「その結婚ちょっと待つのじゃー!」ってワシは何を言っているのだろうか?

だらけたい

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15.蓋を開けてみれば

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 さて、とうとう結婚式当日になったのじゃよ。

 結婚式は4の鐘からなのじゃが、ワシは3の鐘から始まる商会の最終点検の従業員に混ざり、最終点検の手伝いをしつつ自分の方の演出の点検もしていったのじゃよ。

 ちなみに、朝早くやって来たシバルはおかしな行動をしないように春に見張ってもらっておるのじゃよ。

 そうして点検を終えたワシはシバルの元へ行くのではなく、イビラチャの控え室へと向かったのじゃよ。

 中に入ると、イビラチャは夏達の手によって白いタキシードに着替えさせられていたのじゃよ。

 ちなみに、このタキシードはワシが作った物で、いくつかの仕掛けがあり、そのうちの1つが体を太く見せる効果なのじゃよ。

 ただし、それはスキルの効果ではなくちょっとした目の錯覚からそう感じるだけなのじゃがな。

 どういう目の錯覚かというと、イビラチャが着ておるタキシードは白1色に見えるが、実際は2種類の白を使って横のボーダー柄になっておるのじゃよ。

 横のボーダー柄は人の体を普段より太く見せる効果があるので、イビラチャが普段より太く見えるのじゃよ。

 同じ白でも2色も使っていたらバレるんじゃないか?なんて思ったじゃろう。

 そうならないように2種類の白はよく見てもバレない白を使っておるのじゃよ。

 よく見てもバレない白ならボーダー柄に見えない、と思うじゃろ。

 しかし、そこが人間の面白いところで、人間の目は実はかなり優秀で白の違いを見分けることは出来るのじゃが、それを脳が違うと否定すれば見えていても認識しないのじゃよ。

 そうして残るのはイビラチャが太って見えるという事実だけなのじゃよ。

「着心地はいかがですか?」
「ふむ。この短時間で作った物にしてはいい感じだな」
「そうですか。それはよかったです」

 イビラチャは満足げに頷きながら胸を張っておるの。

 ぷぷ。自分がさらに太っているように見られておるとは思ってもおらんから、俺ってカッコいい、とか思っておるのじゃろうな。

 ワシから見れば白豚の虚勢にしか見えんがの。

 じゃから、機能を使って感情を完全にオフにして顔を微笑みで固定しておる夏以外のメンバーは必死に笑いをこらえておるのじゃよ。

 今だけは夏の感情をオフにする機能が羨ましいのじゃよ。

 などと思いながら見ておると、イビラチャがワシの存在に気づいて睨んできたのじゃよ。

 まぁ、採寸の時にかなりやり込めたので仕方ないことじゃがの。

「ワシの作った衣装を気に入ってもらえたようでやかったのじゃよ」

 ワシの言葉にイビラチャがかなり驚いておるのじゃよ。

 ちなみにじゃが、シャルフィムのドレスもワシが作った物じゃよ。

 もちろん色々な仕掛けが存在するのじゃよ。

「ふん。いい感じとは言ってないだろが」
「いい感じとは言っておったじゃろ」
「この短時間に仕上げた物としてはだな。俺が普段着ている服よりかは下だな」
「じゃろうな」

 別にそこまで頑張って作ったわけではないので、その評価でワシは十分なのじゃよ。

 しかし、ワシを貶せるチャンスじゃと思っておったイビラチャは、ワシがあっさりと認めたことに不満そうでワシを睨みつけてきたのじゃよ。

「くっくっく。これから結婚式を挙げる人間がそんな顔をするではないのじゃよ」
「誰のせいでこんな顔になってると思っている」

 嫌そうな顔をしつつも叫ばないあたりは、結婚式前だということをしっかりと理解してセーブしておるからじゃろうな。

 イビラチャでもこの程度のことは考えて行動出来るのじゃから、シバルにはやっぱりもう少し考えて行動してほしいと思うの。

「くっくっく。それじゃあワシは退散するとしようかの」
「なっ。貴様は何をしにきたのだ」
「衣装の最終チェックのためにきたのじゃよ」

 仕掛けの方もきっちり発動出来る状態になっておるし、それだけ確認出来ればワシがここに残る意味はないのじゃよ。

「だったらさっさと出ていけ」
「そうするのじゃよ」

 ニヤニヤしながら出ていくワシをイビラチャは最後まで睨みつけておったのじゃよ。

 さて、イビラチャの方は大丈夫じゃったし、そろそろシバルのところにでも戻るかの。

 待たせすぎだと怒ってきそうじゃが。

 というわけで、教会の中の商会が控え室に使っておる1室に戻ってきたのじゃが、

「待たせすぎだろが!」

 ほらやっぱりじゃな。

「待たせすぎも何も、1の鐘が鳴る前から勝手に店の前で待っておったのはお主の勝手じゃろうに」
「でも、ここに来てからは着替えることもせずにここに閉じ込めてどっか行ってしまうし、結婚式が始まったらどうするんだよ!」
「はぁ」

 ここが教会の中の1室で、そこに隠れているというのにどうしてこう普通に叫ぶことが出来るのじゃろうか。

 叫ぶことで外に声が聞こえてしまって隠れていることがバレてしまう、とか考えないのじゃろうか。

 考えないから叫んでおるのじゃったな。あっはっは。

 笑えんの。

 まぁ、そうなることを予測して防音結界はしっかりと張っておるのじゃがの。

「結婚式まではまだ時間があるし、ワシが外に出たのは乱入するための最終チェックのためじゃよ」
「それじゃあさっさと着替えさいたっ!」
「うるさいのじゃよ」

 叫びまわるシバルの頭を叩いてやると、シバルが殴り返してきたので避けながら腕を掴んで軽く投げてやるのじゃ。

「このヤロー!」

 それでも諦めずに殴りかかり続けてくるシバルを掴んでは投げ、掴んでは投げを続けて、最終的には拳を避けて春に向かっていくように背中を押したのじゃ。

「そこまでです」

 春は自分の方へ走り込んできたシバルの背後に回ると脇の下から腕を入れて羽交い締めにしたのじゃよ。

「離してください!春さん!」
「ぷぷ。昨日から何度も殴りかかってきたのに1度も触れることも出来てないお主じゃ一生かかってもワシを殴ることは出来んよ」
「グルルルル!」

 とうとう人の言葉を忘れて獣のように唸りだすシバルの姿をさらに笑ってやるのじゃよ。

「マスターもさらに煽らないでください」
「仕方ないのう」

 このあとに影響が出ても困るし、これくらいにしといてやるかの。

「シバルもせっかく着替えた服が乱れると困るので落ち着きなさい」
「え?」

 春の言葉に驚いたシバルはバッと下を向いてさらに驚いた表情を浮かべたのじゃよ。

 その理由としては、今着ておる服が先程まで着ていた普段着ではなく、昨日ワシが見せた和服じゃったからじゃろうな。

「え?え?いつの間に?どういうことだ?」

 そう言ったシバルはワシに視線を向けてきたのじゃよ。

「どうもこうも、お主が着替えさせろよと言ったから着替えさせたじゃけじゃよ」
「じゃけじゃよって、さっきまで俺の拳を避けてただけじゃんかよ。それなのにどうやって………」
「マスターはシバルの腕を取って投げる瞬間に徐々に着替えさせていましたよ」

 その言葉に1度視線を春に向けたシバルじゃったが、すぐに異常なものを見る目でワシを見てきたのじゃよ。

 もちろんワシの素のスキルではそんな芸当は出来ないのじゃよ。

 しかし、腕輪に付与された早着替えのスキルを使えば、ちょっとずつなら触れた相手を着替えさせることも可能性になるのじゃよ。

「慣れない服じゃろうから、ゆっくり歩いたり走ったりして慣れておくのじゃよ」

 シバルのその視線にくくっと軽く笑いつつ、ワシはアドバイスを送るのじゃよ。

「あ、あぁ」

 ワシのアドバイスにシバルが頷いたので、春が羽交い締めを解くとアドバイス通りにゆっくり歩いたり走ったのじゃよ。

「どうじゃ。動けそうかの?」
「あぁ。大丈夫だろう」
「なら、これを見るのじゃよ」

 ワシは懐から1つの水晶を取り出して机に置いたのじゃ。

 すると、水晶から光が伸びて壁に当たり、そこに結婚式の会場の中の映像が映し出されたのじゃ。

「こ、これは………」
「今の結婚式の会場の中の映像じゃな」
「会場の中の映像だって?映像ってなんだ?」

 そうじゃな。

 テレビとかを知らない異世界の人間じゃとそういう反応になるのじゃよな。

「遠くの場所の景色が見えてると思えばよいのじゃよ」
「ちょっと待て!そんな遠くの場所の光景を見せる魔道具聞いたこともないぞ!」
「そんなことより、今は会場のことじゃよ」

 もちろんワシもそんな魔道具が無いことは100も承知じゃよ。

 しかし、今回は乱入するタイミングが重要2なってくるのじゃが、そのためには中の状況がわからないと困るので作ったのじゃよ。

「た、確かにそうなんだろうけど」
「ならばしっかりと景色をみておれ」

 もう少しで結婚式が始まるということもあってか、会場の中にはすでにたくさんの人達が座って始まるのを待っておるのじゃよ。

「なぁ、なんか多くないか?」
「貴族の結婚式じゃから、これぐらいは普通じゃよ」

 秋から聞いた話では、今日の出席者は116名じゃ。

 ここで異世界あるあるその10。

 連絡手段は伝書鳩か手紙なのじゃよ。

 当然ながら電話やメールなんて一瞬で連絡する手段がないので、距離にもよるのじゃが、連絡には数日は確実にかかるのじゃよ。

 さらに異世界あるあるその11。

 移動手段は馬車か馬なのじゃよ。

 こちらも当然車・電車・飛行機なんて高速で移動出来る手段があるはずもないので、距離にもよるのじゃが、移動にも数日かかるのは当たり前じゃったりするのじゃよ。

 じゃからこそこれだけの人数が集ったことには少し驚いたのじゃよ。

 とはいえ、これはイビラチャの人望なわけはなく、ハイミャーの繋がりだったり、貴族の縦社会のおかげじゃろうな。

「え?俺ってこれからここに乱入するのか?」
「そうじゃよ。シャルフィムを助け出すにはここに乱入するしかないからの」
「ま、マジか?」
「マジじゃな」

 すると、数歩後ずさったシバルは頭を抱えてしゃがみ込むと震え始めたのじゃよ。

「無理だ」
「なにがじゃ?」
「あんな大人数のところに乱入するなんて無理だ」
「今さら何を」

(ゴーンゴーン)

 これは、4の鐘じゃな。

「4の鐘が鳴ったから結婚式が始まるのじゃ」
「無理だ」
「お主がこの結婚式に乱入して止めに入らなければシャルフィムを助けることは出来ないのじゃぞ」
「無理。無理だって」

 頭を振って無理と繰り返すシバルにワシはため息を吐いたのじゃ。

 怒り任せ、感情任せに考えもなしに行動出来るくせに、いざ冷静になって状況を理解した上で行動する時は怖気づいて何も動けなくなるとは、なんとも情けないの。

 そういう性格なのは最初に領主邸に侵入してシャルフィムの部屋の前に立った時の行動で理解はしておった。

 しかし、まさかこの状況になってまで怖気づくとは思わなかったのじゃよ。

「すいませんけど、もしもの時はお願いします」

 頭の中に思い出されたシャルフィムの言葉じゃよ。

 シャルフィムはこうなることを予想しておったのじゃろうな。

 もちろんワシも可能性の1つとして考えておったが、可能性は低いと考えておったのじゃ。

 なぜなら、彼女を助けるという強い理由と意志があったからじゃ。

 しかし、蓋を開けてみればシャルフィムの予想の方が正しかったのじゃよ。

 やはり、付き合いの長さは伊達ではないということかの。

「マスター。誓いの言葉が始まりました」
「シバル。もう時間は残されておらんぞ」
「無理、無理」
「シバル!」
「無理だって!」
「あー!もう!」

 ワシは早着替えのスキルで和服に着替えると狐の面を付けるのじゃ。

 すると、頭の上には耳が、おしりからは尻尾が生えてきたのじゃよ。

 それを確認してから緊急時の最終手段として用意しておった会場のど真ん中に移動出来る転移魔法陣の上に乗ったのじゃ。

 すると一瞬にして視界が代わり、無事に会場のど真ん中に転移出来たので思いっきり叫ぶのじゃよ。

「その結婚ちょっと待つのじゃー!」
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