兄嫁〜あなたがくれた世界で〜

SAKU

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二章

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春が終わり、梅雨が始まる頃。
世那の生活は“ある変化”を迎えていた。

冴夢が、ほぼ毎日のように世那の部屋へ来るのだ。

「……兄ちゃん、これ見て。」

そう言って、手にしたプリントを差し出す。
居場所がない子は、居場所を探すのが上手い。
冴夢は、静かで温かい世那の部屋を迷いなく選んだ。

ある日は宿題を。
ある日は世那の隣でテレビ。
ある日は黙って漫画を読む。

まるで、昔の大我が隣に座っていた頃のようだった。

(……あいつも、こうやって俺にくっついてきてたな。)

世那はふっと笑う。

だが、冴夢の帰り際――
アパートの廊下から、男の怒鳴り声が響く。

「また勝手なことして……!」

冴夢の肩が小さく震える。
その手を、世那はそっと包んだ。

「今日は……ゆっくりしてけ。」

冴夢は小さく頷き、胸の奥で何かを押し殺すように息を吸った。



一方、大我の毎日は“受験の嵐の中”だった。

模試、面談、父との進路の衝突。
大我は父に言われるまま
「会社を継げる大学」を選ぶべきか悩んでいた。

(兄ちゃんみたいに……“やりたいこと”が分かってるほうが羨ましいよ。)

でも現実はそう簡単ではない。

夜、大我は兄からの手紙を読み返し、
机の上で深く息を吐いた。

「兄ちゃん……ほんと、すぐに他人のこと抱え込むんだから……」

苦笑しながらも、
その優しさが羨ましくて、痛くて、誇らしかった。

そして――
大我もペンを取った。
兄が自分に向けてくれた便箋に、同じように返すために。

──────────────────────────
✦手紙
◆世那 → 大我

大我へ。
そっちは受験どうだ?
体だけはちゃんと休めよ。
俺に似て夜更かしするな。

最近な、隣の冴夢がよく来るようになった。
宿題持ってきたり、テレビ観たり……
なんか、家にいたくないみたいだ。

俺が何かできるわけじゃないけど
来たいなら来ればいい、って思ってる。

大我のこと、昔みたいに思い出すよ。
お前も俺の部屋に入り浸ってたろ?

冴夢も……似てるのかもな。

でも、俺が勝手に踏み込みすぎたらいけない。
その境界線が、正直よく分からないんだ。

……大我はどうしてる?
父さんの会社のこと、考え直したか?

お前が選ぶ道なら、俺はどっちでも応援する。

世那



◆大我 → 世那

兄ちゃんへ。
受験は……まぁ、それなりに。
父さんとはまだぶつかってる。
将来のことって、考えれば考えるほど分からなくなるな。

兄ちゃんは、ちゃんと“やりたいこと”があるからすごいよ。
俺は……自信ない。でも、逃げないようにしたい。

冴夢ちゃんのこと、兄ちゃんが心配する理由分かるよ。
でも、兄ちゃんの部屋が“安全な場所”になってるのは
悪いことじゃないと思う。

ただ、無理だけはすんなよ。
兄ちゃん、すぐ全部抱え込むから。

……その子、兄ちゃんに懐いてるみたいだな。
なんか、ちょっと羨ましい。

俺も昔、兄ちゃんの部屋が一番落ち着いた。

兄ちゃんのそばは、あったかいからさ。

大我
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