ヒロインである姉を持つ、小説に出てきすらしない私のありえない話。

画鋲

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はじめての景色

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会場へ着き入り口の前で護衛騎士と共にお爺さまを待っていると、遠くからすごく顔の整った私と同じ瞳の色をしたおじいさんが現れた。


「お前がライズか。」


どうやら、この人がお爺さまのようだ。


「お初にお目にかかります。ケンブリック男爵家が息子ライズ・ケンブリックでございます。」


私は家庭教師役の人に教わった初めて目上の人に会ったときの挨拶をした。


「まあ、合格だな。では参るぞライズ。いいか、ここは遊び場じゃない。戦場だ。そう心得ておけ。」


そうおっしゃって、お爺さまは会場の中へ入っていった。私もその後を追いかけていく。戦場。確かにそうなのかもしれない。私にとっては特に。ここで失敗すればこの家にいることすらできなくなるかもしれないのだから。




パーティーの開始は18:00になっており、今は17:30。あと30分ある。その間にケンブリック男爵家と繋がりがある家に挨拶に行く。お爺さまについていけば大丈夫のはずだ。


すると、後ろから声をかけられた。


「おやおやおや、ケンブリック様ではありませんか。こりゃ、ご無沙汰ですなぁ。いろいろお話は回ってきますが。」


随分と嫌な雰囲気のおじさんだ。確かこの顔はサルバドル男爵家の当主ジェイル・サルバドル。名産は柚酒だったかな…


「随分と口が回るのぉ、ジェイルよ。確かに息子には目に余るものがあるがな。」


お爺さまもはっきり言い過ぎでは?ケンブリック家の株を上げるために来てるのに下げてどうするのだろう。


「貴方様がそれを言ってはいけないでしょう。おや…?ははじめて拝見する顔がいらっしゃいますがこちらは?」


次は私、いや僕の番だ。お爺さまが目配せして挨拶しなさいと言ってきた。目で。


「お初にお目にかかります。ケンブリック男爵家が息子ライズ・ケンブリックでございます。」


よし。噛まずに言えた。はぁー緊張する。心臓バクバクなんだけど。


「ほうほう、ライズ殿。はじめましてですな。いやしかし、ケンブリック男爵家にこの年のご子息がいらっしゃいましたかね。」


すごい嫌なところついてくる。確かにこの年の男はいない。だけど、もともと他の家との繋がりが薄い我が家はしらばっくれれるらしい。


「こやつは小さい頃体があまり丈夫ではなくてな、領地で療養しておったんだ。だから、人前に立つのも今回が初めてでな。」


お爺さまはスラスラと簡単に嘘が口から出てくる。もう真実を語っているようだ。僕でさえ剃れば真実なんじゃ?って思うほど本当っぽく話してる。


「そうでしたか。てっきり、ケンブリック家のこの年のお子さんは女性だと思っておりました故少々驚きました。もうお体は大丈夫なのですか?」


すごいこっち見てくる。すごい探ってくるような目をしてる。これを躱さなければ僕の役目は果たされない。


「はい。ありがたいことに良いお医者様に恵まれまして、今は剣を振ることもできるようになりました。」


これでどうだ?大丈夫だよね?ね?


「それは、ようございました。それでは私はこの辺で。よきパーティーを。」


そういって、サルバドル様は去っていった。
こっわ…これは確かに戦場だ。もっと気合を入れなければ。1人で相当体力使うやつだ。


「今の調子でいけ。次行くぞ。」


そういって、お爺さまはまた進みました。これは認めてもらえたってことで良いのかな?
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