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第4章 ケズレルモノ
47-3 そしてまた鉄
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あの時背中から引っ張られたあと、俺は切り身にされるんじゃないかと思った。必死に後ろにチョークを硬化させた盾を作って、自分は別の場所に――最低でも少々の落下くらいで済ませられるような移動ができればと――ゲートを盾よりも自分の背中に近い所にしかも一瞬で作らなければならず……その作業には多大なサクラを使ってしまった。
それまでも人質の移動と迎撃の大技に――激しい消耗が続いていた。
船の外に一瞬逃げたあと、もう俺には駄目だと理解することしかできなかった。
だから俺は――。
地球の者には、悪かったと思っている。だからこそ、万全に整った時、今度こそ――。
そう思っていたのに……。
後手に回った。今度は奴らの言うことを素直に聞かなければならないかもしれない。
どうする。奴らはどう出るというんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
みんな疲れ切っていた。
そんな中、風浦さんは、
「大事な人質だ、殺されてはいないはずだ」
と繰り返した。
だからか一日掛けて休み、それから――休むあいだにでもいいが――連中の行動を予測して策を考えておくべきだという話をしていた……。
見えない未来に備えて、僕はマギュートの練習をしたくなった。
誰もいない場所でないと思い切って操作できない、そう思ったから、とりあえず庭に。
いつが最後の練習になるかも分からない。だからこそ練習した。狙うことも。形状変化も。強度変化も。切断能力の付与も。
ゲート化するために枠状に組んだ芯をほとんどずらさずに迅速に動かす練習も行った。これについてはシリクスラさんの助言もあった、『ゲートの枠を一塊としてぴったりと動かす練習をしておいた方がいい』と――。
食事をしたくなれば自分で取りに行く。でも必要なのは鉄もだ。
鉄製のものに関しては持ってきてもらうことにした。誰かが別の場所から調達してきてもいいし、この洋館のどこに今は不要と言える鉄製品があるかをいちいち質問する時間が惜しいと思ったからだった。
鉄と食事さえあれば練習をほぼ無限にできる。
こう思えたのはきっと間違いなんかじゃない。
だから、僕はやらないといけないんだ。やらないと……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『ルオセウ人による人質十五人事件』に対する突入・戦闘部隊全体の新しいリーダーとして――且つルオセウ人としてならばイチェリオさんが常に指揮を執っていたが――地球人としては、これからは、俺、久我滉一が担うこととなった。
俺は、警察官の園辺という男や、秘密組織・隈射目を仕切る嘉納さんと話し合った。
「世間では『人質が今頃何人か死んでいるんじゃないか』と――」
俺がそう言うと、園辺が。「かなりの数を救えたことは情報公開しておいた方がいいかと」
嘉納さんは「そうですね」と肯いた。「新しい状況を公開し、出歩くことを少しだけでも控えるように……そう言っておくべきかもしれませんね。あまり効果はないかもしれませんが」
少々時が経ったあとのテレビではこう流されていた。
「人質が何人か救助されたようです。現在人質は三名。そして事件の犯人は姿をくらませたようです。今は逮捕が難しい状況だということです。皆さん、外を出歩く時は周囲に気を付けてください。できればここ数日間、あまり出歩かない方がいいかもしれない、とのことです――」
それまでも人質の移動と迎撃の大技に――激しい消耗が続いていた。
船の外に一瞬逃げたあと、もう俺には駄目だと理解することしかできなかった。
だから俺は――。
地球の者には、悪かったと思っている。だからこそ、万全に整った時、今度こそ――。
そう思っていたのに……。
後手に回った。今度は奴らの言うことを素直に聞かなければならないかもしれない。
どうする。奴らはどう出るというんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
みんな疲れ切っていた。
そんな中、風浦さんは、
「大事な人質だ、殺されてはいないはずだ」
と繰り返した。
だからか一日掛けて休み、それから――休むあいだにでもいいが――連中の行動を予測して策を考えておくべきだという話をしていた……。
見えない未来に備えて、僕はマギュートの練習をしたくなった。
誰もいない場所でないと思い切って操作できない、そう思ったから、とりあえず庭に。
いつが最後の練習になるかも分からない。だからこそ練習した。狙うことも。形状変化も。強度変化も。切断能力の付与も。
ゲート化するために枠状に組んだ芯をほとんどずらさずに迅速に動かす練習も行った。これについてはシリクスラさんの助言もあった、『ゲートの枠を一塊としてぴったりと動かす練習をしておいた方がいい』と――。
食事をしたくなれば自分で取りに行く。でも必要なのは鉄もだ。
鉄製のものに関しては持ってきてもらうことにした。誰かが別の場所から調達してきてもいいし、この洋館のどこに今は不要と言える鉄製品があるかをいちいち質問する時間が惜しいと思ったからだった。
鉄と食事さえあれば練習をほぼ無限にできる。
こう思えたのはきっと間違いなんかじゃない。
だから、僕はやらないといけないんだ。やらないと……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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俺は、警察官の園辺という男や、秘密組織・隈射目を仕切る嘉納さんと話し合った。
「世間では『人質が今頃何人か死んでいるんじゃないか』と――」
俺がそう言うと、園辺が。「かなりの数を救えたことは情報公開しておいた方がいいかと」
嘉納さんは「そうですね」と肯いた。「新しい状況を公開し、出歩くことを少しだけでも控えるように……そう言っておくべきかもしれませんね。あまり効果はないかもしれませんが」
少々時が経ったあとのテレビではこう流されていた。
「人質が何人か救助されたようです。現在人質は三名。そして事件の犯人は姿をくらませたようです。今は逮捕が難しい状況だということです。皆さん、外を出歩く時は周囲に気を付けてください。できればここ数日間、あまり出歩かない方がいいかもしれない、とのことです――」
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