禁断の果汁:限界おしがま百合日記

肴ァ

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Chapter 4: 尿道バルーンカテーテル

4-7: 尿道バルーンカテーテル(後編 - 3/3)

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 殴りつけるような、雨の中。窓にぶつかる、水滴の音。
 静かに揺れる電車の中で、深く腰を下ろし、なみは無数の滝の滴り落ちる、白く曇った車窓を眺めた。自身の帰りを待つしずくのことで、なみの頭の中は、いっぱいだった。
 スマホの時計には、六時五十分の表記があった。

 いまごろ、彼女はどうしてるだろう。
 実験科目の講義が思いの外に長引いて、かつてないほどにしずくを家に待たせてしまっている。予定通りに事が運べば、今より三十分くらいは早く家についているはずだったのに。なみの脳内にあった、しずくの限界を迎える時間を、すでに三十分も過ぎてしまっていた。
 抜いてるかな、もう。抜いていいよって、言えばよかったかな。
 限界を超えて我慢しすぎると、尿意は快感から、たちまち痛みになってしまう。そしてそれすら超えると、お腹の中のおしっこは筆舌に尽くしがたい、なんとも怖い感触になるのだ。そのタイミングを、なみはいつも、限界と呼んでいる。

 もしもしずくがまだ、アレを抜いていなかったら……しずくはもう、とっくの昔に限界を迎えているはずだ。いいや、そんなレベルじゃない。きっと、限界を超えて、ずっとそれでも苦しんでいるかもしれない。
 なみは行き所のない罪悪感に、唇をぎゅっと、噛んだ。

 電車が、徐々に減速する。なみは弾かれるように立ち上がり、ドアの前に移動した。
 警告音が鳴り、ドアが開く。ホームのメロディーと、土砂降りの雨、駅の喧騒が、木霊した。水面とも見紛うほどに町明かりを映す、アスファルト。
 なみはどたばたと、その人ごみの間を、縫うようにして走り抜けた。

 街は、暗く、秋の夜に寒い。湿った風が、なみのずぶ濡れになった長い髪を暴れさせた。
 張り付く前髪を退かしながら、折り畳み傘を取り出すことすらほったらかして、なみは水溜りの上に飛び出した。
 なみは、走った。ぴちゃぴちゃと、踏み出す足に、飛沫を飛び散らせて。
 アパートへ、しずくのもとへ。

 塗装の剥げた階段をよじ登るように駆け上がる。掴んだドアノブに、カギは掛かっていなかった。

「ただいま!」

 バタリと、扉を開くなみ。
 息を切らしながら玄関に飛び込んだなみの瞳には、薄暗い廊下に体を丸め、肩を震わせるしずくの姿が目に飛び込んだ。

「んぁ……なみ、ちゃん……」
「しずく!」

 なみはしずくを視界に入れた瞬間、膝をつき、覆いかぶさるように彼女を抱きしめ、頭を撫でた。なみの前髪から滴り落ちる雨粒が、しずくの髪に、吸い込まれる。
 青い顔をしたしずくの脚には、太ももに結びつけられたカテーテルバッグが、スカート越しにも見て取れた。ばさっと、スカートをめくる。バッグから伸びたそのチューブは、しずくのショーツの中に、そして陰部に、繋がっていた。彼女は、まだ、それを抜いてはいなかった。なみはその事実に、背中にぞぞっと、償いようのない罪悪感を湧きあがらせた。

「頑張ったね。待たせて、ごめんね、しずく」
「ん……え、へへへ……や、やくそく、だから……まえ、おさえ……して、ない……よ……」

 なみはうんうんと頷きながら、そっと、しずくのお腹に触れてみる。そこにあったのは、もはや直接触れているのかと疑うばかりに張り詰めた、かつてないほど膨れ上がったしずくの膀胱だった。
 なみはしずくのショーツを下ろした。
 許しを請うように、しずくのカテーテルを封鎖するピンへと手を伸ばし、なみはしずくの涙にまみれた顔を見つめた。

「しずく……」
「う、ん……なみ、ちゃん……おねが、い……」

 しずくは、震える声で、その眼差しに答えるのだった。そっとなみの手に指を添え、しずくは力なくはにかむ。その指先は、秋の夜から帰ったばかりのなみの手の甲より、ずっと冷たく、震えていた。
 なみは、しずくをぐいっと持ち上げて、玄関のほうまで運ぶ。

「んぐっ、んあぁ……!」

 背中と膝窩に支えられた体重が、膀胱を押しつぶすように畳み込まれ、しずくは悲鳴にも近い呻きをこぼした。

「ごめんね、もう、少しだからね……」

 なみは、ずぶ濡れのコートを、荒っぽく脱ぎ捨てる。
 しずくの太ももからベルトを外し、カテーテルバッグを床に置く。あふれ出たその中身は、土間から外へと、流れ出ていった。

 しずくのカテーテルの、チューブのピンを、外した。

 細長いチューブの中を通って、しずくのおしっこは、ほんの少しずつ玄関の土間のほうへと導かれていく。
 つーっと、伸びたチューブの先端から、乱れ一つない水流が流れ出た。
 音もなく、勢いもない。それゆえに、まったくもって、しずくの尿意は安らがなかった。

「うぅぅ……うっ、ふぅぅぅ……」
「大丈夫、もう、大丈夫だから……ね?」

 なかなか消えないお腹の痛みに、しずくは救いを求めるようになみを抱きしめる。汗だくで、アツアツになったしずくの頭を優しく撫で続ける、なみ。しずくはそのまま、ちょろちょろとチューブの先からおしっこを垂れ流しながら、なみのお腹に腕を回して、彼女の胸に顔をうずめる。
 しずくはギリギリとした膀胱の痛みの中で、なみの手を取り、自身の服の中、自身の乳首に指先を添えさせる。なみは自身の胸にうずまったままのしずくの頭を見下ろしながら、優しくそれを、愛撫した。しずくは彼女の柔らかな乳房に包まれながら、かすかに甘い、呻きを漏らした。

 ゆっくり、ゆっくりと、焦らすように、なみはしずくの乳頭をこねくり回す。しずくは、なみに包まれ、なみに愛されるその状況にひどく安堵と興奮をして、浅かった息を整えながらに速くした。
 ふう、ふうと、吐息に従い、しずくのおしっこの勢いは上下した。なみがしずくの胸への攻めの手を激しくすると、しずくは瞬く間に肩をビクビクっと震わせて、カテーテルのチューブからチョロロと強めに、おしっこを噴き出した。

「ふう、ふううぅぅ……っく、ふぅ……」
「いいよ、大丈夫……ゆっくり、出して。何回でも、気持ち良く、してあげるから……」

 そうやって、甘ったるくぬるい時間を、三、四分ほど過ごした二人。いつしか、しずくのカテーテルからあふれ出してくるおしっこも底をついて、彼女のお腹ももとの薄っぺらくて綺麗なくびれに戻っていた。
 いまだ、ジンジンと痺れる下腹部と、空っぽで軽くなった体の感覚。お股に無意味に込めていた本能的な力みも完全に解けて、しずくはふにゃふにゃと、しゃがんだなみのお腹にもたれかかった。なみは、ぺったんこになった、しずくの下腹部を労わるように優しく撫でる。その指先がくすぐったくて、しずくはヒクヒクと、おへその周りを凹ませた。
 抱く、その姿は、なみの瞳にまさしく少女に映るのだった。なみはしずくのお腹と背中を、優しく、優しく撫で続けた。

「……偉い。偉いよ、しずく……よく、頑張ったね……」
「え、えへ、えへへぇ……もっと……トレーニング、しなきゃ、だね……」

 顔を上げ、涙に赤く腫らした目で、しずくはなみを見上げるのだった。なみはその汚された清純に、どうしようもなく、いたたまれない心持ちになった。彼女の濡れた頬を指先に拭い、前髪をよけて、なみはぐったりとしたしずくの体をしっかりと支える。

「しずく……お腹、その……大丈、夫……?」
「え、えへへへぇ……いた、かった……いたかった、よ……? でも、すっごく……きもちよかった……」

 しずくは眼差しに、なみにキスを、せがむのだった。
 なみもまた、許しを請うように、そっと、強く、口づけをした。しずくの頬を両手で包んで、長く、長く。しずくの膀胱に、新たに注ぎ込まれたおしっこが、再びチューブを伝って、あふれ出てきた。
 んふ、んへへへ、と、恥ずかしそうに笑う二人。抱き合い、重なるように座り込み、もう一度、キスをする。

「……今日は、いっぱい我慢したね、しずく」
「……うん、すごかった……」
「……可愛かったよ、しずく。ほんとに、可愛い……遅れて、ごめんね……しずく……」
「ううん、いいの……なみちゃん、しんぱい、しちゃった……?」
「……うん、とっても……」

 しずくは柔らかに目を細めて笑い、なみを抱き寄せて、キスをした。なみはその腕に、唇に、されるがままに従った。

「……ねえ、なみちゃん?」
「うん……どうしたの、しずく」

 しずくは、恥ずかしそうに目を逸らし、呟く。

「……また、シたいかも……こういう、の……」
「……しずく、いいの……?」
「うん……いっぱい、シたい……」

 蕩けるようにはにかんで、しずくはふわりと、なみを見つめた。なみは、何も言わずに、ただキスをした。
 あんなに辛そうな表情で、彼女は自身に助けを求めていた。なみの網膜には、まだその姿が、新鮮に焼き付いている。
 その言葉を、受け入れてしまったら、きっといつか彼女を傷つけてしまう。でも、彼女にとっての自分もまた、彼女のこんな被虐心をさらけ出していられる、唯一の存在なのだ。それが、なみにとって本当に、一番幸せなことだった。
 なみは、どういえばいいか、迷ってしまった。どうすれば、危うい彼女を愛したまま、守れるか。そこには彼女の体のほかに、自身もまたそういう存在であるという裏返しが絡みついて、狂えるほどになみの言葉を迷わせるのだった。

 本当は、シたいのだ。
 危ないことも、すごいことも。
 でも、彼女のことは、大切なのだ。
 そして欲を言うのなら、それは自分に、シてほしかった。

 沈黙の中、二人は唇を、合わせ続けた。
 また、しずくのおしっこが、チューブの先からあふれ出してきた。
 チョロチョロ、チョロチョロ……。
 ぽた、ぽた……と。
 唇を離した二人の間には、細く透明な、橋が架かっていた。

「……わかった、しずく。でも……しばらくは、お休み、しようね」
「んえぇ? ……なぁんで?」

 身をくねらせて、引っ付くしずくに、なみは目をそらした。

「だって……こういうコトばっかりしてたら、しずくが自力で我慢、できなくなっちゃうかも……だから……」

 しずくの思考はぼんやりとしていた。白霧のかかったように不明瞭で、鈍重に空回りをする始末であった。しかし、そんなしずくの瞳でさえも、なみの見え透いた心配の態度は、見て取れた。ほんとは、自分を、心配してくれてる。でも、シたがりな自分を納得させてくれるために、どうでもいい言い訳を、私にこぼしてくれているんだ、と。
 しずくは、なんだかすごく嬉しくなって、にへっと小首を傾げて笑うのだった。

「えへ、えへへぇ……それも、そっかぁ……」
「それから……」

 なみはふっと、しずくの顔を見つめ直す。しずくはその視線に、きょとんとした表情を浮かべた。

「……今度は、私も、一緒にするから。……それと、おしっこ無理やり塞ぐのは……ほんとにたまに、だけ……ね? ……しずく、それで、いい?」
「……うん、わかった」
「……よかった」

 なみは目を細め、ふうっと息を吐いて、肩の力を抜くのだった。
 立ち上がり、しずくの脇に腕を回して、立ち上がらせる。くらっとよろけたしずくの体を、抱きしめるように、支えるのだった。

「……ありがとう、うれしい……だいすきだよ、なみちゃん」
「……私も、大好き」

 よたよたとしたしずくの足元を危うく思い、なみはしずくを、お姫様抱っこで持ち上げた。陰部から伸びたしずくのチューブが、ぶらんぶらんと、揺れている。

「わあ、王子さまぁ……」
「はいはい、私の可愛いお姫様。とりあえず、きれいきれい、しましょうねー」
「はぁい……ねえ、洗って?」
「んっふふ、その前にまずはコレ、抜くとこからでしょ?」

 なみはぶら下がったチューブの先を、手首を返して持ち上げる。その瞬間、不意にあふれ出たしずくのおしっこを、なみは咄嗟に口で受け止めてしまった。
 じゅうっと、染み出すおしっこを、しずくに見られながらに吸い続けるなみ。しずくはその姿に、なみの腕に抱えられたまま、思わず両手をパタパタとさせた。

「……わぁ! ご、ごめん、なみちゃん。これだと、我慢できなくて……!」

 二人はぴたっと目を合わせた。無力にもおしっこを放出し続けるしずくと、それを何も言わずに吸い続けるなみ。二人は徐々に顔を赤くしながら、それでも視線を交わらせ続けた。
 やがて、しずくのお腹が空っぽになる。

「……ぜ、全部……飲んじゃった……。ごめん、なみちゃん……」
「……ううん、いいの。この前、しずくもしれっと、私の飲んでくれてたじゃん。だから、その……お返し!」
「ん、え、お返しって……んなぁっ! まさか、バレてたとは……」

 顔を赤くして、わざとらしく目を逸らすしずく。唇にチューブを咥えたまま、なみははにかみ、抱いたしずくを見つめるのだった。

 二人は、笑い合いながら、バスルームの中へと消えていった。
 脱衣所と廊下の床一面には、脱ぎ散らかされた、二人の服。
 点々と落ちる、しずくの水滴。
 カテーテルバッグ。
 はしゃぎあう二人のにぎやかな声、シャワーの音が、アパートの一室に木霊した。

「ほら、これ。チューブとカテーテル繋ぐとこ、外れかかってる……しずくのおしっこの圧力で、こんなになっちゃったのかな」
「んっへぇ? ほんとだ、アブナイとこだったねぇ」
「ほんとは絶対、両手でやらなきゃ取れないくらいのところなんだけど……うんしょ! しずく、しずくはほんとに、すごいね……」
「……んっへへぇ……でしょぉ、すごいでしょ、んっへへぇ……」

 いつしか、雨は綺麗に止んでいる。
 湯船に浸かった二人の声と、ぴちゃぴちゃという水しぶきだけが、その一室を包み込んだ。
 リビングのテーブルには、三本のボトル。二本の麦茶のボトルと、一際大きなレモンティーのそれが、中身を空にして仲良く静かに立ち並んでいる。
 深紫の高い夜空には、色とりどりの星々が煌めいた。
 秋虫の声の響く夜道には、まん丸の月が、白く爛々と輝いているのだった。
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