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後悔
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自らピリオドを打った関係だったが
やはり死ぬほど後悔していた。
しばらく仕事にも身が入らない状態で
岡本の顔もまともに見ていなかった。
毎日漫然と過ごしていた私だったが
週末、土曜日の午後に電話が鳴った。
ブティックオーナーの奥様からだった。
彼女を私に紹介してくれた人だ。
「秋冬物の新作サンプルが入ったから
久し振りにコーヒーでも飲みに来ない?」
「あっ はい、行きます」
「ではお待ちしてまーす」
少々姐御肌風の雰囲気が見えかくれする
はっきりとした性格の女性だ、断れなかった。
1ヶ月ほどお店に顔を出していなかったし
突然暇をもて余すようになった私には
丁度いいと思いお店に向かった。
お店に入ると既にコーヒーのいい香りがしていた。
いつものように奥の洒落たカウンターに座ると
いつものようにタイミングよくコーヒーが出た。
見慣れた光景に少しホッとしていた矢先、
奥様は静かに話し始めた。
「聞いたよ、喧嘩したんだって?
なにがあったの?
五十嵐くんが怒るなんて初めてでしょ」
彼女が奥様に"喧嘩"と伝えていたことに
改めて彼女の優しさを感じながら
私は既に全てが伝わっていることを悟り
事の顛末を正直に話すことにした。
全て話し2杯目のコーヒーを飲み終わった頃、
店の駐車場に止めた私のGTOの右側に
濃紺のメルセデスが止まった。
店に相応しい高級車 600SEL だった。
どんな客かなと見ていた私の時間が止まった。
風に揺れる長い髪を押さえながら
降りてきたのは、まさしく彼女だった。
店の中に私を見つけた彼女は小さく手を振った。
そして隣に座ると焦ったように話し始めた。
「良かった、間に合った
五十嵐くん、久し振り、まだ怒ってる?」
私は不機嫌というより唖然としていた。
まさかまた会えるとは思ってもいなかった。
「もう怒ってないし僕の方こそ
ごめん、ひどい言い方して」
私は信じられないほど穏やかに話せていた。
「電話が切れた後、電話持ったままね、
"どうしよう、どうしよう"って
部屋の中を歩き回っちゃって」
その声の響きにまた愛しさがこみ上げてきた。
「どうしていいか分からなくて
裕子さんに相談したらこうなってて」
"裕子さん"というのが皆が慕う奥様の名前。
事情を聞き二人が話す機会を作ったらしい。
心を開ける友達が近くに居なかった彼女は
裕子さんが唯一信頼して相談出来る人だった。
離婚のときも親身になって聞いてくれたそうだ。
そんな彼女だから、私の事をよく知っていて
いろいろ相談出来る友人が欲しかったという。
「普段の五十嵐くんの事も知りたくて
後輩君ならいろいろ教えてくれるかなって
でもやり方間違えちゃった、ごめん」
「筋違いの嫉妬男で幻滅したでしよ?」
「その反対、
本気で思ってくれてたんだなって
反省してます、ごめんなさい」
ここで全てを聞いていた裕子さんが一言。
「ハイハイ、後は若い人同士でどうぞ」
裕子さんらしい締め方だった。
久し振りにGTOでドライブすることにして
店を出た私達は私の家に向かっていた。
「ところで、あの車は?」
私はメルセデスの事が気になっていた。
好きだったマセラティの行方も。
「故障したから頑丈で楽なのに替えた」
この後、彼女との仲が深まったのは確かだが
彼女を取り巻く謎はまだ解明されていない。
やはり死ぬほど後悔していた。
しばらく仕事にも身が入らない状態で
岡本の顔もまともに見ていなかった。
毎日漫然と過ごしていた私だったが
週末、土曜日の午後に電話が鳴った。
ブティックオーナーの奥様からだった。
彼女を私に紹介してくれた人だ。
「秋冬物の新作サンプルが入ったから
久し振りにコーヒーでも飲みに来ない?」
「あっ はい、行きます」
「ではお待ちしてまーす」
少々姐御肌風の雰囲気が見えかくれする
はっきりとした性格の女性だ、断れなかった。
1ヶ月ほどお店に顔を出していなかったし
突然暇をもて余すようになった私には
丁度いいと思いお店に向かった。
お店に入ると既にコーヒーのいい香りがしていた。
いつものように奥の洒落たカウンターに座ると
いつものようにタイミングよくコーヒーが出た。
見慣れた光景に少しホッとしていた矢先、
奥様は静かに話し始めた。
「聞いたよ、喧嘩したんだって?
なにがあったの?
五十嵐くんが怒るなんて初めてでしょ」
彼女が奥様に"喧嘩"と伝えていたことに
改めて彼女の優しさを感じながら
私は既に全てが伝わっていることを悟り
事の顛末を正直に話すことにした。
全て話し2杯目のコーヒーを飲み終わった頃、
店の駐車場に止めた私のGTOの右側に
濃紺のメルセデスが止まった。
店に相応しい高級車 600SEL だった。
どんな客かなと見ていた私の時間が止まった。
風に揺れる長い髪を押さえながら
降りてきたのは、まさしく彼女だった。
店の中に私を見つけた彼女は小さく手を振った。
そして隣に座ると焦ったように話し始めた。
「良かった、間に合った
五十嵐くん、久し振り、まだ怒ってる?」
私は不機嫌というより唖然としていた。
まさかまた会えるとは思ってもいなかった。
「もう怒ってないし僕の方こそ
ごめん、ひどい言い方して」
私は信じられないほど穏やかに話せていた。
「電話が切れた後、電話持ったままね、
"どうしよう、どうしよう"って
部屋の中を歩き回っちゃって」
その声の響きにまた愛しさがこみ上げてきた。
「どうしていいか分からなくて
裕子さんに相談したらこうなってて」
"裕子さん"というのが皆が慕う奥様の名前。
事情を聞き二人が話す機会を作ったらしい。
心を開ける友達が近くに居なかった彼女は
裕子さんが唯一信頼して相談出来る人だった。
離婚のときも親身になって聞いてくれたそうだ。
そんな彼女だから、私の事をよく知っていて
いろいろ相談出来る友人が欲しかったという。
「普段の五十嵐くんの事も知りたくて
後輩君ならいろいろ教えてくれるかなって
でもやり方間違えちゃった、ごめん」
「筋違いの嫉妬男で幻滅したでしよ?」
「その反対、
本気で思ってくれてたんだなって
反省してます、ごめんなさい」
ここで全てを聞いていた裕子さんが一言。
「ハイハイ、後は若い人同士でどうぞ」
裕子さんらしい締め方だった。
久し振りにGTOでドライブすることにして
店を出た私達は私の家に向かっていた。
「ところで、あの車は?」
私はメルセデスの事が気になっていた。
好きだったマセラティの行方も。
「故障したから頑丈で楽なのに替えた」
この後、彼女との仲が深まったのは確かだが
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