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◇第5章◇優しくて切ないひと
55 雨の帰り道
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「と、とりあえず外に出ようか。ここだと邪魔になっちゃうから」
なぜか僕が気を利かせて2人の背中をポンと叩いて外へ出るように促す。
建物の外に出た途端、またしても底抜けに明るい笑顔と元気はつらつな声が響いた。
「あー楽しかったねぇプラネタリウム! そろそろお腹空かない? この近くで安くていい店知ってるから、これから律さんも一緒に行きましょうよー! 俺、そこの店主と仲良しだからサービスしてくれますよー!」
素晴くんは僕らの意見なんて初めから聞いていない。
また蛇のように腕に巻きついてきた友人は、僕が思っていたよりも図々しくて嫌な奴を演じてくれている。
律も呆気に取られながらも嫌とも言わず、僕らの後を静かに付いてきた。
僕は歩きながらどうしたものかと困惑する。けど「俺に任せて」という素晴くんの言葉を信じることにした。
その後僕らは、素晴くん行きつけのスペインバルのお店に案内され、2時間ほど料理やお酒を嗜んだ。
律はバイクなのでノンアルコールだったが、僕は素晴くんに勧められるまま、3杯飲んでしまった。
僕は酒に弱くもないが、さほど強くもない。
ほろ酔い気分になったところで場所を移動し、今度はカラオケ店に連れていかれた。
もちろん素晴くんは僕の隣を死守していた。
律の付け入る隙がないくらいに密着し、ことあるごとにボディータッチを繰り返す。
その度に律は怪訝な顔をするのだが、そうすればするほど素晴くんは愉快そうにしていた。
全く物おじせずに我が道を突き進む彼を、僕はもはや尊敬しつつあった。
「あー、歌ったねぇ」
声が枯れるまでハードロックな曲を散々歌いまくった素晴くん。
僕と律は歌え歌えと言われて仕方なく、なんとなーく昔流行っていた曲をそれぞれ歌い(ちなみに僕は音痴だが、律は結構上手で惚れ惚れした)、淡々と終わった。
「あれ、雨降ってるね」
「え、雨?」
宙に手をかざす素晴くんに釣られて空を見上げると、顔に霧のような細かい雨が当たった。
雨の予報ではなかったのに。
傘を買っておこうかとコンビニに目を止めたけど、そういえば僕はバイクに乗せてもらって来たのだった。
帰りも当然バイクで帰るのだと思っていたが、時間も時間だから、ここでサヨナラした方が良さそうかも。
「千紘くん、同じ方向だよね? 一緒に帰ろっかー」
「あ、うん……律」
僕は背後にいた律を見上げる。
律の前髪と睫毛は少し湿っていて、どことなく儚げな気配が漂っていた。
「僕、電車で帰るね。律は雨が強くならないうちに……」
「君を家まで送っていくつもりだったんですが」
その神妙な面持ちに、言外の含みを感じて頬が熱くなった。
もしかしてこれ以上、素晴くんと2人きりになって欲しくないからなのでは?
嫉妬作戦は大成功している。
素晴くんとハイタッチして小躍りしたい気分だ。
やはりここは律のバイクに……と考えていたら、隣から阻まれた。
「だって雨降ってるし、律さんだって遠回りになっちゃうでしょ? 心配しなくても、俺がちゃんと千紘くんについててあげますよー」
えへへ、と僕の肩に手を回してくる友人に既視感を覚えた。
あ、雷さんだ、とすぐに思い当たる。
彼もこんなふうに、酔って幼い喋り方をしていた。
「……そうですか。じゃあ、俺はここで」
何を言ってもダメだと察したのか、あっさりと引き下がった律は僕らの横を通り過ぎて行ってしまった。
仲間外れにしたみたいで、ちょっと可哀想だったかな。
だけどほろ酔いの頭だとフワフワして、律が嫉妬してくれたという嬉しさの方が勝っていた。
少しでいいから、律が好きな人へ向けている気持ちを僕にも分けて欲しい。
少しでも、そうなるきっかけを作ることができたのなら嬉しい。
なぜか僕が気を利かせて2人の背中をポンと叩いて外へ出るように促す。
建物の外に出た途端、またしても底抜けに明るい笑顔と元気はつらつな声が響いた。
「あー楽しかったねぇプラネタリウム! そろそろお腹空かない? この近くで安くていい店知ってるから、これから律さんも一緒に行きましょうよー! 俺、そこの店主と仲良しだからサービスしてくれますよー!」
素晴くんは僕らの意見なんて初めから聞いていない。
また蛇のように腕に巻きついてきた友人は、僕が思っていたよりも図々しくて嫌な奴を演じてくれている。
律も呆気に取られながらも嫌とも言わず、僕らの後を静かに付いてきた。
僕は歩きながらどうしたものかと困惑する。けど「俺に任せて」という素晴くんの言葉を信じることにした。
その後僕らは、素晴くん行きつけのスペインバルのお店に案内され、2時間ほど料理やお酒を嗜んだ。
律はバイクなのでノンアルコールだったが、僕は素晴くんに勧められるまま、3杯飲んでしまった。
僕は酒に弱くもないが、さほど強くもない。
ほろ酔い気分になったところで場所を移動し、今度はカラオケ店に連れていかれた。
もちろん素晴くんは僕の隣を死守していた。
律の付け入る隙がないくらいに密着し、ことあるごとにボディータッチを繰り返す。
その度に律は怪訝な顔をするのだが、そうすればするほど素晴くんは愉快そうにしていた。
全く物おじせずに我が道を突き進む彼を、僕はもはや尊敬しつつあった。
「あー、歌ったねぇ」
声が枯れるまでハードロックな曲を散々歌いまくった素晴くん。
僕と律は歌え歌えと言われて仕方なく、なんとなーく昔流行っていた曲をそれぞれ歌い(ちなみに僕は音痴だが、律は結構上手で惚れ惚れした)、淡々と終わった。
「あれ、雨降ってるね」
「え、雨?」
宙に手をかざす素晴くんに釣られて空を見上げると、顔に霧のような細かい雨が当たった。
雨の予報ではなかったのに。
傘を買っておこうかとコンビニに目を止めたけど、そういえば僕はバイクに乗せてもらって来たのだった。
帰りも当然バイクで帰るのだと思っていたが、時間も時間だから、ここでサヨナラした方が良さそうかも。
「千紘くん、同じ方向だよね? 一緒に帰ろっかー」
「あ、うん……律」
僕は背後にいた律を見上げる。
律の前髪と睫毛は少し湿っていて、どことなく儚げな気配が漂っていた。
「僕、電車で帰るね。律は雨が強くならないうちに……」
「君を家まで送っていくつもりだったんですが」
その神妙な面持ちに、言外の含みを感じて頬が熱くなった。
もしかしてこれ以上、素晴くんと2人きりになって欲しくないからなのでは?
嫉妬作戦は大成功している。
素晴くんとハイタッチして小躍りしたい気分だ。
やはりここは律のバイクに……と考えていたら、隣から阻まれた。
「だって雨降ってるし、律さんだって遠回りになっちゃうでしょ? 心配しなくても、俺がちゃんと千紘くんについててあげますよー」
えへへ、と僕の肩に手を回してくる友人に既視感を覚えた。
あ、雷さんだ、とすぐに思い当たる。
彼もこんなふうに、酔って幼い喋り方をしていた。
「……そうですか。じゃあ、俺はここで」
何を言ってもダメだと察したのか、あっさりと引き下がった律は僕らの横を通り過ぎて行ってしまった。
仲間外れにしたみたいで、ちょっと可哀想だったかな。
だけどほろ酔いの頭だとフワフワして、律が嫉妬してくれたという嬉しさの方が勝っていた。
少しでいいから、律が好きな人へ向けている気持ちを僕にも分けて欲しい。
少しでも、そうなるきっかけを作ることができたのなら嬉しい。
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