【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

文字の大きさ
53 / 86

第53話 もうひとり

しおりを挟む
「まさか……カナメにも紋章が出るなんて」

花畑の端に立ったまま、リョクは呟いた。その横で、レイも小さく息を吐く。

「アオの紋章も、濃く出ていた。昨日はずっとそばにいたはずなのに」

リョクは唇を噛んだ。「カナメが……俺以外の誰かに心を許したなんて、信じたくない」いつになく弱気な声だった。

昨夜ヴィラに戻った時、腕の中で眠るアオの背に浮かぶ二つ目の紋章が濃くなっているのを見つけ、レイ自身も言葉を失った。

そして今朝——カナメにも、同じ紋章が浮かんでいたのだ。

不意に声が飛び込んできた。

「あのっ!!」

二人が振り向くと、ダイチが立っていた。

「ダイチ? どうした」「その……紋章って、2つ出ることって、本当にあるんですか?」

レイとリョクが視線を交わす。

「え? まさか……ダイチ、何か知ってるの?」

リョクが問いかけると、ダイチはぎゅっと手を握りながら小さくうなずいた。

「……タクミさん、2つ紋章があるんです。で、その、2つ目は……僕なんです」

「は──?」

リョクとレイが同時に絶句する。

「1つ目の番が誰なのか、タクミさん自身にも分からないままで……。でも、僕、タクミさんのことがずっと好きで……何度も想いを伝えて、何度も断られて……それでも諦めきれなくて、1か月前、『もうこれで最後にするから』ってお願いして……」

ゆっくりと言葉を選びながら、ダイチは胸の内を語る。

タクミは「もう一人の番」がどこかにいると信じていたからこそ、ダイチの気持ちを受け入れようとしなかった。けれど、「最後に」と差し出された想いに触れた瞬間、タクミの胸に2つ目の紋章が浮かび上がったのだという。

「それで……今日、アオくんとカナメさんの話を聞いて、もしかして"同じ"なのかと思って……」

重たい空気の中、レイが小さく目を伏せた。

「なるほど。……そういうことか」

「え? なにか分かったの?」リョクが身を乗り出す。

レイは彼をまっすぐに見つめ、静かに言った。

「少なくとも、カナメはお前を裏切っていない。それは確かだ」

「……!」

「どうせ昨夜、お前は無茶をしたんだろう。今日は優しくしてやれ」

レイはダイチに視線を移し、穏やかな声で続ける。

「ダイチくんも心配しなくていい。「答え合わせ」は……昼過ぎにしよう」

そう言い残して、レイはアオの元へ帰ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

水泳部物語

佐城竜信
BL
タイトルに偽りありであまり水泳部要素の出てこないBLです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...