7 / 44
入学編
第七話 : 本当の友達
しおりを挟む「⋯“黒魔術”か⋯⋯」
洗脳、調教、黒魔術―――人の思考を自分の思うがままに変えるには並大抵の魔法じゃ無理だ。それこそ、一万人に一人の確率で生まれる“闇魔法”の属性を持っているなら、分からないが。
小刻みに震える手で、茶色に変色した本のページを次々と捲る。所々に昔付いたであろう血の跡が今でも残っていた。
人の思考を強制的に操る―――
相手の思考を操り、行動すらも自由自在に変えてしまう。この能力は、あまりに多くの人間を魅了した。
“力を持たない者でも使えるようになりたい。”
そうして生まれたもの。それが“黒魔術”だ。
本来だと手にすることができない力を強制的に使えるようにする。そんな黒魔術は、時に生きた人間すらも材料としてしまうため、現在は自国に限らず、全ての国で禁止されている。
⋯⋯そうだ、黒魔術はあまりにも代償がでかすぎる。材料を揃えるのもそうだが、大量の魔力だって必要だ。いくらあの弟が首席だとしても、黒魔術を扱うほどの魔力を持ち合わせているとは考えにくい。それに、今の時代昔みたく協力者を募って魔力を合算することも難しい。
もし仮に何らかの方法で成功させても、黒魔術を使用した人間には“黒い模様”が体の何処かしらに現れる。そんな、いつバレてもおかしくないことを――少なくとも、彼が騎士団長の養子である以上、使ったとは考えづらい。
となると、やはり洗脳か調教の類いなのか⋯⋯
「?ウィーリア、どうした、ボーッとして。電気消すぞ?」
しかし、洗脳を受けた人を見分ける技術は今の僕にはない。確かに沢山の時間を共にした彼なら洗脳もできるかもしれないが、弟のロイが兄であるレイを洗脳する理由が思いつかない。
⋯でも、おかしいだろ。あんな、あんな凶暴で、身の毛のよだつような気配を放つ男を、さも当然のように“かわいい”と言うのは。全身鳥肌が立つほどの視線を持つあの猛獣相手に恐怖心を抱かないのは。
ただの人見知り?そんな訳無い。あれは、そんな次元じゃない。
そう、きっと何か理由があるはずだ。レイがあの気配を間近で受けてもなんとも無い、理由が。
きっとあるはずだ。僕が思いつかないだけで、なにか、まだ―――
「ウィーリア?」
⋯⋯でももし、何もレイが受けていない場合、この場合、あの威圧を一切感じないレイの方が、おかしいんじゃ―――
「うお、なんだこれ。見たことない魔法式だな―――」
「う、うわっ!!?」
やっと気づいたか、とでも言うような顔をするレイに謝罪の言葉を入れつつ、僕は持っていた本を急いで枕元へとしまった。
「さっきの何だったんだ?見たことない魔法式だったけど」
「そっ、そうなんだ。昔のやつで、考古学の本にちょうど載ってたんだ」
「ふーん。なぁ、その本読み終わったら貸してよ」
「だっ、だめ!!⋯⋯あ、こっ、これは僕の家で代々受け継がれてるものだからさ⋯⋯」
一瞬声を荒げてしまったせいで、レイを驚かせてしまった⋯⋯でも、しょうがないんだ。
そうしていると、廊下から見回り点検をしている先生の足音が徐々に近づいてくるのに気づいたレイが、急いで電気を消し、自分の布団に潜り込んだ。僕も後を追うように、急いで布団に潜ると、枕下にしまっていた本を抱えて、それを隠すように体を小さくまるめた。
⋯⋯これも、大切な親友のため。初めてできた、“本当の友達”のため。今はまだ、分からないけど。その時が来たら―――
やけに冷え込む初夏の夜。静寂に包まれた王都の中で一人、ウィーリア-メイは、そう固く心に刻んだ。
295
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
正義の味方にストーカーされてます。〜俺はただの雑魚モブです〜
ゆず
BL
俺は、敵組織ディヴァイアンに所属する、ただの雑魚モブ。
毎回出撃しては正義の戦隊ゼットレンジャーに吹き飛ばされる、ただのバイト戦闘員。
……の、はずだった。
「こんにちは。今日もお元気そうで安心しました」
「そのマスク、新しくされましたね。とてもお似合いです」
……なぜか、ヒーロー側の“グリーン”だけが、俺のことを毎回即座に識別してくる。
どんなマスクをかぶっても。
どんな戦場でも。
俺がいると、あいつは絶対に見つけ出して、にこやかに近づいてくる。
――なんでわかんの?
バイト辞めたい。え、なんで辞めさせてもらえないの?
――――――――――――――――――
執着溺愛系ヒーロー × モブ
ただのバイトでゆるーく働くつもりだったモブがヒーローに執着され敵幹部にも何故か愛されてるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる