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第2章 X
18-2 狙い撃ち
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夏休みの最初の二週間くらいは、観光に付き合ったりデートしたりで忙しかった。課題とマギウトの練習を毎日するし、土曜日にはロッククライミング、それらも欠かさなかった。日曜日だけはやっぱりマギウト練習場で――。
ただ、お爺ちゃん達は、観光がメインじゃなくて、僕らと楽しみたいんだ。それが分かっていたから僕は積極的に絡んだ。
だからかすっごく喜んでくれた。
茶碗の手作り体験をした時もそうだし、外食をした時も、ゲームをした時もそうでしょ? それから、お父さんの仕事場を覗いた時も、積極的に話して――相変わらず美味しいよねって言い合ったんだよね。
そんなお爺ちゃんお婆ちゃんが帰っていくのを――その電車を――見送ってから、また数日が経過した。
割とすぐの日のデート帰り。一人の時に、また背後から口を塞がれた。
とっさに投げ飛ばしてやろうと手を掴もうとした。でも、相手も力が強くて、それを阻止する。
その手に爪を立てたりもしてやった。手を引き剥がして叫びたい。助けを求められればもしかしたら――!
仕方ないから、拳大にした芯の弾丸を、背後に向けて飛ばした。
でも多分、避けられた。今のを避けるの? っていう慣れた動きをされた気がする。しかもその瞬間、首筋に何かが刺さって――ほんの数秒で、全ての感覚がなくなった。
目を覚ました時、なんで眠ったんだっけ――って考えて、出来事をはっきりと思い出してからは、現場での記憶から手掛かりがないかと考えた。
でも、相手は手袋をしていて、スーツっぽいものを着ていたかも――ということくらいしか分からない。
また僕だけが?
眠気を払って顔を上げた。
そうして目に飛び込んできたのは恐ろしい光景だった。何人もの人が、目の前に横たわって微動だにしない、そんな非日常。
驚いた姿勢のまま、ただただ見る。
それからハッとして、恐る恐る顔を覗き込みに行った。
それから分かった。
お父さんだ。お兄ちゃんもいる。お姉ちゃんも。檀野さん、鳥居さん、右柳さんもいる。そのほかに、よくしらない人――多分四人――も、僕の目の前に、目を閉じて横たわっている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
少し時間を遡る。藤宮家次男誘拐の同刻、藤宮家の面々のいるそれぞれの場所では――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
藤宮家長男の俺は。
「んぐっ!」
背後の物音に気付いた時には、口を手で塞がれていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
大樹くんの家族は、我々が護衛していることを知らない。ただとにかく、俺達は守り切っているはずだった。なのに。
「くそ……! 放……せっ……!」
一対多。こんな行動にまで出る者がいると思わなかったのが、そもそもの敗因かもしれない。俺達がバレていた、俺達が、だ――!
口を塞がれ身動きできないようにされると、何かを注射された。いったい、何……を……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ストーカーだとしてもおかしい。電車に乗る前も降りた後も……。一人じゃない?
私は怖くなって振り返った。
でも誰もいない。
安心してから前を向いた時、どこかから急に現れた誰かの手で、口にガムテープみたいなものを貼られた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺が仕事の休憩中にいつも一人になる憩いの場――店の裏手の花壇の前で、いったい何事かと思う間もなく、口を塞がれ腕を……何かが、刺した、ただそれだけが分かって、そして……眠気が……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何があったのかは、明確には分からない。想像でしか理解できない。それでも恐ろしくなった。ここがまるで死後の世界のようにすら感じて。
それから服に違和感があって確認。どうやら別の物を着せられてる。
だいたい白基調の服。しかも裸足。
寝ているあいだに? いったい何が目的?
なんでだ、なんだこれは! って、つい叫びたくなった。
動揺しながらも観察して、家族の中でお爺ちゃんお婆ちゃん、お母さんの三人はここにいないことに気付いた。なんでだ? まさか別の場所で人質に? 分からない。もしそうならやばい……。
なんでこんな、まとめて……一家ごと狙われた?
しかも、僕を守る彼らをも狙って?
全部で十一人を。
どんだけ機を伺えばこんなことができるんだ。とんでもない忍耐力の持ち主達がやったに違いない――複数犯、そうでないとありえない。
「みんな起きて! お兄ちゃん、お姉ちゃん、お父さん! 鳥居さん……檀野さんも! みんな起きて!」
まさか死んでる? 死んでるのか? そんなまさか!
最悪な結末が脳裏に浮かんで、悲しくなる。
嘘だ、そんなの。嫌だよ。
「起きて……起きてください! 檀野さん! 右柳さん! みんな起きて――!」
それぞれの胸に耳を当てた。各人の心臓が動いているのは分かった。その度にほっとするのと不安が入り混じる。
そんな時だ。
「う、うーん」
男の声!
奥の方からだった。
「だ、大丈夫ですか? えと……、お、お名前はッ?」
「大樹くんか……、俺は歌川克己、隈射目の、密偵や護衛の担当だ、数日前まで君のお爺さんを尾行しながら護衛していた。くそ、何時間寝てた?」
「分かりません……時計もないんです」
辺りを見てみた。
ここは四角い穴の底。四方をコンクリートの壁に囲まれていて、上には明かりに照らされた空間が少し見える、それだけの空間。一辺十メートルくらいのゴミ置き場みたいな場所。深さはもっとある。
上の――電灯か何かの――光が、底まで少しは届いてる。それのおかげで辺りがまあまあ見えはする。
その暗さで周りを観察するけど、出口はやっぱり上しかなさそうに見える。高い壁を登るしかないよ、これ……。
でも壁のどこにも指の引っ掛かる所がない。
もし出っ張りが所々あれば僕なら行けるかもしれないのに。
嘆きたくなった時、ウタガワさんが舌打ちをした。でもって「最悪だな」って呟いた。
「あの――」
「なんだ?」
「さっき、うちの祖父の護衛をしてたって言いましたよね」
「ああ、言ったが」
「じゃあ、僕は知らないけど、そっちの三人もそれぞれ別の人を?」
「ああそうだ。確か、君のお婆さんと、お姉さんと、お母さんを、それぞれ護衛してたんだ」
指で示された。
僕がさっきまでよく知らなかった四人のうち、ウタガワさん以外の三人はみんな女性。
手前のセミロングの三十代から四十代くらいの女性がお婆ちゃんの護衛。ポニーテールの二十代くらいの女性がお姉ちゃんの護衛。奥のショートヘアの三十代くらいの女性がお母さんの護衛をしたらしい。
「じゃあやっぱり」予想が当たっても、こんなのガッカリだ。「ぴったり護衛全員を狙って」とまで僕が言うと。
「なるほどな」
と、ウタガワさんは頷いた。
「護衛が全部で何人なのかすら調べられてたワケだ。しかも護衛しやすいように用意していた住所を特定された。爺さん婆さんの護衛はもう終わったあとだったから、あいつらは俺らとのローテーションのため、その仮の住居で待機してた。夜寝てる時は護衛を減らして俺らの仮の住まいを残りが守ってたが、だからこそその時間に狙うのは相手も大人数を相手にすることになるため避けたのか――ともかく夕方、護衛と護衛された君ら、一人に一人が付いている時を狙われたな」
「そんな……。そもそも僕らが護衛されてること自体バレてたなんて」
「相手が上手だったってことだ、最悪なことだが」
ウタガワさんは、そう言うと、この静かで暗い地獄の底で、目を凝らして、眠っているみんなの顔を観察した。
「君の母親はいないな、お爺さんお婆さんも除外されてる。多分、君の兄弟と君の父親のことを、力の持ち主かもしれないと疑っている人物だな」
「そんな」
「君の父方の血筋を疑える人物。可能性は大だ。君の恋人のことはスルーしてる、恋人の護衛もだ、ここにはいない。決定的だな、君ら藤宮家が目的だ」
「じゃ、じゃあ」
「色々と知られてるな。……しかも、ほぼ同時に命令された通りのことを完璧に実行できる者達を集めてもいる。権力もある奴。相手の狙い、主眼は君らだが、護衛に気付いたそいつは俺達をどうにかしなきゃならんと思ったはずだ、家族全員が護衛されているか、護衛者はどんな奴か、何人か、どういう交代制か、全て調査したんだろう。――で、戦力のある者に追われること、見られ誰かに伝えられることを避けたがった。だから俺らまでこうなった」
「で、でも、こんな同時にだなんて」
「できたんだろう、だからこの現状だ」
絶望する僕にそう指摘してから、ウタガワさんが続ける。「どうやら、同時が手っ取り早いというか、その方が都合がいい――いや、こうでなければ対策されるとでも思ったのかな。君の家族もここにいるのがその証拠……かもな」
僕は、腑に落ちた。
そうか……この犯人も、護衛をする彼らのことを詳細までは知らなくて、対策を怖がった……。ありうる。だからこんな風に同時に。しかも危険を冒さず眠らせ拉致することに専念した――拉致現場でそもそも僕らを殺さなかったのはなんで? 抵抗されて失敗するかもと考えた? かもしれない――。
いや、現場に痕跡が……格闘した痕や血痕が残ってニュースになるのを避けたかった?
その時、「ううん」と女性の声が聞こえた。目を覚ましたのはポニーテールの若い女性だった。
「沢渡」
ウタガワさんが声を掛けた。
その女性はサワタリという名前――いや、そう呼ばれているらしい、という方が正確か。
そんなサワタリさんとほぼ同時に、ほかのみんなも目を覚ました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は自分の脇腹を注意深く探った。そこに発信機が仕掛けられているはずだったからだ。
それは、変装のための特殊メイクの肌を重ねて独自に隠していたもの。だが、それすらも剥がされている。
持ち物がない上にこうだから、発信機での捜索に期待できない――まあこの近くに捨て置かれているなら別だが、警戒しているならそんな真似はしないだろう。
さてどうするか。この現状……。くそっ、大樹くんの家族がほとんどここに……。
ただ、お爺ちゃん達は、観光がメインじゃなくて、僕らと楽しみたいんだ。それが分かっていたから僕は積極的に絡んだ。
だからかすっごく喜んでくれた。
茶碗の手作り体験をした時もそうだし、外食をした時も、ゲームをした時もそうでしょ? それから、お父さんの仕事場を覗いた時も、積極的に話して――相変わらず美味しいよねって言い合ったんだよね。
そんなお爺ちゃんお婆ちゃんが帰っていくのを――その電車を――見送ってから、また数日が経過した。
割とすぐの日のデート帰り。一人の時に、また背後から口を塞がれた。
とっさに投げ飛ばしてやろうと手を掴もうとした。でも、相手も力が強くて、それを阻止する。
その手に爪を立てたりもしてやった。手を引き剥がして叫びたい。助けを求められればもしかしたら――!
仕方ないから、拳大にした芯の弾丸を、背後に向けて飛ばした。
でも多分、避けられた。今のを避けるの? っていう慣れた動きをされた気がする。しかもその瞬間、首筋に何かが刺さって――ほんの数秒で、全ての感覚がなくなった。
目を覚ました時、なんで眠ったんだっけ――って考えて、出来事をはっきりと思い出してからは、現場での記憶から手掛かりがないかと考えた。
でも、相手は手袋をしていて、スーツっぽいものを着ていたかも――ということくらいしか分からない。
また僕だけが?
眠気を払って顔を上げた。
そうして目に飛び込んできたのは恐ろしい光景だった。何人もの人が、目の前に横たわって微動だにしない、そんな非日常。
驚いた姿勢のまま、ただただ見る。
それからハッとして、恐る恐る顔を覗き込みに行った。
それから分かった。
お父さんだ。お兄ちゃんもいる。お姉ちゃんも。檀野さん、鳥居さん、右柳さんもいる。そのほかに、よくしらない人――多分四人――も、僕の目の前に、目を閉じて横たわっている。
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少し時間を遡る。藤宮家次男誘拐の同刻、藤宮家の面々のいるそれぞれの場所では――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
藤宮家長男の俺は。
「んぐっ!」
背後の物音に気付いた時には、口を手で塞がれていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
大樹くんの家族は、我々が護衛していることを知らない。ただとにかく、俺達は守り切っているはずだった。なのに。
「くそ……! 放……せっ……!」
一対多。こんな行動にまで出る者がいると思わなかったのが、そもそもの敗因かもしれない。俺達がバレていた、俺達が、だ――!
口を塞がれ身動きできないようにされると、何かを注射された。いったい、何……を……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ストーカーだとしてもおかしい。電車に乗る前も降りた後も……。一人じゃない?
私は怖くなって振り返った。
でも誰もいない。
安心してから前を向いた時、どこかから急に現れた誰かの手で、口にガムテープみたいなものを貼られた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺が仕事の休憩中にいつも一人になる憩いの場――店の裏手の花壇の前で、いったい何事かと思う間もなく、口を塞がれ腕を……何かが、刺した、ただそれだけが分かって、そして……眠気が……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何があったのかは、明確には分からない。想像でしか理解できない。それでも恐ろしくなった。ここがまるで死後の世界のようにすら感じて。
それから服に違和感があって確認。どうやら別の物を着せられてる。
だいたい白基調の服。しかも裸足。
寝ているあいだに? いったい何が目的?
なんでだ、なんだこれは! って、つい叫びたくなった。
動揺しながらも観察して、家族の中でお爺ちゃんお婆ちゃん、お母さんの三人はここにいないことに気付いた。なんでだ? まさか別の場所で人質に? 分からない。もしそうならやばい……。
なんでこんな、まとめて……一家ごと狙われた?
しかも、僕を守る彼らをも狙って?
全部で十一人を。
どんだけ機を伺えばこんなことができるんだ。とんでもない忍耐力の持ち主達がやったに違いない――複数犯、そうでないとありえない。
「みんな起きて! お兄ちゃん、お姉ちゃん、お父さん! 鳥居さん……檀野さんも! みんな起きて!」
まさか死んでる? 死んでるのか? そんなまさか!
最悪な結末が脳裏に浮かんで、悲しくなる。
嘘だ、そんなの。嫌だよ。
「起きて……起きてください! 檀野さん! 右柳さん! みんな起きて――!」
それぞれの胸に耳を当てた。各人の心臓が動いているのは分かった。その度にほっとするのと不安が入り混じる。
そんな時だ。
「う、うーん」
男の声!
奥の方からだった。
「だ、大丈夫ですか? えと……、お、お名前はッ?」
「大樹くんか……、俺は歌川克己、隈射目の、密偵や護衛の担当だ、数日前まで君のお爺さんを尾行しながら護衛していた。くそ、何時間寝てた?」
「分かりません……時計もないんです」
辺りを見てみた。
ここは四角い穴の底。四方をコンクリートの壁に囲まれていて、上には明かりに照らされた空間が少し見える、それだけの空間。一辺十メートルくらいのゴミ置き場みたいな場所。深さはもっとある。
上の――電灯か何かの――光が、底まで少しは届いてる。それのおかげで辺りがまあまあ見えはする。
その暗さで周りを観察するけど、出口はやっぱり上しかなさそうに見える。高い壁を登るしかないよ、これ……。
でも壁のどこにも指の引っ掛かる所がない。
もし出っ張りが所々あれば僕なら行けるかもしれないのに。
嘆きたくなった時、ウタガワさんが舌打ちをした。でもって「最悪だな」って呟いた。
「あの――」
「なんだ?」
「さっき、うちの祖父の護衛をしてたって言いましたよね」
「ああ、言ったが」
「じゃあ、僕は知らないけど、そっちの三人もそれぞれ別の人を?」
「ああそうだ。確か、君のお婆さんと、お姉さんと、お母さんを、それぞれ護衛してたんだ」
指で示された。
僕がさっきまでよく知らなかった四人のうち、ウタガワさん以外の三人はみんな女性。
手前のセミロングの三十代から四十代くらいの女性がお婆ちゃんの護衛。ポニーテールの二十代くらいの女性がお姉ちゃんの護衛。奥のショートヘアの三十代くらいの女性がお母さんの護衛をしたらしい。
「じゃあやっぱり」予想が当たっても、こんなのガッカリだ。「ぴったり護衛全員を狙って」とまで僕が言うと。
「なるほどな」
と、ウタガワさんは頷いた。
「護衛が全部で何人なのかすら調べられてたワケだ。しかも護衛しやすいように用意していた住所を特定された。爺さん婆さんの護衛はもう終わったあとだったから、あいつらは俺らとのローテーションのため、その仮の住居で待機してた。夜寝てる時は護衛を減らして俺らの仮の住まいを残りが守ってたが、だからこそその時間に狙うのは相手も大人数を相手にすることになるため避けたのか――ともかく夕方、護衛と護衛された君ら、一人に一人が付いている時を狙われたな」
「そんな……。そもそも僕らが護衛されてること自体バレてたなんて」
「相手が上手だったってことだ、最悪なことだが」
ウタガワさんは、そう言うと、この静かで暗い地獄の底で、目を凝らして、眠っているみんなの顔を観察した。
「君の母親はいないな、お爺さんお婆さんも除外されてる。多分、君の兄弟と君の父親のことを、力の持ち主かもしれないと疑っている人物だな」
「そんな」
「君の父方の血筋を疑える人物。可能性は大だ。君の恋人のことはスルーしてる、恋人の護衛もだ、ここにはいない。決定的だな、君ら藤宮家が目的だ」
「じゃ、じゃあ」
「色々と知られてるな。……しかも、ほぼ同時に命令された通りのことを完璧に実行できる者達を集めてもいる。権力もある奴。相手の狙い、主眼は君らだが、護衛に気付いたそいつは俺達をどうにかしなきゃならんと思ったはずだ、家族全員が護衛されているか、護衛者はどんな奴か、何人か、どういう交代制か、全て調査したんだろう。――で、戦力のある者に追われること、見られ誰かに伝えられることを避けたがった。だから俺らまでこうなった」
「で、でも、こんな同時にだなんて」
「できたんだろう、だからこの現状だ」
絶望する僕にそう指摘してから、ウタガワさんが続ける。「どうやら、同時が手っ取り早いというか、その方が都合がいい――いや、こうでなければ対策されるとでも思ったのかな。君の家族もここにいるのがその証拠……かもな」
僕は、腑に落ちた。
そうか……この犯人も、護衛をする彼らのことを詳細までは知らなくて、対策を怖がった……。ありうる。だからこんな風に同時に。しかも危険を冒さず眠らせ拉致することに専念した――拉致現場でそもそも僕らを殺さなかったのはなんで? 抵抗されて失敗するかもと考えた? かもしれない――。
いや、現場に痕跡が……格闘した痕や血痕が残ってニュースになるのを避けたかった?
その時、「ううん」と女性の声が聞こえた。目を覚ましたのはポニーテールの若い女性だった。
「沢渡」
ウタガワさんが声を掛けた。
その女性はサワタリという名前――いや、そう呼ばれているらしい、という方が正確か。
そんなサワタリさんとほぼ同時に、ほかのみんなも目を覚ました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は自分の脇腹を注意深く探った。そこに発信機が仕掛けられているはずだったからだ。
それは、変装のための特殊メイクの肌を重ねて独自に隠していたもの。だが、それすらも剥がされている。
持ち物がない上にこうだから、発信機での捜索に期待できない――まあこの近くに捨て置かれているなら別だが、警戒しているならそんな真似はしないだろう。
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