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18.どう思う
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少しして工房から戻ってきたのは親方だけではなく、他の職人達も一緒にやって来た。そして、その手には装備品の数々。
親方はそれらを武器と防具に分けてカウンターに置くと、武器の方を指さした。
「ルイ。その武器を見てどう思う」
そう問われたのでカウンターに置かれた武器を1つ1つ丁寧に見ていく。
カウンターに置かれた武器は、槍に大盾、ナイフ2本に棒も2本、あと剣が5本。そのうちの4本は対になる形なので双剣が2組だね。さらに言えば、棒には魔石が込められているので魔法の杖の役目も果たせるタイプの棒だね。
ここまで見ればわかるのだけど、どう見ても僕達のための武器だった。しかも、装飾や強化などがされていないホントに最低限の鍛錬を済ませただけのまっさらの武器。それでも新人の冒険者が持つには十分すぎる武器でもある。
「最低限の鍛錬を終えただけの強化もなにもされていない武器ですね」
素直に思ったことを話すと親方は頷いた。
「そうだ。この武器達はお前に託す」
「託す、ですか?」
どう見ても僕達用の武器なので売ってくれるとは思っていたけど、まさか託すと言われるとは思わなかった。
「あぁ。お前が前に言っていただろ。
魔物の素材などを集めてカレン達の戦闘スタイルにあった専用の武器を1から育てあげて作る。
と」
確かになんで鍛冶をそこまで真剣になって覚えるのか親方に聞かれた時にそう言った。
「しかし、ワシから見ればお前の腕はまだまだ素人に毛が生えたようなものだ」
それはそうだろう。僕は鍛冶を始めてまだ2年だし、親方みたいに鍛冶だけをしているわけではないのだから。
「それを言ったらここにいる職人のほとんどが一人前に毛が生えたぐらいの職人になってしまいますよ」
職人達の中から上がったその言葉を聞いた親方が振り返った。
「まさか、もう一人前になれたとでも思っていたのか?」
ニヤリと笑った親方からのキツい1言に職人達が笑い出し、「そりゃないよ」「ひでー言われよう」「キツいっすよ、親方」と言い返していた。
「いい工房だな」か。
ホントにここはいい工房だよ。
言いたいことは言いあえるし、こうしてバカなことを言いあって笑いあえる。この街にはいくつか工房はあるけど、ここを僕の修行先に選んでくれた父さんにはホントに感謝だよ。
ひとしきり職人達と笑いあった親方が僕の方を見てきた。
「お前はまだ素人に毛が生えた程度だから基礎となる武器であってもここまでのモノは作れないだろう」
カウンターに置かれた親方が作った武器はどう見ても親方の最高傑作に近い武器だろう。
この街にいる職人の中にこれだけの武器を作れる職人などほとんど居ないのに、それを僕が作れるなんて言ったら鍛治師失格だし即破門されるだろう。
「作れるわけがありませんよ」
お手上げとばかりに言うと、他の職人達も同意するように頷いていた。
「だろうな。作れるとしてもあと10年以上は修行が必要だろうな」
親方の言う10年以上は多分鍛冶だけに集中して修行をした場合だろう。
僕の場合は鍛冶だけに集中することは出来ないし、いくらクラスの補正があるとは言っても凡人なので、これ程の武器は生涯かけても作れる気がしない。
「だから、これをお前に託すから、お前がカレン達と話し合いながら強化していき、それぞれにあった最高の武器に仕上げろ」
またスゴいモノを託されてしまった。
もちろん僕としてはありがたいことではある。だって僕が生涯かけても作れない武器を基礎に、カレン達の専用の武器を作り上げることが出来るのだから。
しかし、やっぱり託すという言葉は重い。
託されたからにはやっぱりそれに見合うだけの最高の武器にしないと、親方に顔向け出来なくなる。
「もちろんたまに見せに来てもらうぞ。そして、その過程でおかしな強化とかしていたらその瞬間その武器をワシの手で壊す」
親方が拳をカウンターに叩きつけた。
「それをふまえた上でゆっくりでもいいから確実に強化して最高の武器を作るんだな」
そう言いつつ今度はニカッと笑う親方。
託すとは言いつつも、そこまでプレッシャーに考える必要はないとその笑顔からわかったので、僕も笑いながら頷いた。
「わかりました。そしたら代金ですけど」
見た感じ防具のほうもそれなりにいいモノを用意していてくれたみたいなので、僕は金貨を1枚カウンターに置いた。
すると、その金貨を見た親方は腕を組み、アルナーさんは目を見開き、職人達はどよめいた。
「ちなみにだけど、こちらの世界のお金ってどうなってるんだ?」って。
こちらの世界では鉄貨<銅貨<銀貨<金貨と高くなっていって、100枚集めると上の硬貨に交換出来る仕組みだね。そして、鉄貨1枚が日本円で100円だから、銅貨で1万円、銀貨だと100万円、金貨になると1億だね。
「つまり、お前はポンっと1億を置いたわけだ」か。
そういうことになるね。
「そりゃ驚くだろ」か。
でもさ、親方の最高傑作、それも強化までし終わっている武器となると普通に銀貨数十枚はするんだよ。強化されていないとはいえその最高傑作の武器がこれだけあるのだから金貨を出すのは普通なんだよ。
「坊っちゃん。この金貨は………」
アルナーさんは少し震えながら金貨を指さした。
「装備品はケチるな、と言う父さま達からもらったお金です」
「いや、そうじゃなくて………」
アルナーさんが僕の言葉を否定してきた。
お金の出どころを聞きたいのではないのなら何を聞きたいのかわからずに僕は首を傾げた。
すると、親方が僕を睨みながら口を開いた。
「なぜこっちが金額を言う前に金貨を出した?」
その問いになんだと僕は思った。
「妥当な金額だと思ったのですけど?」
首を傾げながらアルナーさんへ視線を向ける。
「えぇ。確かにこれだけの武器と防具の金額としては妥当だね」
職人達も頷いている。
「しかし、あくまで値段をつけるのはこれを作った俺だ」
「もしかしてボッタクられる?」って。
親方はそんなことしないって。
「いつも言っているが、よっぽどなヤツ以外新人冒険者には割り引いた値段で装備品を売っている」
「新人冒険者が簡単に死なないように。そして、またこの工房に装備品を買いに来てくれるように、ですよね」
「そうだ。それは当然金を持っていようがいまいが、俺の弟子かどうかとかも関係ない。だからその装備品は全部で銀貨70枚だ」
これは親方の譲れないところだろう。しかし、僕もこれは譲れないところでもある。
「しかし、あいにくと僕達は2度とこの工房に装備品を買いに来ることはありませんよ。だって、今度からは僕がみんなの装備品を作っていくのですから。だから、割引はなしでいいです」
だから、出した金貨を下げるつもりはない。
「いや、銀貨70枚だ」
「金貨1枚です」
「銀貨70枚」
「金貨1枚」
「間とって銀貨85枚ってのは?」
僕と親方が譲らないのをみてアルナーさんが間の金額を提示してきた。
「ふん。アルナー!今後の収入が見込めないのならルイからはいつもの5割増しの金額貰っておけ!」
「はいはい。銀貨85枚で交渉しとくよ」
「5割増しだからな!」
そう言うと、親方は工房の方へと戻っていき、職人達も苦笑しながら親方の後をついていった。
「父さんもだけど坊っちゃんも譲れないってことになると強情だよね~」
親方と同じと言われるのはいい気がしないので、
「金貨1枚と銀貨50枚ですね」
「ホントに強情だね!」
アルナーさんから思いっきりツッコまれた。
親方はそれらを武器と防具に分けてカウンターに置くと、武器の方を指さした。
「ルイ。その武器を見てどう思う」
そう問われたのでカウンターに置かれた武器を1つ1つ丁寧に見ていく。
カウンターに置かれた武器は、槍に大盾、ナイフ2本に棒も2本、あと剣が5本。そのうちの4本は対になる形なので双剣が2組だね。さらに言えば、棒には魔石が込められているので魔法の杖の役目も果たせるタイプの棒だね。
ここまで見ればわかるのだけど、どう見ても僕達のための武器だった。しかも、装飾や強化などがされていないホントに最低限の鍛錬を済ませただけのまっさらの武器。それでも新人の冒険者が持つには十分すぎる武器でもある。
「最低限の鍛錬を終えただけの強化もなにもされていない武器ですね」
素直に思ったことを話すと親方は頷いた。
「そうだ。この武器達はお前に託す」
「託す、ですか?」
どう見ても僕達用の武器なので売ってくれるとは思っていたけど、まさか託すと言われるとは思わなかった。
「あぁ。お前が前に言っていただろ。
魔物の素材などを集めてカレン達の戦闘スタイルにあった専用の武器を1から育てあげて作る。
と」
確かになんで鍛冶をそこまで真剣になって覚えるのか親方に聞かれた時にそう言った。
「しかし、ワシから見ればお前の腕はまだまだ素人に毛が生えたようなものだ」
それはそうだろう。僕は鍛冶を始めてまだ2年だし、親方みたいに鍛冶だけをしているわけではないのだから。
「それを言ったらここにいる職人のほとんどが一人前に毛が生えたぐらいの職人になってしまいますよ」
職人達の中から上がったその言葉を聞いた親方が振り返った。
「まさか、もう一人前になれたとでも思っていたのか?」
ニヤリと笑った親方からのキツい1言に職人達が笑い出し、「そりゃないよ」「ひでー言われよう」「キツいっすよ、親方」と言い返していた。
「いい工房だな」か。
ホントにここはいい工房だよ。
言いたいことは言いあえるし、こうしてバカなことを言いあって笑いあえる。この街にはいくつか工房はあるけど、ここを僕の修行先に選んでくれた父さんにはホントに感謝だよ。
ひとしきり職人達と笑いあった親方が僕の方を見てきた。
「お前はまだ素人に毛が生えた程度だから基礎となる武器であってもここまでのモノは作れないだろう」
カウンターに置かれた親方が作った武器はどう見ても親方の最高傑作に近い武器だろう。
この街にいる職人の中にこれだけの武器を作れる職人などほとんど居ないのに、それを僕が作れるなんて言ったら鍛治師失格だし即破門されるだろう。
「作れるわけがありませんよ」
お手上げとばかりに言うと、他の職人達も同意するように頷いていた。
「だろうな。作れるとしてもあと10年以上は修行が必要だろうな」
親方の言う10年以上は多分鍛冶だけに集中して修行をした場合だろう。
僕の場合は鍛冶だけに集中することは出来ないし、いくらクラスの補正があるとは言っても凡人なので、これ程の武器は生涯かけても作れる気がしない。
「だから、これをお前に託すから、お前がカレン達と話し合いながら強化していき、それぞれにあった最高の武器に仕上げろ」
またスゴいモノを託されてしまった。
もちろん僕としてはありがたいことではある。だって僕が生涯かけても作れない武器を基礎に、カレン達の専用の武器を作り上げることが出来るのだから。
しかし、やっぱり託すという言葉は重い。
託されたからにはやっぱりそれに見合うだけの最高の武器にしないと、親方に顔向け出来なくなる。
「もちろんたまに見せに来てもらうぞ。そして、その過程でおかしな強化とかしていたらその瞬間その武器をワシの手で壊す」
親方が拳をカウンターに叩きつけた。
「それをふまえた上でゆっくりでもいいから確実に強化して最高の武器を作るんだな」
そう言いつつ今度はニカッと笑う親方。
託すとは言いつつも、そこまでプレッシャーに考える必要はないとその笑顔からわかったので、僕も笑いながら頷いた。
「わかりました。そしたら代金ですけど」
見た感じ防具のほうもそれなりにいいモノを用意していてくれたみたいなので、僕は金貨を1枚カウンターに置いた。
すると、その金貨を見た親方は腕を組み、アルナーさんは目を見開き、職人達はどよめいた。
「ちなみにだけど、こちらの世界のお金ってどうなってるんだ?」って。
こちらの世界では鉄貨<銅貨<銀貨<金貨と高くなっていって、100枚集めると上の硬貨に交換出来る仕組みだね。そして、鉄貨1枚が日本円で100円だから、銅貨で1万円、銀貨だと100万円、金貨になると1億だね。
「つまり、お前はポンっと1億を置いたわけだ」か。
そういうことになるね。
「そりゃ驚くだろ」か。
でもさ、親方の最高傑作、それも強化までし終わっている武器となると普通に銀貨数十枚はするんだよ。強化されていないとはいえその最高傑作の武器がこれだけあるのだから金貨を出すのは普通なんだよ。
「坊っちゃん。この金貨は………」
アルナーさんは少し震えながら金貨を指さした。
「装備品はケチるな、と言う父さま達からもらったお金です」
「いや、そうじゃなくて………」
アルナーさんが僕の言葉を否定してきた。
お金の出どころを聞きたいのではないのなら何を聞きたいのかわからずに僕は首を傾げた。
すると、親方が僕を睨みながら口を開いた。
「なぜこっちが金額を言う前に金貨を出した?」
その問いになんだと僕は思った。
「妥当な金額だと思ったのですけど?」
首を傾げながらアルナーさんへ視線を向ける。
「えぇ。確かにこれだけの武器と防具の金額としては妥当だね」
職人達も頷いている。
「しかし、あくまで値段をつけるのはこれを作った俺だ」
「もしかしてボッタクられる?」って。
親方はそんなことしないって。
「いつも言っているが、よっぽどなヤツ以外新人冒険者には割り引いた値段で装備品を売っている」
「新人冒険者が簡単に死なないように。そして、またこの工房に装備品を買いに来てくれるように、ですよね」
「そうだ。それは当然金を持っていようがいまいが、俺の弟子かどうかとかも関係ない。だからその装備品は全部で銀貨70枚だ」
これは親方の譲れないところだろう。しかし、僕もこれは譲れないところでもある。
「しかし、あいにくと僕達は2度とこの工房に装備品を買いに来ることはありませんよ。だって、今度からは僕がみんなの装備品を作っていくのですから。だから、割引はなしでいいです」
だから、出した金貨を下げるつもりはない。
「いや、銀貨70枚だ」
「金貨1枚です」
「銀貨70枚」
「金貨1枚」
「間とって銀貨85枚ってのは?」
僕と親方が譲らないのをみてアルナーさんが間の金額を提示してきた。
「ふん。アルナー!今後の収入が見込めないのならルイからはいつもの5割増しの金額貰っておけ!」
「はいはい。銀貨85枚で交渉しとくよ」
「5割増しだからな!」
そう言うと、親方は工房の方へと戻っていき、職人達も苦笑しながら親方の後をついていった。
「父さんもだけど坊っちゃんも譲れないってことになると強情だよね~」
親方と同じと言われるのはいい気がしないので、
「金貨1枚と銀貨50枚ですね」
「ホントに強情だね!」
アルナーさんから思いっきりツッコまれた。
応援ありがとうございます!
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