上 下
22 / 22

拾いました。

しおりを挟む
アチェロが旅立って数日後、セーラはダニエルとクレアと屋敷から少し離れた場所に、おやつを持って来ていた。

「セーラ、これでいい?」

「うん、ありがとうダニー。」

セーラの元に花を摘んで持ってきたダニエルに目を細めてお礼を言うと、ダニエルは嬉しそうに頬を染めた。

セーラの手元には二つ目の花冠だ。二人分のそれをダニエルとクレアの頭に乗せると、二人は照れた様に頬を染めた。

「ありがとうございます、セーラ様。大切にしますね!」

「僕も!大切にする!」

「二人ともありがとう。でも直ぐに枯れてしまうわよ?」

大切にすると言う二人の気持ちが嬉しくてそ二人を目を見ていると、ふと何処からかか細い鳴き声が聞こえてきた。

「…っ……。」

「?」

「セーラ様?」

「今何か聞こえなかった?」

耳を澄ませているとやはり誰かの呼ぶ声が聞こえる。セーラは声のする方へ呼ばれる様に歩き出す。

行かなきゃーー。

「セーラ様!危ないです!」

「セーラ僕も一緒に行くよ!?」

「大丈夫よ!屋敷の中だもの。クレアと待ってて!」

そう言って走り出すセーラをダニエルは追いかけるが、どんどん離れていき追いつけない。セーラは振り向く事なく声のする方へ向かう。

茂みを掻き分けて進んで行くと、木の幹の間に真っ黒な物が蹲っている。よく見ると怪我をした仔犬がいた。

威嚇していた仔犬を驚かせない様に、セーラはギリギリまでしか近づかない。
セーラをジッ、と金色の瞳で見つめた仔犬はセーラにゆっくりと近づいてきた。

「大丈夫何もしないよ。あ、手当てはさせてね。」

抱き上げるとセーラは仔犬にそう言って、目を細めながら 怖くないよ、と微笑んで二人の待つ場所へと戻って行った。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...