付与術師は聖剣を作りたい……。

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トラブルの予感しかない!!

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「これは……また……。」
「……何もありませんねぇ。」
 ゴブリンの巣があった場所に戻ってきたアルフレッド達。
 その周りの様子を見て、ミリアとアリスが思わずため息を吐く。
 巣と思しき洞穴はその入り口が崩れ落ち、見張りがいた辺りは爆風の影響で周辺の木が薙ぎ倒されている。
 アルフレッドが、オークから逃げる際に放った、爆裂の魔石の影響だった。
「まぁ、討伐部位が残っているだけでもマシなのかしらね。」
 ミリアがそう言いながら半ば地面に埋まっているゴブリンから耳を斬り落とし収納バックへしまい込む。

 通常、モンスターの討伐依頼の成否の確認として「討伐部位」と呼ばれる、モンスターの一部分をギルドに提出する必要がある。
 例えばゴブリン50匹の討伐の場合、50匹分のゴブリンの遺体を運ぶなんて言うのは実質不可能に近い為、一部分のみで確認するのだ。
 ちなみにゴブリンの場合は耳だったりする。

「それって、左右の耳を持っていって2匹分とかいう人いないのですかぁ?」
 討伐部位を集めるミリアの様子を見ながら、アリスが疑問を口にする。
「うーん、冒険者になりたての新人が一度は考える事だよね。」
 ミリアは苦笑しながらアリス説明を始める。
 その間も作業の手は休めないあたり、彼女も立派な冒険者だという事を証明している。
「確かにね、左右の耳を別々のゴブリンのものとして水増ししようと考える冒険者もいるんだけど、ギルドに設置してある特別な魔道具によって同個体か別個体かはすぐわかるのよ。だから、そんなこと考えちゃダメよ。」
「そうなのですね。ちなみに今回の場合、巣の退治なんですよね?討伐部位だけで、巣を潰したかどうかわかるものなのですか?」
 アリスも、ミリアに倣って討伐部位を集めながら訊ねる。

「そのあたりは冒険者の信用の問題ね。依頼時の状況と討伐部位の結果と報告から、ギルドが成否を判断するんだけど、一応、後でギルドの査察が入るからね、明らかに虚偽の報告をしたことが分かれば、依頼の完遂は取り消されてペナルティを課せられるわよ。そして、そのような事が続けば、信用がなくなるから、報告だけじゃ成否を判断してもらえず、調査が終わるまで待たされることになるのよ。場合によっては、それで期限が切れて失敗扱いにもなるから、虚偽の報告は自らの首を絞めるに等しいのよ。それが分かっているまっとうな冒険者なら、当然そんな事はしないし、分かっていない冒険者はその内抹消されていくからね、結果として虚偽の報告をする冒険者はいないって事になるのよ。」
「そうなんですねぇ。勉強になりますぅ。」
 ミリアとアリスがそのような会話をしながら、作業を続けている所にアルフレッドが戻ってくる。

「アル、洞穴の方はどうだった?」
 アルフレッドは崩れた巣の入口を調べていたはずだったので、その成果を訊ねる。
「崩れていたのは入り口付近だけだったからな、そこは問題ないんだが……。」
「……厄介事?」
 口籠るアルフレッドの様子を見て、何か面倒な事があったという事を悟るミリア。
 言われなくてもそれくらいは分かるぐらいには、付き合いは長い。
「あぁ、見て貰った方が早いな。……こっちだ。」
 先を歩くアルフレッドの後をミリアとアリスが追いかけ、アルフレッドに続いて洞穴の奥へと進んで行く。

 それほど深い洞穴ではなく、三人は程なくして最奥の広くなっている場所へと辿り着く。
「これは……。」
「……どういうことなのですか?」
 眼前の光景を見て首を傾げるミリアとアリス。
 二人の目に映ったものは、縛られているゴブリン7匹と、裸に?かれた人間二人、そして何も纏っていないオークが1頭……全て息絶えている。
「オークは俺が倒した。俺が入ってきた時、その二人を襲っている最中だったからな。ちなみにその二人はその時点ではもう息はなかったぞ。」
「……何が起きていたのか分からないです?」
「これが厄介事?」
 アルフレッドの言葉を聞きながら考え込むアリスと、何が厄介なのか分からずに訊ねてくるミリア。
「状況をから見た推測なんだがな……。」
 アルフレッドはそう前置きをして自分の考えを話し始める。

「まず、その二人は隣りの領の兵士らしい。」
「何でそんな事が分かるの?」
 アルフレッドの言葉に疑問を投げかけるミリア。
「そこの鎧だよ。」
 アルフレッドは二人の遺体から少し離れたところに転がっているハーフプレートを指さす。
「本当ですぅ、この紋章はガーランド領のものですね。」
 近くにいたアリスが、その鎧の胸元に掘られている紋章を見てそう言う。
「それで、そのゴブリン達を縛ったのは、たぶんその二人だろう。人質にして、ゴブリン達に言う事を聞かせようとしたか、あるいは、すでに何かしていたか……こればっかりは、ガーランド領の領主が何を考えていたかによるけどな。」

「なんで領主が出てくるの?」
「紋章入りのハーフプレートを着てたって事は、それなりの地位にいるって事ですよぉ。」
 ミリアの疑問にアリスが答える。
「つまりぃ、その二人は領主の命を受けて何かをしにここまでやってきた……そういう事ですよね?」
 確認してくるアリスに、アルフレッドは頷く。
「まぁ、そう言う事だな。ただ、こいつらの誤算は近くにオークがいたって事だな。」
「えっと、つまり、……どういうこと?」
 考えが纏まらず、降参という感じで聞いてくるミリア。

「推測でしかないが、ミランダ領の兵士が、何か密命を受けてここまで来た。ゴブリン達がいたので利用しようとしたのか、利用するためにゴブリン達を見つけたのかは分からないけど、とにかくゴブリン達に何かをさせようとしていた。しかし、偶々近くにいたオーク達が人間の匂いに気づきやってくる。そこに、偶然にもゴブリンを退治しようとした冒険者が来たので、オークの大半はその冒険者を追いかける。ここに残ったオークは、冒険者よりその兵士を襲う事を選んだんだろう。」
「えっと……つまりは……アルの所為?」
「なんでそうなるっ!」
「まぁまぁ、アル様もお姉さまも落ち着きましょうよぉ。」

「……そうだな、問題はそこじゃないしな。」
 アリスのとりなしを受け、アルフレッドは大きく息を吸って気を落ち着かせる。
「どういうこと?」
 アルフレッドの言葉を怪訝そうに聞き返すミリア。
 その横ではアリスも、興味深そうにアルフレッドの次の言葉を待っている。
「この件をギルドに報告するかどうかって事だよ。」
「えっ?報告しないの?」
「報告しないんですかぁ?」
「いや、報告していいならするんだけどな……本当にいいのか?」 
 アルフレッドは転がっているハーフプレートを指さしながらアリスを見る。
「あ……うん、そういう事ですかぁ……困りましたねぇ。」
「えっと、アリスちゃん、どゆ事?」
 ミリアだけが訳が分からずに首を傾げていた。

 ◇

「えーと、そろそろ説明して欲しいんですけどぉ?大体なんで野営なのよ?」
 森の中、比較的安全な場所で野営の準備を終えたところで、ミリアが聞いてくる。
「食事の用意は出来たのか?」
「出来たわよ。だから聞いてるんじゃないの。」
「アリスは?」
「……シチュー持ったままボーっとしている。」
「そうか……まぁ、さっきの質問に答えるなら、街に戻ったらギルドに報告しなきゃならんわけだが、アリスの事情を確認してからじゃないとマズいって事ぐらいは、もうわかってるだろ?」
「まぁ……そうね。」
 アルフレッドの言葉に渋々頷きながらアリスの方へ視線を向けるミリア。
 ミリアもアリスの事を気にしてはいるのだった。
「……まぁ、取りあえず食事をしながらな。」
 アルフレッドは焚火の前で座り込んだままのアリスに目をやってから、ミリアにそう告げると、ミリアは「仕方がないわね」というように頷いた。

「おいしいか?」
 今日の食事は、とれたてオーク肉をふんだんに使った具沢山のシチューだ。
 ここ最近の食事内容からすると、かなり豪勢な部類になる。
 ミリアがアリスを元気づけようと考えているのがよく分かる。
「ハイ、とても……お姉さま、ウチの専属料理人になりませんかぁ?」
「お給料いくらぐらい?」
 細々とシチューを食べているアリスに声を掛けると、笑顔で答え、更にはミリアにも声をかけるアリス。
 その無理矢理作ったような笑顔がかなり痛ましいいが、それを分かったうえで、ノリに合わせるミリア。

「そうですねぇ、私のおもちゃ……じゃなくて話し相手を兼ねて日給銅貨3枚でいかがですかぁ?」
「今、この子おもちゃって言ったよっ!しかも安っ!」
「ミリアは俺の大事なおもちゃ……だからな、銅貨3枚じゃぁ貸し出せないな。せめて銅貨8枚は貰わないと。」
「アルまでっ!しかもいい直さなかったよ。そしてやっぱり安いっ!」
 シクシクと項垂れるミリアを見て笑い合うアルフレッドとアリス。
「うぅ……私の価値って銅貨数枚……。」
「まぁまぁ、お姉さま、冗談ですからぁ。」
「そうだ、冗談だぞ……半分はな。」
「今、半分って言ったっ!半分ってっ!」
「半分がどの範囲かは置いといて、本当に美味しいですぅ。お代わり貰えますかぁ。」
「うぅ、半分てどっち?おもちゃの方?銅貨の方?……。」
 ミリアは涙目になってそんな事を呟きながらも、アリスのリクエストに応えてお代わりをよそう。
 そんなバカな話と、食事のおいしさが相まって、徐々にアリスの顔に作り笑いじゃない笑顔が戻って来る。
 それを見たアルフレッドとミリアはひとまず安心して、ホッと胸をなでおろすのだった。

「えーと、まずはお二人に謝らないといけないことがあります。ごめんなさい。」
 食事を終え、人心地着いた辺りで、アリスがそう切り出してくる。
「それは、隠し事なしで全部話してくれるって事でいいのか?」
「ハイ、全てをお話します。その上で、お二人にあらためてご協力いただきたいのです。」
「協力できるかどうかは、まずは話を聞いてからだな。」
 アルフレッドはそう言ってアリスの話に耳を傾ける。

「………。」
「………、」
「………。」
「……どうした?」
 いつまで経っても口を開こうとしないアリスを訝しみ、アルフレッドが訊ねる。
「いえ、先日私の事をお話しようとしたら、即答で拒否されましたので……大丈夫かなぁ……と。」
「……話さなくてもいいぞ。面倒事は嫌いだ。」
「わわっ、待って、待ってくださいぃ~~、ちゃんと話しますからぁ~。」
 聞く態勢をやめ、立ち上がろうとするアルフレッドを、アリスが慌てて腕を引っ張り止めに入る。
「お願いですからぁ~、聞いてくださいぃ~。」
「……だったら最初から素直に話せよ。」 
「いやぁ、今のはアルも悪いと思うけどねぇ…….。」
 ミリアの呟きを無視して、アルフレッドは座り直して、再び聞く態勢に入る。

「えっと、ですねぇ、ロイド家の当主は現王の弟って事はご存じですよねぇ?」
「あぁ。」
「でぇ、私はぁ、ロイド家の次女という事になってますからぁ、今の王様は伯父様という事になるのですがぁ……。」
「それで?」
 何やら間延びした感じで、ハッキリ言おうとしないアリスに、少し苛立ちを感じながら先を促す。
「実はぁ……お父様なのですよ。」

「「はぁ?」」
 思いがけない告白に、アルフレッドとミリアの驚愕の声が響き渡った。
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