほど。ここで力を借りるというわけですね!」
「そ! でも余は忙しいから、力は貸せても、お話はあまりできぬかも」
流石は太陽の神。世界を照らし続けているのだから仕方ない。――などと、ふわふわと浮遊するだけの空間で、私たちは会話を進める。
「ところで余の力じゃが。私、万能だから。ひふみが願えば何でもできるぞぉ」
ピースサインを作って、斜め上から私を見下ろす大神。
「なんでもって、何でも?」
「なーんでも。でもその代わり、一回の奏上で一回のお願いだから、時と場合を見極めて使う事。オーケー?」
「はい」――――英語?
両手の人差し指を立てて、それを可愛くふりふりと振ったり曲げたりして説明する。まるで人形遊びをしている様だ。ちょっとかわいいかもしれない。
「でも、黄泉の国へ行ってしまった人は呼び戻せないから、そこは注意するのじゃ」
「ふむふむ。分かりました」
「あとはぁ…………」
アマハル様は考える。何か言い忘れている事があるようだ。しかし、願い事がなんでも叶うっていうのはチートすぎるのではないだろうか。
「あ、そうそう!」
握りこぶしを手のひらに打ち付ける。
「余は人々の幸せを願う神じゃから、誰かを傷付けるような願い事は聞きませんからね」
なるほど、確かにそうだ。彼女は最高神で、常に誰かの模範であり続ける存在。そういうのは願い下げということか。
「――――分かったら返事」
「かしこまりました」
深々とお辞儀をする。そろそろ様になってきたかも。
「じゃあそういうわけで、余は天都に戻るから」
そう言って彼女が火の粉のように姿を消した時、私の精神も何かに引っ張られる。
どうやら私も帰らなければならないようだ。
「いかがですか? 初めての纏いは」
――――気が付くと、私は見慣れた我が家の中庭に立っていた。
驚くことに、あの空間でどれだけの時間を過ごそうと、現実では一秒の時間も経ってはいなかったのだ。
「まとい?」
この言葉は書物にも書かれていないな。――待てよ。もしかして家の書物って、あまり当てにならない感じか?
「纏いとは、神のお力を得ている状態の事です」
私が質問するとユキメはいつも嬉しそうに答えてくれる。だから彼女には気兼ねなく聞けるのだ。
しかし“纏い”と言うのか。何ともおしゃれな名前だ。しかし…………。
「うーん。何かイマイチぱっと来ないなあ」
想像してたのと違う。というより、ユキメがやって見せた時より迫力がない気がする。どうした最高神。
「ふむ。天陽大神は願いを聞き入れてくれる神様です。もしかしたら、願い事がないと祝詞は無効になるのかもしれませんね」
なるほど。ユキメは水の神を信仰しているから、祝詞を奏上した時点で水を操れるようになる。でもアマハル様は特殊だから、それには当てはまらないって事か。
「しかし、いくら短いとは言え、ひふみ祝詞を一発で覚えるとは。さすがソウ様です」
「まあね」
ユキメはそう言って、小さくかがんで私の頭を撫でる。人に頭を撫でられるのはいつでも心地いいものだ。これも子供の特権。今のうちに堪能しておこう。
――――そうしてその日の武鞭は終わり、私は倒れるように布団へと潜った。時間はまだ夕刻だが猛烈に眠い。禊に契約、そして纏い。今日のイベントは濃かった。
そういえば、明日からは何を勉強するんだろ? ユキメから聞いておけばよかった。
枕に顔をうずめ、羽毛のように柔らかい布団を頭にまで被る。この瞬間が何とも言えないくらい心地いい。ご飯を食べることの次に好きだ。
「…………きて」
なんだ? 誰かが私を読んでいる。
「起きてソウ」
襖の奥から優しい声が聞こえる。
お母さんか? 夕飯ならいらないから、このまま朝まで寝かせて欲しい。せっかく布団も暖まっていることだし。
「朝よ、ソウ。武鞭に遅れるわよ」
朝だって? そんな馬鹿な。さっき布団に入ったばかりなのに。
「朝ごはん、もう出来てるからね」
その言葉を耳に入れて、私は亀のように布団から頭を出す。すると、爽やかな陽の光が障子を貫いて、私の眼球に突き刺さる。
「――――え! もう朝!?」
布団を押し退ける。今何時だ?
私は急ぎ、枕元に用意していた袴を身に着ける。
ひもが多くて最初は何が何だか分からなかったが、何十年も着続けていれば、もうお手の物だ。
「おはようございます!」
朝日が直接当たらず、日陰と日向が丁度よく織り交ざる居間。小さい中庭がよく見渡せ、たまに響く|鹿威(ししおど)しの音色が、眠たい脳を起こしてくれる。
「お早うソウ。禊に血交わしの儀式。昨日は大変だったな」
そういう父上の食器にはまだまだ食べ物が残っている。ゆっくり食べるのはいい事だ。私は早食いだが、そこは母親似なのだろう。
「うん。昨夜はあっという間に寝ちゃった」
「子供はそれくらいが丁度いい!」
父との会話を進めながら、私は食卓に並べられた朝ごはんをパクパクと口に運んでいく。朝はパン派だが、存外、米と味噌汁も悪くない。
「――――それで、ソウはどの神と血を交わしたんだ?」
「アマハル様だよ」
まだ少し眠く、そのせいか白米が上手く喉を通らない。朝の閉じた喉には、米はいささか窮屈すぎる。
「い、いま何と申した、ソウよ?」
「ごめんなさい。天陽大神様だよ」
迂闊だった。アマハル様と呼ぶのは本人の前だけにしておこう。他の人の前でこんな呼び方したら、罰当たりな奴だと思われる。
箸で紅鮭の身をほぐし、その淡く色付いた身を白米の上に乗せる。そうしてそのまま白米と一緒に食べようとしたとき、瞬く間に食卓が私から離れていく。
「なんという事だ。大御神が、大御神様が我が子とご契約なされたというのかッ?」
私を抱きかかえたまま、父上は雄叫びを上げる。
全く、朝はゆっくりと食べたいんだけどなあ。ってあれ。私がアマハル様と契約したって今初めて知ったのか?
「かの大神様が。龍人族は愚か、他の獣神とも血を交わさなかった太陽神様が。まさかうちの子と血を交わすなんて! 皆の物、今夜は祝いじゃぁ!」
私の何倍もの大きさの顔から、何倍もの大きさの涙が溢れ出てくる。もちろんその量も倍量だ。
しかしまいった。この事はもっと後で言うつもりだったのに、ついうっかり口を滑らしてしまった。
「父上っ。そろそろ降ろしてください。武鞭に遅れてしまいます!」
もう少しこのままでいたいが、ユキメを待たせる事だけはしたくない。それにまだ紅鮭も食べていないのだ。
「おお、すまない。ではまた今夜にでも、ゆっくりと話を聞かせてもらうからな」
「はい、もちろんです!」
そうして私は母の作った朝ご飯を口へかき込み、今日の武鞭に期待を膨らませながら、ユキメとの待ち合わせ場所へと足を急がせるのであった。
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