27 / 30
2章
8話 きっとまともという言葉はまともな奴に限る
しおりを挟む「あははは!あの受付の人、めっちゃ驚いてたわね!」
「そうですわね!確かこんな感じでしたかしら?「う、え、あ、あなた達で本当にクリアしたんですか…?」」
「ぷっ、あははは!そうそう、そんな感じ!」
「俺とカトレア何もしてねえけどな」
浮かれるカトレアに一応釘を打っておく。
あの熊型モンスターは長年の間討伐されておらず、サマラクトの人達も隣街からの輸入などで困っていたのだそうだ。
そんなやつをよくもまあ倒せたもんだ。
「それより、この報酬金は皆で別けるってことでいいな?コエルとミーナ、シュバリエさんには無論多めで」
俺は台に置かれている大量の金貨を横目に問う。
この世界のお金は札は無く、全てが硬貨で出来ている。硬貨は金貨、銀貨、銅貨で価値が分類されており、金が一番上で銅が一番下となる。それぞれの表面には数字が刻まれ、これまた数値が高いほど価値が上がる。
報酬金からして、ここにあるだけでざっと百万はあるらしい。
…と、俺は油断しないぞ?お前の手の内は読めているんだからな、カトレア!
俺の提案にまたなんかの言い争いが起こるのではないかと身構えた、その時だ。カトレアから発せられた言葉はあまりにも意外なものだった。
「良いわよ」
「「「え」」」
「あら~」
「ちょっと何よ「え」って!私をなんだと思ってるのよ!」
「「「ビームする人」」」
「あら~」
「声揃えてなにそれ!っていうか何で私がつっこまなきゃなんないのよ!つっこみはタケダが担当でしょうが!あーあ!そんなこと言うなら全部私が貰っちゃおうかなあ!」
「分かったから!ごめんカトレア!皆で別けよう!」
拍子抜けした俺と皆の前に、次々と金貨が積まれて行く。
「じゃ、私焼きそば買って来る!」
金貨片手にそのまま風の如く走り去って行くカトレアにシュバリエさんが微笑む。
「あらあら~そんなに嬉しかったのね~」
「そうなんですかね……?」
意外なこともあるもんだ。
コエルもカトレアの言動に煮えきれない感じだったが突然ハッとし、金貨をむんずと掴むと全てミーナに持たせ始めた。
「お、お嬢様…!溢れちゃいますぅ…!」
「もたもたしていられませんわ!さあ、私達も行きますわよ!」
「ど、どこへですか?」
「決まってますわ……カード売場です!」
そう言ってカトレアとは反対方向に進んで行くコエルとミーナを見送ると、この場には俺とシュバリエさんが残ったわけだが-
「………」
今聞くべきだろうか?先の瞬殺劇のことを。
シュバリエさんはクエスト前、ここで「ステータスを初めて見たから強くなった理由が分からない」と言っていたが、あれは恐らく嘘だ。
どう考えたって初心者の人が本来の武器を使わずに、袋でましてや目にも止まらない速さで仕留めるなんて常人に出来る事ではない。
もし、そんな実力を持つ人なら俺らに同行する意味は?ギルドの二階で見てた意味は?
シュバリエさんって……一体何者だ?
「…どうしたの~ユリヤくん~?具合でも悪い~?」
「え、ああ…いえ、平気ですよ。ちょっと考え事をしてたので」
シュバリエさんに話し掛けられ、思考を中断する。シュバリエさんの天然ぶりを見る限りいつも通りな感じだし、俺の考え過ぎか?
「それなら良かった~。わたしてっきり何か聞きたいことがあるんじゃないかと思っちゃった~」
「……え?」
「じゃ~わたしは、家に一旦戻るから~。また後でね~」
-ガランガシャガシャン
そういえばシュバリエさんはここの出身とか言ってたっけ。
鎧を引き摺る彼女の後を付けてみようかと一瞬思ったが、さっきのシュバリエさんの言動で不安を煽られ、自分でも驚くほどあっさりと諦めてしまった。
「うん…臭わない…!」
俺が異世界で稼いだお金で最初に買ったのが服になった。
この国の今の季節は夏ということなので上はブイネックと胸ポケットが付いた黒の半袖に、下は薄い生地で作られた青の長ズボンを身に付けた。小物にはポーチらしきバッグがセールで売り出されていたためそちらを頂戴し、腰に装着。
今まで着ていた学校指定の夏用の制服は、至るところが破けてボロボロ、しかも臭かったのでこの際にと思い捨ててやった。
服が新しくなったお陰で周りから変な目で見られなくなった俺の次なる目的地は、今日何度目かのギルド。
目的は勿論、
「スキルが欲しいんですけど!」
「では、少々お待ちください」
最初、武器や防具を買おうかとも思ったのだが非戦闘タイプの俺としては、折角スキルを多く取得出来るのにスキル枠がスカスカなのはどうなのかと思ったのと、スキル次第で武器が無くとも攻撃手段が増えるんじゃないかと思ったからだ。
それにお金はまだまだあるし、それからでも遅くはない筈。
「お待たせ致しました、こちらの魔法倶に手をかざしてスキルを宿すことが出来ます。その際は一万ゴールドをいただきますが」
「構いません!お願いします!」
一万円分の金貨を渡し、石板の様な装置に右手をかざす。すると、装置が光り出し……
「宿りましたよ」
「早えっ!…ごほんっ、えーっと……そのスキルって…」
「これは《自動回復》ですね。一定時間毎に体力を回復するスキルですが、職種が旅人ですので一時間に掠り傷の1%ほどしか回復しませんね」
「うっ…」
やはり、どこまでも旅人の謎過ぎる特殊能力が邪魔をする。
けれど俺は諦めない。諦めなければ、今よりましなスキルが現れると信じているから。
「もう一度お願いします!」
再び一万ゴールドを払い、俺は自分の可能性に掛けてみた。
その結果-
何回やっただろうか。
《空中飛び》
空気中を地面のようにジャンプする事が出来るが、旅人の効果で下へしかジャンプ出来ず、一回のみとなる。
《息止め》
一定時間呼吸を止める事が出来るが、旅人の効果で一秒しか呼吸を止められない。
《見切り》
対象のあらゆる動きを読み取れるが、旅人の効果で対象が一人、一秒しか読み取る事が出来ない。
《奪取》
自分の視認出来る範囲で対象の持ち物を奪う事が出来るが、旅人の効果で半径1メートル以内の対象の持ち物を一秒だけ奪う事が出来る。
《瞬間移動》
自身の魔力の数値が多いほど瞬間移動出来る範囲が広がるが、旅人の効果で半径五メートルの範囲を一秒だけ瞬間移動出来る。
まともなのがねえよ。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※基本週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる