16 / 16
Chapter 4: 尿道バルーンカテーテル
4-7: 尿道バルーンカテーテル(後編 - 3/3)
しおりを挟む
殴りつけるような、雨の中。窓にぶつかる、水滴の音。
静かに揺れる電車の中で、深く腰を下ろし、なみは無数の滝の滴り落ちる、白く曇った車窓を眺めた。自身の帰りを待つしずくのことで、なみの頭の中は、いっぱいだった。
スマホの時計には、六時五十分の表記があった。
いまごろ、彼女はどうしてるだろう。
実験科目の講義が思いの外に長引いて、かつてないほどにしずくを家に待たせてしまっている。予定通りに事が運べば、今より三十分くらいは早く家についているはずだったのに。なみの脳内にあった、しずくの限界を迎える時間を、すでに三十分も過ぎてしまっていた。
抜いてるかな、もう。抜いていいよって、言えばよかったかな。
限界を超えて我慢しすぎると、尿意は快感から、たちまち痛みになってしまう。そしてそれすら超えると、お腹の中のおしっこは筆舌に尽くしがたい、なんとも怖い感触になるのだ。そのタイミングを、なみはいつも、限界と呼んでいる。
もしもしずくがまだ、アレを抜いていなかったら……しずくはもう、とっくの昔に限界を迎えているはずだ。いいや、そんなレベルじゃない。きっと、限界を超えて、ずっとそれでも苦しんでいるかもしれない。
なみは行き所のない罪悪感に、唇をぎゅっと、噛んだ。
電車が、徐々に減速する。なみは弾かれるように立ち上がり、ドアの前に移動した。
警告音が鳴り、ドアが開く。ホームのメロディーと、土砂降りの雨、駅の喧騒が、木霊した。水面とも見紛うほどに町明かりを映す、アスファルト。
なみはどたばたと、その人ごみの間を、縫うようにして走り抜けた。
街は、暗く、秋の夜に寒い。湿った風が、なみのずぶ濡れになった長い髪を暴れさせた。
張り付く前髪を退かしながら、折り畳み傘を取り出すことすらほったらかして、なみは水溜りの上に飛び出した。
なみは、走った。ぴちゃぴちゃと、踏み出す足に、飛沫を飛び散らせて。
アパートへ、しずくのもとへ。
塗装の剥げた階段をよじ登るように駆け上がる。掴んだドアノブに、カギは掛かっていなかった。
「ただいま!」
バタリと、扉を開くなみ。
息を切らしながら玄関に飛び込んだなみの瞳には、薄暗い廊下に体を丸め、肩を震わせるしずくの姿が目に飛び込んだ。
「んぁ……なみ、ちゃん……」
「しずく!」
なみはしずくを視界に入れた瞬間、膝をつき、覆いかぶさるように彼女を抱きしめ、頭を撫でた。なみの前髪から滴り落ちる雨粒が、しずくの髪に、吸い込まれる。
青い顔をしたしずくの脚には、太ももに結びつけられたカテーテルバッグが、スカート越しにも見て取れた。ばさっと、スカートをめくる。バッグから伸びたそのチューブは、しずくのショーツの中に、そして陰部に、繋がっていた。彼女は、まだ、それを抜いてはいなかった。なみはその事実に、背中にぞぞっと、償いようのない罪悪感を湧きあがらせた。
「頑張ったね。待たせて、ごめんね、しずく」
「ん……え、へへへ……や、やくそく、だから……まえ、おさえ……して、ない……よ……」
なみはうんうんと頷きながら、そっと、しずくのお腹に触れてみる。そこにあったのは、もはや直接触れているのかと疑うばかりに張り詰めた、かつてないほど膨れ上がったしずくの膀胱だった。
なみはしずくのショーツを下ろした。
許しを請うように、しずくのカテーテルを封鎖するピンへと手を伸ばし、なみはしずくの涙にまみれた顔を見つめた。
「しずく……」
「う、ん……なみ、ちゃん……おねが、い……」
しずくは、震える声で、その眼差しに答えるのだった。そっとなみの手に指を添え、しずくは力なくはにかむ。その指先は、秋の夜から帰ったばかりのなみの手の甲より、ずっと冷たく、震えていた。
なみは、しずくをぐいっと持ち上げて、玄関のほうまで運ぶ。
「んぐっ、んあぁ……!」
背中と膝窩に支えられた体重が、膀胱を押しつぶすように畳み込まれ、しずくは悲鳴にも近い呻きをこぼした。
「ごめんね、もう、少しだからね……」
なみは、ずぶ濡れのコートを、荒っぽく脱ぎ捨てる。
しずくの太ももからベルトを外し、カテーテルバッグを床に置く。あふれ出たその中身は、土間から外へと、流れ出ていった。
しずくのカテーテルの、チューブのピンを、外した。
細長いチューブの中を通って、しずくのおしっこは、ほんの少しずつ玄関の土間のほうへと導かれていく。
つーっと、伸びたチューブの先端から、乱れ一つない水流が流れ出た。
音もなく、勢いもない。それゆえに、まったくもって、しずくの尿意は安らがなかった。
「うぅぅ……うっ、ふぅぅぅ……」
「大丈夫、もう、大丈夫だから……ね?」
なかなか消えないお腹の痛みに、しずくは救いを求めるようになみを抱きしめる。汗だくで、アツアツになったしずくの頭を優しく撫で続ける、なみ。しずくはそのまま、ちょろちょろとチューブの先からおしっこを垂れ流しながら、なみのお腹に腕を回して、彼女の胸に顔をうずめる。
しずくはギリギリとした膀胱の痛みの中で、なみの手を取り、自身の服の中、自身の乳首に指先を添えさせる。なみは自身の胸にうずまったままのしずくの頭を見下ろしながら、優しくそれを、愛撫した。しずくは彼女の柔らかな乳房に包まれながら、かすかに甘い、呻きを漏らした。
ゆっくり、ゆっくりと、焦らすように、なみはしずくの乳頭をこねくり回す。しずくは、なみに包まれ、なみに愛されるその状況にひどく安堵と興奮をして、浅かった息を整えながらに速くした。
ふう、ふうと、吐息に従い、しずくのおしっこの勢いは上下した。なみがしずくの胸への攻めの手を激しくすると、しずくは瞬く間に肩をビクビクっと震わせて、カテーテルのチューブからチョロロと強めに、おしっこを噴き出した。
「ふう、ふううぅぅ……っく、ふぅ……」
「いいよ、大丈夫……ゆっくり、出して。何回でも、気持ち良く、してあげるから……」
そうやって、甘ったるくぬるい時間を、三、四分ほど過ごした二人。いつしか、しずくのカテーテルからあふれ出してくるおしっこも底をついて、彼女のお腹ももとの薄っぺらくて綺麗なくびれに戻っていた。
いまだ、ジンジンと痺れる下腹部と、空っぽで軽くなった体の感覚。お股に無意味に込めていた本能的な力みも完全に解けて、しずくはふにゃふにゃと、しゃがんだなみのお腹にもたれかかった。なみは、ぺったんこになった、しずくの下腹部を労わるように優しく撫でる。その指先がくすぐったくて、しずくはヒクヒクと、おへその周りを凹ませた。
抱く、その姿は、なみの瞳にまさしく少女に映るのだった。なみはしずくのお腹と背中を、優しく、優しく撫で続けた。
「……偉い。偉いよ、しずく……よく、頑張ったね……」
「え、えへ、えへへぇ……もっと……トレーニング、しなきゃ、だね……」
顔を上げ、涙に赤く腫らした目で、しずくはなみを見上げるのだった。なみはその汚された清純に、どうしようもなく、いたたまれない心持ちになった。彼女の濡れた頬を指先に拭い、前髪をよけて、なみはぐったりとしたしずくの体をしっかりと支える。
「しずく……お腹、その……大丈、夫……?」
「え、えへへへぇ……いた、かった……いたかった、よ……? でも、すっごく……きもちよかった……」
しずくは眼差しに、なみにキスを、せがむのだった。
なみもまた、許しを請うように、そっと、強く、口づけをした。しずくの頬を両手で包んで、長く、長く。しずくの膀胱に、新たに注ぎ込まれたおしっこが、再びチューブを伝って、あふれ出てきた。
んふ、んへへへ、と、恥ずかしそうに笑う二人。抱き合い、重なるように座り込み、もう一度、キスをする。
「……今日は、いっぱい我慢したね、しずく」
「……うん、すごかった……」
「……可愛かったよ、しずく。ほんとに、可愛い……遅れて、ごめんね……しずく……」
「ううん、いいの……なみちゃん、しんぱい、しちゃった……?」
「……うん、とっても……」
しずくは柔らかに目を細めて笑い、なみを抱き寄せて、キスをした。なみはその腕に、唇に、されるがままに従った。
「……ねえ、なみちゃん?」
「うん……どうしたの、しずく」
しずくは、恥ずかしそうに目を逸らし、呟く。
「……また、シたいかも……こういう、の……」
「……しずく、いいの……?」
「うん……いっぱい、シたい……」
蕩けるようにはにかんで、しずくはふわりと、なみを見つめた。なみは、何も言わずに、ただキスをした。
あんなに辛そうな表情で、彼女は自身に助けを求めていた。なみの網膜には、まだその姿が、新鮮に焼き付いている。
その言葉を、受け入れてしまったら、きっといつか彼女を傷つけてしまう。でも、彼女にとっての自分もまた、彼女のこんな被虐心をさらけ出していられる、唯一の存在なのだ。それが、なみにとって本当に、一番幸せなことだった。
なみは、どういえばいいか、迷ってしまった。どうすれば、危うい彼女を愛したまま、守れるか。そこには彼女の体のほかに、自身もまたそういう存在であるという裏返しが絡みついて、狂えるほどになみの言葉を迷わせるのだった。
本当は、シたいのだ。
危ないことも、すごいことも。
でも、彼女のことは、大切なのだ。
そして欲を言うのなら、それは自分に、シてほしかった。
沈黙の中、二人は唇を、合わせ続けた。
また、しずくのおしっこが、チューブの先からあふれ出してきた。
チョロチョロ、チョロチョロ……。
ぽた、ぽた……と。
唇を離した二人の間には、細く透明な、橋が架かっていた。
「……わかった、しずく。でも……しばらくは、お休み、しようね」
「んえぇ? ……なぁんで?」
身をくねらせて、引っ付くしずくに、なみは目をそらした。
「だって……こういうコトばっかりしてたら、しずくが自力で我慢、できなくなっちゃうかも……だから……」
しずくの思考はぼんやりとしていた。白霧のかかったように不明瞭で、鈍重に空回りをする始末であった。しかし、そんなしずくの瞳でさえも、なみの見え透いた心配の態度は、見て取れた。ほんとは、自分を、心配してくれてる。でも、シたがりな自分を納得させてくれるために、どうでもいい言い訳を、私にこぼしてくれているんだ、と。
しずくは、なんだかすごく嬉しくなって、にへっと小首を傾げて笑うのだった。
「えへ、えへへぇ……それも、そっかぁ……」
「それから……」
なみはふっと、しずくの顔を見つめ直す。しずくはその視線に、きょとんとした表情を浮かべた。
「……今度は、私も、一緒にするから。……それと、おしっこ無理やり塞ぐのは……ほんとにたまに、だけ……ね? ……しずく、それで、いい?」
「……うん、わかった」
「……よかった」
なみは目を細め、ふうっと息を吐いて、肩の力を抜くのだった。
立ち上がり、しずくの脇に腕を回して、立ち上がらせる。くらっとよろけたしずくの体を、抱きしめるように、支えるのだった。
「……ありがとう、うれしい……だいすきだよ、なみちゃん」
「……私も、大好き」
よたよたとしたしずくの足元を危うく思い、なみはしずくを、お姫様抱っこで持ち上げた。陰部から伸びたしずくのチューブが、ぶらんぶらんと、揺れている。
「わあ、王子さまぁ……」
「はいはい、私の可愛いお姫様。とりあえず、きれいきれい、しましょうねー」
「はぁい……ねえ、洗って?」
「んっふふ、その前にまずはコレ、抜くとこからでしょ?」
なみはぶら下がったチューブの先を、手首を返して持ち上げる。その瞬間、不意にあふれ出たしずくのおしっこを、なみは咄嗟に口で受け止めてしまった。
じゅうっと、染み出すおしっこを、しずくに見られながらに吸い続けるなみ。しずくはその姿に、なみの腕に抱えられたまま、思わず両手をパタパタとさせた。
「……わぁ! ご、ごめん、なみちゃん。これだと、我慢できなくて……!」
二人はぴたっと目を合わせた。無力にもおしっこを放出し続けるしずくと、それを何も言わずに吸い続けるなみ。二人は徐々に顔を赤くしながら、それでも視線を交わらせ続けた。
やがて、しずくのお腹が空っぽになる。
「……ぜ、全部……飲んじゃった……。ごめん、なみちゃん……」
「……ううん、いいの。この前、しずくもしれっと、私の飲んでくれてたじゃん。だから、その……お返し!」
「ん、え、お返しって……んなぁっ! まさか、バレてたとは……」
顔を赤くして、わざとらしく目を逸らすしずく。唇にチューブを咥えたまま、なみははにかみ、抱いたしずくを見つめるのだった。
二人は、笑い合いながら、バスルームの中へと消えていった。
脱衣所と廊下の床一面には、脱ぎ散らかされた、二人の服。
点々と落ちる、しずくの水滴。
カテーテルバッグ。
はしゃぎあう二人のにぎやかな声、シャワーの音が、アパートの一室に木霊した。
「ほら、これ。チューブとカテーテル繋ぐとこ、外れかかってる……しずくのおしっこの圧力で、こんなになっちゃったのかな」
「んっへぇ? ほんとだ、アブナイとこだったねぇ」
「ほんとは絶対、両手でやらなきゃ取れないくらいのところなんだけど……うんしょ! しずく、しずくはほんとに、すごいね……」
「……んっへへぇ……でしょぉ、すごいでしょ、んっへへぇ……」
いつしか、雨は綺麗に止んでいる。
湯船に浸かった二人の声と、ぴちゃぴちゃという水しぶきだけが、その一室を包み込んだ。
リビングのテーブルには、三本のボトル。二本の麦茶のボトルと、一際大きなレモンティーのそれが、中身を空にして仲良く静かに立ち並んでいる。
深紫の高い夜空には、色とりどりの星々が煌めいた。
秋虫の声の響く夜道には、まん丸の月が、白く爛々と輝いているのだった。
静かに揺れる電車の中で、深く腰を下ろし、なみは無数の滝の滴り落ちる、白く曇った車窓を眺めた。自身の帰りを待つしずくのことで、なみの頭の中は、いっぱいだった。
スマホの時計には、六時五十分の表記があった。
いまごろ、彼女はどうしてるだろう。
実験科目の講義が思いの外に長引いて、かつてないほどにしずくを家に待たせてしまっている。予定通りに事が運べば、今より三十分くらいは早く家についているはずだったのに。なみの脳内にあった、しずくの限界を迎える時間を、すでに三十分も過ぎてしまっていた。
抜いてるかな、もう。抜いていいよって、言えばよかったかな。
限界を超えて我慢しすぎると、尿意は快感から、たちまち痛みになってしまう。そしてそれすら超えると、お腹の中のおしっこは筆舌に尽くしがたい、なんとも怖い感触になるのだ。そのタイミングを、なみはいつも、限界と呼んでいる。
もしもしずくがまだ、アレを抜いていなかったら……しずくはもう、とっくの昔に限界を迎えているはずだ。いいや、そんなレベルじゃない。きっと、限界を超えて、ずっとそれでも苦しんでいるかもしれない。
なみは行き所のない罪悪感に、唇をぎゅっと、噛んだ。
電車が、徐々に減速する。なみは弾かれるように立ち上がり、ドアの前に移動した。
警告音が鳴り、ドアが開く。ホームのメロディーと、土砂降りの雨、駅の喧騒が、木霊した。水面とも見紛うほどに町明かりを映す、アスファルト。
なみはどたばたと、その人ごみの間を、縫うようにして走り抜けた。
街は、暗く、秋の夜に寒い。湿った風が、なみのずぶ濡れになった長い髪を暴れさせた。
張り付く前髪を退かしながら、折り畳み傘を取り出すことすらほったらかして、なみは水溜りの上に飛び出した。
なみは、走った。ぴちゃぴちゃと、踏み出す足に、飛沫を飛び散らせて。
アパートへ、しずくのもとへ。
塗装の剥げた階段をよじ登るように駆け上がる。掴んだドアノブに、カギは掛かっていなかった。
「ただいま!」
バタリと、扉を開くなみ。
息を切らしながら玄関に飛び込んだなみの瞳には、薄暗い廊下に体を丸め、肩を震わせるしずくの姿が目に飛び込んだ。
「んぁ……なみ、ちゃん……」
「しずく!」
なみはしずくを視界に入れた瞬間、膝をつき、覆いかぶさるように彼女を抱きしめ、頭を撫でた。なみの前髪から滴り落ちる雨粒が、しずくの髪に、吸い込まれる。
青い顔をしたしずくの脚には、太ももに結びつけられたカテーテルバッグが、スカート越しにも見て取れた。ばさっと、スカートをめくる。バッグから伸びたそのチューブは、しずくのショーツの中に、そして陰部に、繋がっていた。彼女は、まだ、それを抜いてはいなかった。なみはその事実に、背中にぞぞっと、償いようのない罪悪感を湧きあがらせた。
「頑張ったね。待たせて、ごめんね、しずく」
「ん……え、へへへ……や、やくそく、だから……まえ、おさえ……して、ない……よ……」
なみはうんうんと頷きながら、そっと、しずくのお腹に触れてみる。そこにあったのは、もはや直接触れているのかと疑うばかりに張り詰めた、かつてないほど膨れ上がったしずくの膀胱だった。
なみはしずくのショーツを下ろした。
許しを請うように、しずくのカテーテルを封鎖するピンへと手を伸ばし、なみはしずくの涙にまみれた顔を見つめた。
「しずく……」
「う、ん……なみ、ちゃん……おねが、い……」
しずくは、震える声で、その眼差しに答えるのだった。そっとなみの手に指を添え、しずくは力なくはにかむ。その指先は、秋の夜から帰ったばかりのなみの手の甲より、ずっと冷たく、震えていた。
なみは、しずくをぐいっと持ち上げて、玄関のほうまで運ぶ。
「んぐっ、んあぁ……!」
背中と膝窩に支えられた体重が、膀胱を押しつぶすように畳み込まれ、しずくは悲鳴にも近い呻きをこぼした。
「ごめんね、もう、少しだからね……」
なみは、ずぶ濡れのコートを、荒っぽく脱ぎ捨てる。
しずくの太ももからベルトを外し、カテーテルバッグを床に置く。あふれ出たその中身は、土間から外へと、流れ出ていった。
しずくのカテーテルの、チューブのピンを、外した。
細長いチューブの中を通って、しずくのおしっこは、ほんの少しずつ玄関の土間のほうへと導かれていく。
つーっと、伸びたチューブの先端から、乱れ一つない水流が流れ出た。
音もなく、勢いもない。それゆえに、まったくもって、しずくの尿意は安らがなかった。
「うぅぅ……うっ、ふぅぅぅ……」
「大丈夫、もう、大丈夫だから……ね?」
なかなか消えないお腹の痛みに、しずくは救いを求めるようになみを抱きしめる。汗だくで、アツアツになったしずくの頭を優しく撫で続ける、なみ。しずくはそのまま、ちょろちょろとチューブの先からおしっこを垂れ流しながら、なみのお腹に腕を回して、彼女の胸に顔をうずめる。
しずくはギリギリとした膀胱の痛みの中で、なみの手を取り、自身の服の中、自身の乳首に指先を添えさせる。なみは自身の胸にうずまったままのしずくの頭を見下ろしながら、優しくそれを、愛撫した。しずくは彼女の柔らかな乳房に包まれながら、かすかに甘い、呻きを漏らした。
ゆっくり、ゆっくりと、焦らすように、なみはしずくの乳頭をこねくり回す。しずくは、なみに包まれ、なみに愛されるその状況にひどく安堵と興奮をして、浅かった息を整えながらに速くした。
ふう、ふうと、吐息に従い、しずくのおしっこの勢いは上下した。なみがしずくの胸への攻めの手を激しくすると、しずくは瞬く間に肩をビクビクっと震わせて、カテーテルのチューブからチョロロと強めに、おしっこを噴き出した。
「ふう、ふううぅぅ……っく、ふぅ……」
「いいよ、大丈夫……ゆっくり、出して。何回でも、気持ち良く、してあげるから……」
そうやって、甘ったるくぬるい時間を、三、四分ほど過ごした二人。いつしか、しずくのカテーテルからあふれ出してくるおしっこも底をついて、彼女のお腹ももとの薄っぺらくて綺麗なくびれに戻っていた。
いまだ、ジンジンと痺れる下腹部と、空っぽで軽くなった体の感覚。お股に無意味に込めていた本能的な力みも完全に解けて、しずくはふにゃふにゃと、しゃがんだなみのお腹にもたれかかった。なみは、ぺったんこになった、しずくの下腹部を労わるように優しく撫でる。その指先がくすぐったくて、しずくはヒクヒクと、おへその周りを凹ませた。
抱く、その姿は、なみの瞳にまさしく少女に映るのだった。なみはしずくのお腹と背中を、優しく、優しく撫で続けた。
「……偉い。偉いよ、しずく……よく、頑張ったね……」
「え、えへ、えへへぇ……もっと……トレーニング、しなきゃ、だね……」
顔を上げ、涙に赤く腫らした目で、しずくはなみを見上げるのだった。なみはその汚された清純に、どうしようもなく、いたたまれない心持ちになった。彼女の濡れた頬を指先に拭い、前髪をよけて、なみはぐったりとしたしずくの体をしっかりと支える。
「しずく……お腹、その……大丈、夫……?」
「え、えへへへぇ……いた、かった……いたかった、よ……? でも、すっごく……きもちよかった……」
しずくは眼差しに、なみにキスを、せがむのだった。
なみもまた、許しを請うように、そっと、強く、口づけをした。しずくの頬を両手で包んで、長く、長く。しずくの膀胱に、新たに注ぎ込まれたおしっこが、再びチューブを伝って、あふれ出てきた。
んふ、んへへへ、と、恥ずかしそうに笑う二人。抱き合い、重なるように座り込み、もう一度、キスをする。
「……今日は、いっぱい我慢したね、しずく」
「……うん、すごかった……」
「……可愛かったよ、しずく。ほんとに、可愛い……遅れて、ごめんね……しずく……」
「ううん、いいの……なみちゃん、しんぱい、しちゃった……?」
「……うん、とっても……」
しずくは柔らかに目を細めて笑い、なみを抱き寄せて、キスをした。なみはその腕に、唇に、されるがままに従った。
「……ねえ、なみちゃん?」
「うん……どうしたの、しずく」
しずくは、恥ずかしそうに目を逸らし、呟く。
「……また、シたいかも……こういう、の……」
「……しずく、いいの……?」
「うん……いっぱい、シたい……」
蕩けるようにはにかんで、しずくはふわりと、なみを見つめた。なみは、何も言わずに、ただキスをした。
あんなに辛そうな表情で、彼女は自身に助けを求めていた。なみの網膜には、まだその姿が、新鮮に焼き付いている。
その言葉を、受け入れてしまったら、きっといつか彼女を傷つけてしまう。でも、彼女にとっての自分もまた、彼女のこんな被虐心をさらけ出していられる、唯一の存在なのだ。それが、なみにとって本当に、一番幸せなことだった。
なみは、どういえばいいか、迷ってしまった。どうすれば、危うい彼女を愛したまま、守れるか。そこには彼女の体のほかに、自身もまたそういう存在であるという裏返しが絡みついて、狂えるほどになみの言葉を迷わせるのだった。
本当は、シたいのだ。
危ないことも、すごいことも。
でも、彼女のことは、大切なのだ。
そして欲を言うのなら、それは自分に、シてほしかった。
沈黙の中、二人は唇を、合わせ続けた。
また、しずくのおしっこが、チューブの先からあふれ出してきた。
チョロチョロ、チョロチョロ……。
ぽた、ぽた……と。
唇を離した二人の間には、細く透明な、橋が架かっていた。
「……わかった、しずく。でも……しばらくは、お休み、しようね」
「んえぇ? ……なぁんで?」
身をくねらせて、引っ付くしずくに、なみは目をそらした。
「だって……こういうコトばっかりしてたら、しずくが自力で我慢、できなくなっちゃうかも……だから……」
しずくの思考はぼんやりとしていた。白霧のかかったように不明瞭で、鈍重に空回りをする始末であった。しかし、そんなしずくの瞳でさえも、なみの見え透いた心配の態度は、見て取れた。ほんとは、自分を、心配してくれてる。でも、シたがりな自分を納得させてくれるために、どうでもいい言い訳を、私にこぼしてくれているんだ、と。
しずくは、なんだかすごく嬉しくなって、にへっと小首を傾げて笑うのだった。
「えへ、えへへぇ……それも、そっかぁ……」
「それから……」
なみはふっと、しずくの顔を見つめ直す。しずくはその視線に、きょとんとした表情を浮かべた。
「……今度は、私も、一緒にするから。……それと、おしっこ無理やり塞ぐのは……ほんとにたまに、だけ……ね? ……しずく、それで、いい?」
「……うん、わかった」
「……よかった」
なみは目を細め、ふうっと息を吐いて、肩の力を抜くのだった。
立ち上がり、しずくの脇に腕を回して、立ち上がらせる。くらっとよろけたしずくの体を、抱きしめるように、支えるのだった。
「……ありがとう、うれしい……だいすきだよ、なみちゃん」
「……私も、大好き」
よたよたとしたしずくの足元を危うく思い、なみはしずくを、お姫様抱っこで持ち上げた。陰部から伸びたしずくのチューブが、ぶらんぶらんと、揺れている。
「わあ、王子さまぁ……」
「はいはい、私の可愛いお姫様。とりあえず、きれいきれい、しましょうねー」
「はぁい……ねえ、洗って?」
「んっふふ、その前にまずはコレ、抜くとこからでしょ?」
なみはぶら下がったチューブの先を、手首を返して持ち上げる。その瞬間、不意にあふれ出たしずくのおしっこを、なみは咄嗟に口で受け止めてしまった。
じゅうっと、染み出すおしっこを、しずくに見られながらに吸い続けるなみ。しずくはその姿に、なみの腕に抱えられたまま、思わず両手をパタパタとさせた。
「……わぁ! ご、ごめん、なみちゃん。これだと、我慢できなくて……!」
二人はぴたっと目を合わせた。無力にもおしっこを放出し続けるしずくと、それを何も言わずに吸い続けるなみ。二人は徐々に顔を赤くしながら、それでも視線を交わらせ続けた。
やがて、しずくのお腹が空っぽになる。
「……ぜ、全部……飲んじゃった……。ごめん、なみちゃん……」
「……ううん、いいの。この前、しずくもしれっと、私の飲んでくれてたじゃん。だから、その……お返し!」
「ん、え、お返しって……んなぁっ! まさか、バレてたとは……」
顔を赤くして、わざとらしく目を逸らすしずく。唇にチューブを咥えたまま、なみははにかみ、抱いたしずくを見つめるのだった。
二人は、笑い合いながら、バスルームの中へと消えていった。
脱衣所と廊下の床一面には、脱ぎ散らかされた、二人の服。
点々と落ちる、しずくの水滴。
カテーテルバッグ。
はしゃぎあう二人のにぎやかな声、シャワーの音が、アパートの一室に木霊した。
「ほら、これ。チューブとカテーテル繋ぐとこ、外れかかってる……しずくのおしっこの圧力で、こんなになっちゃったのかな」
「んっへぇ? ほんとだ、アブナイとこだったねぇ」
「ほんとは絶対、両手でやらなきゃ取れないくらいのところなんだけど……うんしょ! しずく、しずくはほんとに、すごいね……」
「……んっへへぇ……でしょぉ、すごいでしょ、んっへへぇ……」
いつしか、雨は綺麗に止んでいる。
湯船に浸かった二人の声と、ぴちゃぴちゃという水しぶきだけが、その一室を包み込んだ。
リビングのテーブルには、三本のボトル。二本の麦茶のボトルと、一際大きなレモンティーのそれが、中身を空にして仲良く静かに立ち並んでいる。
深紫の高い夜空には、色とりどりの星々が煌めいた。
秋虫の声の響く夜道には、まん丸の月が、白く爛々と輝いているのだった。
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。
帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。
♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。
♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。
♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。
♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。
※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。
★Kindle情報★
1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P
Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL
★YouTube情報★
第1話『アイス』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
Chit-Chat!1
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
イラスト:tojo様(@tojonatori)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる