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四十三章
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──翌朝。
点滴の効果で、熱はようやく落ち着いていた。
まだ身体はだるくて重いけれど、昨日の“意識が薄れるギリギリ”の感覚とは違う。
大我は、ゆっくりとまぶたを開けた。
視界の端で——
椅子に座ったまま、うつむきながら寝てしまった冴夢が見える。
胸の奥が、ぎゅっとした。
(……ずっと……手、握ってたのか……)
自分の手を見下ろすと、冴夢の指がそっと重ねられていた。
弱ってる間ずっと握ったままだったのだろう。
タオルも飲みかけのスポドリも、全部“冴夢がやってくれた跡”が残っている。
(……俺が……守るつもりだったのに……)
ゆっくりと喉が鳴る。
(弱ったら……誰でも……こんなに心細いのか……)
自分が熱で朦朧とした時、
扉の向こうに“冴夢の気配”があるだけで救われた。
それと同時に、
扉を閉めた自分の愚かさにも気づいた。
(……あれ……冴夢だったら……どうする?)
胸が苦しくなる。
もし冴夢が倒れて、
もし冴夢が声を出せないほど弱って、
もし扉の向こうで返事がなくなったら——
自分は“発狂”していた。
冴夢は、
大我が鍵を閉めた瞬間、泣きながら震えていた。
聖が来てくれたのは奇跡だ。
(……でも、聖は“他人”なんだよな……)
大我はベッドの上で、ゆっくり息を吐いた。
聖は親友で、助けてくれた。
本当に感謝している。
けれど——
もし本当に命に関わる状態だったら?
冴夢の緊急連絡先は?
家族として病室に入れるのは?
手術にサインを書くのは?
大我は目を閉じた。
兄・世那の事故のとき。
自分は“兄弟だから”全部の説明を聞き、
全部の決断を迫られた。
(……冴夢は?
冴夢を守る立場の俺は?
俺は……なんなんだ……?)
胸がちくりと痛む。
(……足りない……
んだ……“立場”が足りない……)
冴夢を守りたい。
誰より近くで。
誰より先に。
誰より正当に。
そのためには——
(……家族にならないと……)
ゆっくりと目を開ける。
冴夢が寝息を立てている。
小さな肩。
細い手。
昨日、自分を必死で支えた指。
この子の“側で倒れる権利”も、
“側で支える権利”も全部持ちたい。
(……冴夢を……家族にする……)
その決意は、
熱よりも静かに、
深く胸の奥に沈んでいく。
──ちょうどその瞬間。
「……大我……?」
冴夢が目をこすりながら顔を上げた。
寝ぼけたまま覗き込む。
「大我……起きてた……?
……熱、下がってる?」
「……あぁ。だいぶな。」
冴夢はほっと息を吐いた。
「……昨日、ごめんな。怖い思いさせた。」
「ううん。いいよ。
でも……次はやめてね?
一人で倒れないで。
大我のこと…私だって守りたいんだから……」
言わないけど——
冴夢は夜中ずっと泣いていた。
大我はゆっくりと頷いた。
「……あぁ。
呼ぶ。
これからは……ちゃんと……呼ぶから。」
「……うん。」
冴夢は、またほっと笑った。
その笑顔を見ながら——
大我の胸の奥で、決意は静かに固まっていく。
(……俺が守る。
もう絶対……離さねぇ。
冴夢を……俺の家族にする……)
……でも。
(……プロポーズは……タイミング見て、だな……
……待てよ……)
ちょっとだけ笑った大我の横顔を、
冴夢は不思議そうに見つめた。
点滴の効果で、熱はようやく落ち着いていた。
まだ身体はだるくて重いけれど、昨日の“意識が薄れるギリギリ”の感覚とは違う。
大我は、ゆっくりとまぶたを開けた。
視界の端で——
椅子に座ったまま、うつむきながら寝てしまった冴夢が見える。
胸の奥が、ぎゅっとした。
(……ずっと……手、握ってたのか……)
自分の手を見下ろすと、冴夢の指がそっと重ねられていた。
弱ってる間ずっと握ったままだったのだろう。
タオルも飲みかけのスポドリも、全部“冴夢がやってくれた跡”が残っている。
(……俺が……守るつもりだったのに……)
ゆっくりと喉が鳴る。
(弱ったら……誰でも……こんなに心細いのか……)
自分が熱で朦朧とした時、
扉の向こうに“冴夢の気配”があるだけで救われた。
それと同時に、
扉を閉めた自分の愚かさにも気づいた。
(……あれ……冴夢だったら……どうする?)
胸が苦しくなる。
もし冴夢が倒れて、
もし冴夢が声を出せないほど弱って、
もし扉の向こうで返事がなくなったら——
自分は“発狂”していた。
冴夢は、
大我が鍵を閉めた瞬間、泣きながら震えていた。
聖が来てくれたのは奇跡だ。
(……でも、聖は“他人”なんだよな……)
大我はベッドの上で、ゆっくり息を吐いた。
聖は親友で、助けてくれた。
本当に感謝している。
けれど——
もし本当に命に関わる状態だったら?
冴夢の緊急連絡先は?
家族として病室に入れるのは?
手術にサインを書くのは?
大我は目を閉じた。
兄・世那の事故のとき。
自分は“兄弟だから”全部の説明を聞き、
全部の決断を迫られた。
(……冴夢は?
冴夢を守る立場の俺は?
俺は……なんなんだ……?)
胸がちくりと痛む。
(……足りない……
んだ……“立場”が足りない……)
冴夢を守りたい。
誰より近くで。
誰より先に。
誰より正当に。
そのためには——
(……家族にならないと……)
ゆっくりと目を開ける。
冴夢が寝息を立てている。
小さな肩。
細い手。
昨日、自分を必死で支えた指。
この子の“側で倒れる権利”も、
“側で支える権利”も全部持ちたい。
(……冴夢を……家族にする……)
その決意は、
熱よりも静かに、
深く胸の奥に沈んでいく。
──ちょうどその瞬間。
「……大我……?」
冴夢が目をこすりながら顔を上げた。
寝ぼけたまま覗き込む。
「大我……起きてた……?
……熱、下がってる?」
「……あぁ。だいぶな。」
冴夢はほっと息を吐いた。
「……昨日、ごめんな。怖い思いさせた。」
「ううん。いいよ。
でも……次はやめてね?
一人で倒れないで。
大我のこと…私だって守りたいんだから……」
言わないけど——
冴夢は夜中ずっと泣いていた。
大我はゆっくりと頷いた。
「……あぁ。
呼ぶ。
これからは……ちゃんと……呼ぶから。」
「……うん。」
冴夢は、またほっと笑った。
その笑顔を見ながら——
大我の胸の奥で、決意は静かに固まっていく。
(……俺が守る。
もう絶対……離さねぇ。
冴夢を……俺の家族にする……)
……でも。
(……プロポーズは……タイミング見て、だな……
……待てよ……)
ちょっとだけ笑った大我の横顔を、
冴夢は不思議そうに見つめた。
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