きみは優しくて嘘つきな、

こすもす

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◇第4章◇優しくて意地悪なひと

50 したいよ*

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 あの時の情景が蘇った僕はまた、律に懇願した。

「……律、も……一緒に、しよ?」

 あの時みたいに。
 ぽわんと上気した顔の僕に、律は笑顔で即答した。

「冗談」
「………っ、ん、ん……でもっ、りつ、も」
「千紘がイくのを我慢出来たら、考えてあげてもいいですよ?」
「え、我慢って……あっ! や、あぁ……っ」

 ゾクゾクッと強い刺激が来て声を上げた。
 律が先端を濡れた親指でクルクルとこねくりまわして、ジュッジュッと扱き始めたのだ。
 激しい手淫に頭が蕩かされていった。

「あ……あ───」

 いつのまにか自分から尻を浮かせて、快感を拾っていた。
 どうしよう。気持ちいい。
 でも、我慢しなくちゃ。
 イッちゃったら律とは一緒にできない……

 だけど強すぎる刺激に耐えきれない。
 律にまた首筋をカプッと噛まれて優しく吸われた僕は、ふるふると腰を震わせて達してしまった。

「……、ん───……」

 全てを出し切った僕は弛緩して、律に背中をパタリと預けた。
 ドクンドクンと、2人分の早くなった心臓の音が混ざりあっている。

「残念でしたね」

 律が面白そうに言うのが腹立たしい。
 けど確かに残念だ。
 結局これまで、律の服や息は乱れずに終わっている。
 僕としては5年前みたいに2人で気持ちよくなりたいのだけど。
 律は、好きな人の面影を僕に重ねているのかもしれない。





 物理的に律との距離が近くなって嬉しいはずなのに、素直に喜べなくて常に胸にはわだかまりがあった。
 僕はたまらず、素晴くんに電話でこれまでのことを話した。

 共通の話題や性質を持つ素晴くんとだったら親しくなれる予感があったし、何か的確なアドバイスを貰えると思ったからだ。

 素晴くんの底抜けに明るい声でジメッとした気持ちを晴らしてほしかったというのも、理由のひとつ。

『千紘くん、凄いじゃん』
「え、凄いかな」
『凄い凄い! 積極的じゃん! 振られてそれで終わりじゃなくて、千紘くんの方からそんなふうに誘うだなんて』

 電話越しに指摘され、あの時の自分を思い出して顔がカーッと熱くなる。
 冷静になってみると、我ながらとんでもないことを提案したものだなと感心する。

 したいよ、とあんなストレートに。

「んー、けど律は僕のことは無理みたい。男の人に興味は持てないんだって」

 素晴くんは『なんかそれさー』とブーブー不貞腐れた声を出す。

『男に興味ないくせに千紘くんの体はあれこれしちゃってる訳でしょ? 説得力ないよねー。本気で興味ないんだったら関わらないに決まってるじゃん』
「律は優しくて面倒見がいいから、僕がワガママ言って仕方なくシてるって感じだけど」
『いやいや、惰性で興味の無い男の体に触ったりは出来ないよー。ホントは律さんも、千紘くんに興味津々なんじゃないの?』
「うーん」

 そうだったら結構嬉しいな、と自惚れそうになる自分を戒める。

 僕とは濃厚に触れ合った過去があるから、その点では今さら抵抗は無かったのだろう。

 それに律ははっきりと「千紘は男の子でしょう」と言ったのだ。
 体の関係が先に進まないのも、律がノンケである証拠だ。
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