付与術師は聖剣を作りたい……。

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ファーストコンタクト

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「アル様はぁ、何を目指してるんですかぁ?」
「何をって?」
「だからぁ、アル様の目的ですよぉ……あ、そこを右ですぅ。」
 アリスの指示に従って右に進むがすぐ行き止まりになる。

「壁に何か反応があるのですよ……それでどうなんです?」
「どうって言われてもなぁ……おっ、これか?」
 壁を調べてみると、微かな反応を見つける。
「アル様って、付与術を使うせいだと思うのですが、地味に魔法関連について詳しいじゃないですかぁ。その上に錬金術や魔導具精製にも精通してますし………あ、お姉様そうじゃなくて左側を……。」
「えっ、こっちなの?」
 ミリアが今にも押そうとしていたボタンから、あわてて手を離す。
「その左のボタンですぅ……そのバックだって自作ですよね?『容量拡張』なんて、かなりの熟練者じゃないとできませんよ……ってお姉さまそっちじゃないですぅ。」
 更に違うボタンを押そうとしているミリアを慌てて止めるアリス。
 指示を出しながらも、全体をチェックする手は止めないあたり、自分の能力の使い方に大分慣れてきたようだ。

 「それに、精霊魔法や神聖術にも詳しくて、武器にも深い造詣がありますよね?……お姉さま、それです、そのスイッチです。」
「うぅ、行くよ………えいっ!」
 ミリアが思いっきりボタンを押し込むと、大きな地響きとともに、目の前に空間が広がる。
「おぉ、こんな所に隠し部屋があるなんてなぁ。……それで何が聞きたいんだ?一応鍛冶や、細工もそれなりに修めてるぞ?」
「それですよぉ、私が言いたいのは………あっ、お姉様、ダメです。そこにはトラップが………って………遅かった。」
 勝手に机の上をいじっていたミリアがトラップを発動させ、見事に引っかかってしまう。

「少し待ってて下さいね。今解除の方法探しますから……。」
「早くお願いぃ~」
 部屋の真ん中で逆さに宙づりにされたミリアが、机の上を探るアリスに懇願する。
「だからアル様は何がやりたいのかな?と……、アル様そっちの本を押さえてて下さいね。」
 アルフレッドが本を押さえているのを確認してから、アリスは見つけたレバーを引っ張る。
 すると、ミリアを拘束していたアームが上方へと移動し始める。
「あ、逆でしたぁ。……何でもできるのに何で冒険者やってるのでしょう?」
 アリスはレバーを逆に押し込んで、アームが下がってくるのを確認しながら、アルフレッドに訊ねる。

「そんなことか。ちょっと作りたいものがあってな、俺の腕もまだまだだし、素材も集めなきゃいけないから、旅しながら修行してるってだけだよ……そろそろ離していいか?」
「あ、大丈夫ですよ……作りたいものですか?アル様の腕前は十分すぎると思うのですけど、それでもまだまだなんて、一体何を求めているのでしょう?」
「何でもいいじゃないか。」
 アリスの疑問には答えず壁面の本棚の方へ移動するアルフレッド。
「とっても気になりますぅ。」

「聖剣よ。」
 アリスが更に聞き出そうとすると、別の方から答えが返ってくる。
「あー、酷い目にあった。もうこんな罠無いよね?」
「えぇ、見た限りでは……それより聖剣ですか?」
 アリスが訊ね返すと、ミリアは笑いながら教えてくれる。
「うん、何でもね、全属性を持っていて、使用者の意志で自由に切り替えることが出来て、そして相手の魔法を吸収できる上に攻撃した相手の体力と魔力、スタミナを吸収して使用者に還元、更には魔力を溜めることが出来て、真の力を解放すれば空間さえも斬り裂く事ができる、そんな聖剣を創りたいんだよね?」
「それって聖剣というより魔剣じゃないかと……。」
 アリスの声がひきつる。
「だよねぇー、って言うか、そんな聖剣創ってどこの魔王に喧嘩ふっかけるつもりなのよっ、て感じ?」
「うるさいなぁ、別にいいだろ。誰にも迷惑かけてないし。」
「思いっきりかけられてるよっ!」
 アルフレッドの呟きにミリアが即反論する。

 ミリアの脳裏には、アルフレッドが実験と称して行った結果起きた、あんな事やこんな事がまざまざと思い浮かび、ついでに起きた、忘れたい恥ずかしいことまで思い出して顔を真っ赤にし、身悶える。
「アル様何やったんですかぁ?お姉さまが凄い事になってますよぉ……責任取らないといけないんじゃないですかぁ?」
 ミリアの身悶えっぷりに、若干引きながらもアルフレッドにそう囁くアリス。
「まぁ……今更だな。」
「今更なんだ……ホント、何やったかとっても気になるのですが、アリスはお子様なので気付かないふりをします。」
「そうしてくれ。」

「イエイエ、私は気になりますから、そこのところ詳しく。」
 アルフレッドが話を終えようとしたところで、突然背後から声が聞こえる。
「……隠し扉かっ!」
 アルフレッドは飛び退り、背後から現れた男と距離を取る。
 ミリアとアリスも、アルフレッドの背後に位置し、それぞれ小剣と杖を構える。

「あれ?お話は終わりですか?私としては、そちらのお嬢さんが真っ赤になって見悶えるシチュエーションがどんなものか、ぜひお聞きしたいんですがねぇ。」
「悪いがこれ以上は有料だ。聞きたいなら金貨5枚払ってもらおうか。」
「お金取るんだぁ。」
「アル様、払いますから、後程詳しく……。」
 落ち込むミリアと、何故か異様に食いついてくるアリスに、自分で言っておきながら引くアルフレッド。

「あー、ちょっといいかなぁ?この状況でシカトはなくね?っていうか、普通もう少し緊張感があるんじゃないかと思うんだが?」
「あぁ、悪いな。それで何の用だ。ちなみに忙しいんでな、5分ごとに銀貨1枚のチャージ料がかかるぞ?」
 少し呆れた様に言う男に対し、アルフレッドが答える。
「マジかよ。」
 困惑した表情で銀貨を投げてよこす謎の男。
「払うんだ……。」
 唖然と呟くミリア。

「それで、何の用だ?」
 男が投げてきた銀貨を受け取りながらアルフレッドが問いかける。
「……当たり前のように受け取るアル様……素敵ですぅ。」
「その前に一つ聞きたいんだが、そっちの小さいお嬢ちゃんは、ロイド家の姫さんで間違いないか?」
「人に訊ねる前に名乗るのが礼儀ではなくて?」
 アルフレッドの背に隠れながら、アリスがそう告げる。
「これは失礼を。私はガルド様に雇われているガイナックスと申します。以後お見知りおきを。」
「……私はアリス。今はただの冒険者ですわ。それで、隣の領主の手先が、こんなところで何コソコソ探っているのですか?」
「ただの冒険者ですか。……まぁいいでしょう。ガルド様は何やら企んでおいででしてね、と言っても、ちょっとお話出来ない無いような内容ですがね、その事に関してこの遺跡を調べてるだけですよ。最も……。」
 ガイナックスと名乗った男はアリスに視線を向けにやりと笑う。
「ロイド家の姫様を見つけたら捕えてこいともいわれてますけどね。」
 急に膨らむ殺気からアリスを庇う様に身体の位置をずらすアルフレッド。

「ガルドは、コソコソとなにをやってるのかしら?ここは一応ロイド領ですわよ。やましい事が無ければ正面から出て来なさい、なのですよ。」
「……ねぇ、アリス、アルの背に隠れたまま言っても説得力ないよ?」
「そんな事はどうでもいいのですよ。」
 背後でコソコソと言い合う二人を放置してアルフレッドはガイナックスと向かい合う。
「それで、どうする?」
「どうする、とは?」
「アリスを連れて行くというなら、俺達は抵抗するが?」
「その子はただの冒険者なのでしょう?私は幼女に興味はありますが、ここで連れ去って幼女誘拐の罪を着せられるのはゴメンこうむりたい。それに幼女は愛でても手を出してはいけないという紳士協定もありますしね。あなたならご理解いただけますでしょう?」
「アンタがロリコンなのは分かったが、一緒にするな。俺の好みはバインバインの姉ちゃんだ。それと、そろそろ5分経つから用がないなら立ち去ってくれないかな?それとも追加料金払って、アリスを愛でるか?おさわりは禁止だがな?」

「……止めておきましょう。私のお小遣いがなくなりますからね。」
 アルフレッドに言われて、懐をごそごそと探っていたガイナックスだが、その手を止めてそう告げる。
「……あれ、お金があったら払うつもりだったのかな?」
「そうみたいですぅ、変態さんですね。アル様もアル様ですよ。胸なんてただの飾りですぅ。」
「では、ここでお暇しますよ。これ以上ここにいると余計なダメージが増えそうですから。……またお会いしましょうね、アリス=ロイドさん。」
 ガイナックスは最後にもう一度アリスに視線を向けた後、現れた時と同様に姿を消す。
 アルフレッドは、ガイナックスが消えた後も暫く警戒を解かずにいる。

 暫くして、アルフレッドが警戒を解くと、アリスもミリアも、ふぅと力を抜く。
 そして、緊張が解けてくると、いつもの雰囲気が戻ってくる。
「結局なんだったの?」
「アイツ、私をロリっ子扱いしたのですよ、許さないのですぅ。」
「今度会ったら叩きのめしてあげるよ。ああいう変態は撲滅すべきよっ!」
「ホントですかぁ、お姉さま素敵ですぅ。」
「止めとけよ。」
 盛り上がる二人に水を差すアルフレッド。
「アイツは魔族だ。ヘタに関わらない方がいい。」
「ま、魔族ぅ!?」
「ウソっ……じゃぁ、隣の領主と魔族が手を組んでるって……なんてこと……。」
 アルフレッドの言葉に、固まる二人。

「でも、魔族が、素直に人間に従うってのが分からないわよ。」
 しばらくして、我に返ったミリアが言う。
「だな、たぶん何らかの契約をしてるのだろうが。」
 魔族は人間より、その力も魔力量も圧倒的に高く、種としてヒューマン種を凌駕している。
 魔族がヒューマン種に劣っているのはその繁殖力だけで、人間とゴブリンの関係と言えばわかりやすいだろう。
 だからミリアの言う通り、魔族が人間に対し媚びる事はない、というより元々相手にすることはない。
 そして、ゴブリンも数が集まれば脅威となる様に、数に劣る魔族は人間の数を警戒し、刺激しない様にする傾向があり、自ら関わる事が少ない。
 ただ、魔族と言っても、色々な性格の者がいて、中には面白半分に関わってくる者たちもいたりする。
 なので、人間たちはそう言う魔族と「契約」を結び、自らの身を守りながら望みを叶える手段としていた。
 契約の代価は重く、その代価によって人間が苦悩したり絶望する事が、魔族への娯楽の提供だという事が分かっていても、自らの欲を満たす事を優先とする業の深さが、人間の救われない所であろう。

「そこまでして……隣りの領主は……ガルドは……何を企んでいるのですか……。」
 震える声でそう言うアリス。
「分からんが……どうせろくでもなく、下らん事だろう。」
「私……どうすれば……。」
 呆然としているアリスを引き寄せ、その頭を撫でてやると、アリスはそのまま体重を預けてくる。
 アリスが落ち着くまで、しばらくそのままでいようと思うアルフレッドだった。
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