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しおりを挟む新たな聖女が誕生した。
新たに召喚された聖女は、ユリア・シマザキという少女だった。ニホンというところからきたらしい。年齢は推定16歳。
可憐で、守ってあげたくなるような見た目をしている美少女だった。
歴代の聖女の中でも断トツの美形だった。
後日談で召喚のときにいた第二王子が『天使が舞い降りたようだった』と語っている。
聖女としての最後の仕事かもしれないと覚悟していたシオリ・サルベルタは一命は取り留めたものの聖女召喚から2週間たった今も目を覚まさないでいる。
王はこの緊急事態に何もできないでいた。今まで聖女が召喚されたときにその前の代の聖女が動けず、新たな聖女に何も教えられない状態なことは一度もなかった。
だから、王は何をすればよいのかわからないのだ。
普通なら、故郷に二度と帰る事ができないと知り泣きじゃくる召喚されたばかりの聖女のそばにはずっと召喚した聖女がいて、慰め、それと同時にこの世界で生きる上での幸せなことを語りかけるのだ。
そのうちに、気持ちが落ち着いて聖女として役目を果たそうと決心をしてくれる。
だが、今回はそれができない。
王は自分の息子たちをユリア・・シマザキのそばにいさせた。だが、聖女の様子は変わることなく日に日に悲しみが深くなるばかりだそうだ。
悲しみくれるユリア・シマザキをなんとか慰めようとするが、どうにもできずついには一ヶ月が経ってしまった。
その間は、眠ったまんまの聖女と、泣いてばかりの聖女の影響で世界は不安定になりかけていた。
だが、もしかしたら彼女がくればユリア・シマザキも元気になるかもしれないと王は思った。
聖女召喚の日に実はもう一人の少女がユリア・シマザキとは違い神殿で召喚されていた。
そして、一か月の間もう一人の少女にはずっととある術をかけてあった。その少女をユリア・シマザキに会わせたらもう一人同郷の人がこちらに来ているとわかり安心するかもしれないと王は思ってその少女を呼び出すことにした。
そして、神殿の神官長と共に来た少女はナズナ・ヤマモトという少女だった。
彼女はユリア・シマザキほどではないものの、かわいらしい容姿をしておりどちらかろいうとしっかりしてそうな印象である。年齢は推定15歳。ユリア・シマザキよりも1歳若いようだった。
ただ、神殿でかけられていた術によってなのかだいぶ落ち着いた雰囲気をしていた。
王はその少女に命じてユリア・シマザキのもとへと向かわせた。
その少女は、「わかりました」とだけ言いすぐに王の目の前から姿を消した。王のもとには側近と王妃、王の子供が残っていた。
実は、王を含め彼らは神殿で召喚され術かけられ続けた人間を見るのは初めてだった。
現在の王たちだけでなく、歴代の王たちがそうであった。
神殿で召喚された少女は、いつどこで最期を迎えたのか。いま何歳でどこにいるのか。なにも王たちは知らなかったのだ。
だが、彼らはそれをおかしいとは思わなかった。それが普通だと教えられて生きてきたから。
だが、今回のことで知ってしまったのだ。ナズナ・ヤマモトのような人間がどのような対応をうけて、どのような表情をしているのか。
彼女の表情は最初無を表していた。なにも感じていない、いや感じられないような表情だった。
だが、聖女という名前、そして命令を出せばたちまち目に光が戻り聖母のような笑顔で承諾する。そこには彼女の意思はなかった。すべて、彼女にかけ続けられた術によって行われていた現象だった。
王は恐怖を感じた。だが、何もできなかった。
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