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74.その耳は

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 生徒全員が集合すると近くの花見会場へと移動した。

「ここで1時までお花見会をします」
『イェーイ!』

 学年主任の言葉にうちのクラスだけがかなりの盛り上がりをみせていた。

 これだけ一体感のある盛り上がりをみせれるのは確実にナツ先生が色々とやらかしたおかげ(?)と言えるだろう。

「昼食のお花見弁当とお茶を受け取った人から自由にお花見を楽しんでください」
『はーい!』
「ただし、このお花見会は新入生同士の交流会でもあるので、同じ中学で固まったりせずに色んな人と交流してくださいね」
『はーい!』
「多少は騒いでもいいけど、騒ぎすぎて迷惑をかけるようなことはないように!」
『はーい』

 うちのクラスを指さしながら学年主任がそう言ってきたので、クラスメイト達も流石にトーンダウンした。

 それを見ていた他のクラスの生徒達がクスクスと笑い出す。

「あと、ゴミは最後にここで回収するので勝手に捨てないようにね。ということで、自由にしていいよ」

 学年主任がOKを出すと早速みんなが思い思いの場所へ行き出した。

「俺達はどこへ行く?」

 さも当たり前のように聞いてくるユウの腹を軽く殴る。

「ぐふ。な、なにしやがる」
「その耳はただの飾りなの?」

 ユウが抗議してきたので耳を少し引っ張る。

「んなわけねーだろが!」

 僕の手を払ってきたユウが睨みつけてきたが、僕はため息を返した。

「だったらさっき先生が同じ中学で固まったりしないように言ってたことをちゃんと聞いているはずだよね?」

 逆に睨みつけてあげると、ユウはギギギと顔を反らしたのでまたため息を吐いた。

「だから、僕とユウとリンは別行動は決定だよ」
「ちぇっ。せっかく久々にコウとゆっくり話せると思ったのにさ」

 確かに。こっちに帰ってきてからは引っ越しの片付けや入学の準備などで忙しくて小・中学校の時の友達ともあえてなかったし、コウとだってこうして同じ学校に通ってなかったらまだ会えてなかったかもね。

 だけど、それとこれとは別問題だし、それに、

「これから話せる機会なんていくらでもあるのだから今日は僕じゃなくてもいいでしょ」
「まぁ。それもそうか」

 納得したユウはグリッと気持ち悪い動きでトシの方を見た。

「だったら、今日はトシに話し相手になってもらおうかな~」

 ニタ~とこれまた気持ち悪い笑顔を浮かべるユウ。

「いや、さっきまでなら話し相手になってもいいと思ったが、その動きと笑顔で一気にイヤになったからパスさせてもらうわ」
「なんでだよ~。そんなつれないこと言うなよ~」

 さらに迫るユウに対して後ずさっていくトシ。

「マジでキモいから止めろそれ」
「キモいとか言うなよ~」
「だから止めろって」

 とうとう耐えきれずに逃げ出したトシを追っていくユウ。

 2人は行ってしまったし、

「リンはどう」

 リンが居た方向を見たが、そこにリンは居なかった。

 多分、逃げ出したか呼び出されたかしたんだろうね。まぁ、どっちにしてもこのお花見会の間に戻ってくることはないだろう。

「あれ?リンは?」

 リンがいつの間にか居なくなっていることに驚いているハル。

「もうどこかに行ったみたいだね。ハルは僕と一緒に行く?」
「うん」

 というわけで、僕とハルも昼食を食べる場所を探して移動を始めた。
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