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変化
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数ヶ月振りの彼女からの電話だった、
何度掛けてもでなかったので心配していた。
「あっ居た、車で出てるかと思った、
引っ越ししたから新しい番号言うね」
「あっ、そう…引っ越し大変だったね
言ってくれたら手伝ったのに」
「相変わらずだよね、五十嵐くん
嫌な電話の切り方したのに優しい」
酷いことをしたのは私の方だ。
"君のプライドだけの為に"なんて言葉。
「五十嵐くんに言われて目が覚めたよ、
だから本当にごめんなさい」
「謝ることじゃないから、大丈夫、大丈夫」
「ふーん、久し振りに聞いたその"大丈夫"、
口癖だよね、"大丈夫"」
もう話せないかもと思っていただけに
久し振りに響くその声に癒されていた。
ほんとに不思議な雰囲気の持ち主だ。
「じゃあ"大丈夫"ついでに飲もうか」
誘うときはいつも緊張していた私だったが
この日は何故か自然に誘えていた。
「いつ?今からでもいいけど」
「そうしよう、今から出るから
銀座のKirin Cityに8時でいい?」
「9時がいいかな、女はいろいろあるから」
「そうだった、じゃあ9時に」
「じゃあね」
いつもの恋人同士のような会話だった、
そして土曜日のいつもの待ち合わせ場所。
小田和正のギターイントロが鳴った、気がした。
早く着いた私は早々にビールを2つ注文した。
そこは出てくるのに時間がかかる店だった。
そしてビールが運ばれる頃、彼女は現れた。
高校の時、兄貴分だったバイトの先輩に
こう教えられたことがある。
"女の子は遅れてくる分、もっと可愛くなる
だから遅刻は気にするな" と。
その忠告は大人になった今でも守っている。
久し振りに会う彼女は少し印象が変わり
控えめな服とメイク、雰囲気が違って見えた。
しかし透き通る瞳とホクロは変わってない。
彼女がテーブルの間をすり抜けて来ると、
周りのほとんどの男達が目で追っていた。
「ごめん、久し振り、待った?」
「大丈夫、大丈夫」
「あっー、早速出たそれ"大丈夫"」
こうなると夫婦漫才。
隣のカップルが理由も解らず笑っていた。
「これ頼んでおいたから
とりあえず飲んで、喉渇いたでしょ」
「やったー、ありがと」
彼女は座ると同時にグラスを手に取り
二人は久し振りの再会に乾杯した。
ゴールデンウイークの翌週だから、
外に居ると少し汗ばむくらいの陽気で
人出も少なく店内はいつもより静かだった。
二人は会えなかった時間を埋めるように
取り留めもない会話を続けていた。
「で、どこに引っ越したの?」
「南千住」
「少し近くなったかな」
「そんなに変わらないよ」
「住所はまた手紙書くからそれで」
彼女とは手紙のやり取りもしていた。
洒落た写真の絵はがきを送り合ったり、
時には便箋で近況を知らせてくれたり、
彼女の書く文字は声と同じ魅力があった。
ただ一つ不思議でならなかったことは
高級車、高級ブランド、高級マンション
それが当然の如く振る舞う彼女の正体が
一体何者なのか未だに謎のままだった。
何処にでも居る私のような一般人にとって
そこを訊ねるには少々気おくれしていたが
少し雰囲気が変わった今の彼女を前にして
気兼ねなく訊ける気がしていた。
何度掛けてもでなかったので心配していた。
「あっ居た、車で出てるかと思った、
引っ越ししたから新しい番号言うね」
「あっ、そう…引っ越し大変だったね
言ってくれたら手伝ったのに」
「相変わらずだよね、五十嵐くん
嫌な電話の切り方したのに優しい」
酷いことをしたのは私の方だ。
"君のプライドだけの為に"なんて言葉。
「五十嵐くんに言われて目が覚めたよ、
だから本当にごめんなさい」
「謝ることじゃないから、大丈夫、大丈夫」
「ふーん、久し振りに聞いたその"大丈夫"、
口癖だよね、"大丈夫"」
もう話せないかもと思っていただけに
久し振りに響くその声に癒されていた。
ほんとに不思議な雰囲気の持ち主だ。
「じゃあ"大丈夫"ついでに飲もうか」
誘うときはいつも緊張していた私だったが
この日は何故か自然に誘えていた。
「いつ?今からでもいいけど」
「そうしよう、今から出るから
銀座のKirin Cityに8時でいい?」
「9時がいいかな、女はいろいろあるから」
「そうだった、じゃあ9時に」
「じゃあね」
いつもの恋人同士のような会話だった、
そして土曜日のいつもの待ち合わせ場所。
小田和正のギターイントロが鳴った、気がした。
早く着いた私は早々にビールを2つ注文した。
そこは出てくるのに時間がかかる店だった。
そしてビールが運ばれる頃、彼女は現れた。
高校の時、兄貴分だったバイトの先輩に
こう教えられたことがある。
"女の子は遅れてくる分、もっと可愛くなる
だから遅刻は気にするな" と。
その忠告は大人になった今でも守っている。
久し振りに会う彼女は少し印象が変わり
控えめな服とメイク、雰囲気が違って見えた。
しかし透き通る瞳とホクロは変わってない。
彼女がテーブルの間をすり抜けて来ると、
周りのほとんどの男達が目で追っていた。
「ごめん、久し振り、待った?」
「大丈夫、大丈夫」
「あっー、早速出たそれ"大丈夫"」
こうなると夫婦漫才。
隣のカップルが理由も解らず笑っていた。
「これ頼んでおいたから
とりあえず飲んで、喉渇いたでしょ」
「やったー、ありがと」
彼女は座ると同時にグラスを手に取り
二人は久し振りの再会に乾杯した。
ゴールデンウイークの翌週だから、
外に居ると少し汗ばむくらいの陽気で
人出も少なく店内はいつもより静かだった。
二人は会えなかった時間を埋めるように
取り留めもない会話を続けていた。
「で、どこに引っ越したの?」
「南千住」
「少し近くなったかな」
「そんなに変わらないよ」
「住所はまた手紙書くからそれで」
彼女とは手紙のやり取りもしていた。
洒落た写真の絵はがきを送り合ったり、
時には便箋で近況を知らせてくれたり、
彼女の書く文字は声と同じ魅力があった。
ただ一つ不思議でならなかったことは
高級車、高級ブランド、高級マンション
それが当然の如く振る舞う彼女の正体が
一体何者なのか未だに謎のままだった。
何処にでも居る私のような一般人にとって
そこを訊ねるには少々気おくれしていたが
少し雰囲気が変わった今の彼女を前にして
気兼ねなく訊ける気がしていた。
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