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第53話 もうひとり
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「まさか……カナメにも紋章が出るなんて」
花畑の端に立ったまま、リョクは呟いた。その横で、レイも小さく息を吐く。
「アオの紋章も、濃く出ていた。昨日はずっとそばにいたはずなのに」
リョクは唇を噛んだ。「カナメが……俺以外の誰かに心を許したなんて、信じたくない」いつになく弱気な声だった。
昨夜ヴィラに戻った時、腕の中で眠るアオの背に浮かぶ二つ目の紋章が濃くなっているのを見つけ、レイ自身も言葉を失った。
そして今朝——カナメにも、同じ紋章が浮かんでいたのだ。
不意に声が飛び込んできた。
「あのっ!!」
二人が振り向くと、ダイチが立っていた。
「ダイチ? どうした」「その……紋章って、2つ出ることって、本当にあるんですか?」
レイとリョクが視線を交わす。
「え? まさか……ダイチ、何か知ってるの?」
リョクが問いかけると、ダイチはぎゅっと手を握りながら小さくうなずいた。
「……タクミさん、2つ紋章があるんです。で、その、2つ目は……僕なんです」
「は──?」
リョクとレイが同時に絶句する。
「1つ目の番が誰なのか、タクミさん自身にも分からないままで……。でも、僕、タクミさんのことがずっと好きで……何度も想いを伝えて、何度も断られて……それでも諦めきれなくて、1か月前、『もうこれで最後にするから』ってお願いして……」
ゆっくりと言葉を選びながら、ダイチは胸の内を語る。
タクミは「もう一人の番」がどこかにいると信じていたからこそ、ダイチの気持ちを受け入れようとしなかった。けれど、「最後に」と差し出された想いに触れた瞬間、タクミの胸に2つ目の紋章が浮かび上がったのだという。
「それで……今日、アオくんとカナメさんの話を聞いて、もしかして"同じ"なのかと思って……」
重たい空気の中、レイが小さく目を伏せた。
「なるほど。……そういうことか」
「え? なにか分かったの?」リョクが身を乗り出す。
レイは彼をまっすぐに見つめ、静かに言った。
「少なくとも、カナメはお前を裏切っていない。それは確かだ」
「……!」
「どうせ昨夜、お前は無茶をしたんだろう。今日は優しくしてやれ」
レイはダイチに視線を移し、穏やかな声で続ける。
「ダイチくんも心配しなくていい。「答え合わせ」は……昼過ぎにしよう」
そう言い残して、レイはアオの元へ帰ることにした。
花畑の端に立ったまま、リョクは呟いた。その横で、レイも小さく息を吐く。
「アオの紋章も、濃く出ていた。昨日はずっとそばにいたはずなのに」
リョクは唇を噛んだ。「カナメが……俺以外の誰かに心を許したなんて、信じたくない」いつになく弱気な声だった。
昨夜ヴィラに戻った時、腕の中で眠るアオの背に浮かぶ二つ目の紋章が濃くなっているのを見つけ、レイ自身も言葉を失った。
そして今朝——カナメにも、同じ紋章が浮かんでいたのだ。
不意に声が飛び込んできた。
「あのっ!!」
二人が振り向くと、ダイチが立っていた。
「ダイチ? どうした」「その……紋章って、2つ出ることって、本当にあるんですか?」
レイとリョクが視線を交わす。
「え? まさか……ダイチ、何か知ってるの?」
リョクが問いかけると、ダイチはぎゅっと手を握りながら小さくうなずいた。
「……タクミさん、2つ紋章があるんです。で、その、2つ目は……僕なんです」
「は──?」
リョクとレイが同時に絶句する。
「1つ目の番が誰なのか、タクミさん自身にも分からないままで……。でも、僕、タクミさんのことがずっと好きで……何度も想いを伝えて、何度も断られて……それでも諦めきれなくて、1か月前、『もうこれで最後にするから』ってお願いして……」
ゆっくりと言葉を選びながら、ダイチは胸の内を語る。
タクミは「もう一人の番」がどこかにいると信じていたからこそ、ダイチの気持ちを受け入れようとしなかった。けれど、「最後に」と差し出された想いに触れた瞬間、タクミの胸に2つ目の紋章が浮かび上がったのだという。
「それで……今日、アオくんとカナメさんの話を聞いて、もしかして"同じ"なのかと思って……」
重たい空気の中、レイが小さく目を伏せた。
「なるほど。……そういうことか」
「え? なにか分かったの?」リョクが身を乗り出す。
レイは彼をまっすぐに見つめ、静かに言った。
「少なくとも、カナメはお前を裏切っていない。それは確かだ」
「……!」
「どうせ昨夜、お前は無茶をしたんだろう。今日は優しくしてやれ」
レイはダイチに視線を移し、穏やかな声で続ける。
「ダイチくんも心配しなくていい。「答え合わせ」は……昼過ぎにしよう」
そう言い残して、レイはアオの元へ帰ることにした。
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