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第3章 隠し事
27-2 お爺ちゃんと山
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お爺ちゃんの話をもう聞けない。静かだったけど楽しそうだったあの話し方、あの声。
もう聞けない。
それを噛み締めたあとで、想い出の中のお爺ちゃんを大事にする、そう決めて――それから、考えるべきことがある、と思った。
なんでこんなことになったのか。なんでお爺ちゃんは誰にも言わずに。
お爺ちゃんの態度を思い返した。
そういやあまり謎じゃないなぁって、あとから気付いた。背負い込む人だったから。表に出さない人だったから。
十分に理由になるって思えた。こんな風に大事なことで、しかも人に言えないことなら、一人で隠し通そうとする、そういう人だ。だから今の今まで隠されてたんだ、きっと。
そう思ってから気を落ち着かせて、それから気付いた。
近代と昔のルオセウ人で違いがあることはありうる、そしてそれは変身に関わることかもしれない。近代のルオセウ人は千年程前と違い、変身後の姿を維持できる? 少なくともお爺ちゃんがルオセウ人なら、その推察が合っているって言うことはできそうだ……。
あれはきっと聞き間違いじゃない。ピッタリ符合する言葉だったんだ。
そう考えてからふと気付いた。
「そうか、二つの血が――」
お爺ちゃんの血と佐倉守の家系の血。二つが混ざって、僕ら三兄弟がマギウトを――でも、お兄ちゃんとお姉ちゃんは未熟児だった。
僕だけがサクラの状態がかなりよくて……、だから近代のルオセウ人のものとよく混ざり合った特殊な形の能力を……持つほどの……耐えられるほどの成長を胎内でして、生まれた……。そして僕の変身能力はもしかしたら進化までしたのかもしれない、居那正さん曰く「変身できる姿は一種類だ」ということだけど、僕は青い肌のルオセウ人を想像しただけの姿にもなれたし、人より大きなヤモリにも、人間大の猫にも変身できた。その時点で僕は例外的。
僕の変身は、最初は佐倉守家の特色を持ってた。青い肌になってしまった時、八分くらいで解除された。
でも最近は、変身を維持できるようになった。それはお爺ちゃんの変身の特色かもしれない、お爺ちゃんが元々ルオセウ人だったなら、変身能力を持っていたなら、そう仮説を立てることはできる。そして維持できているから――そしてその維持にサクラが必要なかったから――ずっとあの姿だったんだろう、そう思える。だから僕らは今の今まで気付かなかった、思いもしなかった……。
力が混ざった?
……いや、変わった? その上で、何種類も変身できるように、進化――そう言えるのかもしれない――。どうなんだろう。この仮説には、あまりにも穴がないんじゃ……。
こんな存在は、本当に僕だけかもしれない。
そう結論付けてから、僕は、お爺ちゃんが最後に口にした言葉とこの推察を、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんの四人にだけ話した。
「そ、それが本当なら……。でも……」
お父さんは、驚きのせいか、そんな風にしか話さなかった。
「聞き間違いじゃないんだよ、冗談でもない、こんな時にそんなこと言えないし」
僕がそう言うと、四人は複雑な表情を見せた。
「そこまで確信があるんなら、隈射目に報告した方がいい」
そう言ったのはお父さん。しかも真剣な顔で。
「うん、そうだね、報告してみる」
僕はそう言って、スマホの連絡先一覧を開いた。最初に目に付いたのは、嘉納丑寅さんの名前。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
スマホが鳴って画面を見た時に、掛けてきた相手が大樹くんだということには少々驚きましたよ。
彼が私にこう報告しました。「僕の祖父もルオセウ人かもしれません」
とんでもない衝撃でした。
「それは確かですか?」
「確かです。それらしい言葉を耳にしたんです、間違いなんかじゃありません、絶対に」
本当ならとんでもない事実です。「御祖父の出身地がどこかは分かりますか?」
「出身地って言っても……」
そこで、電話の相手が代わりました。
「あの、大樹の母の香菜です。私の父なら、ずっと東京郊外の村住まいで、引っ越しはしていないはずです」
私は更に詳しい情報を受けると、隈射目の各研究室のリーダーを、本部地下六階の談話室に呼び出しました。
「で、急に何です?」
そう言ったのは花井くんでした。
私は、本題を話しました。こんな風に。
「大樹くんの御祖父もルオセウ人かもしれないとのことです」
皆の顔が変わりましたよ。
私は先を続けました。「超音波調査で御祖父の家の周囲の地下を調べましょう、船があるかもしれません」
合同研究班を結成した時にリーダーをやることになっている人物がいます。それは根浦逸。
彼が作戦を立てました。「分かりました。静音ヘリを飛ばしましょう。俺達研究員プラス、希美子さんや奏多くんも、大樹くんの祖父の家付近に派遣。ある程度調査地点を把握したあとは、研究員等の移動において希美子さん達のゲートを使わせてもらう、いいですね?」
「……仕方ありませんね、我々も本分を怠ることはできませんから、佐倉守の協力が必要でしょう。分かりました、やり方はお任せします、お願いしますよ」
「はい」根浦くんはそう言うと、「よし、早速準備だ」と、皆を先導してこの地下六階談話室を出ていきました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
お婆ちゃんの代わりに一人娘であるお母さんが「喪主をする」と言って、お母さんは、お父さんやお婆ちゃんと相談しながら打ち合わせを進めていった。
通夜、葬儀には多くの人が集まった。近くの人も、旅先の人もいただろうし、同業者もいたかもしれない、昔――と言っても最近までやっていたけど――お爺ちゃんは米作りをしていた、その関係者も、だ。
集落の若い衆もいたし、とにかく多くの人が集まった。
お爺ちゃんは火葬され、遺骨だけになった。
あまりにもあっけなく感じた。
反面、僕の胸にはじくじくとした穴が開いていた。
初七日の法要を終え、まずは一段落。落ち着いたというか……、なんだろう、うまく言い表すことができない。これ……簡単に言い表したくないっていうことなのかもしれない。そんなにすぐに落ち着きたくない感覚もある気がする。胸の痛みが消えないうちは、忘れることがないから? そういった感覚だけは、とても強く残っている。
だけど慣れていかなきゃならないんだろう。
僕は幽霊をあまり信じてないけど、もしいるのなら、お爺ちゃんはきっと、僕らがあまり気にしなくなることを空の上で願ってるんじゃないかな。『いつまでも落ち込んでなんかいるな』っていう風に――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
藤宮春彦氏の家の周囲の調査は数週間続いた。ある時。
「ここだ!」
船を発見。
超音波モニターの映像によると、今見付けた船は、佐倉守の船に比べてとても小さいようだった。
横長で、最長部分でも七メートルちょっとくらいの船体。
付近の山の地面の中だった。
そこに穴を掘り、入口を見付けた。二メートル四方くらいの扉だ。
機械工学研究班はその開け方が分かるようだったが、開扉の前にまず防護服やガスマスクで完全防備をした。以前に開いたことがあると言っても、中で何かが腐っているか、潜伏している可能性もある。用心に越したことはない。
掘った穴の上にはテント。テントの出入口には何重ものシートを張り、船の扉を開けた時に地球外物質が外に漏れないようにした。
そうしてからウイルスや微生物、菌対策の病原体研究班が入口の前に立つ。
全体のリーダーは僕――根浦逸だが、その班のリーダーも僕。僕がゴーサインを出し、機械工学研究班のリーダー花井が開扉。そして入り、調査。細心の注意を払った。
安全が保たれていたのか、危険なウイルスや菌は検査機に引っ掛からなかった。
顕微鏡でも見たが、無菌に近いし、危険なウイルスはやはりいない。
僕は班員と共に外に出た。そして各班員に向け分かったことを報告。その後、植物研究班がそのリーダー彦見沢を先頭にして入った。
植物にも問題はないようだった、船内の植物の世代を経たがゆえの変化(いわゆる進化)もそこまでない。世代ごとの違いでそれを見たとのこと。地球への影響も心配なさそうだという言葉もあった。
彦見沢曰く、
「花粉が外に出ないように対策できてるし、問題ない」
らしい。
「よし、航行記録を解読する」
機械工研究班のリーダー、花井がそう言った。その班が入っていったのはそれからだった。
そして数日。
解読できた航行記録によると、地球付近まで来てから古い型の信号をキャッチしてそれに寄せる方向に軌道修正された形跡がある――かもしれない――とのことだった。
その軌道修正の結果、日本にルオセウからの宇宙船がもう一度来ることになったんだろう、ほかの国に着陸しなかったのは恐らく偶然ではない。僕は花井の報告を受けてそう結論付けることにした。
古い型の信号というのは、佐倉守家の宇宙船の(現代の地球では感知できない)信号のことらしい。
「佐倉守の船の装置は全て停止しているはずだよな?」
僕は花井に聞いてみた。
すると花井はすぐうなずいた。「確かそのはずです。でもそのつもりなだけで、どこかに停止できていない部分がある可能性はありますね」
なるほど、それはありそうだ。
そう考えてから僕は思った、新たに関係者のみが入れる場所を作って、そこにでもこの船を運び完全に隠してしまうべきだろう、と。僕は嘉納さんに今回分かったこととその考えとを伝えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ある雨の日だった。初七日の法要を終えて数週間が経っていて、僕は自分の地元に戻っていた。
で、そんな時に、部屋にて嘉納さんからの連絡を受けた。
「――ということで、船が見付かりましたが、全てが偶然という訳でもないようですよ」
予想が当たった! 本当に、お爺ちゃんはそうなんだ!
詳しく話を聞いてから、その情報を夜には家族みんなで共有した。
その話す最中にふと思った。
――お爺ちゃんは医者に体を見せたはず。
レントゲンも撮られたんじゃないかな。
最低でも一度、多ければもっと……体を診られている可能性がある。
少なくとも、最後に診断した医者はお爺ちゃんの秘密を守ろうとしてくれたんじゃないかな。だからどこへもこの情報が広まってない……んじゃ? そうならそうだと知って感謝したいし、知らない部分の話を――お爺ちゃんの話を――その医者から聞いてみたい、等身大のお爺ちゃんを理解したい――
そう思った。
だけど、話を本当に詳しく聞いてるのか。
聞いているとしても、そんな医者はどこの誰なのか。
まあ、診療所のあのお医者さんの可能性は高い。けど、念のため、その調査を隈射目に頼むことにした。
もう聞けない。
それを噛み締めたあとで、想い出の中のお爺ちゃんを大事にする、そう決めて――それから、考えるべきことがある、と思った。
なんでこんなことになったのか。なんでお爺ちゃんは誰にも言わずに。
お爺ちゃんの態度を思い返した。
そういやあまり謎じゃないなぁって、あとから気付いた。背負い込む人だったから。表に出さない人だったから。
十分に理由になるって思えた。こんな風に大事なことで、しかも人に言えないことなら、一人で隠し通そうとする、そういう人だ。だから今の今まで隠されてたんだ、きっと。
そう思ってから気を落ち着かせて、それから気付いた。
近代と昔のルオセウ人で違いがあることはありうる、そしてそれは変身に関わることかもしれない。近代のルオセウ人は千年程前と違い、変身後の姿を維持できる? 少なくともお爺ちゃんがルオセウ人なら、その推察が合っているって言うことはできそうだ……。
あれはきっと聞き間違いじゃない。ピッタリ符合する言葉だったんだ。
そう考えてからふと気付いた。
「そうか、二つの血が――」
お爺ちゃんの血と佐倉守の家系の血。二つが混ざって、僕ら三兄弟がマギウトを――でも、お兄ちゃんとお姉ちゃんは未熟児だった。
僕だけがサクラの状態がかなりよくて……、だから近代のルオセウ人のものとよく混ざり合った特殊な形の能力を……持つほどの……耐えられるほどの成長を胎内でして、生まれた……。そして僕の変身能力はもしかしたら進化までしたのかもしれない、居那正さん曰く「変身できる姿は一種類だ」ということだけど、僕は青い肌のルオセウ人を想像しただけの姿にもなれたし、人より大きなヤモリにも、人間大の猫にも変身できた。その時点で僕は例外的。
僕の変身は、最初は佐倉守家の特色を持ってた。青い肌になってしまった時、八分くらいで解除された。
でも最近は、変身を維持できるようになった。それはお爺ちゃんの変身の特色かもしれない、お爺ちゃんが元々ルオセウ人だったなら、変身能力を持っていたなら、そう仮説を立てることはできる。そして維持できているから――そしてその維持にサクラが必要なかったから――ずっとあの姿だったんだろう、そう思える。だから僕らは今の今まで気付かなかった、思いもしなかった……。
力が混ざった?
……いや、変わった? その上で、何種類も変身できるように、進化――そう言えるのかもしれない――。どうなんだろう。この仮説には、あまりにも穴がないんじゃ……。
こんな存在は、本当に僕だけかもしれない。
そう結論付けてから、僕は、お爺ちゃんが最後に口にした言葉とこの推察を、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんの四人にだけ話した。
「そ、それが本当なら……。でも……」
お父さんは、驚きのせいか、そんな風にしか話さなかった。
「聞き間違いじゃないんだよ、冗談でもない、こんな時にそんなこと言えないし」
僕がそう言うと、四人は複雑な表情を見せた。
「そこまで確信があるんなら、隈射目に報告した方がいい」
そう言ったのはお父さん。しかも真剣な顔で。
「うん、そうだね、報告してみる」
僕はそう言って、スマホの連絡先一覧を開いた。最初に目に付いたのは、嘉納丑寅さんの名前。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
スマホが鳴って画面を見た時に、掛けてきた相手が大樹くんだということには少々驚きましたよ。
彼が私にこう報告しました。「僕の祖父もルオセウ人かもしれません」
とんでもない衝撃でした。
「それは確かですか?」
「確かです。それらしい言葉を耳にしたんです、間違いなんかじゃありません、絶対に」
本当ならとんでもない事実です。「御祖父の出身地がどこかは分かりますか?」
「出身地って言っても……」
そこで、電話の相手が代わりました。
「あの、大樹の母の香菜です。私の父なら、ずっと東京郊外の村住まいで、引っ越しはしていないはずです」
私は更に詳しい情報を受けると、隈射目の各研究室のリーダーを、本部地下六階の談話室に呼び出しました。
「で、急に何です?」
そう言ったのは花井くんでした。
私は、本題を話しました。こんな風に。
「大樹くんの御祖父もルオセウ人かもしれないとのことです」
皆の顔が変わりましたよ。
私は先を続けました。「超音波調査で御祖父の家の周囲の地下を調べましょう、船があるかもしれません」
合同研究班を結成した時にリーダーをやることになっている人物がいます。それは根浦逸。
彼が作戦を立てました。「分かりました。静音ヘリを飛ばしましょう。俺達研究員プラス、希美子さんや奏多くんも、大樹くんの祖父の家付近に派遣。ある程度調査地点を把握したあとは、研究員等の移動において希美子さん達のゲートを使わせてもらう、いいですね?」
「……仕方ありませんね、我々も本分を怠ることはできませんから、佐倉守の協力が必要でしょう。分かりました、やり方はお任せします、お願いしますよ」
「はい」根浦くんはそう言うと、「よし、早速準備だ」と、皆を先導してこの地下六階談話室を出ていきました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
お婆ちゃんの代わりに一人娘であるお母さんが「喪主をする」と言って、お母さんは、お父さんやお婆ちゃんと相談しながら打ち合わせを進めていった。
通夜、葬儀には多くの人が集まった。近くの人も、旅先の人もいただろうし、同業者もいたかもしれない、昔――と言っても最近までやっていたけど――お爺ちゃんは米作りをしていた、その関係者も、だ。
集落の若い衆もいたし、とにかく多くの人が集まった。
お爺ちゃんは火葬され、遺骨だけになった。
あまりにもあっけなく感じた。
反面、僕の胸にはじくじくとした穴が開いていた。
初七日の法要を終え、まずは一段落。落ち着いたというか……、なんだろう、うまく言い表すことができない。これ……簡単に言い表したくないっていうことなのかもしれない。そんなにすぐに落ち着きたくない感覚もある気がする。胸の痛みが消えないうちは、忘れることがないから? そういった感覚だけは、とても強く残っている。
だけど慣れていかなきゃならないんだろう。
僕は幽霊をあまり信じてないけど、もしいるのなら、お爺ちゃんはきっと、僕らがあまり気にしなくなることを空の上で願ってるんじゃないかな。『いつまでも落ち込んでなんかいるな』っていう風に――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
藤宮春彦氏の家の周囲の調査は数週間続いた。ある時。
「ここだ!」
船を発見。
超音波モニターの映像によると、今見付けた船は、佐倉守の船に比べてとても小さいようだった。
横長で、最長部分でも七メートルちょっとくらいの船体。
付近の山の地面の中だった。
そこに穴を掘り、入口を見付けた。二メートル四方くらいの扉だ。
機械工学研究班はその開け方が分かるようだったが、開扉の前にまず防護服やガスマスクで完全防備をした。以前に開いたことがあると言っても、中で何かが腐っているか、潜伏している可能性もある。用心に越したことはない。
掘った穴の上にはテント。テントの出入口には何重ものシートを張り、船の扉を開けた時に地球外物質が外に漏れないようにした。
そうしてからウイルスや微生物、菌対策の病原体研究班が入口の前に立つ。
全体のリーダーは僕――根浦逸だが、その班のリーダーも僕。僕がゴーサインを出し、機械工学研究班のリーダー花井が開扉。そして入り、調査。細心の注意を払った。
安全が保たれていたのか、危険なウイルスや菌は検査機に引っ掛からなかった。
顕微鏡でも見たが、無菌に近いし、危険なウイルスはやはりいない。
僕は班員と共に外に出た。そして各班員に向け分かったことを報告。その後、植物研究班がそのリーダー彦見沢を先頭にして入った。
植物にも問題はないようだった、船内の植物の世代を経たがゆえの変化(いわゆる進化)もそこまでない。世代ごとの違いでそれを見たとのこと。地球への影響も心配なさそうだという言葉もあった。
彦見沢曰く、
「花粉が外に出ないように対策できてるし、問題ない」
らしい。
「よし、航行記録を解読する」
機械工研究班のリーダー、花井がそう言った。その班が入っていったのはそれからだった。
そして数日。
解読できた航行記録によると、地球付近まで来てから古い型の信号をキャッチしてそれに寄せる方向に軌道修正された形跡がある――かもしれない――とのことだった。
その軌道修正の結果、日本にルオセウからの宇宙船がもう一度来ることになったんだろう、ほかの国に着陸しなかったのは恐らく偶然ではない。僕は花井の報告を受けてそう結論付けることにした。
古い型の信号というのは、佐倉守家の宇宙船の(現代の地球では感知できない)信号のことらしい。
「佐倉守の船の装置は全て停止しているはずだよな?」
僕は花井に聞いてみた。
すると花井はすぐうなずいた。「確かそのはずです。でもそのつもりなだけで、どこかに停止できていない部分がある可能性はありますね」
なるほど、それはありそうだ。
そう考えてから僕は思った、新たに関係者のみが入れる場所を作って、そこにでもこの船を運び完全に隠してしまうべきだろう、と。僕は嘉納さんに今回分かったこととその考えとを伝えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ある雨の日だった。初七日の法要を終えて数週間が経っていて、僕は自分の地元に戻っていた。
で、そんな時に、部屋にて嘉納さんからの連絡を受けた。
「――ということで、船が見付かりましたが、全てが偶然という訳でもないようですよ」
予想が当たった! 本当に、お爺ちゃんはそうなんだ!
詳しく話を聞いてから、その情報を夜には家族みんなで共有した。
その話す最中にふと思った。
――お爺ちゃんは医者に体を見せたはず。
レントゲンも撮られたんじゃないかな。
最低でも一度、多ければもっと……体を診られている可能性がある。
少なくとも、最後に診断した医者はお爺ちゃんの秘密を守ろうとしてくれたんじゃないかな。だからどこへもこの情報が広まってない……んじゃ? そうならそうだと知って感謝したいし、知らない部分の話を――お爺ちゃんの話を――その医者から聞いてみたい、等身大のお爺ちゃんを理解したい――
そう思った。
だけど、話を本当に詳しく聞いてるのか。
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