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第2章 X
18 周到な網
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次の日曜日に、マギウト練習場にて、僕の近くで練習していた紫音さんに聞こうと思った。
「あの」
「なあに?」
「一つ気になったんですけど、佐倉守家やその血を分けた家系でも、マギウトに絶対に目覚めない人っているんですか?」
「ああ、うん、いるよ。分家には無理に覚えさせないことの方が多くて……、そのために、意図してこの知識を与えないこともあるね」
「そっか……」
「でも、これにはサクラのある性質が関与しててね」
「性質?」
「うん。……二十一歳くらいまでに目覚めなかったらマギウトは一生使えない」
「えっ」
「サクラが体内でずっと活動状態にならないまま二十一年くらいが経つとね、不活性な状態で安定化するの。だから一生マギウトに目覚めなくなる――って話」
「なるほど――」
「でもま、私は専門家じゃないし、分かんないけどね。別の星の、進化や……うーん、技術の結晶? とかだし。詳しい仕組みまではやっぱりね」
紫音さんのこの言葉は、『私が聞いた話でよかった? これくらいしか分からなくてごめんね』という風に聞こえた。
「正直理解不能ですよね、この力って。ほかにどんな不思議なことがあるか、分かんないですよ」
「そうねえ。……どうなってんだろうね、私達の体っ」
紫音さんはそう言って伸びをした。
僕も、「うーん」とうなり、首を捻った。「どうなんでしょうね」
「ね」
そんなこんなで、いつもの数倍の時間を掛け、じっくり練習。
芯の硬さだけじゃなく、特に僕が意識しなきゃならないのは大きさだった。今は冷蔵庫くらいの大きさにはやっとできるようになった。ただ、一本だけ。同時にもう一本をその大きさにするのは、まだできていない。頑張るのみだ。
あれから何日も過ぎたとある日。空は曇り気味。
普段より少し涼しい。
暑過ぎるこの季節では恵みの日。
早めに学校も終わり、今日から夏休み!――という日に、僕の家には人が訪れる。いや、多分もう来てる。母方のお爺ちゃんとお婆ちゃんだ。
今頃お母さんも、「あの子、今交際中でね、多分デートしてから帰ってくるわよー」なんて言ってるかもしれない。
ま、別に構わないけどね。誰だってそんな話をするかもしれないし? 僕は恥じないようにするだけだもんね。
実千夏と一緒に駅前デートを楽しんでから、送って、それから帰宅した。
「あらあら大きくなって」
お兄ちゃんもお姉ちゃんもそう言われたんじゃないかな。それへのお返しをする。
「そっちだって。年なのに全然元気じゃん」
二人とも本当に健康的。
でも内心では心配だった。更に二人が危険に近付いたから。
ただ、事情を話せない。
だから、この事態を避けることはできなかった――言えば今年から別の会い方、楽しみ方をさせることになるんだろう、そうなるのはまだいい。でも、話したところで――という問題がある。
僕の隠していたことを知ると、家族はみんな、自ら危険に身を曝すかもしれない。知ることで、もしも、力がないのに行動を起こすようなことを家族がしたら? お父さんやお母さんがもしそうするなら――そしてみんなが死ぬようなことがあったら――?
それに、この力について知っていることを誰かに知られて、力を持っていないのに狙われるなんて形にでもなったら――。
大事な人の、死。
僕にとっては、それが、何よりも怖い。
つい先日、右柳さんからこんな報告があった。
「君の家族にそれぞれ担当がついた、一人ずつな、それと、実千夏ちゃんにも護衛を付けたよ」
僕はそれを、いつもの誰もいない池の前のベンチに座って聞いていた。空を見ながら。その空は晴れやかで、夕方の色を滲ませていて――僕の心に影を作った。
不安はある。
でも。
隈射目は僕らを守ってくれてる。お爺ちゃんお婆ちゃんのために護衛も増えることになるけど、それを引き受けてくれてもいる――本当に感謝だよ。これなら安心だよね。きっと。
「あの」
「なあに?」
「一つ気になったんですけど、佐倉守家やその血を分けた家系でも、マギウトに絶対に目覚めない人っているんですか?」
「ああ、うん、いるよ。分家には無理に覚えさせないことの方が多くて……、そのために、意図してこの知識を与えないこともあるね」
「そっか……」
「でも、これにはサクラのある性質が関与しててね」
「性質?」
「うん。……二十一歳くらいまでに目覚めなかったらマギウトは一生使えない」
「えっ」
「サクラが体内でずっと活動状態にならないまま二十一年くらいが経つとね、不活性な状態で安定化するの。だから一生マギウトに目覚めなくなる――って話」
「なるほど――」
「でもま、私は専門家じゃないし、分かんないけどね。別の星の、進化や……うーん、技術の結晶? とかだし。詳しい仕組みまではやっぱりね」
紫音さんのこの言葉は、『私が聞いた話でよかった? これくらいしか分からなくてごめんね』という風に聞こえた。
「正直理解不能ですよね、この力って。ほかにどんな不思議なことがあるか、分かんないですよ」
「そうねえ。……どうなってんだろうね、私達の体っ」
紫音さんはそう言って伸びをした。
僕も、「うーん」とうなり、首を捻った。「どうなんでしょうね」
「ね」
そんなこんなで、いつもの数倍の時間を掛け、じっくり練習。
芯の硬さだけじゃなく、特に僕が意識しなきゃならないのは大きさだった。今は冷蔵庫くらいの大きさにはやっとできるようになった。ただ、一本だけ。同時にもう一本をその大きさにするのは、まだできていない。頑張るのみだ。
あれから何日も過ぎたとある日。空は曇り気味。
普段より少し涼しい。
暑過ぎるこの季節では恵みの日。
早めに学校も終わり、今日から夏休み!――という日に、僕の家には人が訪れる。いや、多分もう来てる。母方のお爺ちゃんとお婆ちゃんだ。
今頃お母さんも、「あの子、今交際中でね、多分デートしてから帰ってくるわよー」なんて言ってるかもしれない。
ま、別に構わないけどね。誰だってそんな話をするかもしれないし? 僕は恥じないようにするだけだもんね。
実千夏と一緒に駅前デートを楽しんでから、送って、それから帰宅した。
「あらあら大きくなって」
お兄ちゃんもお姉ちゃんもそう言われたんじゃないかな。それへのお返しをする。
「そっちだって。年なのに全然元気じゃん」
二人とも本当に健康的。
でも内心では心配だった。更に二人が危険に近付いたから。
ただ、事情を話せない。
だから、この事態を避けることはできなかった――言えば今年から別の会い方、楽しみ方をさせることになるんだろう、そうなるのはまだいい。でも、話したところで――という問題がある。
僕の隠していたことを知ると、家族はみんな、自ら危険に身を曝すかもしれない。知ることで、もしも、力がないのに行動を起こすようなことを家族がしたら? お父さんやお母さんがもしそうするなら――そしてみんなが死ぬようなことがあったら――?
それに、この力について知っていることを誰かに知られて、力を持っていないのに狙われるなんて形にでもなったら――。
大事な人の、死。
僕にとっては、それが、何よりも怖い。
つい先日、右柳さんからこんな報告があった。
「君の家族にそれぞれ担当がついた、一人ずつな、それと、実千夏ちゃんにも護衛を付けたよ」
僕はそれを、いつもの誰もいない池の前のベンチに座って聞いていた。空を見ながら。その空は晴れやかで、夕方の色を滲ませていて――僕の心に影を作った。
不安はある。
でも。
隈射目は僕らを守ってくれてる。お爺ちゃんお婆ちゃんのために護衛も増えることになるけど、それを引き受けてくれてもいる――本当に感謝だよ。これなら安心だよね。きっと。
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