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◇第6章◇優しくて不器用なひと
69 慰め合うのは。
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「ごめんね、素晴くん」
「えー、どうして千紘くんが謝るの?」
「なんか、いろいろと……」
諦めと不甲斐なさでいっぱいな気持ちを胸に抱く。
その時、僕のスマホが振動を始めた。
それは律からの電話だった。僕は呆然と画面を見つめる。
律のことだから、さっきのことを謝ってくるのだろう。
僕が傷つかないように、気を遣って言い訳をして。
振動が止むのを確認して、スマホをポケットに仕舞った。
また振動を始めたけど、もう取り出そうともしなかった。
「いいの? 千紘くん」
「うん。なんかもういいや」
やはりヤケになったように僕は苦笑いする。
素晴くんも同じ気持ちだからこそ、頬を緩ませながら僕を見つめて何も言わない。
無理しているのは分かっているけど、悲しみはそう長くは続かない。
たくさん悲しめたあとは、きっと這い上がれると思う。
「ふふ、千紘くんと俺って、結構似てるよね」
「うん、僕も前からそう思ってた」
「似たもの同士でいっそのこと、俺たち付き合っちゃう?」
「うん、それもいいかもね……」
「だよね……」
あはは、と堪えきれずに2人で泣き笑いした。
本気じゃないからこそ、こんなふうにふざけ合える。
僕は改めて素晴くんに会えて良かったと思った。
笑いが小さくなって沈黙が落ちると、締め切った窓の外から、遠くを走る救急車のサイレンが聞こえた。
「千紘くん。寂しくなったらいつでも相手してあげるって前に言ったの、覚えてる?」
冷蔵庫の音も、風が窓枠を揺らす音も鮮明に聞こえる。
素晴くんの声も。
「覚えてるよ」
他意はないつもりで答えると、悪戯好きな子供のようにふふんと笑われる。
「しよっか」
「本気?」
「俺じゃ嫌?」
「嫌……って、訳じゃ」
「じゃあいいじゃん」
素晴くんは立ち上がると、僕の前に跪き、僕のズボンのボタンに手を掛けた。
「え、ちょっと待って……」
やんわりと素晴くんの手首を持って制止すると、上目遣いで見つめられる。
大きな瞳は海のように深くて吸い込まれそうだった。
「怖いことは絶対にしないよ」
ハッと息をのむ。
千紘が嫌なこととか、怖いことは絶対しないです。
かつてそう言った彼の面影が素晴くんに重なる。
僕の手の力が一瞬弱まったのを了承の意味だと捉えたのか、素晴くんはあっという間に僕のズボンを太ももまでずり下げた。
下着の上から膨らみを指先でするっと撫でられ、ひくりと喉が鳴る。
一瞬だけ眉根を寄せた僕に、ほうっとため息を吐かれた。
「千紘くん、めちゃくちゃ可愛いね。律さんはどうしてきみみたいな優しい人を恋人に選んでくれなかったんだろう……」
心底不思議だ、と言うように首を傾げた素晴くんの顔が近づいてきた。
この間ほど唐突ではなく、ゆっくりとした動作で唇に触れようとした時、僕は咄嗟に目をつぶって顔を背けていた。
それに驚いたのは自分自身で、ごく自然に素晴くんのキスを拒んだのが信じられなかった。
「ごめん。じゃあ、キスはやめとく」
気落ちしたような声が聞こえて、目を開ける。素晴くんはほんの少し、困ったように笑いながら顔を離した。
きっと傷付けてしまった。
嫌じゃないよと言い訳しようにも、顔を背けたのは事実なので何も言えなくなる。
素晴くんはまた、僕の足の間に手を移動させる。
手のひらから何を感じ取ったのかは分からないが、官能の火が全くついていない僕を見抜いたのかもしれない。
実際、撫でられても何も感じなかった。
「えー、どうして千紘くんが謝るの?」
「なんか、いろいろと……」
諦めと不甲斐なさでいっぱいな気持ちを胸に抱く。
その時、僕のスマホが振動を始めた。
それは律からの電話だった。僕は呆然と画面を見つめる。
律のことだから、さっきのことを謝ってくるのだろう。
僕が傷つかないように、気を遣って言い訳をして。
振動が止むのを確認して、スマホをポケットに仕舞った。
また振動を始めたけど、もう取り出そうともしなかった。
「いいの? 千紘くん」
「うん。なんかもういいや」
やはりヤケになったように僕は苦笑いする。
素晴くんも同じ気持ちだからこそ、頬を緩ませながら僕を見つめて何も言わない。
無理しているのは分かっているけど、悲しみはそう長くは続かない。
たくさん悲しめたあとは、きっと這い上がれると思う。
「ふふ、千紘くんと俺って、結構似てるよね」
「うん、僕も前からそう思ってた」
「似たもの同士でいっそのこと、俺たち付き合っちゃう?」
「うん、それもいいかもね……」
「だよね……」
あはは、と堪えきれずに2人で泣き笑いした。
本気じゃないからこそ、こんなふうにふざけ合える。
僕は改めて素晴くんに会えて良かったと思った。
笑いが小さくなって沈黙が落ちると、締め切った窓の外から、遠くを走る救急車のサイレンが聞こえた。
「千紘くん。寂しくなったらいつでも相手してあげるって前に言ったの、覚えてる?」
冷蔵庫の音も、風が窓枠を揺らす音も鮮明に聞こえる。
素晴くんの声も。
「覚えてるよ」
他意はないつもりで答えると、悪戯好きな子供のようにふふんと笑われる。
「しよっか」
「本気?」
「俺じゃ嫌?」
「嫌……って、訳じゃ」
「じゃあいいじゃん」
素晴くんは立ち上がると、僕の前に跪き、僕のズボンのボタンに手を掛けた。
「え、ちょっと待って……」
やんわりと素晴くんの手首を持って制止すると、上目遣いで見つめられる。
大きな瞳は海のように深くて吸い込まれそうだった。
「怖いことは絶対にしないよ」
ハッと息をのむ。
千紘が嫌なこととか、怖いことは絶対しないです。
かつてそう言った彼の面影が素晴くんに重なる。
僕の手の力が一瞬弱まったのを了承の意味だと捉えたのか、素晴くんはあっという間に僕のズボンを太ももまでずり下げた。
下着の上から膨らみを指先でするっと撫でられ、ひくりと喉が鳴る。
一瞬だけ眉根を寄せた僕に、ほうっとため息を吐かれた。
「千紘くん、めちゃくちゃ可愛いね。律さんはどうしてきみみたいな優しい人を恋人に選んでくれなかったんだろう……」
心底不思議だ、と言うように首を傾げた素晴くんの顔が近づいてきた。
この間ほど唐突ではなく、ゆっくりとした動作で唇に触れようとした時、僕は咄嗟に目をつぶって顔を背けていた。
それに驚いたのは自分自身で、ごく自然に素晴くんのキスを拒んだのが信じられなかった。
「ごめん。じゃあ、キスはやめとく」
気落ちしたような声が聞こえて、目を開ける。素晴くんはほんの少し、困ったように笑いながら顔を離した。
きっと傷付けてしまった。
嫌じゃないよと言い訳しようにも、顔を背けたのは事実なので何も言えなくなる。
素晴くんはまた、僕の足の間に手を移動させる。
手のひらから何を感じ取ったのかは分からないが、官能の火が全くついていない僕を見抜いたのかもしれない。
実際、撫でられても何も感じなかった。
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