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安堵
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心地よい疲労感に心も身体も満たされながら
私は彼女の寝顔を見つめていた。
初めて時間を止めたいと思っていた。
そして彼女は目覚めると
「お腹すかない?」
胸が一杯で空腹も忘れてる程だったが
確かに二人とも何も食べてなかったので
どこかへ食事に行くことになった。
すると彼女が、
「お店に車置いたままだから、
タクシー呼んで私の車でうちに来ない?」
「大丈夫なの?」
「なにが?何か気にしてる?」
「聖子さんの家に行くの初めてだから」
私はあの時の光景を思い出していた。
あの彼女を送る男の影が誰なのか未だに判らず
彼女の暮らしぶりの謎も解明されていなかった。
「大丈夫、大丈夫」
「それは僕の台詞です」
「じゃ、行くぞ、おー!」
そう言って子供のように拳を突き上げた。
私達はシャワーを浴び、タクシーを呼んで
彼女の車を取りに向かった。
メルセデスを運転するのは初めてだったが
V12の力強いトルクは運転の腕が上がったかの如く
二人のドライブを快適な時間にしてくれた。
そして、抱えていた疑問を彼女に投げ掛けてみた。
「聖子さんはどうしてこんな車買えたり
前の家だってそう安くはないよね」
「先ずは"聖子さん"はそろそろやめて
"聖子"って呼んでほしい、
それに時々出る敬語もね」
「ありがとう、そうしたかったけど
なかなかきっかけが無くて」
「で、なんだっけ?」
この少し天然なところも大好きな理由のひとつだ。
そして彼女は疑問にひとつひとつ答えてくれた。
彼女の家は秋田で林業と木材卸しで財を成した
資産家でマンションは資産のひとつ、
今住んでいる新居も新しい資産らしい。
大学進学の時にひとりで暮らし始めた彼女は
何不自由なく過ごしてきたという。
それを聞いた私は何よりも安堵した。
それは宇都宮の件がどうしても引っ掛かっていて
あの男が買い与えた物かと勘ぐっていたからだ。
大学卒業後は仕事にも何度か就いたが
人間関係に悩むことが多く諦めたという。
彼女のことだから相当モテたに違いないと
私は勝手に原因を想像して膨らませていた。
彼女の謎はこうしていとも簡単に解明した。
到着したその新居は南千住の川沿いにある
ひとつの町のようなマンション群の一角だった。
後に国の偉い方の銃撃事件が起きる場所だが
私はそういう物騒な事には全く関係がない。
但し事件後も頻繁に彼女の家を訪れていた事で
止めていた車からあらぬ疑いを掛けられて
捜査対象となったことはまぎれもない事実だ。
刑事ドラマのような余談はさておき、
いよいよ彼女の家に初めて入ることになる。
部屋は5階、フロア全戸が角部屋という
豪華な造りの高級マンションだった。
まるでモデルルームのような高級家具で揃えられ、
置いてあるもの全てが高価な物に見えた。
その中に彼女の誕生日に私がプレゼントした
ショットグラスを見つけた。
それほど高価な物ではないそのグラスは
リビングのコレクションボードの真ん中に
大事そうに2つ並べて飾ってあった。
私は思わず彼女を抱きしめた。
この日から別世界のような日々が続くことになる。
あの日、全てが終わるまで。
私は彼女の寝顔を見つめていた。
初めて時間を止めたいと思っていた。
そして彼女は目覚めると
「お腹すかない?」
胸が一杯で空腹も忘れてる程だったが
確かに二人とも何も食べてなかったので
どこかへ食事に行くことになった。
すると彼女が、
「お店に車置いたままだから、
タクシー呼んで私の車でうちに来ない?」
「大丈夫なの?」
「なにが?何か気にしてる?」
「聖子さんの家に行くの初めてだから」
私はあの時の光景を思い出していた。
あの彼女を送る男の影が誰なのか未だに判らず
彼女の暮らしぶりの謎も解明されていなかった。
「大丈夫、大丈夫」
「それは僕の台詞です」
「じゃ、行くぞ、おー!」
そう言って子供のように拳を突き上げた。
私達はシャワーを浴び、タクシーを呼んで
彼女の車を取りに向かった。
メルセデスを運転するのは初めてだったが
V12の力強いトルクは運転の腕が上がったかの如く
二人のドライブを快適な時間にしてくれた。
そして、抱えていた疑問を彼女に投げ掛けてみた。
「聖子さんはどうしてこんな車買えたり
前の家だってそう安くはないよね」
「先ずは"聖子さん"はそろそろやめて
"聖子"って呼んでほしい、
それに時々出る敬語もね」
「ありがとう、そうしたかったけど
なかなかきっかけが無くて」
「で、なんだっけ?」
この少し天然なところも大好きな理由のひとつだ。
そして彼女は疑問にひとつひとつ答えてくれた。
彼女の家は秋田で林業と木材卸しで財を成した
資産家でマンションは資産のひとつ、
今住んでいる新居も新しい資産らしい。
大学進学の時にひとりで暮らし始めた彼女は
何不自由なく過ごしてきたという。
それを聞いた私は何よりも安堵した。
それは宇都宮の件がどうしても引っ掛かっていて
あの男が買い与えた物かと勘ぐっていたからだ。
大学卒業後は仕事にも何度か就いたが
人間関係に悩むことが多く諦めたという。
彼女のことだから相当モテたに違いないと
私は勝手に原因を想像して膨らませていた。
彼女の謎はこうしていとも簡単に解明した。
到着したその新居は南千住の川沿いにある
ひとつの町のようなマンション群の一角だった。
後に国の偉い方の銃撃事件が起きる場所だが
私はそういう物騒な事には全く関係がない。
但し事件後も頻繁に彼女の家を訪れていた事で
止めていた車からあらぬ疑いを掛けられて
捜査対象となったことはまぎれもない事実だ。
刑事ドラマのような余談はさておき、
いよいよ彼女の家に初めて入ることになる。
部屋は5階、フロア全戸が角部屋という
豪華な造りの高級マンションだった。
まるでモデルルームのような高級家具で揃えられ、
置いてあるもの全てが高価な物に見えた。
その中に彼女の誕生日に私がプレゼントした
ショットグラスを見つけた。
それほど高価な物ではないそのグラスは
リビングのコレクションボードの真ん中に
大事そうに2つ並べて飾ってあった。
私は思わず彼女を抱きしめた。
この日から別世界のような日々が続くことになる。
あの日、全てが終わるまで。
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