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◇第1章◇優しくて冷たいひと
10 律のおしごと
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「あ、そういえば」
ずっとポケットに入れっぱなしだったスマホを見て、ひっと息をのんだ。
『ムサシさんからメッセージが届いています』の文字。しかも何十通も。
どうしようどうしようと、部屋をウロウロしているうちに律が戻ってきた。
「どうしました」
「あ……さっきの人からたくさんメッセージが来てて」
「返信は?」
「してない。怖くて開けないよ」
「なら無視していいです。不安ならブロックして」
律が言うならと、内容を読まずにそのままブロックした。
自分1人では無理そうな難題も、律に言われると絶大な安心感を覚えてクリアができる。
僕は改めて猫のチーの写真を見た。
胸から上のアップで、ななめ横を向いたチーはおおきくて真ん丸なグリーン色の目を輝かせ、口は緩やかに弧を描いている。
背景は黒なので、体の白とのコントラストが美しい。
芸術的センスは皆無な僕だけど、素敵な写真だなぁと引き込まれていた。
「これ、律が撮ったの?」
髪がしっとりと濡れて、黒の部屋着になってまた雰囲気が変わった幼馴染みにドキドキする。
「そうですね。一応、そういう仕事をしてますので」
「え、仕事って、写真を撮る?」
「あとは文字を書いたり、いろいろ」
そういえば律は昔から写真を撮るのが上手で、小遣いを貯めて一眼レフを買いたいとか話していた。
あの日も潮風と夕陽を浴びながら、僕の横顔をスマホで撮影していたっけ。
「君も風呂にどうぞ。掃除してあるから」
「え、いいの?」
「着替えも新品なのを置いてあります」
なんだかんだで至れり尽くせりで、やはり律は優しい。
風呂場に足を踏み入れると、湯船にお湯が張ってあってビックリした。
きっと僕のために入れてくれたのだ。
髪や体を洗って湯船にあごまで浸かると、あまりの気持ちよさに顔が綻んだ。
湯気でけむる中、そういえば律と順番で風呂に入るのは2回目だとまた思い出す。
お風呂のお湯はこのままにしようかと迷ったけれど、結局栓を抜いて、かかっていたブラシで掃除をした。
着替えをしている最中、洗面所を見て気付いたことがあった。
歯ブラシが1本しかなく、ヘアワックスや化粧水も、男物。
風呂場の中でも思ったけど、他人の影が見当たらないのだ。
髪の毛1本も残さぬように床をティッシュで拭いてからゴミ箱に捨て、ダイニングへ行った。
律はノートパソコンを開いて何か作業をしながら、ちらりと僕に視線をやった。
目が合うと体温が急に上昇する。
これは単なる逆上せではない。
ずっとポケットに入れっぱなしだったスマホを見て、ひっと息をのんだ。
『ムサシさんからメッセージが届いています』の文字。しかも何十通も。
どうしようどうしようと、部屋をウロウロしているうちに律が戻ってきた。
「どうしました」
「あ……さっきの人からたくさんメッセージが来てて」
「返信は?」
「してない。怖くて開けないよ」
「なら無視していいです。不安ならブロックして」
律が言うならと、内容を読まずにそのままブロックした。
自分1人では無理そうな難題も、律に言われると絶大な安心感を覚えてクリアができる。
僕は改めて猫のチーの写真を見た。
胸から上のアップで、ななめ横を向いたチーはおおきくて真ん丸なグリーン色の目を輝かせ、口は緩やかに弧を描いている。
背景は黒なので、体の白とのコントラストが美しい。
芸術的センスは皆無な僕だけど、素敵な写真だなぁと引き込まれていた。
「これ、律が撮ったの?」
髪がしっとりと濡れて、黒の部屋着になってまた雰囲気が変わった幼馴染みにドキドキする。
「そうですね。一応、そういう仕事をしてますので」
「え、仕事って、写真を撮る?」
「あとは文字を書いたり、いろいろ」
そういえば律は昔から写真を撮るのが上手で、小遣いを貯めて一眼レフを買いたいとか話していた。
あの日も潮風と夕陽を浴びながら、僕の横顔をスマホで撮影していたっけ。
「君も風呂にどうぞ。掃除してあるから」
「え、いいの?」
「着替えも新品なのを置いてあります」
なんだかんだで至れり尽くせりで、やはり律は優しい。
風呂場に足を踏み入れると、湯船にお湯が張ってあってビックリした。
きっと僕のために入れてくれたのだ。
髪や体を洗って湯船にあごまで浸かると、あまりの気持ちよさに顔が綻んだ。
湯気でけむる中、そういえば律と順番で風呂に入るのは2回目だとまた思い出す。
お風呂のお湯はこのままにしようかと迷ったけれど、結局栓を抜いて、かかっていたブラシで掃除をした。
着替えをしている最中、洗面所を見て気付いたことがあった。
歯ブラシが1本しかなく、ヘアワックスや化粧水も、男物。
風呂場の中でも思ったけど、他人の影が見当たらないのだ。
髪の毛1本も残さぬように床をティッシュで拭いてからゴミ箱に捨て、ダイニングへ行った。
律はノートパソコンを開いて何か作業をしながら、ちらりと僕に視線をやった。
目が合うと体温が急に上昇する。
これは単なる逆上せではない。
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