兄嫁〜あなたがくれた世界で〜

SAKU

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九章

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春の風が制服の裾を揺らす。

胸に新しい校章。
肩に少し重たい通学バッグ。

冴夢は校門を見上げた。

(……本当に、ここに立てたんだ。)

横では世那が小さく微笑んでいた。

「行ってこい、さゆ。」

「……うん。」

学校に入る背中を押すように
世那はそっと頭を撫でた。

それは父でも兄でもない、
でも恋人とも違う――
安心の色の仕草だった。

冴夢は胸があったかくなりながら校舎へ歩く。

そして放課後、
アルバイト面接へ。

帰ると世那が聞く。

「疲れてないか?」

「……ちょっと。
 でもね、世那くん。働けるの嬉しいんだ。」

“自分のお金”が持てることが、
こんなにも誇らしいなんて知らなかった。

世那は優しく笑った。

「そっか。
 さゆがそう言うなら、俺も嬉しいよ。」

冴夢はキッチンに置いたエプロンの紐を指で触れながら、
心の奥がほわっと温かくなるのを感じていた。

(世那くんが……嬉しいって言ってくれるの……
 なんでこんなに胸が熱くなるんだろ……)

その感情に名前をつける勇気は、
まだなかった。

──────────────────────────

日々の生活は、静かに積み重なっていった。

夕方、一緒に買い物をする。
夜は、同じソファで映画を見る。
朝は、世那のコーヒーの匂いで目が覚める。

そのたびに
胸の奥がじわりと甘くしびれる。

触れてないのに、触れているみたい。
言葉にしてないのに、伝わっているみたい。

冴夢は目を合わせるたび
意識してしまって、
気づくと世那から視線をそらすようになっていた。

そんな冴夢に、世那は気づいて――
胸の奥が少しだけ、痛む。

(……気づいちゃったかな。
 俺の気持ち……)

いや、違う。
これは恋と言ってはいけないものだ。

世那は自分に言い聞かせる。
“守りたい”を越える気持ちなんて、
あってはいけない、と。

でも。
冴夢の笑顔を見ると、
心の奥があたたかい痛みに包まれる。

(これはなんなんだろう、ほんと……)

自分に問いながら、
答えを出すことをまだ恐れていた。

──────────────────────────
ある休日の午後。
ふたりでスーパーの袋を下げて歩いていると、
風がふっと強く吹いた。

冴夢の髪が舞い上がる。

「わっ……!」

世那が反射的に、
冴夢の髪をそっと押さえた。

「……風、強いな。」

「……ありがと。」

指先が、ほんの一瞬だけ触れた。

ただそれだけ。
それなのに冴夢の心臓は、
風の音よりも大きく跳ねた。

(どうしよう……触れられただけでこんな……)

胸の奥がじんわり熱くなる。

世那は世那で、
自分の指先に残った温度を隠すようにポケットへしまう。

(……俺、ちょっと……近づきすぎてるかもしれない。)

そう思うのに、歩幅は自然と冴夢に合わせてしまう。

ふたりの距離は
“親子でもなく、恋人でもなく、夫婦未満で”
そのどれよりも繊細な場所にあった。

触れてしまえば壊れるかもしれない。
でも、触れずにいると寂しい。

そんな矛盾だけが静かに育っていく。

──────────────────────────

冴夢の誕生日が近づいた頃。
世那は書店の帰り道、小さな宝飾店の前で足を止めた。

ショーケースの中でシルバーリングが光る。

(結婚指輪じゃない。
 でも……“家族になる証”として……
 何かひとつ形が欲しい。)

でも十五歳には重すぎる。
派手でも高価でもいけない。

けれど、何もないのも違う。

世那は悩みに悩んだ末、小さなミディリングを選び、
そっと店を出た。

(……こんなもんだろう。
 重くならず、でも大切にできるもの。)

紙袋を握る手が微かに震える。

これは恋じゃない。
でも恋じゃないと片づけるには苦しい。

(どうか……“家族の証”だと受け取ってくれますように……)

それは祈りに近い願いだった。

──────────────────────────
 ー夜。
ケーキを食べたあと。

世那は小さな箱を差し出した。

「さゆの……誕生日。
 おめでとう。」

冴夢は驚いて目を丸くする。

「えっ……何これ……!」

「開けてもいいよ。」

震える指で箱を開く。

淡い光を宿した、小さなシルバーリング。

冴夢は息を呑んだ。

(……きれい……)

世那は視線を伏せ、
少し照れたように言った。

「結婚指輪じゃない。
 でも……その……“さゆがここにいていい”って……
 ちゃんと形にしたくて。」

その言い方が優しくて、
冴夢の胸がぎゅっと締めつけられる。

「……ありがとう……世那くん……」

上目づかいで笑う冴夢の頬に、
世那の心臓が跳ねた。

一瞬だけ――
迷ったように伸びた手が、
冴夢の髪をそっと撫でた。

そして。

ため息みたいに軽い
ほんの一瞬の――“額へのキス”。

触れたか触れないか分からないほどの、
淡い、淡い温度。

冴夢の肩が小さく震える。

(……いま……何が起きたの……?)

世那はすぐ離れ、
顔を赤くして視線を逸らす。

「ごめん……誕生日だから。
 変な意味じゃなくて……その……」

「……うん。」

冴夢も顔を真っ赤にしながら、
胸にそっと指輪の箱を抱きしめた。

その夜、ふたりは同じ屋根の下で
同じ気持ちをごまかしながら眠った。

“これは恋ではない”と。
まだ恋と呼んではいけない、と。

だけど――

恋は確かにそこにあり、形になり始めていた。

──────────────────────────
リビングの明かりは控えめで、
夜の静けさが部屋を包んでいた。

冴夢はダイニングテーブルで宿題をしていて、
世那はソファでノートPCを開いた。

コーヒーの香り。
シャープペンの音。
画面の青い光。

それだけのはずなのに――
世界は妙に穏やかであたたかかった。

(……こういう時間が、一番好きだな。)

冴夢はそう思いながら宿題のページをめくった。

ふと、ソファにいる世那が
いつもと違う“集中の仕方”をしているのに気づく。

――画面をじっと見つめている。
――時々、言葉を探すように息を止める。
――そして、小さく…笑う。

(……書いてるんだ。)

冴夢はペンを止め、そっと見つめた。

世那はもう昔みたいに迷ってない顔をしていた。
作家としての世那ではなく、
“誰かのために書きたいと思っている顔”だった。

「……世那くん。」

「ん?」

柔らかく振り返るその目に、
冴夢は胸が、すこし…痛くなる。

「新しいお話、書いてるの?」

世那は迷いながら頷く。

「……うん。
 まだ全然まとまってないけど。
 なんか……久しぶりに、“書きたい”って思ったから。」

冴夢は嬉しくなった。

「書いてる世那くん、好きだよ。
 なんか……すごく、やさしい顔してる。」

世那は照れて笑った。

「さゆがここに来てから……
 少しずつ、書きたくなるんだ。
 なんでか分からないけど。」

(……そんなの……分かるよ。)

冴夢は胸の奥で答えた。
でも口にしたら壊れそうで言えない。

──────────────────────────

冴夢が宿題を終え、カップを片づけていると、
世那がふとつぶやいた。

「……さゆ。」

「ん?」

「もし……書けたらなんだけど。
 今度、読んでくれる?」

それは“作家・世那”のお願いではなく、
“ひとりの人間として、冴夢にだけ見せたい”という
慎ましい願いに聞こえた。

冴夢は少し赤くなり、胸が柔らかくなる。

「……もちろん。
 世那くんの書くものなら……なんでも読むよ。」

世那は照れながら笑う。

「ありがとう。
 さゆに言ってもらえると……書ける気がする。」

冴夢は頬に手をあてて、
胸の奥がくすぐったくなるのをこらえた。

(わたし……世那くんの“支え”になれてるの……?
 それって……すごく、嬉しい……)

その夜、世那の画面には
まだタイトルすらない “一行目” が生まれていた。

――君が笑ったから、世界が少しやわらかい。

それは誰にも見せない。
けれど冴夢だけが、そこにいる。

──────────────────────────
その原稿を閉じた夜。
寝る前の静けさの中、世那は便箋を取り出した。

◆世那ー大我

大我へ。

明日、入籍することにした。

さゆが16歳になるのを待った。
その間に、何度も考えた。

“守りたいだけ”じゃない。
“責任だけ”でもない。
ただ……彼女と生きたいと思った。

まだ恋だなんて言えない。
俺が言ってしまったら、さゆを縛ることになる。

だけど、あの子と暮らす中で、
俺はたくさんのものをもらった。

笑顔も、あたたかさも、
諦めていた“書く気持ち”も。

……大我。
さゆは、俺の人生を奪わなかった。
むしろ……取り戻してくれた。

お前にちゃんと伝えたかった。

兄ちゃんより。



書き終えると、胸の奥がすこしだけ軽くなった。

(よし……あとは、明日だな。)

冴夢の寝室の前を通ると、
扉の向こうに小さな寝息が聞こえた。

(大丈夫。
 俺がいるから……もう、あの子が外で眠ることなんてない。)

世那はそう思いながら、
そっと電気を消した。

──────────────────────────
翌日。
区役所の朝は静かで、少し肌寒い風が吹いていた。

冴夢は書類を抱えながら、
そわそわと世那を見上げた。

「ね、ねえ。
 本当に……いいの……?」

「うん。
 これは俺が決めたことだよ。」

書類に名前を書く冴夢の手が震える。
世那はその手をそっと包んだ。

「ゆっくりでいいよ。」

「……ありがとう。」

ペンが紙を滑る音だけが響く。

その瞬間――
ふたりの名字は、ひとつになった。

恋人でも家族でもないと言い張ってきた二人が、
世界のどこより静かに、“夫婦”になった。

冴夢は書類を抱きしめ、

「……わたし、ほんとに……世那くんの……」

と言いかけて、顔を真っ赤にして俯いた。

世那は冴夢の頭をぽんと撫でた。

「無理しなくていいよ。
 少しずつでいい。」

(俺の方こそ……落ち着け。)

胸に広がる“嬉しさ”は、
隠して、飲み込んで、静かに息を整えた。


──────────────────────────
入籍した日の帰り道。
世那は冴夢の買いたがっていた小さな店に連れて行った。

文具屋、カフェ、雑貨屋――
高校生の冴夢が好きな世界。

冴夢はアイスを手に笑った。

「入籍した日にアイス食べる夫婦って、変だよね?」

「いいじゃん。
 夫婦なんて、人それぞれだよ。」

「……そだね。」

二人で並んで歩く影は、
どっちが先か、どっちがどっちか
分からないくらい寄り添って伸びていた。

冴夢はアイスを口にしながら、
ぽつりと言った。

「……ねぇ世那くん。
 いつか本当に恋人になれたら……嬉しい?」

世那は一瞬、息を止める。

言ってはいけない。
でも、嘘もつけない。

「……そうだな。
 その時が来たら……嬉しいと思うよ。」

冴夢は耳まで赤くして、

「……そっか……よかった……」

とだけ言った。

ふたりは、気づかないふりをして歩き続けた。

──────────────────────────
 ー夜。

世那がコーヒーを淹れながら言った。

「さゆ。
 家族にさ、俺たちのこと……ちゃんと見せたいんだ。」

「……大我くんに?」

「うん。会ってみてほしい。」

冴夢は胸が少し高鳴る。

(世那くんの家族に……紹介されるんだ……?
 それって……なんか、すごい……)

「いつ来るの?」

「明後日。仕事の帰りに寄るらしい。」

「そっか……!
 じゃあ……ごはん、何作ろっか……?」

エプロンを握る冴夢の手が、
少し震えていた。

世那はその震えに気づきながら、
優しく言った。

「大丈夫。ありのままでいいよ。」

冴夢は小さく頷いた。

このときのふたりは知らなかった。
明日が、ふたりで過ごす最後の“普通の一日”になることを。

──────────────────────────

夕焼け色に染まる帰り道。

新しいノートを買い、
冴夢の好きなパンを選んで、
いつも通りの買い物袋をぶら下げて。

世那は車のエンジンをかけながら言った。

「明日、大我が来るから……
 今日は早く寝ろよ。」

「うん。楽しみ……!」

冴夢は笑っていた。
その笑顔は、
世那がこれまで守ってきた笑顔の中で
一番、晴れていた。

シートベルトを締める音。

アクセルを軽く踏む。

道路はいつも通り。
夕陽もいつも通り。

ただ一つだけ違うのは――

交差点の向こうから、
制御を失った大型トラックが
信号を無視して突っ込んできたこと。

そしてその一瞬を境に、
「名前をつけない恋」は
永遠に完成することなく、
その形のまま時を止める。
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