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第4章 ケズレルモノ
31 不安
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俺がソファーに寝転がっている時に、インターホンが鳴った。
多分この組織の何かの手続きのためだ――そう思って、玄関に向かい、扉を開けた。
この六〇四号室の扉の前にいたのは、檀野っていう名前の男。俺を見て安心したみたいには見えた。
「いたいた、ほれ、カード」
「ああ、あざす」
「じゃ、ゆっくりくつろぎな。すぐに対処は終わる、それまでそんなに待つことにはならないと思う。貴重な体験と思って楽しむといい」
「はあ……」
楽しめったって、どうすればいいのか――特別なことをする必要は、まあ、ないんだろうけど。
檀野さんは、間の抜けた俺の背を軽く叩いた。乾いた音が鳴る。うわ、と背を伸ばした俺に向かって優しそうに微笑むと、彼は、
「じゃな」
と言って、すぐに去ってしまった。
そんなに待たないと言っても、実際どのくらい掛かるのか。なぜかそれを聞けなかった。すぐに平穏な外の生活を送れるようになる、そう信じられたからかもしれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ロッククライミング含む今日のデートをキャンセルしていた。燐治さんのことを知って走り回ったのはそれから。
燐治さんに会うのを別の日にしてもいいかもと最初は思ったけど、もしそうしていたらどうなっていたか。いやホンット、そう考えると恐ろしい。
一旦解決できた――その安心の中で、組織・隈射目の食堂で、頼んだ大盛り炒飯を食べていた。
で、ふと思った。
今日のキャンセルの代わりに、実千夏に言っておかないとな。
スマホを取り出した。頬張った炒飯を飲み込んでから。
「日曜日、デートしようよ。今日の埋め合わせ」
「ホントに? じゃあ――」
その声に、多くの期待が込められてるってのは、よぉく伝わってきた。――応えたくなるな、こういう声を聞くと。
「スカイライクに行きたい」
え。
まさか隈射目の本部が隠されているスカイライクに行くことになるとは。実千夏がそうしたいって言ったしキャンセルのこともあったから、気分通りのことをさせてあげたいし、しょうがないとも思う。多分大丈夫だ。洋服店グリンモントの人には知らない振りをしてもらおうかな。
日が変わる前の夜。
まだ土曜日。
家で、自分の机を前にして宿題をしている時、スマホが鳴った。画面に出たのは『右柳さん』の四文字。
「もしもし」
「ああ、大樹くん。私、犬神。実はね――」
右柳さんのスマホを借りたんだな。
借りるほどのことが? まあそんなことはいいか。
そう思った僕に、彼女が続ける。
「分かったことがあって、それを伝えたかったのよ。船のことなんだけど――」
「船?」
「そう、あなたのお爺さんの、春彦さんの宇宙船。あれに乗ってきたルオセウ人は、二人いただろうって話よ」
「えっ」
お爺ちゃん以外にもいた? 本当に?
本当なら、その人はもしかしたら何かに関わってるかも。
あの追手の連中にも影響を? 捕まってしまったとか、そういうこともありえそうだ、だからマギウト使いがあんなに……?
直接話を聞きたいと思ったから、そう話してゲートルームに四本のシャー芯によるゲートを繋いだ。
こんな時いつも不思議な感覚になる。
死が隣にあるような、一歩間違えば何もかも失いそうな、そんな感覚。
いつものように慎重に通り、ゲートの役割を解除。操作もやめた。ほっとする。ゲートで誰かを助けた時も、今も、いつもそうだ、危険を解除できたっていう感覚の方が大きい。
隅の棚に置いている鍵を使ってゲートルームのドアから出ると、閉めて錠を掛けて――その鍵はポケットに。
犬神さんはどこかなと思いながら練習場を通って広間に出る。
と、目の前に本人がいた。
連れられて第二会議室へ。
僕は椅子に座った。犬神さんは長机に座った。――向き合いたいという意味もあったのかもしれない。
犬神さんは落ち着いた声で説明し始めた。
「船に髪の毛みたいな物があったのよ。で、どんな存在の毛なのかはともかく――複数の存在の毛なのか。一個体だけのものなのか。それが知りたかったから、地球の技術でだけど、毛同士の鑑定をして、その結果が出た」
ほう――と僕が思ったら、すぐに犬神さんが。
「数回鑑定した時、一致する物も一致しない物もあることが分かったの。それで、たとえば髪Aと髪Bを鑑定して、その結果一致しない場合、今度は髪Cと髪Dでも一致しなかったという組み合わせを探して、髪Aと髪Cが一致するか検査したの。それが一致する場合、髪Bと髪Dは必ず一致する、ということが続いた。完璧な検査をするために毛根と思われる部分が残っている毛だけを使った――で、髪Aと髪Bの二種類を基準にして、どちらに一致するかっていう検査だけを最後まで通してやってみた。採取された全ての検査可能な髪……らしき物のDNAは、どちらかに必ず九十九パーセントほど一致した」
手でジェスチャーを加えながらの犬神さんの説明は、僕にはとても分かりやすかった。髪Aから髪Dまでを混同しなかったから。
「え――ってことは、じゃあ、絶対に二人だと分かったってことですか? 三人とかでもなく」
「そう。絶対に二人。三人以上だと全然違う結果が出なきゃおかしいのよね」
つい、うんうんと首を縦に動かしてしまう。
そして思い出した。
家族と一緒に見た船。
あそこで僕の母方のお爺ちゃんがルオセウ人だったことを実感して、ルーツが分かったのに、なぜか不安になった。あの不安はこういうことを頭のどこかで予感していたからかもしれない。
それにしても。
宇宙人に対するDNAの鑑定……通用するんだな。
まあ、未知な部分を解析することと一致率を見ることはまた別……か。
考えてみりゃそうだけど、それとできるかどうかもまた、別かもしれない。
佐倉守家や僕らのこと、それに加えてお爺ちゃんの細胞もあっただろうし、秘密裏に利用して検査の精度を上げてる可能性は?――ある、か。
……ああ、そもそも、佐倉守家に色々残ってたのかもしれないな。
それを手掛かりに精度がずっと前から上がってた可能性はあるのか、ルオセウ人に近い細胞に関しても。
まあ、もしそうだったとしても、どうやってるかなんて分からないけど。
本当はこんな発想、突飛過ぎるかも――なんて思った。昔の佐倉守の遺物やマギウト使いの細胞をサンプルになんかしてなくて、技術向上してなくて、普通に宇宙人にも通用しただけ、ということもありえそうだし。
そんな風に検査のレベルを上げてきたのかどうか。それを僕が問い掛けた時、犬神さんは、僕も知らない女性からコーヒーを受け取って、それを飲みながら、
「そうよ」
って。
「え、ホントに?」
ついタメ口になりながら、犬神さんにコーヒーを渡した女性を目で追った。
彼女は出ていった。この組織は僕のためだけにあるワケじゃない。何かの事件に大忙しだったりもするんだろうな。
で、犬神さんはうなずいてから。「こんなことができるなんて他言無用だけどね」
「――ですね」そもそも人に言えない。だから、この技術のことだけを人に言うなんて、もっとありえない。
「それにね」犬神さんはカップから口を離し、付け加えた。「前に……華賀峰家とのDNA鑑定もやったんでしょ? それも、そういう技術革新があったからできたことなのよ」
「あ、そっか」
「ま、この革新は、表の技術革新には全く影響を及ぼさなかったけど」
「……ん? え、それって……及ぼそうとしても無理だったってことですか?」
犬神さんは二度ほどうなずいた。
「及ぼそうとはしてないけど無理だと判断した、だっけな。検査の仕方がそもそも少し違うみたいでね。だから。……まあ前提として、簡単に表に出るべき技術ではないからね」
――ああ、まあ確かに。
僕は自然にうなずいてた。
急にこんな情報が世間の目に触れれば、混乱を招くかもしれない。それさえなければいいんだろうけど、事情を知る者以外に知らせる必要のない技術ではある。表の社会に活かす必要がない――のか、確かにそうだ。
「それで、もう一人乗っていたはずの人って、どこにいるのか、もしくはいたのか、分かったんですか?」
こちらが問うと、犬神さんは。「今捜索してる最中よ。まだだけど、すぐ見付かる可能性は、もしかしたら高いかもね」
「ん? なんで高いかもって……。あ!」
犬神さんはまたコーヒーを一口飲んだ。それから。「想像したと思うけど――燐治くんがマギウトを使える理由が、それかもしれない」
そうか、確かに――……ん? あれ?
何か――パズルのピースが填まった感覚があった。しかも、填まってしまった、という感覚。
僕は変身を維持できるだけじゃなくって、別の血も継いでいるせいで突然変異的に変身の種類が幾つか増えた――そういう可能性がある。
でも。
もし燐治さんが僕のお爺ちゃんと同じような血を継いでいたとしても、佐倉守の血を――華賀峰の家系経由であろうとなかろうと――継いでいなかったら? もしかしたら、変身可能な姿の数が、増えていないかもしれない。それどころか――!
椅子が大きく音を立てた。それは僕が勢いよく立ち上がったからで。うるさかったなら犬神さんには悪かったんだけど。
「ど、どうしたの」って言われて。
「やばいやばい、それはやばい」
「え?」
「燐治さんは今どこですか!」
説明してる時間すら惜しいけど聞かない訳にはいかなかった。
「え? あー、地下十一階の、六〇四号室よ、案内――あっ、大樹くん!」
場所を聞いてすぐに走り出した。
なんて余計なことを言ったんだ僕は――!
後悔を、胸に抱かない訳が無かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この部屋にはテレビもあって、特にやることがない俺はそれを見て過ごした。
何やら手続きが済むまで俺はここにいなきゃいけないらしい。
いつまでこうしていればいいんだろ……。
まあすぐ済むだろうと昨日は思ったけど、少しだけ不安だ。
テレビへの興味も失せた俺はリモコンを手に取った。電源を切ると、廊下を挟んだ先にある寝室に向かった。
ベッドで横になって、そこで思い出した。
変身……が俺にもできるかもしれない、だっけ?
そんなまさか。
今までそんなことはなかったし、言われたからって急にできるとも思えない。
でも、もしかしたら? あんな風に言われたんだ、何か理由が?
今の俺なら――ってことなのか? 分かんねえけど……。
もしできるとしても、それなら、じゃあ、何になりたい……?
多分この組織の何かの手続きのためだ――そう思って、玄関に向かい、扉を開けた。
この六〇四号室の扉の前にいたのは、檀野っていう名前の男。俺を見て安心したみたいには見えた。
「いたいた、ほれ、カード」
「ああ、あざす」
「じゃ、ゆっくりくつろぎな。すぐに対処は終わる、それまでそんなに待つことにはならないと思う。貴重な体験と思って楽しむといい」
「はあ……」
楽しめったって、どうすればいいのか――特別なことをする必要は、まあ、ないんだろうけど。
檀野さんは、間の抜けた俺の背を軽く叩いた。乾いた音が鳴る。うわ、と背を伸ばした俺に向かって優しそうに微笑むと、彼は、
「じゃな」
と言って、すぐに去ってしまった。
そんなに待たないと言っても、実際どのくらい掛かるのか。なぜかそれを聞けなかった。すぐに平穏な外の生活を送れるようになる、そう信じられたからかもしれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ロッククライミング含む今日のデートをキャンセルしていた。燐治さんのことを知って走り回ったのはそれから。
燐治さんに会うのを別の日にしてもいいかもと最初は思ったけど、もしそうしていたらどうなっていたか。いやホンット、そう考えると恐ろしい。
一旦解決できた――その安心の中で、組織・隈射目の食堂で、頼んだ大盛り炒飯を食べていた。
で、ふと思った。
今日のキャンセルの代わりに、実千夏に言っておかないとな。
スマホを取り出した。頬張った炒飯を飲み込んでから。
「日曜日、デートしようよ。今日の埋め合わせ」
「ホントに? じゃあ――」
その声に、多くの期待が込められてるってのは、よぉく伝わってきた。――応えたくなるな、こういう声を聞くと。
「スカイライクに行きたい」
え。
まさか隈射目の本部が隠されているスカイライクに行くことになるとは。実千夏がそうしたいって言ったしキャンセルのこともあったから、気分通りのことをさせてあげたいし、しょうがないとも思う。多分大丈夫だ。洋服店グリンモントの人には知らない振りをしてもらおうかな。
日が変わる前の夜。
まだ土曜日。
家で、自分の机を前にして宿題をしている時、スマホが鳴った。画面に出たのは『右柳さん』の四文字。
「もしもし」
「ああ、大樹くん。私、犬神。実はね――」
右柳さんのスマホを借りたんだな。
借りるほどのことが? まあそんなことはいいか。
そう思った僕に、彼女が続ける。
「分かったことがあって、それを伝えたかったのよ。船のことなんだけど――」
「船?」
「そう、あなたのお爺さんの、春彦さんの宇宙船。あれに乗ってきたルオセウ人は、二人いただろうって話よ」
「えっ」
お爺ちゃん以外にもいた? 本当に?
本当なら、その人はもしかしたら何かに関わってるかも。
あの追手の連中にも影響を? 捕まってしまったとか、そういうこともありえそうだ、だからマギウト使いがあんなに……?
直接話を聞きたいと思ったから、そう話してゲートルームに四本のシャー芯によるゲートを繋いだ。
こんな時いつも不思議な感覚になる。
死が隣にあるような、一歩間違えば何もかも失いそうな、そんな感覚。
いつものように慎重に通り、ゲートの役割を解除。操作もやめた。ほっとする。ゲートで誰かを助けた時も、今も、いつもそうだ、危険を解除できたっていう感覚の方が大きい。
隅の棚に置いている鍵を使ってゲートルームのドアから出ると、閉めて錠を掛けて――その鍵はポケットに。
犬神さんはどこかなと思いながら練習場を通って広間に出る。
と、目の前に本人がいた。
連れられて第二会議室へ。
僕は椅子に座った。犬神さんは長机に座った。――向き合いたいという意味もあったのかもしれない。
犬神さんは落ち着いた声で説明し始めた。
「船に髪の毛みたいな物があったのよ。で、どんな存在の毛なのかはともかく――複数の存在の毛なのか。一個体だけのものなのか。それが知りたかったから、地球の技術でだけど、毛同士の鑑定をして、その結果が出た」
ほう――と僕が思ったら、すぐに犬神さんが。
「数回鑑定した時、一致する物も一致しない物もあることが分かったの。それで、たとえば髪Aと髪Bを鑑定して、その結果一致しない場合、今度は髪Cと髪Dでも一致しなかったという組み合わせを探して、髪Aと髪Cが一致するか検査したの。それが一致する場合、髪Bと髪Dは必ず一致する、ということが続いた。完璧な検査をするために毛根と思われる部分が残っている毛だけを使った――で、髪Aと髪Bの二種類を基準にして、どちらに一致するかっていう検査だけを最後まで通してやってみた。採取された全ての検査可能な髪……らしき物のDNAは、どちらかに必ず九十九パーセントほど一致した」
手でジェスチャーを加えながらの犬神さんの説明は、僕にはとても分かりやすかった。髪Aから髪Dまでを混同しなかったから。
「え――ってことは、じゃあ、絶対に二人だと分かったってことですか? 三人とかでもなく」
「そう。絶対に二人。三人以上だと全然違う結果が出なきゃおかしいのよね」
つい、うんうんと首を縦に動かしてしまう。
そして思い出した。
家族と一緒に見た船。
あそこで僕の母方のお爺ちゃんがルオセウ人だったことを実感して、ルーツが分かったのに、なぜか不安になった。あの不安はこういうことを頭のどこかで予感していたからかもしれない。
それにしても。
宇宙人に対するDNAの鑑定……通用するんだな。
まあ、未知な部分を解析することと一致率を見ることはまた別……か。
考えてみりゃそうだけど、それとできるかどうかもまた、別かもしれない。
佐倉守家や僕らのこと、それに加えてお爺ちゃんの細胞もあっただろうし、秘密裏に利用して検査の精度を上げてる可能性は?――ある、か。
……ああ、そもそも、佐倉守家に色々残ってたのかもしれないな。
それを手掛かりに精度がずっと前から上がってた可能性はあるのか、ルオセウ人に近い細胞に関しても。
まあ、もしそうだったとしても、どうやってるかなんて分からないけど。
本当はこんな発想、突飛過ぎるかも――なんて思った。昔の佐倉守の遺物やマギウト使いの細胞をサンプルになんかしてなくて、技術向上してなくて、普通に宇宙人にも通用しただけ、ということもありえそうだし。
そんな風に検査のレベルを上げてきたのかどうか。それを僕が問い掛けた時、犬神さんは、僕も知らない女性からコーヒーを受け取って、それを飲みながら、
「そうよ」
って。
「え、ホントに?」
ついタメ口になりながら、犬神さんにコーヒーを渡した女性を目で追った。
彼女は出ていった。この組織は僕のためだけにあるワケじゃない。何かの事件に大忙しだったりもするんだろうな。
で、犬神さんはうなずいてから。「こんなことができるなんて他言無用だけどね」
「――ですね」そもそも人に言えない。だから、この技術のことだけを人に言うなんて、もっとありえない。
「それにね」犬神さんはカップから口を離し、付け加えた。「前に……華賀峰家とのDNA鑑定もやったんでしょ? それも、そういう技術革新があったからできたことなのよ」
「あ、そっか」
「ま、この革新は、表の技術革新には全く影響を及ぼさなかったけど」
「……ん? え、それって……及ぼそうとしても無理だったってことですか?」
犬神さんは二度ほどうなずいた。
「及ぼそうとはしてないけど無理だと判断した、だっけな。検査の仕方がそもそも少し違うみたいでね。だから。……まあ前提として、簡単に表に出るべき技術ではないからね」
――ああ、まあ確かに。
僕は自然にうなずいてた。
急にこんな情報が世間の目に触れれば、混乱を招くかもしれない。それさえなければいいんだろうけど、事情を知る者以外に知らせる必要のない技術ではある。表の社会に活かす必要がない――のか、確かにそうだ。
「それで、もう一人乗っていたはずの人って、どこにいるのか、もしくはいたのか、分かったんですか?」
こちらが問うと、犬神さんは。「今捜索してる最中よ。まだだけど、すぐ見付かる可能性は、もしかしたら高いかもね」
「ん? なんで高いかもって……。あ!」
犬神さんはまたコーヒーを一口飲んだ。それから。「想像したと思うけど――燐治くんがマギウトを使える理由が、それかもしれない」
そうか、確かに――……ん? あれ?
何か――パズルのピースが填まった感覚があった。しかも、填まってしまった、という感覚。
僕は変身を維持できるだけじゃなくって、別の血も継いでいるせいで突然変異的に変身の種類が幾つか増えた――そういう可能性がある。
でも。
もし燐治さんが僕のお爺ちゃんと同じような血を継いでいたとしても、佐倉守の血を――華賀峰の家系経由であろうとなかろうと――継いでいなかったら? もしかしたら、変身可能な姿の数が、増えていないかもしれない。それどころか――!
椅子が大きく音を立てた。それは僕が勢いよく立ち上がったからで。うるさかったなら犬神さんには悪かったんだけど。
「ど、どうしたの」って言われて。
「やばいやばい、それはやばい」
「え?」
「燐治さんは今どこですか!」
説明してる時間すら惜しいけど聞かない訳にはいかなかった。
「え? あー、地下十一階の、六〇四号室よ、案内――あっ、大樹くん!」
場所を聞いてすぐに走り出した。
なんて余計なことを言ったんだ僕は――!
後悔を、胸に抱かない訳が無かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この部屋にはテレビもあって、特にやることがない俺はそれを見て過ごした。
何やら手続きが済むまで俺はここにいなきゃいけないらしい。
いつまでこうしていればいいんだろ……。
まあすぐ済むだろうと昨日は思ったけど、少しだけ不安だ。
テレビへの興味も失せた俺はリモコンを手に取った。電源を切ると、廊下を挟んだ先にある寝室に向かった。
ベッドで横になって、そこで思い出した。
変身……が俺にもできるかもしれない、だっけ?
そんなまさか。
今までそんなことはなかったし、言われたからって急にできるとも思えない。
でも、もしかしたら? あんな風に言われたんだ、何か理由が?
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