不器用な双子の恋

アオト★★

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第十九話 「二回目のキス」

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第十九話 「二回目のキス」

紅林君は転校していった。
あれから一ケ月 
私と祭は穏やかな日常を取り戻していた。
私はあれから
暫く精神的に不安定な日々を過ごしていたが祭と透と緒方先生が
私を励ましてくれたから立ち直ることが出来た。
私は祭に「ヒロの時はありがとうね」って素直に言えた。
祭は「うん」そういってニコリと笑った。
最初は私に成りすまして平然と私に嘘をついた祭に腹がたっていたが、
今回の事で祭と透に助けられた・・・。とても感謝している。
二人がいなかったら今も私は紅林君から離れることが出来なかったと思う。ヒロからも・・・。なんだかんだいっても私と祭は二人しかいない双子の姉妹なんだ・・・・。
祭が双子の妹で本当に良かったと心から思った。
そして透にも・・・透はもしかしたら祭の事が好きなのかもしれない。
なんとなくそんな気がした。それに私も緒方先生の事が好き。
紅林君の事で緒方先生には随分心配させてしまったから・・・
それにあの時のキス・・・あれは現実の事なんだよね・・・
そうだとしたら、緒方先生、期待してもいいですか?
私、先生に告白する!!!担任の先生を好きになるのはいけないことなのかも
しれないけど私、緒方先生がこんなに好き。
さっき学校から帰ってきた私は制服姿のまま放課後の学校に向かった。
放課後の教室には誰もいなかった。時計は夜の七時を廻っていた。
校内のクラブ活動をしていた生徒たちはもう帰ってしまった。
私は薄暗い校庭をぼんやりと眺めた。
その時だった。「まだ、誰かいるのか?」緒方先生が教室のドアを開けた。
「夏海・・・何やってるんだよ!こんな遅くまで。帰ったんじゃないのか?」
緒方先生が教室に入ってきて教室のカーテンを閉めた。
「先生!!好き!」私はそう言って緒方先生に抱きついた。
「夏海まずいよ。ここじゃ」緒方先生がそう言った。
その時教室の電気が突然パッと消えた
「えっ、なんだ?停電か?」そう言ってカーテンを少し開けて緒方先生は窓の外を見た。
「いや、他の家は電気がついてる。学校だけかな??」
その時、「誰かまだいるのか?」ガラリとドアが開いて懐中電灯が暗い教室を照らした。

「ヤバい。隠れろ!」緒方先生はそう言って私の手を引っ張って教壇の下の
わずかなスペースに私を押し込んで自分は教壇に立った。
「すみません、います。ちょっと用事で居残ってるんですよ」
警備員が開けた廊下の電気はついていることを緒方先生が確認した。
警備員は、緒方先生だとわかると
「ああ、そうでしたか、この教室の電球が切れてしまったみたいですね
明日なおしてもらいましょう。すみませんが、用事があるなら職員室を
使って下さい。」そう警備員はいって去っていった。
「わかりました。ありがとうございます」そう緒方先生は言った。
私は警備員に見つからないかドキドキしていたが緒方先生がうまくいってくれたので
ホッとした。
先生は廊下に誰もいないことを確認して教室のドアを静かに閉めた。
「先生・・?」再び真っ暗になった教室に私は不安になった。
シャー。っとカーテンが開く音がした。
そして月明りが教室を小さく照らした。私は教壇から出た。
「今夜は月が綺麗だな~」「・・・もう。先生びっくりさせないで・・」
って言ったら先生に抱きしめられていた。ドキドキ。私の心臓の音が大きくなった。
「緒方・・先生?」私が顔をあげて先生の顔を見たら「俺でいいのか?本当に」
そういって緒方先生は、二人だけしかいない月明りの教室で
私に二回目のキスをした。そのキスは優しく甘くて切なくて・・・私の心を甘く溶かした。

つづく


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