鉄仮面騎士団長とだだ漏れ副騎士団長の攻防

SORA

文字の大きさ
1 / 2

1

しおりを挟む
 
ここはキングストン帝国の外れにある砦付近。
只今絶賛討伐中である。


このキングストン帝国には東西南北を守る騎士団が存在する。

東を守る青の騎士団。西を守る白の騎士団。北を守る黎の騎士団だ。


そして今回その討伐を率いているのが南を守る朱の騎士団。
その騎士団を率いているのが、朱の騎士団長アリエル・ハワードだ。


「ハワード団長!そっちに行きました!」

声がする方を振り向くと、無数の魔物が迫って来ていた。

「「団長っ!」」

「…。」


慌てる複数の声に動じる事なく、やって来た魔物を顔色一つ変えずに切り裂いていく。


「おお…!」

「すげぇ…っ!あの数を瞬殺かよ!!」

一つに結い上げた絹の様な白銀の髪を靡かせながら、その舞う様な剣技に歓喜の声を上げる騎士団員達に視線をやると、その後ろを指を指す。


「…油断しないで。」


団長が指差した所からどんどん魔物が溢れてくる。
騎士団員達は、気を引き締め直すと魔物の群れに向かって行った。


どのくらい経ったのだろう。
いつの間にか魔物は核だけになり静寂が訪れていた。


佇む団長と呼ばれた者の側に朱の団服を纏った複数の人間がやって来た。


「ハワード団長!討伐終了しました!」

「…良くやった。皆、怪我は無い?」


団服を着た一人がそう告げると、団長は言葉少なく騎士団の皆を気遣う様にコテリと、首を傾げる。
表情こそ無いがこの団長、このキングストン帝国でも数えられる程の美しさなのだ。
強さと美しさを兼ね揃えた彼女に憧れる者は多い。


((っ~~!!)


そんな団長が無意識に首を傾げる姿に悶えている団員を不思議に思っていると、


「はっ!全員無事であります!」

「…良かった。」


大丈夫だと聞いた団長の無表情が一瞬和らいだ様に目を細めた。
それを見たくて頑張っていた騎士団の皆の視界を塞ぐ様に、団長の前に出てきたのは副団長だった。


「はいはーい!無事を確認したらとっとと残りの核回収しようね~!」

「チッ…。」

「また邪魔が…!」

「?」

「はい!さっさと行く!」


副団長に言われるまま、核の回収に向かう騎士団員達を眺めながら騎士団長は首を傾げる。


「団長、お疲れ様。」


そう言って、団長の肩に手を置いた副団長のその手をパシリと払った。


「…アルバート、まだ終わってない。気を抜かないで。」


副団長ことアルバート・ホークを一括すると、彼は緩んでいただろう顔をキュッと引き締めた。


「失礼しました。」

「ん。アルバートは西と南に残っている魔物がいないか確認を。私は北と東を周る。」

「はい。…気をつけて。」

「ん。アルバートも。」


そう指示して団長はその場を去って行く。
それを見送ってからアルバートも任務へと戻って行った。 


見回りして、魔物が居ないのを確認した団長は誰も居ないのを確認して溜息を吐いた。

さっき、アルバートの手を払った時の事を思い出して顔に熱が集まるのを感じた。

内心動揺している団長はほんのり頬が色付くが顔に出る事は無い。
団長の鉄仮面は簡単には剥がれないのだ。



朱の騎士団長ことアリエル・ハワードには誰にも言えない秘密がある。


触れた相手の心が読めるのだ。


図らずもアルバートの手に触れてしまったアリエルは彼の思考が流れてきて動揺してしまったのだった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

氷の王と生贄姫

つきみ かのん
恋愛
敗戦寸前の祖国を守るため、北の大国へ嫁いだセフィラを待っていたのは「血も涙もない化け物」と恐れられる若き美貌の王、ディオラスだった。 ※ストーリーの展開上、一部性的な描写を含む場面があります。 苦手な方はタイトルの「*」で判断して回避してください。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

処理中です...