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しおりを挟むここはキングストン帝国の外れにある砦付近。
只今絶賛討伐中である。
このキングストン帝国には東西南北を守る騎士団が存在する。
東を守る青の騎士団。西を守る白の騎士団。北を守る黎の騎士団だ。
そして今回その討伐を率いているのが南を守る朱の騎士団。
その騎士団を率いているのが、朱の騎士団長アリエル・ハワードだ。
「ハワード団長!そっちに行きました!」
声がする方を振り向くと、無数の魔物が迫って来ていた。
「「団長っ!」」
「…。」
慌てる複数の声に動じる事なく、やって来た魔物を顔色一つ変えずに切り裂いていく。
「おお…!」
「すげぇ…っ!あの数を瞬殺かよ!!」
一つに結い上げた絹の様な白銀の髪を靡かせながら、その舞う様な剣技に歓喜の声を上げる騎士団員達に視線をやると、その後ろを指を指す。
「…油断しないで。」
団長が指差した所からどんどん魔物が溢れてくる。
騎士団員達は、気を引き締め直すと魔物の群れに向かって行った。
どのくらい経ったのだろう。
いつの間にか魔物は核だけになり静寂が訪れていた。
佇む団長と呼ばれた者の側に朱の団服を纏った複数の人間がやって来た。
「ハワード団長!討伐終了しました!」
「…良くやった。皆、怪我は無い?」
団服を着た一人がそう告げると、団長は言葉少なく騎士団の皆を気遣う様にコテリと、首を傾げる。
表情こそ無いがこの団長、このキングストン帝国でも数えられる程の美しさなのだ。
強さと美しさを兼ね揃えた彼女に憧れる者は多い。
((っ~~!!)
そんな団長が無意識に首を傾げる姿に悶えている団員を不思議に思っていると、
「はっ!全員無事であります!」
「…良かった。」
大丈夫だと聞いた団長の無表情が一瞬和らいだ様に目を細めた。
それを見たくて頑張っていた騎士団の皆の視界を塞ぐ様に、団長の前に出てきたのは副団長だった。
「はいはーい!無事を確認したらとっとと残りの核回収しようね~!」
「チッ…。」
「また邪魔が…!」
「?」
「はい!さっさと行く!」
副団長に言われるまま、核の回収に向かう騎士団員達を眺めながら騎士団長は首を傾げる。
「団長、お疲れ様。」
そう言って、団長の肩に手を置いた副団長のその手をパシリと払った。
「…アルバート、まだ終わってない。気を抜かないで。」
副団長ことアルバート・ホークを一括すると、彼は緩んでいただろう顔をキュッと引き締めた。
「失礼しました。」
「ん。アルバートは西と南に残っている魔物がいないか確認を。私は北と東を周る。」
「はい。…気をつけて。」
「ん。アルバートも。」
そう指示して団長はその場を去って行く。
それを見送ってからアルバートも任務へと戻って行った。
見回りして、魔物が居ないのを確認した団長は誰も居ないのを確認して溜息を吐いた。
さっき、アルバートの手を払った時の事を思い出して顔に熱が集まるのを感じた。
内心動揺している団長はほんのり頬が色付くが顔に出る事は無い。
団長の鉄仮面は簡単には剥がれないのだ。
朱の騎士団長ことアリエル・ハワードには誰にも言えない秘密がある。
触れた相手の心が読めるのだ。
図らずもアルバートの手に触れてしまったアリエルは彼の思考が流れてきて動揺してしまったのだった。
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