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第1章 始まりの受難
06-4 一番と最初の一個
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この隈射目本部とやらから帰るため、正面玄関から出て地下通路を通った先の梯子を登った。
戻ってきた、洋服店『グリンモント』の裏部屋に。
備え付けられた電話を使えと言われたけど……どうすればいいかよく分かんないな。あ、備え付けの電話なら机にある。ん?『出るなら一番を押せ』って書いてあるけど。
一番のボタンを押して受話器を手に取ると、コールが鳴り始めた。
「はい」
女性の声だ。
「あ、えっと、藤宮大樹といいます、さっき通してもらったんですけど、もう帰るので――」
「分かりました」
しばらくしてこの部屋にグリンモントの店員が顔を覗かせた。女性。電話の相手はこの人だったみたいで、彼女が、
「どうぞ」
って言った。
今なら誰にも秘密組織本部の在り処がバレないように出られます――ってことだろうな、これは。
そうやって出てからは、一般客のフリだ。
何か挨拶した方がいいのかなと思ったけど、「ありがとうございました」と隠語のように言われてから「あ、どうも」と返すので精一杯。でもそれでよかったらしい。
帰り着くまでの間に、少し思ったことがある。鉄分の入っている食材について自分で調べてみてもいいかも、ということ。
家に帰って自室に入ったら、まずは荷物を置いた。特にあのサプリのボトルは引き出しの奥に。しっかり隠さないとね。
それから机の前の椅子に座って、ズボンのポケットからスマホを取り出した。
「さてと。鉄分鉄分、と」
入力して検索画面を見ていく。
ええっと……豚もも肉や牛もも肉、牛ヒレ肉、鰹、ヒジキ、天然鮎、アサリ、バジル、きくらげ、カレー粉、こしょう、レバー、ほうれん草、レンズマメ、ケール、小松菜、ブロッコリー、パプリカ、納豆、大豆、絹ごし豆腐など、そういったものに鉄分は多く含まれてる……なるほど?
鉄の吸収を促すためにはビタミンCも重要、とある。
ビタミンB12も造血には関わるらしいけど、僕に特別に必要かは分からない。だって造血じゃなくて造サクラだもんな。そこは普通の人と違いはないのかもしれないな。
その日の夕食時、僕はいつも以上に食べる準備をした。ご飯は大盛り。もちろん、肉やレバー、アサリやほうれん草、豆腐なんかも多く食べたい。そのことを言ってみたけど……変な顔をされたかも。
その夜、強く思った。これから――と言っても今日は疲れたし明日からだけど――毎日、夜寝る前に、部屋でシャー芯操作の練習をしよう、と。目撃されないように、念のため「おやすみ」の挨拶をしてから。しかも、ベッドの上に胡坐を掻いて座って、扉に背を向けて――自分の体で隠す。
ただ……えっと……鉄のサプリは朝に摂った方がいいんだよな、確か……。
次の日。
早めに起きて台所に向かった。ビタミンCは大事……と思いながら冷蔵庫を開けると、オレンジジュースを発見。それをコップに入れて部屋へと持っていく。
自分で買うことも考えないとなあ。
そう思いながら自室に入ると、まずはドアを閉めた。しっかりとね。
机まで歩いてコップを一旦置いて、引き出しを開ける。
奥に置いていたサプリのボトルを取り出すと、蓋を開けて、一個だけカプセルを取り出した。
改めて見るとかなりの大きさだ。横長部分の長さは僕のきちんと切った親指の爪の縦の長さよりも長い。うまく飲めるかな、これ。
そのカプセルを口に入れ、コップのジュースで流し込む。
ごく、ごく。
ふう。
喉を通る異物感がかなりある。これを紫音さんは三つも飲んでるんだっけ? 大変だなあ。
これは、僕らマギウト使いだけのための物。もしかしたら普通のサプリとしても使えないかも? 絶対に見付かっちゃ駄目だ。
そっと、元の位置に戻した。少しも音を立てないようにね。
戻ってきた、洋服店『グリンモント』の裏部屋に。
備え付けられた電話を使えと言われたけど……どうすればいいかよく分かんないな。あ、備え付けの電話なら机にある。ん?『出るなら一番を押せ』って書いてあるけど。
一番のボタンを押して受話器を手に取ると、コールが鳴り始めた。
「はい」
女性の声だ。
「あ、えっと、藤宮大樹といいます、さっき通してもらったんですけど、もう帰るので――」
「分かりました」
しばらくしてこの部屋にグリンモントの店員が顔を覗かせた。女性。電話の相手はこの人だったみたいで、彼女が、
「どうぞ」
って言った。
今なら誰にも秘密組織本部の在り処がバレないように出られます――ってことだろうな、これは。
そうやって出てからは、一般客のフリだ。
何か挨拶した方がいいのかなと思ったけど、「ありがとうございました」と隠語のように言われてから「あ、どうも」と返すので精一杯。でもそれでよかったらしい。
帰り着くまでの間に、少し思ったことがある。鉄分の入っている食材について自分で調べてみてもいいかも、ということ。
家に帰って自室に入ったら、まずは荷物を置いた。特にあのサプリのボトルは引き出しの奥に。しっかり隠さないとね。
それから机の前の椅子に座って、ズボンのポケットからスマホを取り出した。
「さてと。鉄分鉄分、と」
入力して検索画面を見ていく。
ええっと……豚もも肉や牛もも肉、牛ヒレ肉、鰹、ヒジキ、天然鮎、アサリ、バジル、きくらげ、カレー粉、こしょう、レバー、ほうれん草、レンズマメ、ケール、小松菜、ブロッコリー、パプリカ、納豆、大豆、絹ごし豆腐など、そういったものに鉄分は多く含まれてる……なるほど?
鉄の吸収を促すためにはビタミンCも重要、とある。
ビタミンB12も造血には関わるらしいけど、僕に特別に必要かは分からない。だって造血じゃなくて造サクラだもんな。そこは普通の人と違いはないのかもしれないな。
その日の夕食時、僕はいつも以上に食べる準備をした。ご飯は大盛り。もちろん、肉やレバー、アサリやほうれん草、豆腐なんかも多く食べたい。そのことを言ってみたけど……変な顔をされたかも。
その夜、強く思った。これから――と言っても今日は疲れたし明日からだけど――毎日、夜寝る前に、部屋でシャー芯操作の練習をしよう、と。目撃されないように、念のため「おやすみ」の挨拶をしてから。しかも、ベッドの上に胡坐を掻いて座って、扉に背を向けて――自分の体で隠す。
ただ……えっと……鉄のサプリは朝に摂った方がいいんだよな、確か……。
次の日。
早めに起きて台所に向かった。ビタミンCは大事……と思いながら冷蔵庫を開けると、オレンジジュースを発見。それをコップに入れて部屋へと持っていく。
自分で買うことも考えないとなあ。
そう思いながら自室に入ると、まずはドアを閉めた。しっかりとね。
机まで歩いてコップを一旦置いて、引き出しを開ける。
奥に置いていたサプリのボトルを取り出すと、蓋を開けて、一個だけカプセルを取り出した。
改めて見るとかなりの大きさだ。横長部分の長さは僕のきちんと切った親指の爪の縦の長さよりも長い。うまく飲めるかな、これ。
そのカプセルを口に入れ、コップのジュースで流し込む。
ごく、ごく。
ふう。
喉を通る異物感がかなりある。これを紫音さんは三つも飲んでるんだっけ? 大変だなあ。
これは、僕らマギウト使いだけのための物。もしかしたら普通のサプリとしても使えないかも? 絶対に見付かっちゃ駄目だ。
そっと、元の位置に戻した。少しも音を立てないようにね。
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