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25.アウトなんだって
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3年ぶりに帰ってきた小説町。
なのだけど、こんなに急に、それも昨日と今日とで色んな出来事があったせいで、一応感情的には一区切りつけたつもりではいるのだけど、やっぱり感慨深いという気持ちになれていない。
それがなくても感慨深いと思えるかはわからないけど。
でも、そんな複雑な気持ちの中でも少しは懐かしいと思えているのは、やっぱりここが僕の生まれ故郷なのだということなのだろう。
なんて、今年高校生になる少女が普通思うことじゃないんだろうね。多分。
内心苦笑しつつも、人で賑わう駅前を見回してみる。
最近は色んな街の駅前が再開発されているニュースをよく耳にするけど、小説町の駅前は3年前と何ら変わりないように見える。
しかし、小学生の頃の記憶なんて曖昧なものだし、僕が気がついていないだけで色々と変わっている点があるかもしれない。
「ねぇチョウちゃん」
「なに?」
「見た感じ駅前は変わった様子はないけど、町内で変わったりしたところある?」
「そうだな~」
チョウちゃんはあごに人差し指を当てると上を向いて考え始めた。
「確かに駅前は変わってないね」
チョウちゃんはわざとらしく「は」を強調してきた。
ということは、駅前以外では変わったところがあるのか、それとも何も変わってないのに変わったような雰囲気を出して僕がキョロキョロするのを見て楽しむためにワザと「は」を強調したのか。
「他が変わったかどうかは自分の目で確かめるといいよ」
「それもそうだね」
チョウちゃんの言葉の真意を色々と考えるより、自分の目で見て確かめたほうが早いだろう。
それに、もし何か変わったことがあるとして、それが分からなかったとしても商店街の人に聞けば素直に答えてくれるだろう。
「それじゃ」
商店街に向けて1歩足を踏み出したけど、僕は本能的に1歩大きく後ろへ飛んだ。
駅前のこんな人混みの中で周りの確認もせずに後ろに飛ぶなんて人にぶつかる可能性が高いし、人混みの中ではそんな小さなことでもそこから連鎖して大きな事故につながる場合もあって危ないから、良い子はやったらダメだからね。
って、僕は誰に向かって注意しているのだろうか?
意味不明だ。自分でも意味不明だけど言わないといけない気がしたから言ってみた。
まぁ、それはいいか。
で、そんな危ない状況だとわかっていながらもなぜ後ろへ飛んだかというと、ホントに本能的だというしかない。本能的な危機察知によるものとしか言いようがなかった。
直後、僕の目の前を走り抜けた女性は、
「ぐふっ」
というチョウちゃんの苦痛の声だけを残して、チョウちゃんを抱えたまま人混みの中へと消えていった。
それを見送りつつホッとしていると、女性がチョウちゃんを抱えたまますぐに帰ってきた。
戻ってきた女性は頬を膨らませていた。
「私の再会を喜ぶハグを避けるなんてヒドくないかな?」
開口1番そんなことを言う女性だが、その女性が抱えているチョウちゃんがぴくりとも動かないのを見ると、避けて正解だったと思う。
というか、僕の危機察知が反応したのはこの女性のせいか。
それにそもそも文句を言われる筋合いはない。というより、それ以上に気にしないといけないことがあるだろう。
「いや、僕に文句言う前にチョウちゃんは大丈夫なの?」
いまだにぴくりとも動かないチョウちゃんの姿を見ていると、生きているのかどうかすら不安になってくる。
「ちょっと気絶してるだけでちゃんと生きてるから大丈夫だって」
あっけらかんと笑う女性だが、相手が気絶するほどのハグをするのはアウトだろうし、再会を喜ぶにしても強すぎるだろう。
そして、本能的に避けなければそのハグを僕が受けていたわけで、そうしたら絶対チョウちゃんのように気絶していただろうし、やっぱりアウトだよね。
「気絶してる時点でアウトだね」
すると、女性は不満げに近づいてきた。
「私が本気を出してたらチョウちゃん即死よ?」
その言葉が冗談ではないことを知っているので笑えない。
この女性の名前は桐リン。この小説町にある神社で暮らしている女性なんだけど、今は人の姿をしているけどその正体は神獣の麒麟だ。
だからといって神社に祀られているわけでも、この小説町を護る守護獣とかでもなく、ホントにただただ住んでいるだけの神獣だ。
しかし、ただただ住んでいるだけとは言っても働いていないわけではなく、巫女としてしっかりと働いていたりする。
「だから、気絶してる時点でアウトなんだって」
「ぶ~」
頬を膨らませるリンを見て僕は苦笑した。
すると、「は~」と息を吐いたリンは僕に笑顔を向けてきた。
「まぁ、いいわ。それより、おかえりなさい」
何もよくない気がするが、笑顔でそう言われるとそれ以上なにも言えなくなり、少し苦笑混じりではあるけど僕も笑顔で答える。
「ただいま」
なのだけど、こんなに急に、それも昨日と今日とで色んな出来事があったせいで、一応感情的には一区切りつけたつもりではいるのだけど、やっぱり感慨深いという気持ちになれていない。
それがなくても感慨深いと思えるかはわからないけど。
でも、そんな複雑な気持ちの中でも少しは懐かしいと思えているのは、やっぱりここが僕の生まれ故郷なのだということなのだろう。
なんて、今年高校生になる少女が普通思うことじゃないんだろうね。多分。
内心苦笑しつつも、人で賑わう駅前を見回してみる。
最近は色んな街の駅前が再開発されているニュースをよく耳にするけど、小説町の駅前は3年前と何ら変わりないように見える。
しかし、小学生の頃の記憶なんて曖昧なものだし、僕が気がついていないだけで色々と変わっている点があるかもしれない。
「ねぇチョウちゃん」
「なに?」
「見た感じ駅前は変わった様子はないけど、町内で変わったりしたところある?」
「そうだな~」
チョウちゃんはあごに人差し指を当てると上を向いて考え始めた。
「確かに駅前は変わってないね」
チョウちゃんはわざとらしく「は」を強調してきた。
ということは、駅前以外では変わったところがあるのか、それとも何も変わってないのに変わったような雰囲気を出して僕がキョロキョロするのを見て楽しむためにワザと「は」を強調したのか。
「他が変わったかどうかは自分の目で確かめるといいよ」
「それもそうだね」
チョウちゃんの言葉の真意を色々と考えるより、自分の目で見て確かめたほうが早いだろう。
それに、もし何か変わったことがあるとして、それが分からなかったとしても商店街の人に聞けば素直に答えてくれるだろう。
「それじゃ」
商店街に向けて1歩足を踏み出したけど、僕は本能的に1歩大きく後ろへ飛んだ。
駅前のこんな人混みの中で周りの確認もせずに後ろに飛ぶなんて人にぶつかる可能性が高いし、人混みの中ではそんな小さなことでもそこから連鎖して大きな事故につながる場合もあって危ないから、良い子はやったらダメだからね。
って、僕は誰に向かって注意しているのだろうか?
意味不明だ。自分でも意味不明だけど言わないといけない気がしたから言ってみた。
まぁ、それはいいか。
で、そんな危ない状況だとわかっていながらもなぜ後ろへ飛んだかというと、ホントに本能的だというしかない。本能的な危機察知によるものとしか言いようがなかった。
直後、僕の目の前を走り抜けた女性は、
「ぐふっ」
というチョウちゃんの苦痛の声だけを残して、チョウちゃんを抱えたまま人混みの中へと消えていった。
それを見送りつつホッとしていると、女性がチョウちゃんを抱えたまますぐに帰ってきた。
戻ってきた女性は頬を膨らませていた。
「私の再会を喜ぶハグを避けるなんてヒドくないかな?」
開口1番そんなことを言う女性だが、その女性が抱えているチョウちゃんがぴくりとも動かないのを見ると、避けて正解だったと思う。
というか、僕の危機察知が反応したのはこの女性のせいか。
それにそもそも文句を言われる筋合いはない。というより、それ以上に気にしないといけないことがあるだろう。
「いや、僕に文句言う前にチョウちゃんは大丈夫なの?」
いまだにぴくりとも動かないチョウちゃんの姿を見ていると、生きているのかどうかすら不安になってくる。
「ちょっと気絶してるだけでちゃんと生きてるから大丈夫だって」
あっけらかんと笑う女性だが、相手が気絶するほどのハグをするのはアウトだろうし、再会を喜ぶにしても強すぎるだろう。
そして、本能的に避けなければそのハグを僕が受けていたわけで、そうしたら絶対チョウちゃんのように気絶していただろうし、やっぱりアウトだよね。
「気絶してる時点でアウトだね」
すると、女性は不満げに近づいてきた。
「私が本気を出してたらチョウちゃん即死よ?」
その言葉が冗談ではないことを知っているので笑えない。
この女性の名前は桐リン。この小説町にある神社で暮らしている女性なんだけど、今は人の姿をしているけどその正体は神獣の麒麟だ。
だからといって神社に祀られているわけでも、この小説町を護る守護獣とかでもなく、ホントにただただ住んでいるだけの神獣だ。
しかし、ただただ住んでいるだけとは言っても働いていないわけではなく、巫女としてしっかりと働いていたりする。
「だから、気絶してる時点でアウトなんだって」
「ぶ~」
頬を膨らませるリンを見て僕は苦笑した。
すると、「は~」と息を吐いたリンは僕に笑顔を向けてきた。
「まぁ、いいわ。それより、おかえりなさい」
何もよくない気がするが、笑顔でそう言われるとそれ以上なにも言えなくなり、少し苦笑混じりではあるけど僕も笑顔で答える。
「ただいま」
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