きっとあの世界には興味がないっ!

yumecycle

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2章

9話 きっとウルトラな男は五分ももたない

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「どこだ、ここ」

 スキルの件で絶望して、街から裏路地に入り適当に歩くこと数分。
 俺は迷子になっていた。

「どうなってんだここは…」

 ただの裏路地なら、適当に歩いても街中には出られる筈。
 ところが、さっきから歩いても歩いても壁、壁、壁で同じ景色が連なるばかり。一向に進んでいる傾向が見られない。寧ろ、ずっと同じ所に居る気さえして来る。
 俺はその場でこの状況の打開策を考える。
 どうする?何か案が…………あ。

 そうだ。テレビで見たことがあるが洞窟の中で迷子になった時、指先を口の中で湿らせて風の吹いて来る方向を読み取って脱出するという技があった。
 ここは裏路地だが試せるものは試してみるべきだ。俺は早速人差し指を湿らせ、風の向きを感じ取る。

「……………………………………………………」

 無風。見事なまでの無風。
 くそ。全然駄目だ。

「はあ………」

 俺は一生ここで暮らすのか、と思いふと空を見上げて気付いた。

「屋根……」

 あそこまで登れれば屋根同士を渡ってこのエンドレスロードから抜け出せるんじゃないか。
 じゃあどうやって登ればいい?
 俺の力を使えばいいだろ。

「そうか…!」

 《瞬間移動》を使えばあの距離なら難なく移動出来る。
 俺は頭の中で瞬間移動するイメージを強く思い浮かべ、発動した。
 すると、

「おお!すげえ、本当に一瞬で-」

 俺は一秒で落胆した。

「一秒だって忘れてたー!」

 そうだよ、俺のスキルは全ての効果時間が一秒きっかりで、使った後は最低五分は待たないとまた使えるようにはならないんだよ。
 こうなったら意地だ。五分後に再チャレンジし上から街中への道を地道に探って行くしかない。

「……ん?」

 そうやって俺は地べたで胡座あぐらをかいた途端、角の向こうから足音が聞こえて来た。足音はどうやら走っているらしく、その音はどんどんでかくなりこちらへ近づいて来ることが分かる。
 占めたぞ。走って来るその人に訊けば脱出できるし、例えその人も迷子だったとしても心強い味方になってくれる。
 俺が立ち上がろうとした瞬間、遅かったと悟った。

「…!退いてー!」

「あ」

 ドオン!
 俺達は勢いよく正面衝突し、お互い地べたへ尻餅をついた。

「いつつ…ごめん、大丈夫?俺が余所見してたせいで」

「ううん。こっちこそごめんね?私、急いでたから止まれなくて…」

 差し出した俺の手を掴んでくれたのは水色のショートヘアーに水色のローブを身に纏った、なんとも水色尽くしの女の子だった。外見は俺と同い年ぐらいだと見受けられるが。
 水色の女の子は「よっこいせ」と立ち上がると、

「じゃ、私、これから急ぎの用があるから。また会う時があれば…」

「あ!いや、ちょっと待って!」

 俺は慌てて彼女を止める。

「…えっと、何か?」

「街中へ出る方法を、教えて下さい……」






「…そっか、迷子になってたんだね」

「う、うん……」

 改めて言われると恥ずかしくなり、頬を掻く。
 一連の流れを説明した俺は彼女に道を案内させて貰っていた。

「でも、初めて来た人には仕方ないよ、ここは街中でも有名な『迷宮』って呼ばれてる場所だから」

 迷宮…?やべえだろ。何でそんなもんを街に作っちゃうんだよ。

「マジか……じゃあ君はサマラクトの出身で?」

「ううん。私も違うよ。私はただサマラクトに来る度に何回も通ってる内に道を覚えちゃっただけだから」

 苦笑いを浮かべる彼女に俺は唸った。

「ん?なら今日は何でこの道を?そういえば、急ぎの用事があるとか言ってたけど…」

「あ…」

 俺の言葉で水色の女の子は一瞬で固まってしまった。
 あ、これ、俺やっちゃったパターン?

「あの…」

「…ごめん。悪いけど、走るよ!」

「ええっ」

 急に全力疾走する彼女を俺は必死で追い掛けた-






「ぜえ…ぜえ…ぜえ……」

 は、早すぎる。なんだあの女の子。
 俺は息を整えながら目的地と思われる場所の前に立つ、彼女の様子を見る。

「んと…大丈夫?」

「ま…」

「ま?」

「間に合わなかった…!」

 頭を抱える彼女の目先を追うと、そこはスイーツ専門店で看板には限定三十個と書かれた文字の上に売り切れのタグが貼られていた。
 これはもしや、いや、もしくしなくても…俺のせい、だよな?

「ごめん!俺が道案内頼んだせいで…」

「気にしないで…忘れてた私がいけないんだから」

 そう言って力なく笑う彼女。
 まずいな……なんとかしなくては…何か、何か…。

「あれ?タケダ、あんた何やってんの?」

「カトレア…」

 スイーツ専門店から出て来たのはカトレアだった。その手にはその店のロゴが描かれた袋を持っている。

「お前、それってまさか…」

「これ?いいでしょ?私が限定三十個、全部買い占めてやったの」

 おめえが犯人かよ!ってつっこみは置いておき、

「それ!一個よこせ!」

「あ、あんた何すんのよ!」

 俺は一個奪い取ると、水色の彼女の元へ。

「これ、お詫びに」

「…え?これ、いいの……?」

 信じられない物を見るかのような目で訴える彼女に俺は頷き返す。

「は?いいわけ…」

「お前黙ってろ」

「むー!むー!」

「ありがとう…えっと、君の名前はなんて……」

「俺は…」

「こいつはタケダ!ただのド変態よ!」

「おまっ!出鱈目言うな!真面目に黙ってろ!」

「嫌!離しなさいよ!」

「いてて!耳を引っ張るな!」

「ふふ…タケダくん、だね。それじゃ私、帰るから。またね」

「あー!俺の名前ユリ……行っちまった…」

 既に彼女の姿は遠くの方に行っていた。本当に早いな。

「あはは!ざまあないわね!私の物を奪ったあんたが悪い!」

「いや違うね!三十個買うお前が悪い!」

「いやあんたが…」

「いやお前が…」

 俺達の言い争いは夜まで続いた。
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