「その結婚ちょっと待つのじゃー!」ってワシは何を言っているのだろうか?

だらけたい

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26.マスター失格

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 翌日になり、ワシはジンブウと一緒にマバダカラの屋敷へと潜入したのじゃよ。

「さて、ジンブウはとりあえず借金の契約書があるかどうかを探してみてくれんかの。あと、会計を管理しておる者がわかるのならその者も見張っておいてほしいのじゃよ」

 今回の件でマバダカラ側で1番怪しいのはやはり会計を管理しておる者じゃからの。

 ほぼ確定じゃろう。

 とも思わないこともないのじゃが、やはり調べて証拠が確定せんうちは疑わしきは罰せずじゃからの。

「くる。行って。了解」

 ワシの指示を受けたジンブウは早速いくつかに分裂して屋敷の中に散らばっていったのじゃよ。

 それを見送ったワシは『成長薬』という身長を伸ばす魔法薬を飲んで身長を170センチ超えまで成長させてから執事服に着替えたのじゃよ。

 本当ならこれくらいの身長になっておったはずなのに、なぜワシの身長は128センチしかないのじゃよ!

 本当にどうなっておるのじゃよ!

 いや!でもまだこれから伸びるという可能性は十分あるのじゃよ!

 日本にいた時には、大人になってからも身長が伸びている、という話を聞いたことがあるからの!

 これから大人になってからも徐々にでも伸び続けて、最終的には170くらいにはなるじゃろうな!

 おっと。ついつい先を見すぎてしまったの。

 大人になってからも身長が伸びてる人は稀、だの、ただの現実逃避だろ、だの聞こえた気がしたが、幻聴じゃろうな。

 よし。気持ちを切り替えてワシも仕事をしようかの。

 最後にもう1度だけ執事服がおかしくなっていないか、魔法薬の効果は大丈夫かと確認してから部屋を出たのじゃが、

「すまないそこの執事さん!」

 その声の方向を向くと、ワゴンを押したコックが向かってきていたのじゃよ。

 さて、今のワシは執事なんじゃし、執事として対応しないとの。

「なんでしょうか?」
「今時間はあるか?」
「えぇ。時間はありますよ」

 元々この屋敷の執事ではないので仕事が割り振られているわけもないから、時間なんていくらでもあり余っておるのじゃがの。

 と内心では思っておるのじゃが、表面はしっかりと笑顔で対応するのじゃよ。

「そうか。それは良かった!」
「どうかしましたか?」
「いや!他の使用人達は忙しそうだったから代わりに俺が紅茶とお菓子を持っていこうと思ったが、ちゃんとした入れ方とかわからないからすまないけどこれを奥様とお嬢様のところに持っていってくれないか?」

 それなら私もわかりかねます、と言いたかったのじゃが、同僚の忙しさをしっかりと理解し、それならばわからなくても俺が持っていった方がいい、と考えて行動を起こしたこのコックの優しい心配りを前にしてはそんなことは言えぬの。

「わかりました。私が持っていきます」
「本当にすまないな」
「いえいえ。困った時はお互い様ですよ」

 そうワシが言うと、コックはニカッと笑ったのじゃよ。

 安全にいくのなら、ここで話を切り上げて別れた方がよいのじゃが、このコックの笑顔を見ておるとふと言いたくなったので危険を承知言ってみるのじゃよ。

「しかし、奥様やお嬢様は正しい紅茶の入れ方を知らなかったからといって怒るような人達ではありませんから、あなたが持っていっても別に大丈夫だったと思いますけどね」
「そうだろうけど、やっぱり本職が入れた方が美味しいだろうからな」

 そう言って微笑むコックを見て微笑みながら、やっぱりこの屋敷はいい職場なんだろうな、と思ったのじゃよ。

 まぁ、初めて会った時のマバダカラがお人好しの塊のような奴じゃと思ったから、その妻や子供もお人好しとはいかなくとも優しい人物ではないかと想像しておったが、その通りで良かったと思えるのじゃよ。

 なにせ、助けるならイビラチャのような嫌な奴ではなく、シャルフィムのような良い人を助けたいと思うからの。

「料理の本職が何を言ってるんですか」
「料理と紅茶はまた別物だからな。すまないが頼んだぞ」
「わかりました」

 ということでワゴンを受け取ってコックを見送ったのじゃが、ここで1つ問題なんじゃが、肝心の奥様とお嬢様の居場所がわからないですのじゃよ。

 ついついあのコックのためと思って引き受けたのじゃが、後先を考えずに引き受けたのは失敗じゃったの。

 仕方がないの。

「ジンブウ」
「来て。ついて。してる。理解」

 まさかこの短時間で本当に奥様とお嬢様の居場所を探しておったとは………。

 ワシから頼っておいてなんじゃが、確実に無茶振りしたと思っておったのじゃがの。

 それに対してワシはまだ何もしておらず、それどころか無駄な仕事を引き受けてさらにジンブウの手を煩わせるとは………。

 マスター失格じゃのう。

 とはいえ、そんなことをジンブウに言ったところで強めの否定が返ってくるじゃろうし、今は心の中で盛大に土下座しておこう。

 そうしてジンブウの案内のもと屋敷の中を歩いておったが、確かにコックの言ってた通り使用人達はかなり忙しそうに歩き回っておるの。

 それもこれも、今回の依頼の件が関係してそうじゃの。

「ここ」

 そんな風に思いながら歩いておると、服に同化しておったジンブウが1つの部屋の前でそう言ってきたのじゃよ。

「ありがとう、ジンブウ」
「いえ」

 さて、ここからは少し気を引き締めていかんとの。

 なにせ、この部屋の中におるのはマバダカラの妻と今回の依頼でワシが救い出すかもしれない娘なのじゃからの。

 まぁ、別にボロを出したところで気にするようなことではないじゃろうし、まだ依頼を受けたわけではないからどうにでもなるしの。

 じゃからこそ、気を引き締めるのは少しだけじゃ。

 そう思って少しだけ気を引き締めて扉をノックしたのじゃよ。
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