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35.つつかれていた
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警察署から歩いて5分くらい経っただろうか。ふと思うことがあった僕は足を止めた。
「チョウちゃん。そろそろ足のしびれ取れたでしょ」
お姫様抱っこをしていた最初の方はちょっとしたことでも痛がっていたのに、今では全く痛がっていないので確実に足のしびれはとれているだろう。
「まだしびれてるからこのままで」
チョウちゃんはそう言ったが、足のしびれがとれているからニコニコ笑顔だった。
「絶対しびれとれてるよね?」
僕はチョウちゃんにジト目を向けたが、チョウちゃんは笑顔を返してきた。
「まだしびれてるって」
「しびれてないでしょ」
「しびれてる」
「しびれてない」
「しびれてる」
あくまでしびれていると言いきるチョウちゃんと見つめ合う。
さて、どうやってチョウちゃんにしびれてないことを認めさせるためにはどうすればいいのか。
少し考えてから思いついた僕は右肩を軽く動かした。
すると、それに反応したリンが素早くチョウちゃんの足をつついた。
「え?」
「はい、ダウト」
リンの言葉で自分のミスに気づいたチョウちゃんは「あっ!」という顔をした。
顔をしたがもう遅い。
リンが言った通りダウトなのですでに足がしびれていないのは確定した。
「リン!痛いんだからいきなり足を触らないでよ!」
なんていまさらながらチョウちゃんは言うけど、悪あがきでしかない。
「アハハ。しびれてない~」
さらにリンはツンツンとチョウちゃんの足をつつきまくっている。
「だから止めてよ~」
チョウちゃんは足を動かしてリンのつつきを避けようとするけど、リンがミスすることはなく、ずっとつつかれていた。
「ちょっと!」
というか、足をそこまで自由に動かせているのにしびれてるなんてありえないよね。
「止めてって!」
ツンツンされ続けてることに怒ったチョウちゃんが足を振り上げてリンの顔を蹴ろうとしたが、リンは顔を後ろに引っ込めることで簡単に避けた。
それは別にいいのだけど、そうなるとチョウちゃんの蹴りは僕の顔に向かってくるわけで、それに気づいたチョウちゃんは「あっ」という顔をしたが、急に足を止めれるわけもない。
とはいえ、僕も簡単に避けれるので避けるとそのままの勢いでチョウちゃんの足はチョウちゃんの顔に当たった。
「ぐふっ」
予想外のことにガードも出来ずにマトモに自分で自分を蹴ったチョウちゃんは苦悶の表情を浮かべ、両手で顔をおさえた。
自業自得ではあるけど、体が柔らかいチョウちゃんだからこその結末だろうね。
「2人共、避けるなんてヒドくない?」
「そもそもチョウちゃんが私を蹴ろうとしなければ、そんなことにならなかったんだよ?」
「うっ」
リンの正論に一瞬言葉をつまらせたチョウちゃんだが、すぐにリンを睨みつけた。
「リンが止めてって言ってもつつくのを止めてくれないから!」
「それについてはしびれてるってウソをついてたチョウちゃんが悪いんじゃないのかな?」
「あっ」
元々の論点がそこだということを忘れていたチョウちゃんは慌てて僕から目線を反らした。
「足はしびれてないよね」
「し、しびれてる………」
ここまできてもまだ往生際悪く悪あがきを続けるチョウちゃん。
しかし、それがわかっているチョウちゃんは僕の顔色を伺うようにチラチラと見てきたので、僕が笑顔を向けるとチョウちゃんも笑顔になった。
「ギルティ」
というわけで、僕はチョウちゃんを抱えていた手から力を抜いて落とそうとしたが、それを察知したチョウちゃんが僕の首に抱きついてきた。
「ぐっ!」
いくら軽いチョウちゃんとはいえ、予想外の展開でかまえることも出来なかったし、落とした衝撃が全て首にかかってきたので前のめりになって倒れそうになったけどなんとか持ちこたえて体を持ち上げた。
「くふふ。コウくん。お姫様抱っこしなおさないと首を痛めるんじゃない?」
僕にぶら下がりながらニヤニヤ顔でそんなことを言ってくるチョウちゃん。
しかし、あいにくと軽いチョウちゃんがぶら下がったくらいでは首は痛めないし、お姫様抱っこしなおすつもりもない。だけど、このままでは歩きづらいので、両手でチョウちゃんの頭を挟んで力を入れながら引き剥がそうとする。
「イタいイタい!」
と言いつつも、チョウちゃんは僕から離されないように足でも抱きついてきた。
「頭が潰れる!潰れるから!」
「だったら腕と足を離せばいいでしょ」
「それもイヤだ!」
頭がイタいのもイヤだけど離れるのもイヤ。
そんな子供みたいなことを言うチョウちゃんにため息しか出てこない。
とはいえ、夜の住宅街で叫び続けられても迷惑になるので、仕方なく力を抜いた。
「フフフ」
勝ち誇ったように笑いながらギュッと僕に抱きついてくるチョウちゃんに、またため息を吐いた。
「ほら、早く帰らないとさらに遅くなるよ」
「そう思うなら離れてよね」
「リンが離れたら離れるよ?」
「チョウちゃんが離れたら離れるからね」
僕が聞く前にそう言ってきたリン。
「はぁ」
何度目かのため息を吐きながら諦めた僕はチョウちゃんの家に向かって再度歩きだすのだった。
「チョウちゃん。そろそろ足のしびれ取れたでしょ」
お姫様抱っこをしていた最初の方はちょっとしたことでも痛がっていたのに、今では全く痛がっていないので確実に足のしびれはとれているだろう。
「まだしびれてるからこのままで」
チョウちゃんはそう言ったが、足のしびれがとれているからニコニコ笑顔だった。
「絶対しびれとれてるよね?」
僕はチョウちゃんにジト目を向けたが、チョウちゃんは笑顔を返してきた。
「まだしびれてるって」
「しびれてないでしょ」
「しびれてる」
「しびれてない」
「しびれてる」
あくまでしびれていると言いきるチョウちゃんと見つめ合う。
さて、どうやってチョウちゃんにしびれてないことを認めさせるためにはどうすればいいのか。
少し考えてから思いついた僕は右肩を軽く動かした。
すると、それに反応したリンが素早くチョウちゃんの足をつついた。
「え?」
「はい、ダウト」
リンの言葉で自分のミスに気づいたチョウちゃんは「あっ!」という顔をした。
顔をしたがもう遅い。
リンが言った通りダウトなのですでに足がしびれていないのは確定した。
「リン!痛いんだからいきなり足を触らないでよ!」
なんていまさらながらチョウちゃんは言うけど、悪あがきでしかない。
「アハハ。しびれてない~」
さらにリンはツンツンとチョウちゃんの足をつつきまくっている。
「だから止めてよ~」
チョウちゃんは足を動かしてリンのつつきを避けようとするけど、リンがミスすることはなく、ずっとつつかれていた。
「ちょっと!」
というか、足をそこまで自由に動かせているのにしびれてるなんてありえないよね。
「止めてって!」
ツンツンされ続けてることに怒ったチョウちゃんが足を振り上げてリンの顔を蹴ろうとしたが、リンは顔を後ろに引っ込めることで簡単に避けた。
それは別にいいのだけど、そうなるとチョウちゃんの蹴りは僕の顔に向かってくるわけで、それに気づいたチョウちゃんは「あっ」という顔をしたが、急に足を止めれるわけもない。
とはいえ、僕も簡単に避けれるので避けるとそのままの勢いでチョウちゃんの足はチョウちゃんの顔に当たった。
「ぐふっ」
予想外のことにガードも出来ずにマトモに自分で自分を蹴ったチョウちゃんは苦悶の表情を浮かべ、両手で顔をおさえた。
自業自得ではあるけど、体が柔らかいチョウちゃんだからこその結末だろうね。
「2人共、避けるなんてヒドくない?」
「そもそもチョウちゃんが私を蹴ろうとしなければ、そんなことにならなかったんだよ?」
「うっ」
リンの正論に一瞬言葉をつまらせたチョウちゃんだが、すぐにリンを睨みつけた。
「リンが止めてって言ってもつつくのを止めてくれないから!」
「それについてはしびれてるってウソをついてたチョウちゃんが悪いんじゃないのかな?」
「あっ」
元々の論点がそこだということを忘れていたチョウちゃんは慌てて僕から目線を反らした。
「足はしびれてないよね」
「し、しびれてる………」
ここまできてもまだ往生際悪く悪あがきを続けるチョウちゃん。
しかし、それがわかっているチョウちゃんは僕の顔色を伺うようにチラチラと見てきたので、僕が笑顔を向けるとチョウちゃんも笑顔になった。
「ギルティ」
というわけで、僕はチョウちゃんを抱えていた手から力を抜いて落とそうとしたが、それを察知したチョウちゃんが僕の首に抱きついてきた。
「ぐっ!」
いくら軽いチョウちゃんとはいえ、予想外の展開でかまえることも出来なかったし、落とした衝撃が全て首にかかってきたので前のめりになって倒れそうになったけどなんとか持ちこたえて体を持ち上げた。
「くふふ。コウくん。お姫様抱っこしなおさないと首を痛めるんじゃない?」
僕にぶら下がりながらニヤニヤ顔でそんなことを言ってくるチョウちゃん。
しかし、あいにくと軽いチョウちゃんがぶら下がったくらいでは首は痛めないし、お姫様抱っこしなおすつもりもない。だけど、このままでは歩きづらいので、両手でチョウちゃんの頭を挟んで力を入れながら引き剥がそうとする。
「イタいイタい!」
と言いつつも、チョウちゃんは僕から離されないように足でも抱きついてきた。
「頭が潰れる!潰れるから!」
「だったら腕と足を離せばいいでしょ」
「それもイヤだ!」
頭がイタいのもイヤだけど離れるのもイヤ。
そんな子供みたいなことを言うチョウちゃんにため息しか出てこない。
とはいえ、夜の住宅街で叫び続けられても迷惑になるので、仕方なく力を抜いた。
「フフフ」
勝ち誇ったように笑いながらギュッと僕に抱きついてくるチョウちゃんに、またため息を吐いた。
「ほら、早く帰らないとさらに遅くなるよ」
「そう思うなら離れてよね」
「リンが離れたら離れるよ?」
「チョウちゃんが離れたら離れるからね」
僕が聞く前にそう言ってきたリン。
「はぁ」
何度目かのため息を吐きながら諦めた僕はチョウちゃんの家に向かって再度歩きだすのだった。
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